そこで、今回は労務の年間スケジュールについて解説いたします。
まずは、大きな流れを把握する為に、年間業務及び月次業務を明記し、更に日次業務まで掘り下げて解説します。
この記事でわかること
- 月別の労務タスクと給与計算担当者がやること
- 社会保険・年末調整など年間の主要イベント
- 50人超で発生する法的義務と対応策
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4月
採用
日本独自の新卒一括採用を行う場合は、4月に多くの新規採用者が職場の仲間入りを果たします。
給与計算担当者がやること:
- 人事担当者から採用者情報を取得し、給与マスタへの登録
- 自社の給与締日・支払日の確認
- 末日締め当月25日払の場合は予定払いになるため、月途中退職時の過払い清算フローを事前確認
注意点として、4月入社者の雇用保険・社会保険の資格取得手続きは入社日から5日以内(健保・厚年)または翌月10日まで(雇用保険)に提出が必要です。
関連記事:採用・求人における注意点を判例を用いて丁寧に解説!
昇給昇格
採用と同時期に昇給昇格を実施する企業も多くあります。
給与計算担当者がやること:
- 人事部門から昇給・昇格情報を受け取り、給与マスタへ反映
- 見落とすと低いままの給与が支払われ続けるため、人事担当者との確認フロー整備が重要
- 昇給後3ヶ月分の給与が確定したら、随時改定(月額変更届)の要否を判定する
随時改定(月額変更届)の要否判定:
昇給は必ずしも社会保険料の変更手続きにつながるわけではありません。以下の3要件をすべて満たす場合のみ、月額変更届の提出が必要です。
要件 | 内容 |
|---|
① 固定的賃金の変動 | 昇給・降給など基本給や固定手当に変動があった |
② 2等級以上の差 | 変動月から3ヶ月の平均報酬月額と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた |
③ 支払基礎日数 | 3ヶ月とも17日(短時間労働者は11日)以上 |
小幅な昇給で等級差が1等級以内に収まる場合は随時改定不要で、次回の定時決定(7月)で反映されます。
随時改定に該当する場合の適用月は、給与の支払い方式によって異なります。「変動後の給与が実際に支払われた月」を起点として4ヶ月目が適用月になるため、4月昇給でも以下のようにずれます。
支払い方式 | 昇給後の給与が支払われる月 | 随時改定の適用月 | 給与控除の開始 |
|---|
当月払い | 4月 | 7月分 | 8月給与から |
翌月払い | 5月 | 8月分 | 9月給与から |
「4月昇給なら必ず7月から」と思い込むのは実務上よくある誤りです。自社の支払い方式を必ず確認してください。
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昇給昇格
採用と同時期に昇給昇格を実施する企業も多くあります。これは採用と同様に企業の裁量の範囲となりますが、長期雇用へのインセンティブ付与の観点からも全く整備していない企業は少ないでしょう。例えば企業で定めた経験年数等を満たすことで昇給させることや、職位の上昇(例えば係長から課長に昇進)に連動した昇給なども想定されます。
給与計算担当者がやること:
- 人事部門から昇給・昇格情報を受け取り、給与マスタへ反映
- 見落とすと低いままの給与が支払われ続けるため、人事担当者との確認フロー整備が重要
この部分は見落としてしまうとその後も低いままの給与で給与を支給し続けてしまうことになるために、人事評価担当者と連携し業務を進めていくことが極めて重要です。

5月
社会保険料控除開始
新卒一括採用(中途の4月採用であっても)後は5月から社会保険料控除が始まります。社会保険料は雇用保険料と徴収方法が異なり、その月の保険料を翌月の給与から控除することとなります。よって、4月に新入社員が入社した場合は5月に一斉に社会保険料控除の業務が控えているということです。
給与計算担当者がやること:
- 社会保険料は翌月控除が原則(その月の保険料を翌月給与から控除)
- 4月入社者全員について、資格取得届で決定した標準報酬月額に基づく控除を5月給与から開始
- 新年度(4月)から保険料率が変更になる場合、在職者・退職者ともに新率への切り替えを忘れずに実施
- 4月末退職者で当月予定払いの場合:3月分は旧率、4月分は新率で控除
また、新年度(4月)分から保険料率が変更となる場合があります。その場合は、在職者の保険料率も変更する必要があることと、退職者の保険料率へも反映させる必要があります。日次業務としては、退職者は前月分とその月分の保険料を控除する必要があり、4月末退職者で当月予定払いの場合は4月が(基本給などが)最後の給与支払い月となる場合、3月分は旧率で控除し、4月分は新しい率で保険料を控除しなければならないということです。よって、保険料率の変更の有無と退職者の確認は必ず確認が必要です。

6月
賞与(6月)
多くの企業は6月に賞与支払いがあります。賞与は労働基準上必ず支払わなければならないものではありませんが、賞与は大きく分けると次の3つの性質に分類されます。
・支給額が予め確定している
・支給するか否かが都度決定される
・支給するか否かが明確でない
給与計算担当者がやること:
- 就業規則・給与規定で賞与の性質(確定支給・都度決定・不明確)を確認
- 賞与からの社会保険料控除は当月控除(月例給与と異なる点に注意)
- 正規・非正規の待遇差の合理的な説明を用意しておく
賞与については、昨今の最高裁判例でも判事されましたが、正規雇用と非正規雇用の待遇差により賞与は全く支給しないのか、固定額(寸志などを含む)として支給するのかなど、決定しておく必要があります。
また、非正規雇用の方から待遇差の説明を求められた場合には説明をしなければなりません。
賞与支払報告
賞与支給後は賞与支払報告の提出があります。賞与支払い報告は、賞与を支払った日から5日以内に実施機関等に提出しなければなりません。
住民税
新年度分の住民税の特別徴収(給与からの天引き)が開始されます。住民税は6月から翌年の5月にかけて徴収します。各市町村からの通知を適正に反映していく必要があります。
給与計算担当者がやること:
- 各市町村から届く「特別徴収税額通知書」を給与システムへ反映
- 育児休業中など収入が少なく住民税が発生しない従業員の確認
- 中途採用者で前職から空白なく転職した場合は前職場からの住民税引き継ぎ(異動届)に対応
また、日次業務としては新規中途採用者が前職場から空白期間がなく引き続いて勤務する場合は前職場から住民税特別徴収の引継ぎがあることも想定されます。

7月
定時決定(算定基礎届の提出)
4〜6月の給与実績をもとに、社会保険料の等級が適正かを確認・届け出する業務です。例えば、残業が増えたことにより給与が増額しているにも関わらず低額の社会保険料や、逆に、部署異動により残業代が低額となったにも関わらず高い報酬を基に計算された社会保険料の場合は、生活に与える負担の大きさも無視できません。そこで、毎年「定時決定」として、その年の9月の社会保険料(実務上は10月の給与にて控除するタイミング)控除から実態に合致した等級にて徴収が行われていくということです。
給与計算担当者がやること:
- 4〜6月に実際に「支払った」給与額を集計(支払日ベース)
- 非正規雇用で翌月実績払いの場合、4月支払い分は実態として3月の労働分になるが、定時決定では支払い月で報告する点に注意
- 9月分保険料(10月給与控除分)から新等級が適用されることを認識して準備
日次業務の留意点としては、同じ職場内でも給与の締日と支払日が異なる場合があります。例えば、正規雇用は当月予定払いのところ、非正規雇用の場合は翌月実績払いの場合が注意です。後者の場合、4月に支払われた給与は実態としては3月の実績となります。しかし、定時決定においては、4月から6月に実際に支払われた給与を基に報告します。
年度更新
年度更新とは、毎年6月1日から7月10日に前年度に支払った労働保険料の清算と同時に、新年度分の労働保険料の納付を概算で支払う手続きのことを指します。尚、労働保険料には、労働者の給与や賞与からの徴収分と事業主支払い分を合わせた保険料を指します。
よくある誤りで、労災保険と雇用保険を総称して労働保険と定義しますが、労災保険料は労働者の給与や賞与からは控除されません。労働者の給与や賞与から控除されるのは、雇用保険料のみであることを確認しましょう。すなわち、労災保険料は全額事業主負担ということです。
給与計算担当者がやること:
- 前年度に支払った給与・賞与の総額(雇用保険対象分)を集計
- 労災保険料は全額事業主負担で、従業員給与から控除しないことを再確認
- 雇用保険料のみ従業員負担分があることを確認

高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書
高年齢者雇用状況報告書とは、高齢者の雇用について企業の実際の雇用状況を報告させることにより、高年齢者等の安定した雇用を確保し、更に定年退職者等にも就業機会の確保にも繋げることを目的としています。
法的には高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 第52条第1項に根拠規定が置かれており、企業の就業規則等における「定年」や「継続雇用制度」の現状と今後の予定に関して報告する内容になっています。
尚、高年齢者雇用状況報告書は企業で常労用労働者が概ね31人以上の場合、ハローワークから報告書が郵送(ダウンロードも可能)されます。
常用労働者とは雇用契約の内容を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であり、かつ、1年を超えて雇用される者(雇用される見込みも含む)と定義されています。
また、障害者雇用状況報告書は障害者の雇用状況を報告することにより、障害者の雇用を促進し、また、ハローワーク等による助言・指導等の際にも用いられます。
法的には障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第7項に根拠規定が置かれています。尚、高年齢者雇用状況報告書とは人数要件が異なり、常用労働者数が45.5人以上の事業者が対象です。
注意点としては、週20時間以上30時間未満である労働者は「0.5人」としてカウントします。また、障害者の人数もカウントの仕方が異なり、重度身体・知的障害者は常用の場合2人・短時間の場合1人とカウントし、重度以外の身体・知的・精神障害者は常用の場合1人・短時間の場合0.5人とカウントします。
高年齢者・障害者雇用状況報告書の提出
対象規模 | 報告書の種類 |
|---|
常用労働者31人以上 | 高年齢者雇用状況報告書 |
常用労働者45.5人以上 | 障害者雇用状況報告書 |
提出先はハローワーク、期限は7月15日。

8月
人事院勧告
民間企業では実務上も重要ではありませんが、国家公務員給与法に準拠している事業所の場合は例年8月に勧告がされます。これは、民間企業と公務員の給与を比較し、公務員の給与を適正にするための勧告です。
9月
定時決定の反映
7月に定時決定を行うと、9月分の社会保険料から変更後の保険料で控除されます。実際には10月の給与から控除開始となりますが、万が一9月末日付退職者がいる場合は、8月分と9月分で保険料が異なる場合もあります。
給与計算担当者がやること:
- 9月給与の段階で新等級を給与システムへ登録しておく(計算誤りを防ぐため)
- 9月末日退職者がいる場合、8月分(旧等級)と9月分(新等級)で保険料が異なるケースがあるため注意

10月
定時決定後の新等級での控除開始
10月は多くの従業員に対して定時決定後の等級に基づいた保険料で控除が開始となります。
最低賃金額確認
地域別最低賃金の発表が例年9月頃に行われます。
特に時給制にて給与を支払うアルバイトを雇用している場合は地域別最低賃金を下回っていないかの確認が重要です。最低賃金法が法的な根拠となりますが、実務上は最低賃金を下回る賃金額で労働契約を締結していた場合、当該契約は無効となり、無効となった部分は最低賃金額と同様の契約を締結しているものとみなされます。これは、最低賃金法第4条第1項および2項に根拠規定が整備されています。
給与計算担当者がやること:
- 時給制アルバイト・パートの時給が地域別最低賃金を下回っていないか確認
- 下回る場合、最低賃金法により契約は自動的に無効(最低賃金額に引き上げられたものとみなされる)
被扶養者状況確認
健康保険上の被扶養者認定が適正か否かを送付されてくる「被扶養者状況リスト」を基に確認を行います。例えば実態は(配偶者や子が)就職などにより被扶養者の要件を満たしていないにも関わらず被扶養者認定のままであった場合に適正化を図る目的で行われます。
関連記事:【法改正・令和2年4月1日】被扶養者の要件をわかりやすく説明
関連記事:扶養控除申告の際に労務担当者が確認すべき重要なポイント
11月
年末調整着手
年末調整はその年の最後の給与である12月に行うこととなりますが、一定数以上の従業員を雇用している場合は12月から着手しては間に合いません。よって、法改正項目の確認、その年に合致した用紙の配布(システムでの回収の場合システムの設定)、提出締め切り日の設定などは遅くとも11月のうちに決定しておくべきです。
給与計算担当者がやること:
- 当年の法改正項目の確認(控除額の変更・新設など)
- 年末調整用書類(扶養控除等申告書など)を従業員に配布(システムの場合は設定)
- 提出締め切り日を設定し、全従業員へ周知
- 前年の回収率・遅延者を参考に、リマインドスケジュールを組む

12月
年末調整
実際に年末調整を行います。詳細は別記事にて執筆させて頂きましたが、労務担当者の最たる繁忙期と言っても過言ではありません。
給与計算担当者がやること:
- 従業員から回収した申告書・証明書類をもとに所得税の精算計算
- 不足税額は原則12月給与で追加徴収、過払い税額は原則12月給与で還付
- 疑義がある従業員(配偶者年収の見込みズレ等)は別管理し、1月の再年末調整に備える
関連記事:年末調整ってどんな作業?手間がかかるって本当?
賞与(12月)
多くの会社が6月と同様に12月も賞与支給日として設定していることが多いでしょう。年末調整と同時並行で行うこととなりますが、性質は異なりますので注意が必要です。賞与と給与で最も異なる部分が社会保険料控除の考え方です。月例給与の場合は翌月から控除が開始となりますが、賞与は当該支払い月にて控除が発生します。
例えば12月(又は6月)に従業員を採用した場合、12月の賞与では社会保険料を控除するもの、給与からの控除は翌年の1月からとなります。(12月の給与では控除なし)
賞与支払報告
6月と同様に賞与支払い日から5日以内に提出する必要があります。賞与支払報告の提出忘れは将来受け取る年金額にも影響があるために注意が必要です。

1月
再年末調整
万が一、年末調整に誤り(会社側・従業員側どちらであっても)があった場合、1月までは再年末調整が可能です。ここを逃してしまうと確定申告を行って頂く必要があります。
12月の年末調整の時点で疑義が生じた従業員分(例えば配偶者の年収)は追って確認をするなどして別建てで管理するなどの対応は必要でしょう。
給与支払報告
12月の年末調整を実施後は給与支払報告という業務があります。これは、前年の1月1日から12月31日までの間、会社が従業員へ給与を支給した場合、各々の従業員の1月1日に居住する市町村に提出しなければならない書類です。
必ずしも全員が同じ市町村在住とは言えませんので一定量のボリュームがあります。よって、各市町村へ郵送する書類が届いていない場合は当該市町村に問い合わせをして締切日(毎年1月末日であり、曜日によっては変動あり)までに間に合うように業務を進めていく必要があります。
給与計算担当者がやること:
- 居住市町村が複数にわたるため、市町村ごとに分けて郵送
- e-Tax・eLTAXでの電子提出が可能(効率化のため推奨)
- 提出漏れがあった場合は該当市町村へ速やかに連絡
2月
雇用契約書更新準備
年度単位(4月1日から3月31日)で雇用契約を締結している場合で、来年度も雇用契約を更新する場合は雇用契約書の更新の準備を進める必要があります。
・更新するか否かの決定
・労働条件の変更
など、経営判断となり得る部分もあることと、従業員の生活も無視できないことから、1ヶ月以上は余裕を持ちスケジューリングすべきです。
給与計算担当者がやること:
- 更新するか否かの決定(経営・人事判断)
- 時給・月給など労働条件が変わる場合は変更内容を確認
- 更新しない場合は雇止め通知のタイミングを確認(雇用期間30日以上の場合は30日前以上に通知)
- 1ヶ月以上の余裕を持ってスケジューリングする

3月
36協定
時間外労働は働き方改革により罰則付きの上限規制が課されました。これは、旧来青天井であった時間外労働に対し罰則を設けることで事業主側の適正な管理を強く求めたということです。
本来、労働者には1日8時間、週40時間を超えて働かせることはできません。しかし、合理的な内容の就業規則を整備し、かつ36協定を締結し、届け出ることで時間外労働を命じることが可能となります。この36協定の期限が切れているにも関わらず時間外労働を命じていた場合は違法な労務管理となります。4月から翌年3月末までの期間としている場合は、期限には余裕を持ち、手続き(意見聴取も含めて)を行うべきです。
給与計算担当者・労務担当者がやること:
- 4月1日からの新年度分の36協定を締結・届け出(期限切れに注意)
- 労働者代表からの意見聴取も含めて余裕をもって進める
- 時間外労働の実績が特別条項の上限(月100時間未満・複数月平均80時間以下)に抵触していないか確認
関連記事:労働基準法における労働時間とは?休憩時間や残業についても解説
年度末退職者給与
多くの企業の場合は3月の退職(年度末退職)が多いでしょう。よって、3月の退職者処理は12月の年末調整業務と並び繁忙期となる場合があります。
給与計算担当者がやること:
- 退職月の給与・社会保険料(前月分+当月分の2ヶ月分控除)の精算
- 雇用保険・社会保険の資格喪失届の提出(退職日翌日から5日以内)
- 離職票・源泉徴収票の発行準備

通年業務(随時対応)
以下は特定の月に限らず、年間を通じて対応が必要な業務です。
人事評価
人事評価制度を導入している企業は各セクションから挙がってきた評定を基に昇給するなどの給与への反映がある場合は人事部門との連携が必要な業務です。
社員研修
2020年以降は新常態を踏まえた社員教育が必要となりますが、開催方法については、ソーシャルディスタンスを無視することができません。しかし、対面研修でのメリット(雑談を契機としたクリエイティブな発想など)も捨て難く、当分の間は感染者数の動向も踏まえながらオンラインと対面のハイブリッド型の研修を行うなども妥当な選択肢です。
しかし、業種によっては、オンライン一択の場合もあるもの、対面一択での研修は、社会的にもBCPの観点からも望ましくありません。
管理職向けパワハラ研修
パワハラ防止法施行により企業としてパワハラを防止することが法的にも求められています。根拠規定は労働施策総合推進法に明記されており、万が一従業員に提訴された場合には管理職向けのパワハラ研修を行っていたことは会社としての取り組んだ証跡として示せるものとなります。
関連記事:パワハラの定義とは?相談された時や発生時の対応、事例、調査方法
関連記事:パワハラ防止法とは?条文や罰則・中小企業の義務化について解説!
健康診断の実施・管理
企業は常時雇用する従業員に対して1年以内毎に1回、定期に医師による健康診断を実施しなければなりません。また、常時50人以上の従業員を雇用する事業所は健康診断実施後、遅滞なく定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
また、日次業務として重要な点は、異常の有無に関わらず各々の従業員に結果を通知する点です。今は異常がなくても異常値の近くに到達している場合もあることから、通知の失念は問題となり得ます。
給与計算・労務担当者がやること:
- 全員への結果通知(異常の有無にかかわらず必須)
- 要再検査・要治療者への就業上の配慮措置の確認
関連記事:職場の安全衛生とは?衛生管理者や産業医の選任、健康診断を解説

ストレスチェック
健康診断と同様に常時雇用する従業員に対して1年以内毎に1回、定期にストレスチェックを行わなければなりません。2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、これまで努力義務だった従業員50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。2026年5月18日の労働政策審議会安全衛生分科会で施行期日が2028年4月1日とされています。
注意点は、従業員としては必ず受けなければならないということではありません。しかし、企業側から受診するよう勧奨することは可能です。そしてストレスチェックの結果は人事権を行使できる者への開示はできません。あってはなりませんが、精神疾患に罹患している(またはその恐れがある)従業員の情報が漏れてしまうと悪い意味で人事権を行使(例えば退職する方向に仕向ける)する恐れもあるためにそのような建付けとなっています。
関連記事:ストレスチェックの義務化とは?50人未満にも適用されたのはいつから?
有給休暇付与
2019年4月1日以後に年10日以上の有給休暇を付与する場合は付与日から1年以内に年5日取得が義務化されました。労働者毎に入社日も違えば、実際に有給休暇を付与する日も異なってくることから、労働者毎に起算日と実際に5日取得できているか(またはあと何日不足しているか)の管理があります。尚、違反した場合には1人につき罰金30万円となり、法律上、複数の5日未満の取得者が在籍している場合には経営問題にも発展してしまいます。以上のことから有給休暇の管理は非常に重要な意味をもつこととなりました。
給与計算担当者がやること:
- 従業員ごとに起算日・取得日数を管理
- 5日未満の取得者に対して計画的付与や取得促進の働きかけ
関連記事:有給休暇を詳しく解説!義務化で変わったこと、アルバイトへの付与日数
残業時間管理
大企業では2019年4月1日(中小企業では2020年4月1日)以後時間外労働の上限規制が課されています。有給休暇の5日取得義務と同様に違反した場合には罰則が課されます。
また、罰則以上に健康被害に発展した場合には損害賠償請求などの更に大きな問題に発展することもあります。現行の法律では1ヶ月45時間、1年間で360時間までが上限です。
しかし、臨時的な事情により「特別条項」を締結し(年6回が限度)1月100時間未満(休日労働含む)、複数月(2~6ヶ月)平均で80時間以下(休日労働含む)に延長することができますが、当該時間内におさえる必要があります。
特に盲点となりやすい部分として「複数月」の管理です。これは、2カ月でクリアしても、6カ月目に80時間を超えてしまうと違反となってしまう点です。よって、常に先を見据えた労務管理が重要ということです。
区分 | 上限 |
|---|
原則(年間) | 360時間 |
原則(月) | 45時間 |
特別条項(月) | 100時間未満(休日労働含む) |
特別条項(複数月平均) | 80時間以下(2〜6ヶ月の平均、休日労働含む) |

産休育休管理
労働基準法第65条第1項・2項においては6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては休業させなければなりません。また、出産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。産後については請求の有無を問わず、完全に就業禁止期間となりますが、6週間を経過した女性が請求し、かつ、医師が就業することについて支障がないと認めた業務に就かせることは問題ありません。
そして、産前産後休業が終了すると、他の要件を満たしていることが前提ですが、子が1歳に到達(誕生日の前日)するまで育児休業の取得が可能です。
給与計算担当者がやること:
- 社会保険料免除の申請(健保・厚年)
- 育児休業給付金の申請(雇用保険)
- 復帰後の短時間勤務期間中の給与計算(ノーワークノーペイの原則適用)
- 復帰後の社会保険料免除終了手続き
関連記事:【2025年施行】育児・介護休業法の改正ポイントを徹底解説!
妊娠はセンシティブな情報でもあり、少なからず職場の同僚にも負担が生じてしまうために、上司への報告に後ろめたさを感じることがあるでしょう。しかし、産前休業前であっても体調の変化が起こり得ることが想定されます。また、企業として男女雇用機会均等法上、下記に掲げる妊娠週数の区分に応じて右欄に掲げる期間以内毎に1回、必要な時間を確保することができるようにしなければなりません(医師が下記と異なる指示をした場合は異なる)。よって、会社として状況を把握し、適正な労務管理をしていくことが求められます。