1. 労働基準法における労働時間とは?休憩時間や残業についても解説
労働基準法における労働時間とは?休憩時間や残業についても解説

労働基準法における労働時間とは?休憩時間や残業についても解説

労務 更新日:
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働き方改革施行後は働き方の多様化が推進され、様々な雇用形態での働き方が一般化しています。また、労務問題でよく取り上げる論点である労働時間については長期間放置することで大きな問題にまで発展するケースも珍しくありません。今回は労務管理において重要な部分を占める労働時間について解説してまいります。

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目次

労働者とは

労働者の画像

まずは、労働者が働く時間である「労働時間」の前に労働者の定義を確認しましょう。

昭和22年に施行された労働基準法をもとに労働者を判断するにあたってはどのように考えるべきでしょうか。労働基準法第9条に「労働者」の規定があります。

「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。) に使用される者で、賃金を支払われる者

と規定されています。しかし、上記内容のみでは画一的に解釈せざるを得なく、個別の事案(事業の特殊性等)に対しての判断が困難な場合も多いでしょう。そこで、昭和60年に労働者の判断基準が示されています。 

まずは使用従属性を判断します。尚、使用従属性を判断するには、指揮監督下に置かれているかが重要でありそれを補完する事実として以下の項目を確認すべきです。

許諾の自由(仕事の依頼に対して許諾の自由があるか)
・指揮監督性(業務遂行上の指揮監督)
・拘束性(拘束性の有無)
・代替性の有無(代替性)

次に使用従属性のみで判断できない場合は労働者性の判断を補強する要素として、以下の項目を確認すべきです。

・事業者性の有無(機械等を自ら所有し業務遂行上の損害に対する責任の有無と報酬額として労働者とは言い難い高額な報酬が支払われていないか)
・専属性の程度(他の事業所での就業が事実上困難であるか)
・その他(源泉徴収を行っているか、労働保険等を適用対象としているか)

労働時間とは

時計の画像

労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間と解されます。なお、労働時間は賃金が発生する時間であり、法定労働時間(後述)を超えた場合は残業代が発生することとなります。

しかし、実務上は判断に迷う事例も多数あり、確認していきましょう。

始業前の着替え

対面での労務提供のために出社する場合、サラリーマンの場合は自宅でスーツに着替え出社してくることが一般的でしょう。しかし、特定の場所で特定の作業着(安全防護服等)に着用することが義務付けられている場合、過去の判例に照らすと当該時間は労働時間と解されます。これは、安全または衛生上の観点で使用者から事実上義務付けられている場合の着替え時間はその必要性(着替えること自体が使用者からの命令)から労働時間として解釈するということです

しかし、着替え時間については、並行して談笑が行われている場合や着替えの時間にも個人差があり、着替えが遅い人ほど多くの給与を払うのかという問題もあります。その場合には一律5分または10分などとして予め着替え時間を労働時間として管理するという労務管理があります。この運用の注意点としては、これまでよりも作業着の着用に多くの時間が必要となった場合(例えば医療従事者が新型コロナウイルスへの対応のために通常とは違い防護服を着込む場合)には例外的な対応を取るということであれば通常のケースと例外的なケースで対応を分けていることから、問題にはなりにくいと考えます。 

始業前の情報収集

労働者自身の判断で出社し、自主的に情報収集する程度であれば直ちに労働時間とは解されません。しかし、使用者が指示をした場合や始業前に出社し、情報収集しなければ到底時間内に業務が終わらないことが予見できる場合は労働時間と解されます。また、明確に指示とまでは言えないが「黙示の指示」(暗に出社を促すような発言等)を与えたと言える場合も労働時間と解されます。よって、労務担当者としては所属長を通じてこのような管理がなされていないかの確認が重要です。このような状況が黙認されていた中で残業代請求があった場合は労働者の数によっては大きな経営問題にまで発展します。

36協定

常時10人以上の労働者を使用し、かつ、労働者に対して法定労働時間を超えて労働させる場合には合理的な内容の就業規則を作成し、届出、かつ周知をし、36協定を締結(届け出も行う)することで、面罰効果を享受することができます。これは罰則が適用されないにとどまり、健康確保などの使用者の責任が免除されるということではありません。長時間労働が常態化してしまうと仕事と家庭の両立や労働生産性の面からも疑問符がついてしまうことから定期的に社内の労働環境については目を光らせておくべきと考えます。

管理方法

使用者は労働者の労働時間を適正に管理しなければなりません。多くの場合はタイムカードを導入し、出退勤の際に打刻することで客観性のある管理が可能となります。しかし、タイムカードの時間がイコール労働時間かと言うとそうとも言えません。例えば勤務終了後に談笑していた時間は労働時間ではなく、滞留時間となり、賃金は発生しません。

また、タイムカード以外の管理方法としては自己申告制が挙げられます。以前自己申告制が問題となった事例として、残業が発生しているにも関わらず時間内に業務が終わっているかのように装って実際よりも早い時間を記入させていたことです。

現在はコロナ禍により対面一択の管理とはいかず、対面と並行してリモート(在宅勤務等)での労務管理も重要な位置づけを占めています。よって、在宅勤務の場合はタイムカードによる管理とはいかず、各種ITツールを活用し労働時間を管理することが一般的です。尚、ベテラン層となると若手労働者と同様にITツールを使いこなすことが難しくレクチャーを交えながら徐々に導入していくこととなります。

尚、2019年4月からは「労働時間の客観的な把握」が義務化されており、原則としてタイムカードなどの客観的な方法を用いて把握することが求められています。

休憩時間とは

労働者が権利として労働からの解放が保障された時間と定義されます。よって、休憩時間でありながら、並行して来客対応などが慢性的に黙認されている場合は労働基準法で定める休憩時間と評価されず、労働時間と評価されます。そうなると所定労働時間数(使用者と労働者間で定めた労働時間)によっては法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えてしまい、残業代が発生するというリスクが否定できません。

尚、休憩時間は労働時間が6時間までは与えなくても違法ではありません。しかし、労働時間が6時間を超え8時間までは少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間与えなければなりません。

手待時間とは

単に作業に従事していない時間となり、例えば医療業でいれば医師の手術の間の待ち時間や、工場労働者の場合は機械の入れ替えの待ち時間などが想定されます。尚、手待ち時間は休憩時間ではなく、労働時間として解釈されます。これは、突発的な事態が発生した場合(機械が故障した場合など)の対応は無視できず、使用者の指揮命令下に置かれた時間とも言えます。ゆえに賃金が発生する時間と解釈されます。

残業申請

オフィスの画像

残業申請については2019年4月1日より大企業が先行して時間外労働の上限規制が課され、旧来の青天井であった残業が法律によって上限の明確化がされました。現在は労働力人口の減少により各社労働者の数は減っていることが多く、一人で抱える業務量も多くなっています。また、それを管理する管理監督者自身の業務量も増えており、労働時間の適切な管理が行き届いていない企業も散見されます。そこで、残業を事前承認制とすることで、月末に気づいた時には残業時間の上限を超えていたということを可能な限り回避できるものと考えます。

残業代計算

残業代は退職金や賞与などと異なり、労働基準法上支払いが義務付けられているものです。尚、労働基準法では第37条に規定が整備されています。実務上は労務担当者が締め切り日を設けてタイムカード等を提出させ、給与計算をしていきます。その際に所定労働日であるにも関わらずタイムカードに打刻されていない(出勤時または退勤時のみ打刻されていない場合も含む)日がないか、有給休暇か欠勤か判断ができない日がないか等を確認していかなければなりません。労働基準法で定める残業代(割増賃金)については1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合は通常の賃金に法定以上の割増率(後述)を乗じて支給しなければなりません。

また、正社員は1日8時間労働であるものの、特定のパート労働者に限って1日5時間労働というケースもあります。その場合は8時間に達するまでは割増率を乗じなくても違法ではありません。しかし、就業規則で所定労働時間(設例のパート労働者は5時間)を超えた場合は割増率を乗じるという規定を設けている場合は、就業規則の内容を下回ることはできなくなり、5時間を超えて8時間に達するまでの労働に対しても割増率を乗じた給与計算をしなければなりません。

固定残業代制

一例として月に40時間の固定残業代制を採用している企業の場合、労務担当者として給与計算をする場合はどのような点に留意すべきでしょうか。このケースの場合は実際の残業時間が40時間未満であっても、40時間分の固定残業代を支払わなければならず、かつ、実際の残業時間が43時間であった場合は「追加で」3時間分の残業代を支払わなければなりません。よって、生産性のある働き方(労働時間が短くても成果を出せる)をする労働者ほどメリットは大きいと言えます。

以下に割増率を明記したので、併せて確認しましょう。

・時間外割増率
2割5分以上
・休日割増率
3割5分以上
・深夜割増率
2割5分以上

尚、深夜とは22時から翌朝5時までの「時間帯」であることから、時間外労働(1日8時間超・週40時間超)のように長さに対して支払いが発生する性質ではなく、特定の時間帯に対して支払いが義務付けられるものです。よって、時間外かつ深夜労働の場合は5割増との理解です。尚、月60時間超の残業を行った場合は、割増率が5割となります。これは中小企業についても2023年4月1日から導入されます。よって、月60時間超の部分が深夜労働であった場合は7割5分の割増との理解です。

管理監督者

ノートの上のメガネとペン

労働基準法第41条2号に規定する管理監督者は労働時間、休憩、休日に関する規定がありません。すなわち労働時間の規制がかからないとういことは残業代が発生しないとの解釈となりますが、その適用は厳格に定められており、経営者と一体的な立場にある者であり、名称に拘らず実際に即して判断されます。

管理監督者の範囲を決定するにあたっては資格や職位に囚われることなく、職務内容、背金の程度、権限、勤務態様に着目し、その地位に相応しい待遇がなされているかも確認し、総合的に判断することが労務リスクを低減させる意味でも重要です。

尚、管理監督者に該当する場合でも深夜の規制は適用され、深夜労働の場合は深夜割増が適用されます。参考までに2019年4月1日に導入された高度プロフェッショナル制度についえては労働時間、休憩、休日だけでなく、深夜の規制もありません。

労働安全衛生法上の考え方

労働基準法とは着眼点が異なり、労働安全衛生法は労働者の安全と健康を確保することに主眼が置かれた法律です。労働基準法で労働時間を管理する目的の一つに適正な賃金の支払いがありました。しかし、労働安全衛生法の目的は労働基準法と同じとは言い難く、残業代が発生しない管理監督者であっても適正に労働時間を管理し、要件を満たした場合は産業医との面接を実施するなどの対応は必要となります。

最後に

企業内で働く労働者の場合は、日々の労働時間の考え方は当たり前と感じることが多いでしょう。しかし、社内の当たり前が社会通念上とイコールとなっているかは別問題であり、最も重要な点として、法的に違法状態となっている場合は早期に解決すべき部分です。

このような自社では気づきにくい部分は専門家と連携しているアウトソーシングの活用を通して可能な限りフラットな視点での助言をもらうことで労務リスクを低減することが可能となります。特に労働時間は賞与や退職金と異なり、日々多くの労働者が直接的に積み重ねていくものです。よって誤った取り扱いは経営問題に発展している事例もあり、労務担当者としても意識的にチェックしていくべき部分と考えます。

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この記事の監修者

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社会保険労務士

蓑田真吾

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしています

資格
社会保険労務士
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