1. 【法改正・令和2年4月1日】被扶養者の要件をわかりやすく説明
【法改正・令和2年4月1日】被扶養者の要件をわかりやすく説明

【法改正・令和2年4月1日】被扶養者の要件をわかりやすく説明

労務 更新日:
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共働き世帯が増えたとは言うものの、一定数は専業主婦(夫)世帯や扶養の範囲内で働く配偶者を扶養に入れて働く世帯もあります。その場合には適切に被扶養者の要件を説明しておかなければ後々トラブルに発展することがあります。

目次

社会保険における被扶養者要件

社会保険における被扶養者要件とは、分別すると「健康保険と年金」を扶養に入ることで一定の恩恵を受けられるということです。尚、一定の恩恵とは、被扶養者は社会保険料の負担がないにも関わらず保険診療を受けられる点と、原則65歳から受給できる老齢基礎年金についても保険料を納めたものとして扱われる点です。まず健康保険の被扶養者の要件から確認しましょう。

 

健康保険における被扶養者の範囲

まずは年齢が75歳未満であることが要件であり、そして、生計維持関係のみが要件の場合と同一世帯かつ、生計維持要件が必要な場合があります。 

(1)生計維持関係のみ

・被保険者の直系尊属(被保険者本人の父母、祖父母、曾祖父母等)
・配偶者(内縁関係にある者を含む)
・子
・孫
・兄弟姉妹 

(2)同一世帯かつ生計維持関係

・被保険者の3親等内の親族で(1)に該当しない者
・被保険者と内縁関係にある配偶者の父母およ子
・被保険者と内縁関係にある配偶者の死亡後における父母および子

生計維持要件とは

主としてその被保険者により生計を維持していることが要件となり、生計の基礎を被保険者に置いていることとなります。

また、夫婦共働きの場合で子供を扶養に入れる場合は原則として収入の多い方の扶養に入れることとなります。しかし、収入が同程度の場合はどのように考えるべきでしょうか。それは、届出により、かつ、各々の家計の実態に即して主として生計を維持する者の被扶養者となります。

同一世帯要件とは

被保険者と住居及び家計を共同にすることですが、同一戸籍内にあることまでは必要とされていません。また、被保険者が世帯主であることも要件ではありません。しかし、「不幸にも事故に遭い入院してしまった場合は、同一世帯要件を満たさないのではないか。」との質問がありますが、入院前において被保険者と同一世帯にあった場合は被保険者と同一世帯にあるとみなされます。

生計維持しているかの具体的な認定基準

認定対象者が被保険者と同一世帯にある場合

認定対象者の年収が130万円未満であり、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であることが要件です。しかし、年収が被保険者の2分の1以上であってもその額が130万円未満であり、かつ、総合的に被保険者の収入によって生計を維持していると認められる場合には被扶養者と認定されることがあります。

認定対象者が被保険者と同一世帯にない場合

認定対象者の年収が130万円未満であり、かつ被保険者からの仕送りが収入より少ないことが要件です。 

収入に含まれるもの

収入には課税されるものと課税されないもの(非課税)がありますが、例えば退職後に雇用保険から受給できる失業手当(正式には基本手当、以下失業手当)は認定対象者の年収に含まれます。考え方としては確定申告の際には非課税であることから、対象となる収入には含まれませんが、社会保険としての被扶養者の収入には含まれるということです。

また、遺族年金や傷病手当金、出産手当金も非課税ではありますが、社会保険としての被扶養者の収入に含まれます。多くのケースで当てはまることが予想される「失業手当」はどの程度受給していると認定されないのでしょうか。「基本手当の日額」が3,611円以下であれば失業手当を受給しながらでも扶養に入ることが可能です。万が一基本手当の日額が3,611円を超えているにも関わらず被扶養者が保険診療を受けた場合は、後から医療費の請求をされることがあるため、労務担当者としてはこの部分の説明は確実に行っておくべきです。

よくある疑問点

なぜ75歳以上は被扶養者の対象外なのか?

75歳以上は「後期高齢者医療制度」という独立した制度へ移行するために、以前から被扶養者であった場合でも扶養から外れることとなります。尚、高齢者の方で75歳未満の方はお仕事を引退されるケースも多くあり、健康保険組合よりも国民健康保険へ加入される場合の方が多く、国民健康保険の財政が逼迫する一要因との指摘があります。

収入要件が180万円未満となる場合とは?

被扶養者の年齢が60歳以上の場合、または厚生年金から障害厚生年金を受給できる程度の障害者の場合は130万円未満の要件が180万円未満へと切り替わります。

新たに追加された106万円の壁とは?

慢性的な少子高齢化により高齢者は増え、働き盛りの人口が減ってきており、社会保険を持続させるためにも平成28年10月から社会保険の適用拡大が図られました。そこで、以下の要件を満たした場合は社会保険に加入しなければならなくなりました

・1年以上雇用見込み(令和4年10月~2ヶ月超の雇用見込み)
・週の労働時間が20時間以上
・報酬の月額が88,000円以上(通勤手当等を除く)
・学生でない
・501人以上の企業(段階的に拡大)

例えば、扶養の範囲内で働く妻であったとしても上記を全て満たす場合は扶養から外れて自身で被保険者となり、社会保険料を納める必要があるということです。 

尚、平成29年4月1日からは「労使合意」により500人以下の企業も対象に含めることが可能になりました。その後予定されている法改正としては1年以上の雇用見込みが2か月を超えて雇用見込みであれば1年以上の要件は不要となる点、501人以上の企業の要件についても令和4年10月に101人以上となり、令和6年10月に51人以上まで対象が拡大されます。

また、報酬の月額が88,000円以上(通勤手当等を除く)については度々疑義が生じる部分のため確認しましょう。上記には通勤手当等を除くと記載しましたが、等とは最低賃金に含めない報酬は除くという意味です。例えば通勤手当の他に毎月10時間ほど残業があるパートで残業代を含めて報酬が88,000円以上であってもこの要件は満たさないという理解です。よって、労務担当者は106万円の壁については、契約締結段階で判断しなければならないということです。言うまでもなく、年々対象範囲が拡大されていくことから、今は対象外の企業であってもその後対象になることもあり得るためにおさえておきたい部分です。

その他の壁

130万円の壁は社会的にも広く知られていますが、106万円の壁やその他の壁も存在します。中には税法上の壁と混同した状態で労務担当者に質問に来られる方もいることから、確認しておきましょう。

100万円の壁

100万円を超えると住民税が発生します。

150万円の壁

150万円を超えると配偶者特別控除の減額が開始します。

201万円の壁

厳密には2,016,400円を超えると配偶者特別控除はなしになります。

【法改正・令和2年4月1日以後】被扶養者の原則国内居住要件の追加

現行制度では居住地の要件がないために、海外在住者であっても一定の要件を満たせば被扶養者となることができます。しかし、健康保険法で一部法改正があり、被扶養者の要件に新たに「日本国内に住所を有すること」が追加されることになりました。これは、働き方改革の一つである外国人労働者の積極的な活用により、多くの外国人労働者が来日し、労務の提供をすることとなった場合に、旧来の法律では画一的に母国の配偶者等が被扶養者になり得るのではないかとの見解があったものと推察します。

尚、原則国内居住要件の国内居住とは、住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断します。端的には住民票があるか否かということです。ゆえに住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすということです。

しかし、グローバル化の時代においては、一定期間を海外で生活している場合もあるでしょう。そのような場合は例外として、日本に住民票がある限りは、原則として国内居住要件を満たすこととなります。尚、例外にあてはまるケースとは以下のようなケースです。

ア 外国において留学をする学生
イ 外国に赴任する被保険者に同行する者
ウ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的での一時的な海外渡航者
エ 被保険者の海外赴任期間に当該被保険者との身分関係が生じた者で、イと同等と認められるもの
オ ア~エに掲げられるものの他、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

税法上の扶養と社会保険上の扶養との相違点

年末調整の時期に社会保険の扶養の手続きを行う場合、労務担当者として気を付けなければならない点が複数ありますので、確認していきましょう。まずは、先に触れたとおり、税法上非課税収入(例えば遺族年金や失業手当)であったとしても社会保険の被扶養者の収入には含まれることとなります。

他には、婚姻届を提出前のいわゆるカップル期間中に扶養申請を行う場合、事実婚状態であることの証明をすることができれば、社会保険の扶養では認定対象となり得ますが、税法上は配偶者控除の対象にはなりません。これは、税の視点では民法上の配偶者であることが要件であり、事実婚の状態では民法上配偶者とは言えないからです。尚、税と社会保険で仕組みが異なるのはそもそも所管の省庁(税は国税庁・社会保険は厚生労働省)が異なることを考えればやむを得ないと考えます。

労務担当者としては年末調整については他の担当者が行う場合は問題ないのでしょうが、通常業務に加えて年末調整も行う場合は税と社会保険で頭を切り替えて対応することが重要です。

優先扶養義務者とは

民法877条(扶養義務者)には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする義務がある」と規定されていることから、健康保険の扶養には優先扶養義務者という考え方があります。端的にはより身近な方が扶養するべきということです。例えば子であれば親ということです。子供が生まれて、その子供いずれかの両親ではなく、祖父が扶養するというのは(父母が学生等で全く生計維持能力がない場合を除いて)まずは、親が扶養すべきでないかということです。

実務上の事例

被扶養者の養父母

被扶養者の養父母は実父母と同じ扱いとなるために同一世帯要件は問われませんので生計維持要件のみ問われるということです。

兄弟姉妹

法改正により、兄弟姉妹の同一世帯要件は不問となりました。よって、生計維持要件のみ問われるということです。

従兄弟(または従姉妹)

従兄弟(または従姉妹)はそもそも4親等であり、3親等内の親族に含まれないことから被扶養者となることはできません

養父母を被扶養者としている被保険者が実父母も扶養することはできるか?

本事例は養子縁組をし、生家において実父が死亡後に実母も扶養するとした場合は併せて扶養できるのかという問題が生じます。まず、父母とは実父母および養父母を指します。よって、養父母に併せて実母についても被扶養者とすることができます。

事実婚の家族

事実婚状態である配偶者の父母および子までは被扶養者の範囲となりますが、それ以外の配偶者の家族(例えば弟)は被扶養者とすることはできません。

血族側と姻族側の相違点

例えば兄弟姉妹の配偶者を扶養に入れるとした場合、例えば夫が被保険者であり、妻が被扶養者とします。この場合は夫の兄弟姉妹の配偶者は(血族側であることから)扶養に入れることはできますが、姻族側である妻の兄弟姉妹の配偶者は扶養に入れることはできません。

兄弟姉妹は2親等となりますが、これは3親等である伯父(叔父)、伯母(叔母)や甥、姪の配偶者についても血族側であれば扶養に入れることはできますが、姻族側については配偶者に限っては入れられないという理解です。

各親等

労務担当者としては各親等もおさえておく必要があります。

1親等:親、子、配偶者の親
2親等:兄弟姉妹、祖父母、孫、配偶者の祖父母、配偶者の祖父母
3親等:伯父(伯父)伯母(叔母)、甥姪等
4親等:従兄弟(従姉妹)等 

年金の扶養

第3号被保険者として年金の保険料を払わなくとも保険料を払ったものとみなして年金額が計算されます。第3号被保険者の要件は、年齢が20歳以上60歳未満とされ、第2号被保険者(例えば企業に勤めるサラリーマンである夫)に扶養されている配偶者となります。

尚、年収の要件は130万円未満(障害者の場合、障害年金を含め年収180万円未満)であり、年収には雇用保険の失業手当、傷病手当金、出産手当金も含まれます。

また、第3号被保険者についても健康保険同様に原則国内居住要件が設けられました。

最後に

労務担当者としてフローチャートなどを用いて説明に優劣がつかないように漏れなく説明する環境を作り上げるべきです。また、退職を契機として扶養に入れる場合は離職票など、扶養に入れる理由を確認し、必要な書類を伝えることが最も重要です。繁忙期になればなるほど、必要な書類の伝達ミスにより何度も行政機関へ足を運ばせることとなるとトラブルに発展することにもなりかねないために極めて注意が必要な部分です。また、扶養の要件を満たしていないにも関わらず扶養に入りづけるのは問題です。要件を満たさなくなった(例えば就職)場合は扶養の取り消しの手続きがあることも説明しておくべきです。

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この記事の監修者

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社会保険労務士

蓑田真吾

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしています

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