職務手当・危険手当など従業員の手当14種類一覧|種類・相場・計算方法を解説

職務手当・危険手当など従業員の手当14種類一覧|種類・相場・計算方法を解説

労務更新日:2026-05-20

職務手当、危険手当、役職手当など会社が支給する手当14種類の定義・相場・就業規則への記載要件を解説。割増賃金の基礎単価に含めるかどうかの判断基準も一覧表で整理しています。人事・労務担当者の実務参考にご活用ください。

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法律で義務付けられていない手当は採用において、他企業との差別化を図ること、既に従事している従業員の帰属意識を高めるために整備されるものなど、企業の人事戦略が反映されたものとなっています。

従業員に支給する手当を新設・見直す場合、押さえておくべき論点は2つあります。ひとつは支給条件を就業規則に明記することもうひとつは割増賃金の基礎単価に含めるかどうかの判断です。含めるべき手当を除外したまま残業代を計算していた場合、労基署の臨検を契機として遡及再計算・再支給を求められるリスクがあります。

手当名

支給対象

法的義務

割増賃金基礎に含むか

役職手当

管理職

なし

含む

日直・宿直手当

待機業務従事者

あり(許可制)

含まない

職務手当

特定職種

なし

含む

危険手当

特殊危険作業従事者

なし

含む

家族手当

扶養家族のいる社員

なし

原則含まない※

住宅手当

賃貸・持家社員

なし

原則含まない※

海外赴任手当

海外赴任者

なし

含まない

単身赴任手当

国内単身赴任者

なし

含まない

地域手当

特定地域勤務者

なし

含む

皆勤手当

所定日数皆勤者

なし

含む

通勤手当

通勤者

なし

原則含まない※

資格手当

特定資格保有者

なし

含む

時間外手当

法定外労働者

あり

スイッチオン手当

時間外待機者

なし

含まない

※一律支給の場合は含む(詳細は各セクション参照)

役職手当・管理職手当

呼び名は役職手当管理職手当など、企業によって様々です。手当の目的としては管理職としての役割や責任の重さに対する手当となります。また、議論の余地はありますが、一定の役職に就くと残業代が支給されなくなり、その分を補完する意味合いも含まれています。

労働基準法第41条2項では「管理監督者」として労働時間、休憩、休日の適用が除外されます。そこで、各々の企業で想定する役職手当を支給している管理職を「管理監督者」として扱っていることがありますが、しかし、実態として管理監督者にはあたらないケースも散見されます。その場合、役職手当を支給していたからといって残業代の支払いが免除されるわけではありませんので、経営問題にまで発展する場合もあります。

日直手当・宿直手当

医療業などでは平日の日中だけでなく夜間の救急患者や休日の対応なども想定され、その時間帯に待機した従業員に対して日直手当または宿直手当を支給することがあります。また、休日の昼間を日直とし、夜間を宿直、昼間から夜間を通して行うことを宿日直と呼びます。

しかし、日直または宿直の勤務を行わせる場合は所轄労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。

また、通達では1回の宿直手当又は日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直に就くことが予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(割増賃金の基礎となる賃金)の1人1日平均額の3分の1以上の額であることとされています。

職務手当

職務手当は、特定の職種・職務に就く従業員に対して支給する手当です。就業規則または給与規定に支給条件と金額を定めることが前提となります。役職手当が「管理職としての役割・責任に対する対価」であるのに対し、職務手当は「職種・業務の専門性や難易度に対する対価」という位置づけです。また、従業員目線では、キャリアアップを目指す際の誘因にもなり得ることから、キャリアアップ後のインセンティブとしての性質も有します。

役職手当との違い
役職手当は職制上の地位(係長・課長等)に紐づき、職務手当は担当業務の種類・専門性に紐づきます。両者を併用している企業も多いですが、就業規則上で混在していると残業代計算の根拠が曖昧になるため、支給基準を明確に分けて規定すべきです。

相場
業種・職種によって幅がありますが、月5,000〜50,000円程度が一般的です。ITエンジニアや専門職では月20,000〜50,000円、一般事務職では月5,000〜10,000円程度の企業が多くなっています。

割増賃金基礎単価への算入
職務手当は原則として割増賃金の基礎単価に含める必要があります。「特定の職務に従事したことに対する対価」として固定的に支給されるものは除外規定の対象外となるためです。固定残業代として設計するケースもありますが、その場合は固定残業代である旨・対応する時間数・時間超過分の追加支給について就業規則と労働契約書に明記しなければなりません。

就業規則への記載例
「会社は、次の各号に該当する職務に従事する従業員に対し、職務手当を支給する。①システム開発業務に従事する者:月額〇〇円、②専門資格を要する業務に従事する者:月額〇〇円」のように、支給対象となる職務と金額を具体的に定めます。「会社が認めた職務」等の抽象的な規定では支給基準の恣意的運用と判断されるリスクがあります。

危険手当

特定の作業中にやむを得ない事由により特殊な危険作業(例えば電圧装置を取り扱う業務)に従事した場合に支給される手当です。注意しなければならない点としてこの手当は所定労働時間中に従事した場合であっても支払われることから割増賃金の基礎単価に含めなければなりません。

相場と業種別の目安
危険手当の金額は法律で上限・下限が定められていませんが、実務上は月5,000〜30,000円程度が多くなっています。電気工事・建設・化学プラント等リスクの高い業種では月20,000〜50,000円を支給している企業もあります。民間企業では「危険作業1回あたり〇〇円」の出来高型で設計するケースも見られます。

割増賃金への算入は必須
危険手当は所定労働時間中に危険作業に従事した場合も支給されるため、割増賃金の基礎単価に含める必要があります(労働基準法施行規則第21条に列挙された除外手当に該当しません)。他の多くの手当と異なる点として、実務担当者は特に注意が必要です。

家族手当

企業によっては扶養手当と規定する場合もあり、生活に密着した手当と言えます。よって、原則として割増賃金の基礎単価に含めなくても問題ありませんが、例外(後述)があります。尚、家族手当は夫婦共働きで働き、かつ子供を有する場合は多くの場合、多くの企業では夫婦いずれかにしか支給しません。よって、夫婦揃って同じ企業に勤める場合でなければ一方の配偶者の状況を確認すべきでしょう。

実務上は健康保険の被扶養者の定義と同趣旨(年収130万円未満)であることが多く、健康保険上の扶養とセットで手当を支給することがほとんどです。健康保険組合も事業所で家族手当(又は扶養手当)を支給するか否かを確認することがあり、事業所で手当を支給することが被扶養者認定を左右するケースも散見されます。

関連記事:【法改正・令和2年4月1日】被扶養者の要件をわかりやすく説明

住宅手当

住宅とは大きく分けて持ち家と賃貸の2つに分けられます。賃貸のみに住宅手当を支給すると定める企業もあれば、賃貸・持ち家に限らず支給すると定める企業もあります。この手当は割増賃金の基礎単価に含めなくても問題ありませんが、注意すべき点があります(後述)。また、手当額の設定も事業所の拠点によって相場も異なることから、比較対象を誤ってしまうと経営問題にまで発展してしまいかねません。

そして、会社で借り上げ寮を整備している場合は、安価な寮費で貸与していることが多く、併せて住宅手当を支給するとしているケースはほぼないでしょう。

海外赴任手当

日本国外へ赴任した場合に支給される手当です。多くの場合、海外赴任に選ばれる労働者となると期待された有能な労働者の場合が多く、手当を支給しなくても暗に期待の表れとして捉えることができるのではないかとの意見もありますが、業務上の事由で海を渡り、異国の地での生活となると生活文化や商習慣の違いによる心身の疲労感が蓄積されていくことも想像に難くありません。

よって、その疲労感を慮っての手当であり、国内転勤時に支給される単身赴任手当とは支給額に差を設けることが多くあります。

単身赴任手当

先に述べた海外赴任手当とは異なり、国内で単身赴任する場合に支給される手当です。

赴任先によっては(例えば北海道)寒冷地手当などが支給される場合もありますが、家族と生活を異にすることに対する手当との性質が強いと言えます。

地域手当

特定の地域に勤務することに対する手当です。労務の提供と生活は切り離すことができませんので、例えば東京23区内とその他の地方では物価が全く同じということはないでしょう。

特に前者の場合は後者で同じ食材を購入したとしても価格が高いことが容易に想像できます。そこで、業務上の事由により、東京23区内に勤務することとなった場合は地域手当として、基本給に各々の企業で定めた%を乗じて支給することとしています。

皆勤手当

1か月の所定労働日において皆勤した場合に支給される手当です。

高等学校以下では休みがなかった生徒に対してその努力と自己管理能力を称える意味で「皆勤賞」として、表彰する学校が多く見られます。しかし、労働の世界では、労働者が権利を行使することによって就労義務が免除される年次有給休暇があります。年次有給休暇に対する法の趣旨としては労働からの義務を開放し、心身に休息を与えることを目的としています。

また、労働基準法第136条では「使用者は、労働基準法第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」と規定されています。賃金の減額、その他不利益な取扱いについては、皆勤手当や賞与の算定にあたって年次有給休暇を取得したことにより欠勤扱いとすることはもちろんのこと、事実上年次有給休暇の取得を抑制すると言わざるを得ない(不利益な)取り扱いが含まれます。よって、皆勤手当(又は精勤手当)を導入する場合は労働基準法上の年次有給休暇との関係について経営層と十分に認識のすり合わせを行うべきです。また、既に導入している場合は規定の適正な変更をすべきと考えます。

よくある質問で、労働基準監督署の受付印があるために問題ないのではないかとの意見もありますが、労働基準監督署の受け付け時には全ての条文を法律と照らし合わせてチェックするわけではありません。よって、受付印が押されていることのみをもって適正な就業規則とは断言できません。

通勤手当

誤解がある手当であり、労働基準法上で通勤手当の支給が義務付けられているとの認識を持たれるご担当者様も散見されますが、労働基準法上で支給が義務付けられているわけではありません。しかし、就業規則(又は給与規定、以下就業規則)上要件にあてはまった場合は通勤手当を支給することを明記した場合は労働基準法第24条1項「賃金全額払いの原則」に則り支給しなければなりません。これは就業規則の最低基準効が働き、就業規則に定めた場合は、就業規則の内容を下回ることができなくなるためです。

尚、通勤手当は自宅から企業まで往復するにあたっての交通費を負担する趣旨です。交通機関(電車やバス)を使用して通勤し、通勤手当を支給する場合は月額15万円までは非課税となります。しかし、月額15万円を超えてしまうと課税対象となります。

自家用車での通勤の場合は通勤距離に応じて非課税額の上限設定があります。

資格手当

企業が特定の資格を取得している労働者に対して支給する手当でスキルアップのための誘因や、スキルを取得後のインセンティブとして支給されています。

時間外手当(残業代)

名称は企業によって異なりますが、多くの場合残業代のことを指します。1日8時間、 1週間で40時間を超えた場合は「割増」賃金として支払うことが法律で義務付けられています。

また、固定残業代制を採用している場合を確認しましょう。例えば月40時間の固定残業代制の場合、残業時間が40時間未満であっても当初定めた40時間の固定残業代は支払わなければならず、かつ40時間を超えた分は追加で残業代を支払わなければなりません。

関連記事:労働基準法における労働時間とは?休憩時間や残業についても解説

スイッチオン手当

企業から携帯電話を支給し、退社後も突発的な顧客対応のために携帯電話のスイッチをオンにし、対応することを求めることがあります。スイッチオン命令が下されても時間的、場所的な拘束性がなく、使用者の指揮命令下にあるとは言えませんので、労働時間にはあたりませんので賃金は発生しません。しかし、いつ携帯電話が鳴るかという一定の心理的負担を負うことからそれを補う代償措置として手当を支給するという考え方です。

尚、労務管理上の論点として、スイッチオン命令は時間外と休日に限定し、労働者が年次有給休暇を行使した日は含めるべきではないと考えます。これは、有給休暇は原則として暦日単位から時間単位まであり、就労義務自体が免除されています。よって、仮に携帯電話が作動しなかったとしても労働者の心理的な負担があることから、適正な年次有給休暇の付与とは言えないからです。

割増賃金の基礎単価に含まれない手当

・家族手当

・通勤手当

・別居手当

・子女教育手当

・住宅手当

・臨時に支払われた賃金 (※1)

・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金 (※2)

名称

家族手当

通勤手当

別居手当

子女教育手当

住宅手当

臨時に支払 われた賃金

1ヶ月を超える期間ごとに 支払われる賃金

課税対象

原則×

雇用保険 賃金

社会保険 報酬

上記手当は後述する例外に該当する場合を除いて割増賃金の基礎単価に含めなくとも違法ではありません。一覧表を俯瞰し、確認しましょう。

※課税対象

通勤手当の✖️については、例えば電車通勤で月額15万円を超える手当が支給される場合は課税という理解です。

※1. 臨時に支払われた賃金とは

臨時に支払われた賃金とは「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。」とされる。との通達があります。具体的には、私傷病手当見舞金等が該当します。

※2.  1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

賞与や1箇月を超える期間の出勤成績等によって支給される手当のことです。しかし、単に毎月支払いを回避するために支払われていると言わざるを得ないような手当は割増賃金の除外対象賃金とはなりません。

注意点

家族手当

扶養家族、家族の人数に関係なく一律に支給する場合は割増賃金の基礎単価に含めなければなりません。

通勤手当

通勤に要した費用は距離に関係ない一律に支給する場合は割増賃金の基礎単価に含めなければなりません。

住宅手当

持ち家者には一律20,000円、賃貸者には30,000円など住宅の形態ごとに一律に支給する場合は割増賃金の基礎単価に含めなければなりません。

最後に

手当は時間外手当のように法律上支給することが義務付けられている手当から企業独自に支給する手当まで多種多様に存在します。一度整備した場合に手当を取り下げる場合、労働条件の不利益変更の議論にもなり得ます。手当を設定する場合は慎重かつ長期的な判断が重要です。

関連記事:労務アウトソーシングとは?業務範囲・費用・メリット・注意点を解説

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
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