棚卸資産とは、販売や製造のために保有している在庫を、会計上の資産として捉えた呼び方です。期末にいくら残っているかによって売上原価が変わり、利益額や納税額にも影響するため、経理では棚卸資産の範囲の判定や評価方法の選択を適切に行う必要があります。ここでは棚卸資産の範囲、評価方法の種類と届出、期末の仕訳までを実務の流れに沿って解説します。

棚卸資産とは、販売や製造のために保有している在庫を、会計上の資産として捉えた呼び方です。期末にいくら残っているかによって売上原価が変わり、利益額や納税額にも影響するため、経理では棚卸資産の範囲の判定や評価方法の選択を適切に行う必要があります。ここでは棚卸資産の範囲、評価方法の種類と届出、期末の仕訳までを実務の流れに沿って解説します。
棚卸資産は、現場で「在庫」と呼ばれるもののうち、会計上の基準に沿って扱われる資産です。まずは在庫との違い、貸借対照表での並び方、金額の求め方までを確認しておきましょう。
棚卸資産とは、販売を目的として保有する物品や、販売する製品を作るために保有する物品のことです。現場で「在庫」と呼ばれているものとほぼ同じですが、在庫が現物を指す言葉であるのに対し、棚卸資産は会計上の金額として帳簿に計上したものを表します。同じ品物でも、現場は数量、経理は金額といった目的が異なる管理方法です。現場側の数量管理の進め方は関連記事:在庫管理とは?目的・方法・効率化の進め方 で解説しています
会計上、棚卸資産は流動資産に区分されます。これは、棚卸資産が営業活動の循環過程(仕入→在庫→販売→回収)のなかにある資産だからです(正常営業循環基準)。したがって、販売用不動産や熟成期間の長い酒類のように、販売までに1年を超える見込みのものであっても流動資産に区分されます。建物や機械などの固定資産とは扱いが異なり、減価償却は行わず、販売された分だけ売上原価へ振替処理を行います。
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棚卸資産は、貸借対照表の資産の部にある流動資産として計上します。現金及び預金、受取手形、売掛金のあとに記載されるのが一般的です。
表示方法は会社によって異なり、「棚卸資産」と1行にまとめる会社もあれば、商品、製品、仕掛品、原材料、貯蔵品と科目を分けて管理する場合もあります。どちらでも間違いではありませんが、金額が大きい科目は分けて示したほうが、決算書を読む側に事業の状況が伝わります。
棚卸資産が貸借対照表にない会社も存在します。コンサルティング業のように、販売する物品を持たない業種では計上されません。また、期末に在庫がゼロになる受注生産型の会社でも、残高が発生しない期があります。
一方、在庫があるはずなのに計上されていない場合は処理漏れです。期末に売れ残った商品は、当期の費用ではなく棚卸資産として計上します。この振替を行わず、仕入れた商品をすべて費用として処理すると、売上原価が実際より多くなり、利益が少なく表示されてしまいます。ここは、税務調査で指摘されやすい点なので、決算前に現物の有無を確かめましょう。
棚卸資産の求め方は、数量×単価です。数量は実地棚卸で数えた実際の在庫数、単価は評価方法で決めた金額を使います。
期末の棚卸資産が決まると、売上原価が確定します。計算式は、以下になります。
期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高=売上原価
期末の棚卸資産を多く計上すれば売上原価が減って利益が増え、少なく計上すれば利益が減ります。棚卸資産の評価は売上原価に直結し、利益や税額に大きな影響を与えるため、税務調査でも重点的に確認される項目です。
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どこまでを棚卸資産に含めるかは、法人税法が政令で区分を定めています。判定を誤ると期末の在庫金額がずれ、売上原価と利益まで動いてしまいます。該当する資産を科目ごとに確認し、手元にない在庫の扱いや取得価額に含める費用まで見ておきましょう。
棚卸資産に含まれる代表例は、商品と製品です。商品は仕入れてそのまま販売するもの、製品は自社で製造した完成品を指します。製造の過程で生じる副産物や作業くずも、売却できる価値があれば棚卸資産に含めます。
半製品は、製造が一定の段階まで進み、そのままでも販売できる状態のものです。仕掛品との違いは、単独で売れるかどうかにあります。自動車メーカーが外販するエンジンユニットなどが半製品の典型例です。
仕掛品は、製造の途中にあって、まだ販売できる状態にないものを指します。建設業では、完成前の工事である半成工事も棚卸資産に含まれます。金額は、投入した材料費、労務費、経費を積み上げて算定します。原価計算の精度がそのまま仕掛品の金額に表れるため、製造業では慎重な集計が必要です。
原材料は、製品の主な部分をつくる主要原材料と、補助的に使う補助原材料に分かれます。塗料や接着剤、ねじのような部材も、期末に残っていれば棚卸資産です。金額が小さいからと集計を省くと、毎期の在庫金額が正確に把握できなくなります。
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棚卸資産と貯蔵品の関係で迷う場面もあります。貯蔵品は「消耗品で貯蔵中のもの」を指し、法人税法上は棚卸資産の範囲に含まれます。該当するのは、未使用の切手や収入印紙、包装資材、事務用品、燃料などです。
購入時にいったん費用処理し、期末に未使用分を貯蔵品へ振り替える処理が一般的です。金額が小さく毎期おおむね一定であれば、継続適用を条件に費用処理のままとする扱いも認められています。ただし、期末にまとまった金額の切手や印紙を保有している場合は、振替を省略できません。
自社の倉庫にない在庫も、棚卸資産の範囲に入る場合があります。代表的なものが未着品です。商品を仕入れたものの、まだ到着していない状態を指し、船積みや所有権の移転が済んでいれば期末の在庫へ含めます。輸入取引が多い会社では、期末時点で洋上にある商品の扱いが、毎期確認すべきポイントです。
外注先や倉庫会社へ預けている在庫も、自社の資産として計上します。手元にないため実地棚卸で数え漏れやすく、預け先から残高証明を取り寄せて突き合わせる作業が欠かせません。現場では、社外倉庫へ預けている在庫の確認を失念したまま決算を締めそうになり、監査段階で指摘を受けて急遽証明書を取り寄せるケースがあります。逆に、他社から預かっている在庫は自社の棚卸資産ではないため、混ぜて数えないよう保管場所を分けておきましょう。
棚卸資産の勘定科目一覧としては、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品、未着品が代表的です。
使用する勘定科目は業種によって異なり、小売業では商品や貯蔵品が中心となる一方、製造業では製品、半製品、仕掛品、原材料など、複数の勘定科目を用いるのが一般的です。建設業では未成工事支出金、不動産業では販売用不動産といった科目を使用します。
棚卸資産の金額は、購入代価だけではありません。引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税といった付随費用(仕入諸掛)を加えた金額が取得価額になります。輸入品では関税と国際輸送費の扱いを忘れがちなので注意しましょう。
自社で製造した棚卸資産は、材料費・労務費・経費の合計が取得価額です。なお、購入代価のおおむね3%以内の少額な付随費用や、保管費、販売所への移管費用などは、取得価額に含めない扱いも認められています。社内で線引きを決め、毎期同じ判断で処理します。
なお、消費税の扱いは採用している経理方式によって変わります。税抜経理方式であれば消費税額を除いた金額が取得価額となり、税込経理方式であれば消費税額を含めた金額が取得価額です。免税事業者は税込経理方式によります。同じ在庫でも計上額が変わるため、期末棚卸高の集計時に単価が税抜・税込のどちらで拾われているかを必ず確認しましょう。
期末に残った在庫の単価をどう決めるかで、決算数値は変わります。評価基準と評価方法は別の言葉であり、まずその関係から押さえる必要があります。
棚卸資産の評価基準と評価方法は、混同されやすい言葉です。評価基準は、原価のみで評価するか、時価の下落も反映するかを定める基準で、原価基準と低価基準に分かれます。評価方法は、単価をどう計算するかの手順を指し、個別法や先入先出法などがあります。
税務では、まず「原価法」と「低価法」のどちらを採用するかを決めなければなりません。原価法を選ぶ場合は、その中から個別法や先入先出法など6種類の評価方法を選択します。まず基準を決め、その中で方法を選ぶ順序だと理解しておくと、届出書の記入でも迷わないでしょう。
棚卸資産の評価方法として、原価法には次の6種類があります。
評価方法 | 計算の考え方 | 向く業種・品目 | 注意点 |
|---|---|---|---|
個別法 | 仕入れた1点ごとに単価を記録し、実際に残っている品物の単価で評価する | 宝石、美術品、不動産など個別性の高い品目 | 品目数が多いと管理が煩雑 |
先入先出法 | 先に仕入れたものから先に払い出したと仮定し、期末在庫は新しい仕入分から成ると考える | 物流の実態に近い一般的な商品 | 物価上昇局面では期末在庫が高めに評価される |
総平均法 | 期首在庫と当期仕入の合計金額を合計数量で割り、平均単価を出す | 単価変動が小さく品目数の多い品目 | 期末まで単価が確定しない |
移動平均法 | 仕入れのつど、平均単価を計算し直す | 期中も在庫金額を把握したい会社 | 記帳の手間がかかる |
売価還元法 | 期末在庫の売価合計に原価率を掛けて評価する | 品目数が膨大な小売業 | 原価率の設定根拠を残す必要がある |
最終仕入原価法 | 期末にいちばん近い時期に仕入れた単価で、期末在庫全体を評価する | 事務負担を抑えたい中小企業 | 会計基準上は原則的な方法ではない(下記参照) |
最終仕入原価法は税務上の法定評価方法として広く使われていますが、企業会計基準では正式な評価方法とされておらず、期間損益計算上著しい弊害がない場合などに例外的に容認される方法にとどまります。
なお、かつて選択できた後入先出法は平成21年度税制改正により廃止され、平成22年4月1日以後に開始する事業年度からは採用できません。会計上も、企業会計基準第9号の改正により選択肢から外されています。古い解説書や検索結果には残っているため、注意しましょう。
低価法は、取得原価と期末時点の正味売却価額を比較し、低いほうの金額で評価する方法です。在庫の価値が下落しているにもかかわらず原価のまま計上すると、資産額が実態より大きく表示されるおそれがあります。そのため、価値の下落を期末の帳簿価額に反映します。
会計上のルールを定めているのが、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」です。通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得原価で計上し、期末の正味売却価額が取得原価より下がっている場合は、正味売却価額まで帳簿価額を切り下げます。正味売却価額とは、売価から見積追加製造原価と見積販売直接経費を差し引いた金額です。
切り下げた翌期の処理には洗替え法と切放し法があり、いずれかを選んで継続適用します。なお、短期的な価格変動による利益を得る目的で保有する棚卸資産(トレーディング目的)は、市場価格に基づく価額で評価し、その差額を当期の損益に計上します。
実務でつまずきやすいのが、会計と税務のズレです。会計基準に従って収益性の低下による簿価切下げを行っても、法人税法上は当然に損金算入されるわけではありません。
税務上、原価法を採用している会社が評価損を損金算入できるのは、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、法人税法施行令が定める特別の事実がある場合などに限られます。単に「時価が下がった」「売行きが悪い」という理由では認められず、会計上だけ損失を計上する有税処理となり、申告書で加算調整することになります。
一方、あらかじめ低価法の届出をしている会社であれば、期末時価が原価を下回る部分を損金に算入できます。会計上の切下げを毎期行う見込みがあるなら、低価法の届出を検討する価値があります。
棚卸資産の評価に関する会計基準は、金融商品取引法の適用を受ける会社や会社法上の大会社が主な対象です。中小企業では、「中小企業の会計に関する指針」に沿って会計処理を行うことができます。
指針では、棚卸資産は取得原価で計上し、時価が取得原価より著しく下落して回復の見込みがない場合に評価損を計上する扱いです。品質の低下や陳腐化が起きた在庫も同様に扱います。ただし、金融機関へ提出する決算書の信頼性を高めたい会社や、将来の上場を視野に入れる会社では、会計基準に沿った処理を先取りする例もあります。
評価方法は、品目の性質と管理の手間を見比べて選びます。個別性が強く単価の高い品目は個別法、値動きの大きい品目は先入先出法、品目数が多い小売業は売価還元法、といった使い分けです。事務負担を抑えたい中小企業では、最終仕入原価法が選ばれる例が多くなっています。
法人税では、事業の種類ごと、かつ棚卸資産の区分ごとに評価方法を選べます。商品は最終仕入原価法、製品は総平均法といった使い分けも可能です。ただし、いったん選んだら継続して適用しなければなりません。
使いたい評価方法があっても、税務署へ届け出ていなければ適用されません。届出の期限は法人と個人で異なり、途中で変えるには承認も必要です。
法人が評価方法を選ぶには、「棚卸資産の評価方法の届出書」を所轄税務署へ提出します。提出期限は、設立第1期の確定申告書の提出期限までです。新たな事業を開始した場合や、事業の種類を変更した場合も、その事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出ます。
届出書の記載例としては、「事業の種類」欄に卸売業や製造業といった事業の種類を書き、「資産の区分」欄に商品、製品、仕掛品、原材料などを記入し、それぞれへ評価方法を記載する形です。様式と記載要領は国税庁のサイトで公開されています。
棚卸資産の評価方法を届出しなかった場合の取り扱いは、実務でよく聞かれる点です。届出がない場合、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」が自動的に適用されます。
届出をしなくても申告はできますが、意図した評価方法を使えません。期末近くに高い単価で少量だけ仕入れると、在庫全体がその単価で評価され、利益が膨らむ場面もあります。低価法を使いたい場合も届出が必要なため、希望する方法がある場合は期限内に提出しておきましょう。
なお、棚卸資産評価方法の原則は継続適用です。届出をしないまま独自の計算を続け、法定評価方法とも届出内容とも違う数字で申告していると、税務調査で否認され、修正申告を求められる場面もあります。自社が今、どの方法で計算しているかを、届出書の控えと突き合わせて確認することをおすすめします。
個人事業主も、棚卸資産の評価方法を選定・変更する際には、所定の届出が必要です。開業した年分の確定申告期限、つまり翌年3月15日までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出します。届出をしない場合の法定評価方法は、法人と同じく最終仕入原価法です。
個人事業主でも、事前に届出を行うことで、自社の状況に合った評価方法を選択できます。
評価方法を変えるには、「棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けます。提出期限は、変更しようとする事業年度開始の日の前日までです。期首を過ぎてからでは、その期の変更が認められません。
ただし、申請すれば承認されるわけではありません。承認には、変更に相当の理由があるかどうかが判断されます。現在の方法を採用してから3年を経過していない場合や、所得計算が適正に行われないと見込まれる場合には、承認されないことがあります。申請書には現状の評価方法と変更しようとする評価方法の理由を記載するため、事務負担の軽減や実態への適合といった変更理由を整理しておきましょう。

棚卸資産の会計処理は、期中と期末で考え方が変わります。仕入・売上・繰越商品に分けて処理する三分法では、期中に原価を動かさず、期末の決算整理でまとめて売上原価を確定させる会計処理です。
棚卸資産の仕入の仕訳は、三分法であれば仕入勘定で処理します。商品を100万円で掛け仕入れした場合は、借方に仕入100万円、貸方に買掛金100万円と記帳します。引取運賃を現金で3万円支払ったときは、借方の仕入へ3万円を足す処理です。
商品を仕入れた時点で商品勘定に計上する分記法や、商品の販売の都度、売上と売上原価の両方に記帳する売上原価対立法を採る会社では、仕入時点で商品勘定に計上します。
三分法では、販売時に売上を計上するだけで、原価は動かしません。商品を150万円で掛け販売したなら、借方に売掛金150万円、貸方に売上150万円と記帳します。原価は期末の決算整理でまとめて計算する会計処理です。
売上原価対立法では、売上と売上原価の両方に記帳するため、在庫金額を常に把握できる半面、仕訳数が増えます。
棚卸資産の仕訳で質問が多いのが、期末の決算整理仕訳です。簿記3級で習う「しいくりくりしい」の語呂で覚えられている処理になります。
期首商品棚卸高が80万円、期末商品棚卸高が120万円なら、期末の仕訳は次のとおりです。
仕入 800,000 / 繰越商品 800,000 繰越商品 1,200,000 / 仕入 1,200,000
この2本を入れると、仕入勘定の残高が売上原価と一致します。棚卸の仕訳を期末に入れ忘れれば、売上原価も利益も誤った数字になってしまいます。
期末商品棚卸高がわからないという相談も少なくありません。基本は実地棚卸で数えた数量に、選んだ評価方法の単価を掛けて求めます。
実地棚卸が間に合わない場合は、帳簿棚卸で仮の金額を出し、後日実地の結果と突き合わせます。
なお、「売上高に原価率を掛けて期末在庫を逆算する」方法を検討する会社もありますが、これは概算値にすぎず、税務上そのまま認められるものではありません。売価還元法は、あくまで期末在庫の売価合計に原価率を掛ける方法であり、売上高からの逆算とは別物です。売価還元法を用いるには、あらかじめ税務署へ届出をしておく必要があります。
帳簿数量と実地数量が合わないときは、棚卸減耗損を計上します。金額は、(帳簿数量-実地数量)×原価です。帳簿1,000個・実地900個・原価200円なら、100個×200円=20,000円になります。
棚卸減耗損 20,000 / 繰越商品 20,000
さらに、正味売却価額が原価を下回っている場合は商品評価損を計上します。金額は、実地数量×(原価-正味売却価額)です。900個・原価200円・正味売却価額190円なら、900個×10円=9,000円と計算します。
商品評価損 9,000 / 繰越商品 9,000
損益計算書上の表示区分は、両者で考え方が異なります。
なお、正味売却価額が原価を上回っていても評価益は計上しません。また、前述のとおり、会計上計上した評価損が税務上そのまま損金となるとは限らない点にも留意してください。

制度を理解していても、日々の管理が崩れていれば決算の数字は合いません。決算前に慌てないための3点を解説します。
帳簿だけで在庫を追っていると、破損や紛失、記帳漏れによるズレに気づけません。年1回の期末棚卸に加え、動きの多い品目は月次や四半期で数える運用が適しています。在庫を数える人と記録する人を分け、担当者を毎回入れ替えれば、精度が上がります。
棚卸の前後で在庫が動くと、締めのタイミングがずれて差異が生じます。棚卸日の入出庫は原則として止め、やむを得ず動かした分は別の伝票で管理すると良いでしょう。数え終えた棚には印を付け、二重カウントと数え漏れを防ぎます。差異が出た品目は、数え間違いなのか、記帳漏れや持ち出しなのかを切り分け、記録に残しておくと翌期の改善につながります。
【実務Tips】判断基準は一覧表にして残す
勘定科目一覧をエクセルで作り、科目ごとに該当する品目と評価方法、担当部署を記録しておくと、担当者が代わっても判断基準を統一できます。決算のたびに同じ質問を繰り返す手間も減ります。
関連記事:経理の業務フローとマニュアルの作り方【テンプレート付き】
実地棚卸で作成した棚卸表は、帳簿書類として原則7年間の保存が求められます。欠損金の繰越控除を受ける事業年度では10年間です。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法の要件に合わせます。
棚卸資産は、税務調査でよく確認される項目です。期末直前の仕入計上、預け在庫や未着品の計上漏れ、評価損の根拠などが見られます。届け出た評価方法と実際の計算が一致しているかも確認されます。
棚卸表、仕入の請求書、評価方法の届出控えをひとまとまりで保管しておけば、調査時の説明が短く済みます。差異が生じた品目は、原因と対応をメモに残しておきましょう。
実務でよくある疑問をまとめました。制度は改正されることがあるため、実際の判断では最新の公表資料もあわせて確認してください。
法人は設立第1期の確定申告書の提出期限まで、個人事業主は開業した年分の確定申告期限までです。新しい種類の事業を始めた場合も、その事業年度または年分の申告期限までに届け出ます。期限を過ぎると、その期間は法定評価方法での申告になります。
最終仕入原価法による原価法です。届出をしない会社と、届け出た方法によらずに計算していた会社には、この方法が適用されます。期末近くの仕入単価に在庫全体が引きずられるため、単価の変動が大きい業種では、意図した方法を届け出ておいたほうが数字は安定します。
使えません。平成21年度税制改正により廃止され、平成22年4月1日以後に開始する事業年度からは選択できなくなりました。会計上も同様に認められていません。
企業会計基準第9号は、平成20年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。その後、平成31年3月に改正が行われ、改正後の基準は令和2年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用されています。対象は金融商品取引法の適用会社や会社法上の大会社が中心で、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」に沿った処理で差し支えありません。適用指針とあわせて、企業会計基準委員会が公表している最新版を確認しておくことをおすすめします。
棚卸資産とは、販売や製造のために保有する在庫を会計上の資産として捉えたもので、貸借対照表では流動資産に計上します。範囲は商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品などで、法人税法の区分に沿って判定します。
評価方法は原価法6種類と低価法があり、届出をしなければ最終仕入原価法が適用されます。変更するには、前事業年度の末日までに承認申請が必要です。仕訳は期中の仕入・販売と、期末の決算整理仕訳が中心で、棚卸減耗損と商品評価損の扱い、さらに会計と税務のズレまで押さえておけば決算が滞りません。
制度の詳細は改正されることがあるため、国税庁の公表資料の最新版を確認したうえで進めましょう。