売上原価とは、その期に売れた商品・製品にかかった原価のことです。本記事では売上原価の意味、製造原価との違い、計算方法(期首棚卸+当期仕入−期末棚卸)、勘定科目と仕訳(三分法・売上原価対立法)、売上原価率までを具体例つきでわかりやすく解説します。

売上原価とは、その期に売れた商品・製品にかかった原価のことです。本記事では売上原価の意味、製造原価との違い、計算方法(期首棚卸+当期仕入−期末棚卸)、勘定科目と仕訳(三分法・売上原価対立法)、売上原価率までを具体例つきでわかりやすく解説します。
損益計算書を見ると、売上高のすぐ下に「売上原価」という項目があります。利益を正しく把握するうえで欠かせない数字ですが、「製造原価と何が違うの?」「どうやって計算するの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、売上原価とは何かという基本から、製造原価・原価との違い、計算方法(求め方)、勘定科目と仕訳、そして売上原価率まで、具体例と仕訳を交えてわかりやすく解説します。
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売上原価とは、その期に売れた商品・製品を仕入れる(または製造する)のにかかった原価のことです。損益計算書(PL)で、売上高から最初に差し引かれる費用であり、次の式で粗利益(売上総利益)が求められます。
売上総利益(粗利益)= 売上高 − 売上原価
ここで最も重要なのは、売上原価は「売れた分だけ」を計上するという点です。当期に仕入れ・製造した商品がすべて費用になるのではなく、実際に販売できた分だけが売上原価になります。売れ残った在庫は「棚卸資産」として貸借対照表(BS)に計上され、次期へ繰り越されます。
「原価」まわりの言葉は混同しやすいので、ここで整理しておきましょう。
用語 | 意味 | 計上の考え方 |
|---|---|---|
原価 | 製品・サービスを作る(提供する)ためにかかった費用の総称 | ― |
製造原価 | 当期に製造した製品にかかった原価(材料費+労務費+経費) | 作った分すべて |
売上原価 | 当期に売れた製品・商品にかかった原価 | 売れた分だけ |
ポイントは、製造原価は「作った分」、売上原価は「売れた分」という違いです。
100個作っても20個しか売れなければ、製造原価は100個分でも、売上原価は20個分だけになります。
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売上原価に含まれる範囲は、業種によって異なります。
なお、「売上原価に人件費は含まれるか」という点はよく迷うところです。製造やサービス提供に直接関わる人件費(労務費)は売上原価に含まれますが、販売部門や管理部門の人件費は「販売費及び一般管理費(販管費)」に区分され、売上原価には含まれません。
売上原価とよく混同されるのが「販管費(販売費及び一般管理費)」です。両者の違いは、その費用が「商品・サービスそのもの」に直接かかったかどうかにあります。
売上原価 | 販管費 | |
|---|---|---|
費用の性質 | 商品・サービスの仕入・製造に直接かかった費用 | 販売・管理など間接的な費用 |
具体例 | 仕入原価、材料費、製造の直接人件費 | 広告宣伝費、営業・管理部門の人件費、事務所家賃、水道光熱費 |
損益計算書での位置 | 売上高の直下(差し引いて売上総利益) | 売上総利益の下(差し引いて営業利益) |
同じ「人件費」でも、製造現場の人件費は売上原価、営業・事務の人件費は販管費になります。この区分があいまいだと、粗利率や原価率を正しく算出できず、価格戦略や経営分析を誤るおそれがあります。

売上原価は、次の式で求めます。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 − 期末商品棚卸高
考え方はシンプルで、「期首にあった在庫」+「期中に仕入れた分」から「期末に売れ残った在庫」を差し引くと、「実際に売れた分の原価」が残る、というものです。製造業の場合は「当期仕入高」が「当期製品製造原価」に置き換わります。
次の数値で売上原価を計算してみましょう。
前提
計算
売上原価 = 120,000 + 950,000 − 70,000 = 1,000,000円
もし当期の売上高が1,500,000円だった場合、粗利益は次のとおりです。
売上総利益 = 1,500,000 − 1,000,000 = 500,000円
このように、期末に残った在庫(70,000円)は費用にならず、翌期の期首棚卸高として繰り越されます。在庫分は当期の費用にならないので、期末の棚卸(在庫の数量・金額の確定)が正確な売上原価計算のカギになります。
売上原価の計算では、期末に残った在庫をいくらで評価するかによって金額が変わります。仕入価格は時期によって変動するため、どの単価で在庫を評価するかを決めるルール(棚卸資産の評価方法)が必要です。代表的な方法は次のとおりです。
評価方法 | 考え方 |
|---|---|
先入先出法 | 先に仕入れた商品から先に売れたとみなす。期末在庫は新しい仕入分で評価 |
総平均法 | 一定期間の仕入総額を総数量で割った平均単価で評価 |
移動平均法 | 仕入のたびに平均単価を計算し直し、その時点の平均単価で評価 |
最終仕入原価法 | 期末に最も近い時期の仕入単価で一括評価。計算が簡単で中小企業で多い(法人税法上の原則法が最終仕入原価法のため) |
どの方法を採用するかによって期末在庫(=売上原価)の金額が変わるため、自社に合った方法を選び、継続して適用することが原則です。また多くの中小企業では税務上の評価方法で評価を行っており、税務上、最終仕入原価以外の評価方法以外を行う場合届出が必要です。届出を行っていない場合、最終仕入原価法で評価することになります。
参考:法人税法施行令 第31条 棚卸資産の法定評価方法
国税庁:棚卸資産の評価方法の届出
商品売買の記帳方法にはいくつかあり、代表的なのが「三分法」と「売上原価対立法」です。売上原価をいつ・どの勘定で認識するかが異なります。
三分法は、「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定を使う、最も一般的な方法です。仕入れたときは「仕入」勘定で処理し、期末に決算整理仕訳で売上原価を計算します。
期末の決算整理仕訳(例)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
仕入 | 100,000 | 繰越商品 | 100,000 |
繰越商品 | 150,000 | 仕入 | 150,000 |
上段で期首在庫を仕入に振り替え、下段で期末在庫を仕入から差し引くことで、「仕入」勘定の残高が売上原価(450,000円)になります。期中は売上原価を意識せず、決算でまとめて計算するのが特徴です。
売上原価対立法は、商品を販売するたびに、その都度「売上原価」勘定へ振り替える方法です。「商品」「売上」「売上原価」の勘定を使います。
販売時の仕訳(例:原価8,000円の商品を12,000円で販売)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
現金(売掛金) | 12,000 | 売上 | 12,000 |
売上原価 | 8,000 | 商品 | 8,000 |
販売のたびに売上原価が記録されるため、期中でもリアルタイムに売上総利益を把握できるのがメリットです。在庫管理システムと相性がよく、実務でも採用が増えています。三分法との違いは「売上原価を計上するタイミング(決算時か、販売のつどか)」にあります。
売上原価率とは、売上高に占める売上原価の割合を示す指標です。
売上原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100
先ほどの例(売上原価1,000,000円・売上高1,500,000円)なら、売上原価率は 1,000,000 ÷ 1,500,000 × 100 = 約66.7% です。売上原価率が低いほど、売上に対して原価が抑えられており、収益性が高いことを意味します。原価率の詳しい見方や業種別の目安は、次の記事で解説しています。
関連記事:原価率とは?計算方法・出し方と業種別の目安をわかりやすく解説
売上原価を正確に算出するには、日々の仕入記帳と、期末の棚卸(在庫確定)の精度が欠かせません。在庫の計上漏れや評価ミスがあると、売上原価がずれ、利益も不正確になります。
在庫や仕入の管理が煩雑になってきた場合は、在庫・会計システムの導入や、経理業務のアウトソーシングによって、記帳・棚卸・決算のプロセスを効率化・標準化する方法があります。
関連記事:経理アウトソーシングの費用・相場は?自社雇用との比較と見積もりの注意点を解説
売上原価は利益に直結する重要な数字です。計算式と仕訳を理解し、正確な棚卸とあわせて管理していきましょう。