経理担当が退職したらどうする?今すぐ取るべき対応と再発防止策を徹底解説

経理担当が退職したらどうする?今すぐ取るべき対応と再発防止策を徹底解説

経理更新日:2026-05-22

経理担当者が突然退職すると、支払い・請求・給与計算・月次決算などの業務が止まるリスクがあります。本記事では、退職直後に取るべき対応から、引き継ぎが不十分な場合の対処法、再発防止策まで実務目線で解説します。

経理担当者の退職は、単なる人員不足ではなく、会社のお金の流れを止める可能性がある重要な問題です。特に一人経理や少人数体制の場合、請求書の発行、支払い処理、給与計算、月次決算などが担当者の知識や経験に依存していることが多く、退職後に業務の全体像が見えなくなるケースもあります。まずは支払い・給与・請求など止めてはいけない業務を確認し、必要な権限・資料・スケジュールを洗い出すことが重要です。そのうえで、引き継ぎが不十分な場合の暫定対応や、再発防止のための体制づくりを進める必要があります。

経理担当者が退職すると会社にどんな影響がある?

経理担当者の退職は、単に「また採用すればいい」というだけでは済みません。会社全体の運営に直結する深刻な影響を引き起こす可能性があります。まずはそのリスクを正確に把握しておくことが大事です。

業務が止まる・属人化によるリスク

経理業務が特定の担当者だけに集中しており、その人しか業務を把握していない「属人化」の状態では、その人が抜けた途端に「何がどこにあるのか分からない」「どのシステムを使っていたのか分からない」という事態に陥ります。

特に中小企業では、1人の担当者が記帳・請求・支払・税務周りをまとめて担っているケースが多く、これらの業務は毎日、毎月発生し止まってはいけない業務であり、退職による影響は想像以上に大きくなります。なお中小企業では経理担当者が給与計算・勤怠管理といった労務まで兼務しているケースも多いですが、その場合、さらに影響は広範囲に及びます。

取引先・社外への信頼損失につながる恐れ

退職による影響で、支払いの遅延や請求書の発行ミスが続けば、取引先からの信頼を失いかねません。「あの会社、最近お金の動きがおかしい」という評判が立ってしまうと、信用回復には長い時間が必要です。経理業務の停滞は、対外的な企業イメージに直接影響します。

残されたスタッフの負担増・連鎖退職のリスク

退職者が出ると、残ったスタッフがその分の業務を肩代わりすることになります。月末・月初の繁忙期には残業や休日出勤が増え、また業務が属人化していた場合、その紐解きにかかるストレスにより、モチベーションの低下を招きます。さらに、もともと業務量の多さが退職理由だった場合、残ったメンバーも更なる業務過多になり、同じ理由で辞めていく連鎖退職が起きうります。

経理担当が退職したら、まず何をすべきか?(ステップ別の緊急対応)

退職の申し出があった、あるいはすでに退職してしまった。そんな緊急事態に直面したとき、何から手をつけるべきかを順を追って解説します。

STEP1:優先度の高い業務を洗い出す(支払い・請求書・給与計算)

まず最初にすべきことは、「いつ、何が、止まると困るか」を把握することです。

  • 直近の支払期日(仕入先・家賃・リース料など)はいつか
  • 未発行の請求書はないか
  • 給与計算の締め日・支払日はいつか
  • 税務申告の期限が迫っていないか

これらを時系列で書き出すだけで、「今週中にやるべきこと」「来月までに対応すること」の優先順位が見えてきます。焦って全部を一度にやろうとせず、まず締め切りの近い業務から手をつけましょう。

STEP2:書類・データ・権限を緊急確認する

経理担当者しか知らない情報が放置されると、業務の復旧が大幅に遅れます。退職前(もしくは退職直後)に、以下を必ず確認・引き継いでもらいましょう。

確認すべき主な項目:

  • ネットバンキングのID・パスワード・承認者設定・ワンタイムパスワード端末
  • 会計ソフトの管理者権限・ログイン情報
  • 請求書発行システム・電子契約サービスのアカウント
  • 債権(売掛金)・債務(買掛金)の管理状況と未処理件数
  • 給与計算ソフトのデータ・設定内容
  • 税理士・社会保険労務士など外部専門家の連絡先とやり取り履歴
  • 月次決算の締めスケジュールと未処理の領収書・経費精算

特にネットバンキングの承認権限とパスワードは、担当者の退職後すぐに変更することを強く推奨します。セキュリティ上のリスクを防ぐためにも、引き継ぎと同時に対処してください。

STEP3:税理士・専門家へ早めに相談する

「領収書が散乱している」「帳簿が途中で止まっている」という状態でも、専門家に相談することで対処できます。ただし相談先は課題によって分けることが重要です。

  • 税理士:税務上の処理、決算・申告対応
  • 社会保険労務士:給与計算・労務相談・社会保険手続き
  • 経理代行会社:業務体制・日常経理の運用全般(支払処理・請求書発行・月次業務)

一人で抱え込まず、早い段階でそれぞれのプロの力を借りることが最善策です。

引き継ぎが不十分な場合の対処法

「退職まで1〜2週間しかなかった」「引き継ぎ書が存在しない」。こうした状況は決して珍しくありません。実際、経理担当者の退職が社内に公表されるのは退職の1か月前が多く、引き継ぎに使える実質的な時間はさらに短くなりがちです。

引き継ぎ期間が短いときに最低限おさえるべきポイント

短い期間での引き継ぎでは、「全部を教えてもらおう」とするのではなく、業務を止めないための最低限の情報を優先的に確保することが重要です。

具体的には以下の3点を最優先してください。

  1. 入出金管理:いつ・どこに・いくら支払うかのリスト
  2. 請求書の発行ルール:取引先ごとの締め日・請求方法
  3. 給与計算の手順:使用ソフト・勤怠データの取得方法・振込手順

この3つが回せれば、少なくとも「業務が完全に止まる」という最悪の事態は避けられます。

引き継ぎ書がない場合、帳票・資料の整理から始める方法

引き継ぎ書が存在しない場合は、過去の帳票・振込明細・請求書などを時系列に並べるところから始めましょう。「何があるかを把握する」だけでも、次の行動が見えてきます。

  • 過去3か月分の通帳・明細を並べて定期的な支払いを抽出する
  • フォルダ・棚の中にある書類を「日付順」に整理する
  • 会計ソフトの仕訳データから取引先・金額を一覧化する

この作業を行いながら、並行して税理士や経理代行サービスへの相談を進めることをおすすめします。

後任の確保はどうする?選択肢を比較検討する

緊急対応が一段落したら、次は経理業務を安定的に継続するための体制を考えましょう。大きく分けて「正社員・パートの採用」「派遣・人材紹介の活用」「経理アウトソーシング」の3つの選択肢があります。

採用と外注のコスト比較については、「経理アウトソーシングの費用・相場は?自社雇用との比較と見積もりの注意点を解説」も参考にしてください。

正社員・パートを新規採用する場合のメリット・デメリット

メリット:

  • 自社の業務に深く関わり、知識・経験を蓄積してもらえる
  • 長期的に安定した経理体制を構築できる

デメリット:

  • 求人から採用まで数か月かかるケースが多い
  • 採用コスト(求人広告費・面接工数)が発生する
  • 採用後に即戦力かどうかが不明確

経理担当者の人材市場は慢性的な人手不足にあり、「すぐに採用できる」と思っていると空白期間が予想以上に長引くリスクがあります。採用活動は早急に開始しつつ、それと並行して別の補完策も検討することが賢明です。

派遣社員・人材紹介を活用する場合

派遣スタッフを活用すれば、正社員採用よりも比較的短期間で人材を確保できます。即戦力の経理経験者が派遣されるケースも多く、急場をしのぐ手段として有効です。

ただし、同一事業所での派遣受け入れは原則3年が上限となっており、長期的な解決策にはなりにくい点に注意が必要です。また給与計算など機密性の高い業務を任せることへの慎重な検討も求められます。

経理アウトソーシング(代行)を活用する場合

経理業務を外部の専門会社に委託する「経理アウトソーシング」は、経理人材の採用難や業務の属人化を背景に、中小企業でも選択肢の一つとして検討される機会が増えています。

主なメリット:

  • 採用活動なしに即日〜数日で対応してもらえる
  • 社内の特定担当者に依存するリスクを低減できる
  • 経験豊富なプロが対応するため、品質が安定する
  • 採用・教育コストが不要になりトータルコストを削減できる

主なデメリット:

  • 自社独自のルールや業務フローの共有に時間がかかる場合がある
  • 機密情報を社外に出すことへのセキュリティ上の配慮が必要

経理アウトソーシングに向いている企業の特徴

以下に当てはまる企業には、特に経理アウトソーシングが有効です。

  • 経理担当者が1〜2名しかおらず、属人化が進んでいる
  • 採用しても定着せず、退職が繰り返されている
  • 経理業務に割くリソースを本業に集中させたい
  • 今すぐ経理の空白を埋めなければならない

委託業者を選ぶ際の確認ポイント

経理アウトソーシング業者を選ぶ際は、以下の点を必ず確認しましょう。

  • 対応できる業務範囲(記帳代行のみか、支払処理・請求書発行・月次業務まで含むか)
  • 担当者の経験年数・資格の有無
  • 税理士との連携範囲・決算申告に必要な資料整理まで対応できるか
  • 複数名体制で担当者変更リスクを抑えられるか
  • 業務フローの整理やマニュアル化まで支援してくれるか
  • お試し期間(1か月単位など)の有無
  • セキュリティ体制・守秘義務契約の内容

サービスの詳しい比較は関連記事:「経理代行サービス・経理アウトソーシングおすすめ比較15選」をご参照ください。

経理担当者が退職しやすい背景

再発防止策を考えるうえで、なぜ経理担当者が退職しやすいのかを理解しておくことが重要です。

業務過多・繁忙期の過重労働

経理業務は月末・月初の締め作業、四半期ごとの試算表作成、年度末の決算対応など、特定の時期に業務が集中する構造です。その時期の長時間残業が常態化している職場では、担当者の体力・精神力が限界を超え、退職を決意するケースが多く見られます。

人間関係・評価への不満

経理部門は少人数で構成されることが多く、人間関係が固定化しやすい特徴があります。合わない上司や同僚がいても異動が起きにくく、ストレスが蓄積しやすい環境です。また、営業などのフロント部門と比べて成果が見えにくいため、給与や評価が低く設定されがちな点も不満の温床となります。

スキルアップ・キャリアチェンジへの希望

日々の仕訳入力や支払処理といったルーティン業務に慣れると、「このままでいいのか」という成長への不安が生まれます。より高度な財務分析や管理会計、税務対応にチャレンジしたい・資格を活かして転職したいという前向きな理由での退職も少なくありません。

法改正による業務増加

2023年のインボイス制度開始や、電子帳簿保存法における電子取引データ保存への本格対応など、近年の法改正により経理業務は複雑化しています。「今まで通りのやり方が通用しなくなった」という不安感や、増大する業務量に耐えきれず退職を選ぶケースが増えています。

経理担当者の退職を未然に防ぐための対策

退職によるダメージを最小化するためには、「起きてから対処する」のではなく、「起きる前に備える」体制を整えることが最も重要です。

業務のマニュアル化・見える化を進める

「誰もが見れば理解できる」状態を作ることが、属人化解消の第一歩です。月次業務・年次業務の手順書、使用ツールの操作マニュアルを整備しておくことで、万が一の退職時にもスムーズに引き継ぎが進みます。

マニュアルは完璧を目指すより、「基本業務を理解した人が参照できるレベル」を目標にするのが現実的です。

複数人体制・ローテーションで属人化を解消する

経理業務は一人に集中させず、総務・人事などバックオフィス全体で相互にカバーできる体制を目指しましょう。定期的な業務ローテーションで「自分しか分からない業務」をなくすことが、退職リスクへの最大の備えになります。

ただし、専門性の高い経理業務を兼務させる場合は、担当者の適性や知識レベルを見極めることが重要です。無理な兼務はかえって負担を増やし、退職を招くリスクもあります。

クラウド会計ツールの導入で業務負荷を下げる

freee・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインなどのクラウド型会計ソフトを導入することで、仕訳の自動化・ペーパーレス化・リモート対応が可能になります。担当者一人への業務集中を防ぎ、業務効率の改善によって「経理が忙しすぎて辞めてしまう」事態を防ぎやすくなります。

また、クラウドツールは複数人でのアクセスが容易なため、情報共有・引き継ぎのしやすさにも大きく貢献します。

評価制度・待遇の見直しで定着率を高める

経理担当者は、自社の財務状況を最もよく把握している存在です。それにもかかわらず、報酬や評価が見合っていないと感じれば、より条件の良い職場への転職を考えるのは自然なことです。

定期的な1on1面談で業務上の悩みを早期にキャッチし、適切な評価・昇給・キャリアパスの提示を行うことが、優秀な経理人材の定着につながります。

アウトソーシングで担当者依存をなくす

マニュアル化や複数人体制と並行して有効なのが、経理業務そのものをアウトソーシングすることです。社内の特定担当者への依存がなくなるため、退職リスクを構造的に低減できます。

運用設計の品質や委託業者の選び方については、「提案資料だけでは分からない、経理代行の運用品質の見極め方」で詳しく解説しています。

よくある質問

Q:経理担当者が突然退職した場合、最初に何を確認すべきですか?

支払期限・請求書発行・給与計算・税務申告など、期限のある業務を最優先で確認します。あわせて会計ソフト・ネットバンキング・請求書発行システムの権限やパスワードも確認し、退職直後にネットバンキングのパスワードを変更してください。

Q:引き継ぎ書がない場合でも経理業務は復旧できますか?

可能です。過去の通帳・入出金明細・請求書・会計ソフトの仕訳データを確認し、定期的な支払や請求ルールを整理することで、最低限の業務を復旧できます。並行して税理士や経理代行会社への相談を進めることをおすすめします。

Q:後任は採用と外注のどちらがよいですか?

長期的に社内に経理機能を持ちたい場合は採用が向いています。一方、すぐに業務を止めたくない場合や属人化を解消したい場合は、経理アウトソーシングの活用も有効です。採用には数か月かかるケースが多いため、並行して経理代行への相談を進めることが現実的です。

Q:経理アウトソーシングに依頼する場合、何を準備すればよいですか?

会計ソフトのログイン情報、通帳・入出金明細、請求書、支払予定表、給与計算に関する資料、税理士・社労士とのやり取り履歴などを準備するとスムーズです。整理されていない状態でも対応できるサービスもあるため、まず相談することをおすすめします。

まとめ:経理担当退職は「経理体制を見直す好機」と捉えよう

経理担当者の退職は、短期的には大きな痛手ですが、長期的には「経理体制を抜本的に見直すチャンス」でもあります。

今回の記事のポイントを整理します。

  • 今すぐ行動すべきこと:優先業務の洗い出し→権限・書類・データの確認→専門家への相談
  • 引き継ぎが不十分でも:帳票を時系列で整理し、税理士・社労士・経理代行に課題に応じて相談する
  • 後任確保の選択肢:採用・派遣・アウトソーシングをコスト・スピード・安定性で比較する
  • 再発防止のために:マニュアル化・複数人体制・クラウドツール導入・待遇改善を進める

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この記事の監修者

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辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

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