1. 棚卸しについての疑問を徹底解説!意味は?目的は?やり方は?
棚卸しについての疑問を徹底解説!意味は?目的は?やり方は?

棚卸しについての疑問を徹底解説!意味は?目的は?やり方は?

経理 更新日:
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経理業務を行っていると「棚卸し」という言葉をよく耳にすると思います。棚卸しから想像するイメージは、決算期に倉庫に籠って1日中作業を行っている、といったところでしょうか。今回は経理実務担当者の方に向け、棚卸しとはなんなのか、棚卸しの目的、そして実際に行う作業について解説していきます。

目次

棚卸しとは

棚卸しとは、決算における正確な数字をはじき出すために、必ず行わなければならない重要な業務です。決算日における在庫の数量をかぞえ、在庫金額を算出します。棚卸しをスムーズに行うためには、日々の在庫管理がとても大切です。

棚卸しの画像

棚卸しの対象

棚卸しの対象には、商品や製品のほかにも、未使用の文房具などの事務用品や、パソコンなどの消耗品、未使用の切手や印紙などの貯蔵品も対象となります。これらは会社の資産となり「棚卸資産」として処理します

また、棚卸しの対象には、未完成の原材料、仕掛品、半製品もふくまれまます。

以下の図は、原材料が完成に至るまでの製造工程を表しています。

原材料が完成に至るまでの製造工程

原材料とは、製品のもとになる材料のことをいいます。仕入れたままの状態であり、まったく加工は行われていません。

仕掛品とは、原材料に少しでも加工が行われた状態のことをいいます。

半製品とは、完成には至らないものの、外部に販売ができる状態のものを指します。

期末棚卸高を求めるには、製造工程ごとに棚卸し高を把握する必要があります。

棚卸しの種類

棚卸しには、実地棚卸帳簿棚卸があります。

帳簿棚卸は、帳簿や在庫管理システムを使って日々管理を行う棚卸しです。

一方、実地棚卸は一般的に期末に行われますが、会社によっては、四半期ごと、半期ごとに行うところもあります。実地棚卸は、帳簿棚卸の数値が実際の現物の数値と一致しているかを確かめる作業のことです。

計算機とお金の画像

棚卸しの目的

正確な利益を把握するため

会社の事業が順調に儲かっているかどうかを知るには、正確な利益を求める必要があります。そのための重要な指標が、粗利といわれる売上総利益です。

売上総利益は、次の計算式で求められます。

売上総利益 = 売上 - 売上原価

計算式からわかるとおり、売上総利益を求めるためには、「売上」と「売上原価」の数値が必要になります。

そして、正確な売上原価の算出と、日々の在庫管理はとても密接な関係にあります。

売上原価とは?

売上原価とは、売り上げた商品に対応する商品原価のことです。

原則、商品を仕入れた際にかかる金額は、仕入れを行ったタイミングで全額を費用として計上することはできません。売り上げた商品の分だけが費用として計上することができます。つまり、売上があってはじめて、売上原価として費用計上ができるのです。

売上原価は期首・期末の在庫数と期中の仕入高から計算するのがポイントです。売上と仕入の発生のタイミングが異なることから、当期に仕入れた金額がそのまますべて売上原価になるわけではないということに注意しましょう。

売上原価を求めるためには、決算日において棚卸しを行い、残っている商品や製品などの在庫数をかぞえ、在庫金額を割り出し、売上に対応する商品の原価を把握することが必要です。棚卸しを行うことは、売上における売上原価の数字を算出するために必要です。

売上原価を求める計算式は、以下のようになります。

売上原価 = 期首棚卸高 + 仕入高 - 期末棚卸高

棚卸し業務は、期末棚卸高(=翌期の期首棚卸高)を求める作業といいかえることもできるでしょう。

✅ 棚卸高には「期首棚卸高」と「期末棚卸高」の2種類がある。
✅ 期末棚卸高は、翌期の期首棚卸高のこと。
✅ 売上総利益=売上高-売上原価(期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高)

売上原価が間違っていると決算書の利益額の誤りにも直結します。日々の在庫管理をきちん行うことが利益の正確性につながります。

このように、棚卸しは売上総利益に直結する重要な業務のため、税務調査では棚卸高が聞き取りの対象になり易いです。また、会計監査においても、正しく棚卸しが実施され期末の棚卸金額が適切かどうかが必ず確認されます。決算期だけでなく、日々の在庫管理を正しく行う事が大切です。

お金

在庫の状態を把握するため

棚卸しは、ただ単に在庫数を確認するだけでなく、在庫の状態を把握し評価する目的もあります。

壊れて商品価値が損なわれてしまい、販売することができないと判断された商品は、「損金」として計上することができます。また、毎年新作が登場するシーズン品の売れ残りや、型落ち品、一時的なトレンド商品など、今後販売することが難しいと判断された場合も、「損金」として扱われる可能性があります。

経営判断に役立てるため

棚卸高を把握するためには、日々の在庫管理が大切になるとお伝えしました。

在庫管理はただ単に数を把握するだけでなく、過剰在庫や在庫不足の状態を防止する目的もあります。適切な在庫管理が行われているかを把握するための指標として、「棚卸資産回転期間」と「棚卸資産回転率」があります。

棚卸資産回転期間とは?

在庫資産回転期間は、商品の入荷から出荷まで平均期間を示す指標です。計算式は次のようになります。

棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 ÷ 月商

例:棚卸資産が500万円で、月商が100万円

棚卸資産回転期間= 500÷100 =5

つまり、5か月分の在庫を抱えていることになります

在庫資産回転期間を調べることで、眠ってしまっている余剰仕入がないかを確認できます。回転期間が毎月大きくなるようであれば、不良在庫や売れ残りが発生していることが考えられます。

棚卸資産回転率とは?

棚卸資産回転率とは、商品がどれだけ効率よく販売できているかを計る指標です。計算式は次のようになります。

棚卸資産回転率 = 売上高(年商) ÷ 棚卸資産

例:売上高が1,500万円で、棚卸資産が500万円

棚卸資産回転率 = 1,500 ÷ 500 = 3

つまり、年3回在庫が入れ替わったということです。在庫への投資額を3回分回収できているという意味でもあります。

在庫状況を適切に管理することは、販売効率を上げ、売り上げを伸ばすためにとても重要です。早く商品を売って極力在庫を減らすことで、売上を増やし、費用として計上することがきます。このように、日々の在庫をきちんと計算することで、経営状態を把握し、今後の経営判断に役立てることができます。

買い物中の2人

実地棚卸の作業方法

実地棚卸は、原則として決算日に作業を行います。

タグ方式とリスト方式

実地棚卸しには、タグ方式リスト方式があります。

タグ方式による実地棚卸は、以下の手順で行われます。

①担当者が現物の在庫品と数量を確認し、棚札と呼ばれる伝票に記入する。
②伝票を現物に貼り付け、現物を数えていく。

全ての在庫に棚札が貼付されているため、目視での確認が容易です。カウント漏れ防止が高く、計上漏れが発生しにくいというメリットがあります。反面、作業に手間がかかり、作業時間が長くかかってしまうデメリットもあります。

一方、リスト方式による実地棚卸は、以下の手順で行われます。

①在庫管理システムやエクセルなどで作成された管理リストを準備する
②リストに記載されている数量と、実際の在庫の数量があっているか、突合作業を行う

タグ方式に比べると作業工程が少なく、短時間で作業が終わります。しかし、リストをもとに確認するため、リストにはない現物があった場合、カウント漏れが発生してしまう恐れがあります。

タグ方式とリスト方式のどちらの方法を選ぶかは、会社の判断に任せられています。

書類と電卓とペンとパソコン

棚卸表の作成

棚卸しを行った後は、「棚卸表」を作成します。棚卸し表は7年間の保存が義務づけられています。但し、欠損金が生じた事業年度においては、保存期間が9年間になります。なお、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度においては、保存期間が10年間になります。

参考:国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法

 

棚卸し表には以下の5つの記載項目を記入します。

・棚卸し実施日
・商品名
・数量
・単価
・金額(個数×単価)

これを全商品記入していきます。

商品に破損等の品質変化があった時などは、評価損を計上して損金の額に算入することができます。

シーズン品の売れ残りや、新製品が発売され、今後通常の価額では販売することができない型落ち品などの場合も、評価損の算入が可能になります。

在庫1つ1つをチェックし、算定を行った後の合計金額額が、在庫の評価金額となります。

計算機の画像

評価方法

棚卸資産の評価方法には、「原価法」と「低価法」があります。

自社がどの方法で評価するかを、事前に税務署に届け出ておく必要があります。

参考:国税庁[手続名]棚卸資産の評価方法の届出

通常、会社は「原価法」と「低価法」から、どちらか一方の評価方法を選択し、継続的にその方針で在庫評価を行っていくことになります。

原価法とは、棚卸資産の購入時の金額を元に期末の金額を評価する方法です。購入時の金額は時期や数量、仕入先によってバラバラだったりします。そこで、仕入単価を決める必要があります。仕入単価の決め方には「個別法」「先入れ先出し法」「後入れ先出し法」「移動平均法」「売価還元法」「最終仕入れ原価法の6つがあります。実際の実務においては、「最終仕入原価法」を採用しているケースが大半になります。

最終仕入原価法とは

決算日に最も近い仕入価格を1単価あたりの取得原価として採用し、すべての期末棚卸資産を評価する方法のことです

【計算例】 1事業年度で、3回の仕入を行った。仕入単価はそれぞれ、
1回目:100円
2回目:120円
3回目:115円

この場合、最終仕入原価法では、3回目の115円を採用して、期末棚卸の評価を行います。

低価法は期末の棚卸資産の金額として、原価法による評価と期末時価とを比較し、低い方法を選択する方法です。

評価方法については、届出書に適用を受けようとする事業年度開始の日の前日までに管轄の税務署に提出する必要があります。

参考:国税庁 棚卸資産の評価方法の届出書(PDF/252KB)

豚の貯金箱にお金を入れている

仕掛品や半製品の在庫把握

仕掛品や半製品など、未完成品の在庫を把握するためには、日々の工程管理が重要になります。

例えば、建設業の場合は、完成までの工事期間が長くかかります。別途、工事台帳や工程表を作成して状況把握しておくことが必要になります。各工程に、作業に従事する労働者の人件費を加えたり、工事機械などにかかる光熱費等の間接原価を配賦し、進捗原価を管理します。

実地棚卸と帳簿棚卸の結果を確認する。

帳簿棚卸で算出した数値と、実地棚卸で算出した数値を照らし合わせ、両者の数値の一致を確認します。

もし帳簿棚卸の数値と実地棚卸の数値に差異が生じている場合には、差異の原因を検証する必要があります。

数値に差異があったら

数値に差異があったら、以下のことを確認しましょう。

・在庫数量の数え間違いをしていないか
・商品の破損や紛失がないか
・納品書や返品伝票など、まだ届いていない書類はないか
・担当者での伝達漏れはないか
・在庫数が変動した際の記入もれはないか

原因をつきとめ、帳簿棚卸の数値の修正を行いましょう。現物の在庫数である実地棚卸の数値に基づいて、帳簿を修正するのがポイントです。

現物の在庫数と帳簿上の在庫数の一致の精度を高めるには、普段からの在庫管理の適切さがものを言います。とはいえ、在庫管理は手間のかかる作業です。在庫管理システムなどのITシステムを活用することも在庫管理の精度を高めるひとつの方法でしょう。

カレンダー

まとめ

以上、経理実務担当者に向け、

 ✅ 棚卸しとは
 ✅ 棚卸しの目的
 ✅ 実地棚卸の作業方法

について解説しました。棚卸しを実施する際のご参考になれば幸いです。

会社の正確な利益を把握するためにも、日々の在庫管理は欠かせない業務の一つです。しかし、在庫管理の作業にかかる時間と手間は大きく、そのため帳簿と現物の差異が生じやすく労力のかかる業務でもあります。

正確な数値を導き出すために、入荷から出荷までの適切な業務フローを構築し、棚卸業務の効率化を図っていきましょう。

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この記事の監修者

辻田 和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田 和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士
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