棚卸しとは?意味・目的・やり方をわかりやすく解説【計算例つき】

棚卸しとは?意味・目的・やり方をわかりやすく解説【計算例つき】

経理更新日:2026-07-12

棚卸し(たなおろし)とは、決算日など一定の時点で在庫の数量を数え、その金額を確定させる作業のことです。 正しい利益(売上総利益)を計算するために欠かせず、税務調査や会計監査でも必ず確認される重要な業務です。

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この記事では、経理実務担当者の方に向けて、棚卸しの意味・目的・具体的なやり方を、計算例を交えてわかりやすく解説します。まず要点だけ押さえたい方は、以下の3点を先に確認してください。

  • 意味:決算時点の在庫数を数え、在庫金額を算出する作業
  • 目的:正確な利益(売上原価)の把握、在庫状態の確認、経営判断への活用
  • やり方:実地棚卸(現物を数える)と帳簿棚卸(記録上の数)を突き合わせ、差異を検証する

棚卸しとは

棚卸しは「たなおろし」と読みます。送り仮名は「棚卸し」が一般的ですが、会計・簿記の用語としては「棚卸」と送り仮名を付けない表記も使われます。

棚卸しとは、決算における正確な数字を算出するために必ず行わなければならない業務で、決算日における在庫の数量を数え、在庫金額を確定させることを指します。棚卸しをスムーズに行うには、日々の在庫管理がとても大切です。

棚卸しの対象

棚卸しの対象になるのは、販売用の商品や製品だけではありません。未使用の文房具などの事務用品、パソコンなどの消耗品、未使用の切手や印紙といった貯蔵品も対象です。これらは会社の資産となり「棚卸資産」として処理します。

関連記事:消耗品と備品の違いは?適切な勘定科目も分かりやすく解説

また、未完成の原材料・仕掛品・半製品も棚卸しの対象に含まれます。それぞれの違いは次のとおりです。

以下の図は、原材料が完成に至るまでの製造工程を表しています。

  • 原材料:製品のもとになる材料。仕入れたままの状態で、加工はまったく行われていないもの。
  • 仕掛品:原材料に少しでも加工が加えられた状態のもの。
  • 半製品:完成には至らないものの、そのままでも外部に販売できる状態のもの。

期末棚卸高を求めるには、製造工程ごとに棚卸し高を把握する必要があります。

棚卸しの種類(実地棚卸・帳簿棚卸)

棚卸しには、実地棚卸帳簿棚卸があります。

  • 帳簿棚卸:帳簿や在庫管理システムを使い、日々の入出庫を記録して在庫を管理する方法。
  • 実地棚卸:実際に現物を数え、帳簿棚卸の数値が現物と一致しているかを確かめる作業。一般的に期末に行いますが、会社によっては四半期ごと・半期ごとに実施します。

棚卸しはいつ行う?時期と頻度

実地棚卸は原則として決算日(期末)に行います。ただし在庫管理の精度を高めるため、多くの企業が次のような頻度も併用しています。

  • 期末(年1回):最低限、決算のために必須。
  • 半期・四半期ごと:期中の差異を早期に発見したい企業。
  • 毎月(月次棚卸):小売・飲食・製造など在庫の動きが激しい業種。
  • 循環棚卸:品目を区分して日を分けて数える方法。業務を止めずに実施できる。

頻度は会社の在庫規模や業種によって選択します。頻度が高いほど帳簿と現物の差異を早く発見でき、不正やロスの防止にもつながります。

棚卸しをしないとどうなる?

棚卸しを行わないと、期末在庫が確定せず、売上原価と利益を正しく計算できません。その結果、次のような問題が生じます。

  • 決算書の利益額が誤り、過大・過少申告につながる
  • 税務調査で在庫計上の妥当性を説明できず、指摘を受けやすくなる
  • 会計監査で期末棚卸金額の正確性を確認できない
  • 不良在庫や過剰在庫に気づけず、経営判断を誤る

棚卸しは「やらなくてもよい作業」ではなく、決算・申告の前提となる必須業務です。

棚卸しの目的

1. 正確な利益を把握するため

会社が順調に儲かっているかを知るには、正確な利益を求める必要があります。その重要な指標が、粗利とも呼ばれる売上総利益です。

売上総利益 = 売上 - 売上原価

計算式のとおり、売上総利益を求めるには「売上」と「売上原価」の数値が必要です。そして正確な売上原価の算出は、日々の在庫管理と密接に関係しています。

売上原価とは?

売上原価とは、売り上げた商品に対応する商品原価のことです。

商品を仕入れた際にかかった金額は、仕入れたタイミングで全額を費用計上できるわけではありません。売り上げた分だけが費用として計上できます。つまり、売上があってはじめて売上原価として費用計上できるのです。

そのため、当期に仕入れた金額がそのまま全額売上原価になるわけではない点に注意が必要です。売上原価は、期首・期末の在庫と期中の仕入高から次のように計算します。

売上原価 = 期首棚卸高 + 仕入高 - 期末棚卸高

棚卸し業務は、この式の期末棚卸高(=翌期の期首棚卸高)を求める作業と言い換えることもできます。

棚卸し業務は、期末棚卸高(=翌期の期首棚卸高)を求める作業といいかえることもできるでしょう。

✅ 棚卸高には「期首棚卸高」と「期末棚卸高」の2種類がある。

✅ 期末棚卸高は、翌期の期首棚卸高のこと。

✅ 売上総利益=売上高-売上原価(期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高)

売上原価が間違っていると決算書の利益額の誤りにも直結します。日々の在庫管理をきちん行うことが利益の正確性につながります。

このように、棚卸しは売上総利益に直結する重要な業務のため、税務調査では棚卸高が聞き取りの対象になり易いです。また、会計監査においても、正しく棚卸しが実施され期末の棚卸金額が適切かどうかが必ず確認されます。決算期だけでなく、日々の在庫管理を正しく行う事が大切です。

関連記事:原価計算とは?種類・目的・計算方法をわかりやすく解説【計算例つき】

2. 在庫の状態を把握するため

棚卸しには、単に在庫数を数えるだけでなく、在庫の状態を把握し評価する目的もあります。

破損などで商品価値が損なわれ、販売できないと判断された商品は「損金」として計上できます。シーズン品の売れ残りや型落ち品など、今後通常価格では販売が難しいと判断された商品も、損金として扱える可能性があります。

3. 経営判断に役立てるため

在庫管理は、数を把握するだけでなく、過剰在庫や在庫不足を防ぐ目的もあります。適切な在庫管理ができているかを測る指標として、「棚卸資産回転期間」と「棚卸資産回転率」があります。

棚卸資産回転期間とは?

商品の入荷から出荷までの平均期間を示す指標です。

棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 ÷ 月商

計算例:棚卸資産500万円/月商100万円の場合

 500 ÷ 100 = 5 → 5か月分の在庫を抱えている

回転期間が毎月大きくなるようであれば、不良在庫や売れ残りが発生している可能性があります。

棚卸資産回転率とは?

商品がどれだけ効率よく販売できているかを測る指標です。

棚卸資産回転率 = 売上高(年商)÷ 棚卸資産

計算例:売上高1,500万円/棚卸資産500万円の場合

 1,500 ÷ 500 = 3 → 年3回在庫が入れ替わっている

回転率が高いほど、在庫への投資を効率よく回収できていることを意味します。早く商品を売って在庫を減らすことで売上を増やし、費用として計上できます。日々の在庫を正しく把握することで、経営状態を把握し、今後の経営判断に役立てられます。

実地棚卸のやり方

実地棚卸は、原則として決算日に作業を行います。ここでは具体的な手順を解説します。

タグ方式とリスト方式

実地棚卸には「タグ方式」と「リスト方式」があります。

タグ方式の手順

  1. 担当者が現物の在庫品と数量を確認し、棚札(伝票)に記入する
  2. 伝票を現物に貼り付け、現物を数えていく

すべての在庫に棚札が貼付されるため目視確認が容易で、カウント漏れ・計上漏れが起きにくいのがメリットです。一方、作業に手間がかかり時間が長くなるのがデメリットです。

リスト方式の手順

  1. 在庫管理システムやエクセルで作成した管理リストを準備する
  2. リストの数量と実際の在庫数量が合っているか突合する

作業工程が少なく短時間で終わるのがメリットですが、リストにない現物があった場合にカウント漏れが発生する恐れがあります。

どちらの方法を選ぶかは、会社の判断に任されています。

棚卸表の作成

棚卸しを行った後は「棚卸表」を作成します。棚卸表は7年間の保存が義務づけられています。ただし、欠損金が生じた事業年度は保存期間が9年間、平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度は10年間になります。

参考:国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法

棚卸表には、次の項目を全商品分記入します。

  • 棚卸し実施日
  • 商品名
  • 数量
  • 単価
  • 金額(数量 × 単価)

破損などの品質変化があった商品は、評価損を計上して損金に算入できます。シーズン品の売れ残りや型落ち品なども評価損の算入が可能です。在庫を1つずつチェックし、算定後の合計金額が在庫の評価金額となります。

評価方法(原価法・低価法)

棚卸資産の評価方法には「原価法」と「低価法」があります。どちらを採用するかは税務署への届出によって決まり、通常はどちらか一方を選択し、継続してその方針で評価します。

原価法は、購入時の金額をもとに期末金額を評価する方法です。購入金額は時期・数量・仕入先によって異なるため、仕入単価を決める必要があります。仕入単価の決め方には「個別法」「先入先出法」「総平均法」「移動平均法」「売価還元法」「最終仕入原価法」の6つがあり、実務では最終仕入原価法を採用するケースが大半です。なお、かつて認められていた「後入先出法」は、現在は税務・会計のいずれにおいても廃止されており、選択できません。

最終仕入原価法とは

決算日に最も近い仕入価格を1単価あたりの取得原価として採用し、すべての期末棚卸資産を評価する方法です。

計算例:1事業年度で3回仕入れた場合

  • 1回目:100円
  • 2回目:120円
  • 3回目:115円

→ 最終仕入原価法では、直近(3回目)の115円を採用して期末棚卸を評価します。

低価法は、原価法による評価額と期末時価を比較し、低い方を期末の棚卸資産の金額とする方法です。

評価方法の届出

評価方法の届出には、次のルールがあります。

  • 新たに届け出る場合(法人設立時など):設立第1期の確定申告書の提出期限までに、管轄の税務署へ届出書を提出します。
  • 届出をしなかった場合:法定評価方法である最終仕入原価法による原価法が自動的に適用されます。実務で最終仕入原価法の採用が大半なのは、これが理由のひとつです。
  • 評価方法を変更する場合:提出期限があり、変更しようとする事業年度開始の日の前日までに、変更承認申請書を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。

参考:国税庁 [手続名]棚卸資産の評価方法の届出

仕掛品や半製品の在庫把握

仕掛品や半製品など、未完成品の在庫を把握するためには、日々の工程管理が重要になります。

例えば、建設業の場合は、完成までの工事期間が長くかかります。別途、工事台帳や工程表を作成して状況把握しておくことが必要になります。各工程に、作業に従事する労働者の人件費を加えたり、工事機械などにかかる光熱費等の間接原価を配賦し、進捗原価を管理します。

実地棚卸と帳簿棚卸の結果を照合する

帳簿棚卸で算出した数値と、実地棚卸で算出した数値を照らし合わせ、両者が一致しているかを確認します。差異が生じている場合は、その原因を検証する必要があります。

数値に差異があったら

数値に差異があったら、以下のことを確認しましょう。

・在庫数量の数え間違いをしていないか

・商品の破損や紛失がないか

・納品書や返品伝票など、まだ届いていない書類はないか

・担当者での伝達漏れはないか

・在庫数が変動した際の記入もれはないか

原因をつきとめ、帳簿棚卸の数値の修正を行いましょう。現物の在庫数である実地棚卸の数値に基づいて、帳簿を修正するのがポイントです。

現物の在庫数と帳簿上の在庫数の一致の精度を高めるには、普段からの在庫管理の適切さがものを言います。とはいえ、在庫管理は手間のかかる作業です。在庫管理システムなどのITシステムを活用することも在庫管理の精度を高めるひとつの方法でしょう。

関連記事:経理業務を効率化する方法|無駄な作業を減らす進め方・ツール活用を解説

棚卸しに関するよくある質問

Q. 棚卸しを簡単に言うと?

A. 「在庫をぜんぶ数えて、いくら分あるかを確定させる作業」です。決算時点の在庫金額がわからないと売上原価と利益を計算できないため、決算に必須の業務です。

Q. 棚卸しは毎月必要ですか?

A. 法律上の義務は原則決算期(年1回)ですが、小売・飲食・製造業など在庫の動きが激しい業種では、差異やロスを早期発見するために毎月実施(月次棚卸)する企業が多くあります。月次決算の精度を高めたい場合にも有効です。

Q. 棚卸しと在庫管理の違いは?

A. 在庫管理は入出庫を記録して在庫を「日々把握し続ける」業務、棚卸しはある時点で現物を数えて在庫金額を「確定させる」業務です。日々の在庫管理が正確なほど、棚卸しの差異が減り作業も短時間で済みます。

Q. 棚卸しのバイトではどんな作業をしますか?

A. 小売店などで実施される実地棚卸の補助として、ハンディターミナルやリストを使って商品の数量をカウントする作業が中心です。深夜や閉店後に行われることが多く、正確に数を数えることが求められます。

まとめ

以上、経理実務担当者に向け、

 ✅ 棚卸しとは

 ✅ 棚卸しの目的

 ✅ 実地棚卸の作業方法

について解説しました。棚卸しを実施する際のご参考になれば幸いです。

会社の正確な利益を把握するためにも、日々の在庫管理は欠かせない業務の一つです。しかし、在庫管理の作業にかかる時間と手間は大きく、そのため帳簿と現物の差異が生じやすく労力のかかる業務でもあります。

正確な数値を導き出すために、入荷から出荷までの適切な業務フローを構築し、棚卸業務の効率化を図っていきましょう。

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この記事の監修者

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辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

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