原価計算とは?種類・目的・計算方法をわかりやすく解説【計算例つき】

原価計算とは?種類・目的・計算方法をわかりやすく解説【計算例つき】

経理更新日:2026-07-11

価計算とは、製品やサービスを1つ作るのにかかった費用を算出する手続きです。本記事では原価の意味から、原価計算の5つの目的、個別・総合・標準など種類ごとの違い、具体的な計算方法と計算例までをわかりやすく解説します。

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原価計算と聞くと、専門用語が多く複雑で、なんだか難しそうなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。同じ経理職でも、サービス業と製造業では原価計算への関わり方が大きく異なります。

この記事では、製造業のような複雑な原価計算に馴染みのない経理担当者の方に向けて、原価とは何かという基本から、原価計算の5つの目的個別・総合・標準といった種類ごとの違い、そして実務で迷いやすい具体的な計算方法と計算例まで、順を追ってわかりやすく解説します。

原価とは?売上原価・製造原価との違い

事業を営むうえではさまざまな費用が発生しますが、このうち製品やサービスを作るために発生した費用のことを「原価」といいます。そして、この原価を正確に把握するための手続きが「原価計算」です。原価計算によって原価を正しく把握できなければ、正確な利益を算出することはできません。

原価は似た言葉が多く混同しやすいため、まず用語を整理しておきましょう。

用語

意味

使われる場面

原価

製品・サービスを作る(提供する)ためにかかった費用の総称

原価計算全般

製造原価

製品を製造するためにかかった原価(材料費・労務費・経費の合計)

製造業の原価計算・製造原価報告書

売上原価

その期に売れた製品の分だけを費用計上した原価

損益計算書(PL)

ポイントは、製造原価は「作った分」、売上原価は「売れた分」という違いです。当期に製造しても売れ残った在庫は、売上原価には含まれず棚卸資産として次期に繰り越されます。この区別が、後述する財務諸表作成の土台になります。

原価の3つの構成要素(原価の三要素)

原価計算を学ぶにあたり、まずは原価の構成要素を理解しましょう。原価は形態別に、材料費・労務費・経費の3つに分類されます。これを「原価の三要素」と呼びます。

材料費

材料費とは、製品を作るために使用する材料や原料にかかる費用です。具体的には次のようなものがあります。

  • 素材・原材料費
  • 購入部品費
  • 燃料費
  • 工場消耗品費
  • 消耗工具器具備品費

労務費

労務費とは、製造に関わる工員などの賃金・賞与・雑給といった労働への対価にあたる原価や、雇用にともなって負担する費用のことです。具体的には次のようなものがあります。

  • 賃金・給与
  • 雑給
  • 賞与手当
  • 退職給付引当金の繰入額
  • 法定福利費・福利厚生費

関連記事:労務費とは?勘定科目や人件費との違いをわかりやすく解説

経費

経費とは、材料費・労務費以外で製品を作るためにかかった費用です。具体的には次のようなものがあります。

  • 設備機器の減価償却費
  • 工具などの費用
  • 水道光熱費
  • 修繕費

なお経費は、その把握方法によって「測定経費・支払経費・月割経費・発生経費」に分類されることもあります。

製品との関連からみた原価の分類(直接費・間接費)

材料費・労務費・経費の三要素は、さらにそれぞれ直接費と間接費に分けられます。

直接費

直接費とは、材料費・労務費・経費のうち、どの製品にどれだけ使ったかを特定できる費用です(例:特定製品に使った原材料)。

間接費

間接費とは、どの製品にどれだけ使ったかを明確に特定できない費用です。たとえば工場長の給料や工場の固定資産税などが該当します。間接費は、あとで解説する「配賦」という手続きを通じて各製品に割り当てていく必要があります。

このように、原価は三要素×(直接費・間接費)で合計6種類に細かく分類され、一定期間で区切って集計されます。細かく分類することで、どこにコストが多く発生しているかを把握でき、具体的な対策を検討できるようになります。

変動費と固定費による分類

原価は、操業度(生産・販売の量)に応じて変わるかどうかという観点でも分類できます。

  • 変動費:作ったり売ったりする量に比例して増減する費用(例:原材料費、外注加工費)
  • 固定費:生産・販売量に関係なく、一定額かかる費用(例:家賃、正社員の給料、減価償却費)

この分け方は、後述する直接原価計算や、損益分岐点分析の基礎になります。

原価計算の目的|なぜ必要か

原価計算とは、1つの製品を作るのにかかった費用を計算・算出することでした。ここでは「なぜ原価計算が必要なのか」を5つの目的から整理します。目的を理解すると、原価計算の全体像がつかみやすくなります。

目的① 財務諸表を作成するため

そもそも原価計算ができないと、決算書を作成できません。製造業では、損益計算書の添付書類として「製造原価報告書」を作成します。これは、当期に製造した製品の製造原価を明らかにするための、製造業特有の財務諸表です。材料費・労務費・経費それぞれの内訳がわかるようになっています。

関連記事:財務諸表とは?財務三表(BS・PL・CF)の見方と読み方をわかりやすく解説

目的② 価格計算(値決め)のため

原価計算は、商品の値段を決めるための参考情報として使われます。原価がわかれば、そこに利益を上乗せして売価を決められます。適切な値決めのためには、正確な原価計算が欠かせません。

目的③ 原価管理のため

原価計算は、原価を管理し、ムダを削減するための土台になります。特に後述する「標準原価計算」では、あらかじめ設定した目標原価(標準原価)と実際の原価を比較し、差異の原因を分析することで、原価能率を高めていきます。

目的④ 予算管理のため

原価計算により、「製品を何個売れば利益がいくらになるか」を具体的にシミュレーションでき、利益予測に役立ちます。さらに、原価の予測値と実際値を比較することで、非効率な作業や割高な仕入れを発見でき、業務改善の指標としても機能します。

関連記事:予算管理システムのおすすめ比較|選び方と主要ツールを解説

目的⑤ 経営計画・意思決定のため

原価計算は、経営判断を行ううえでも役立ちます。管理会計と原価計算は密接に関わっており、企業の将来に向けた舵取り(管理会計)において、原価計算は重要な指標となります。

原価計算のやり方・手順【3ステップ】

ここからは、原価計算の具体的な進め方を見ていきます。製造業の原価計算は、大きく3つのステップで進みます。

ステップ1:費目別計算

まず、一定期間にかかった原価を材料費・労務費・経費の費目ごとに集計します。同時に、それぞれを直接費と間接費に区分します。ここが原価計算の出発点です。

ステップ2:部門別計算

次に、費目別計算で把握した間接費を、製造部門ごとに集計・配分します。工場に複数の部門がある場合、間接費をいったん各部門に割り当てることで、より正確な製品原価の計算につなげます(小規模でシンプルな工程では、このステップを省略することもあります)。

ステップ3:製品別計算

最後に、直接費と(配賦した)間接費を製品ごとに集計し、製品1単位あたりの原価を算出します。この製品別計算のやり方が、後述する「個別原価計算」や「総合原価計算」といった種類の違いにつながります。

原価計算の具体例(計算式)

簡単な数値例で、①製品1個あたりの製造原価を求める → ②売れた分だけを売上原価として計上するという2段階の流れを確認しましょう。

段階1:製造原価を計算する

前提(当期・製品100個を製造)

費目

直接費

間接費

材料費

300,000円

50,000円

労務費

200,000円

80,000円

経費

50,000円

120,000円

計算

  • 直接費合計:300,000+200,000+50,000 = 550,000円
  • 間接費合計:50,000+80,000+120,000 = 250,000円
  • 製造原価総額:550,000+250,000 = 800,000円
  • 製品1個あたりの原価:800,000円 ÷ 100個 = @8,000円

まず、費目別に集計した原価を合算し、製造数量で割ることで製品1個あたりの原価(@8,000円)が求められます。実務では間接費の配賦基準(次章参照)をどう設定するかがポイントになります。

段階2:売れた分だけが「売上原価」になる

ここで重要なのが、製造原価800,000円がそのまま当期の費用になるわけではないという点です。費用として損益計算書(PL)に計上されるのは、あくまで売れた製品の分だけです。

たとえば、製造した100個のうち当期に20個売れたとします。

  • 売上原価(当期の費用):@8,000円 × 20個 = 160,000円
  • 在庫(棚卸資産):@8,000円 × 80個 = 640,000円 … 次期へ繰り越し

売れ残った80個分(640,000円)は費用にはならず、貸借対照表(BS)に棚卸資産として計上され、次期以降に売れたときに売上原価へ振り替えられます。

項目

数量

金額

計上先

製造原価総額

100個

800,000円

うち売上原価(20個販売)

20個

160,000円

損益計算書(費用)

うち在庫(売れ残り)

80個

640,000円

貸借対照表(棚卸資産)

このように、「作った分(製造原価)」と「売れた分(売上原価)」は一致しないのが原価計算のポイントです。製造原価をいくら正確に計算しても、販売数量を踏まえて売上原価と在庫に振り分けなければ、正しい利益は算出できません。この考え方が、前述した製造原価と売上原価の違いにつながっています。

原価計算の種類

実務の現場では、正確な原価を導き出すのが難しいケースが多くあります。たとえば、仕入れのタイミングで材料価格が変動したり、異なるコストの材料が同じ工程に同時に投入されたりするためです。こうした複雑さに対応するため、原価計算にはいくつかの種類があります。

まず全体像を、3つの分類軸で整理します。

分類の軸

種類

ざっくりした違い

いつの原価か

実際原価計算/標準原価計算

実際にかかった額か、あらかじめ決めた目標額か

どの原価を集計するか

全部原価計算/直接原価計算

固定費も含めるか、変動費だけで見るか

生産形態

個別原価計算/総合原価計算

受注生産か、大量見込生産か

以下、それぞれ解説します。

個別原価計算

個別原価計算とは、顧客からの注文を受けてから製造を開始する受注生産に対応した手法です。受注ごとに作成される製造指図書単位で原価を集計します。オーダーメイド家具や注文住宅などで用いられます。

具体的な計算方法

  • 直接費:実際に発生した原価を各製品にそのまま賦課します。
  • 間接費:一定の配賦基準にしたがって各製品に配賦します。配賦基準は製品の性質や生産方法を考慮して決めます。

配賦基準の例:

  1. 価額法:直接材料費や直接労務費などの金額を基準に配賦する
  2. 数量法:生産数量や重量などを基準に配賦する

総合原価計算

総合原価計算とは、連続して大量生産する形態に対応した手法です。個別原価計算とは異なり、一定期間で区切って原価を集計し、製品単位あたりの製造原価を計算します。全国のコンビニに並ぶ商品などが例に挙げられます。

総合原価計算では、発生原価を原則「直接材料費」と「それ以外(加工費)」に分けて計算します。

なお、個別原価計算と総合原価計算はどちらも、製品完成後に実際の発生額に基づいて原価を計算する方法です。この2つをまとめて「実際原価計算」と呼びます。

直接原価計算

直接原価計算とは、実際原価計算をさらに一歩進めた考え方で、原価を変動費と固定費に分けて計算する方法です。

  • 変動費:作ったり売ったりすることにともなって発生する費用(変動直接費、変動間接費)
  • 固定費:生産・販売量に関係なく固定でかかる費用

直接費は製品に集計して直接原価を計算し、固定費は年度末に会計期間の発生額を仕掛品・製品・売上原価に配賦します。
変動費と固定費に分けることで製品ごとの利益が見えやすくなり、損益分岐点分析にも活用できます。利益の実態を把握したいときに有効な手法です。

全部原価計算と直接原価計算の違い

「全部原価計算」と「直接原価計算」は、固定費(固定製造間接費)を製品原価に含めるかどうかが最大の違いです。

全部原価計算

直接原価計算

製品原価に含める費用

変動費+固定費のすべて

変動費のみ

固定費の扱い

製品原価に含める

期間費用として一括計上(年度末に期末商品・仕掛品・売上原価に配賦)

主な用途

財務諸表の作成(制度会計で必須

社内の利益管理・意思決定(管理会計)

メリット

外部報告に使える

販売量と利益の関係が明確

制度会計(外部に公表する財務諸表)では全部原価計算が原則ですが、社内の経営判断には直接原価計算のほうが向いています。目的に応じて使い分けるのがポイントです。

標準原価計算

標準原価計算とは、製造の前にあらかじめ目標となる「標準原価」を設定しておき、製造後の実際原価と比較して差異を把握することで原価管理を効率的にする方法です。標準原価は単なる予測値ではなく、科学的・統計的な分析に基づいて算定される「目標値」でもあります。

大量生産の企業では、部品ごとの実際額を細かく把握するのに時間がかかります。標準原価計算を使えば、実際原価の計算結果を待たずに完成品原価を計算でき、記帳の簡略化・迅速化に優れています。また、標準原価と実際原価の差異の原因を分析することで、適切な原価管理につながります。

標準原価計算の流れ

  1. 期首:製造開始前に、原価の目標額となる標準原価を設定する
  2. 期末:製造後、実際にかかった原価を集計する
  3. 標準原価と実際原価の差異を把握し、原因分析と改善活動を行う
  4. 標準原価差異の会計処理を行う

標準原価計算の差異分析

標準原価計算は多くの製造業で採用されている重要な手法です。差異分析の計算方法を、例で確認しましょう。

  • 期首:直接材料費の製品1個あたり標準原価を「100円/kg × 10kg = 1,000円」と設定
  • 期末:当期製造分は100個
  • 標準原価での直接材料費:@1,000円 × 100個 = 100,000円
  • 実際原価での直接材料費:@1,200円(105円/kg × 12kg)× 100個 = 126,000円

差額は26,000円で、コスト増のため「不利差異」となります。この差異は、さらに価格差異数量差異に分けて分析します。

価格差異の計算式

価格差異 =(標準価格 − 実際価格)× 実際消費量

例:(100円 − 105円)× 1,200kg = ▲6,000円 → 不利差異26,000円のうち、6,000円が価格差異とわかります。

数量差異の計算式

数量差異 = 標準価格 ×(標準消費量 − 実際消費量)

例:@100円 ×(1,000kg − 1,200kg)= ▲20,000円 → 不利差異26,000円のうち、20,000円が数量差異とわかります。

このように、原価計算には複数の手法があり、どれを用いるかは生産工程や会社規模によって決まります。すべてを使うわけではないので、自社に必要なものを採用して経営分析に役立てましょう。


原価計算基準とは

原価計算には、「原価計算基準」という枠組みがあります。1962年に企業会計審議会が設定したもので、原価計算の目的や、原価の分類・計算の手続きについての基本的なルールを示しています。制度としての原価計算(財務諸表作成のための原価計算)は、この基準に沿って行われます。

現在の実務にそぐわない面も指摘されていますが、原価計算の考え方の土台として、今も重要な位置づけにあります。原価計算を体系的に理解したい場合は、この基準の存在を押さえておくとよいでしょう。

参考:ASBJ 企業会計審議会 原価計算基準 

原価計算を効率化するには|システム・アウトソーシング

原価計算は要素が多く複雑で、手作業では手間もミスも増えがちです。効率化の主な方法は次の2つです。

  • 原価管理システムの導入:費目別・部門別・製品別の集計や配賦計算を自動化でき、リアルタイムで原価を把握できます。
  • 経理業務のアウトソーシング:原価計算を含む経理業務を専門家に任せることで、社内リソースをコア業務に集中できます。

いずれの場合も、原価計算の仕組みを正しく理解しておくと、システム操作や外部委託がよりスムーズになります。

関連記事:経理アウトソーシングの費用・相場は?自社雇用との比較と見積もりの注意点を解説


まとめ

本記事では、原価計算について次の内容を解説しました。

  • 原価とは:製品・サービスを作るためにかかった費用。売上原価・製造原価との違い
  • 原価の分類:三要素(材料費・労務費・経費)、直接費・間接費、変動費・固定費
  • 原価計算の目的:財務諸表作成、値決め、原価管理、予算管理、経営判断の5つ
  • やり方:費目別 → 部門別 → 製品別の3ステップと計算例
  • 種類:実際/標準、全部/直接、個別/総合の違い

原価計算は、会社の規模・製品・製造過程・配賦の考え方などによって方法が変わる複雑な業務です。しかし正しく理解することで、原価管理システムの活用や経理体制の最適化がスムーズになり、業務効率化につながります。原価計算は財務諸表を作るだけでなく、コスト削減や予算編成、経営判断にまで影響する重要な業務です。社員一人ひとりが原価意識を持つことが、会社の経営力向上につながるでしょう。

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この記事の監修者

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辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

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