人事労務管理とは?人事管理との違い・業務内容・整備方法まで解説

人事労務管理とは?人事管理との違い・業務内容・整備方法まで解説

労務更新日:2026-05-21

人事労務管理とは何か、人事管理と労務管理の違い、主な業務内容、よくある課題、整備方法、外部化の考え方をわかりやすく解説します。

「従業員が増えてきたのに、勤怠管理や給与計算をまだExcelで回している」「担当者が休むと手続きが止まってしまう」「法改正があったが、就業規則をいつ直せばいいかわからない」——こうした悩みを抱える中小企業の経営者・バックオフィス担当者は少なくありません。

人事労務管理は、従業員が安心して働ける環境を整え、会社が法令に沿って雇用管理を行うための業務全般です。整っていないと、給与計算ミス・手続き漏れ・労務トラブルといった問題が起こりやすくなります。

この記事では、人事労務管理の基本的な考え方、人事管理と労務管理の違い、主な業務内容、よくある課題、体制整備の進め方をわかりやすく解説します。

人事労務管理とは?企業の「人」と「働く環境」を管理する業務

人事労務管理とは、従業員が安心して働ける環境を整え、会社が法令に沿って適切に雇用管理を行うための業務全般を指します。

具体的には、採用、入社手続き、勤怠管理、給与計算、社会保険・雇用保険手続き、就業規則、労使協定、安全衛生管理、退職手続きなどが含まれます。

人事労務管理は、単なる事務作業ではありません。従業員の労働時間、給与、休暇、社会保険、職場環境などに関わるため、会社と従業員の信頼関係を支える重要な管理業務です。

厚生労働省も、労務管理においては法令や労使間で定めたルールを守るだけでなく、労使間で十分に話し合い、信頼関係や尊厳を損なわない対応が重要だとしています。

人事労務管理が企業に必要な理由

人事労務管理が必要な理由は、大きく3つあります。

1つ目は、法令違反や労務トラブルを防ぐためです。
労働時間、賃金、休憩、休日、有給休暇、社会保険などには法律上のルールがあります。これらの管理が不十分だと、未払い賃金、長時間労働、手続き漏れなどの問題につながります。

2つ目は、従業員が安心して働ける環境を作るためです。
給与が正しく支払われる、勤怠が適切に管理される、休暇を取得しやすい、入退社手続きがスムーズに進むといった状態は、従業員の安心感・定着率につながります。

3つ目は、会社の成長に耐えられる管理体制を作るためです。
少人数のうちは担当者の経験で回せても、従業員数が増えると、手作業や属人的な管理では限界が出ます。人事労務管理を仕組み化することで、会社の規模が大きくなっても安定して運用しやすくなります。

従業員が1人でも人事労務管理は発生する

人事労務管理は、大企業だけの業務ではありません。従業員を1人でも雇用すれば、労働条件の明示、勤怠管理、給与計算、社会保険・雇用保険の手続きなど、必要な対応が発生します。

特に中小企業では、経営者やバックオフィス担当者が人事・労務・経理を兼任しているケースも多くあります。そのため、業務の全体像を理解し、どの業務を社内で行い、どの業務を外部に任せるかを整理することが重要です。

人事管理と労務管理の違い|人事労務管理の全体像

人事労務管理を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「人事管理」と「労務管理」の違いです。どちらも従業員に関わる業務ですが、目的と扱う範囲が異なります。

関連記事:労務と人事の違い|労務担当者の役割と求められる能力とは

人事管理とは|採用・評価・配置・育成を扱う

人事管理は、会社に必要な人材を採用し、適切に配置し、評価・育成していくための業務です。

主な業務には以下が含まれます。

  • 採用計画の作成・求人募集・面接・選考
  • 配属・異動
  • 人事評価・昇給・昇格
  • 研修・人材育成・キャリア設計

人事管理は、会社の成長に必要な人材をどのように採用し、活躍してもらうかを考える業務です。組織づくりや人材活用に近い領域といえます。

労務管理とは|勤怠・給与・社会保険・労働環境を扱う

労務管理は、従業員が適切な労働条件のもとで働けるように管理する業務です。

主な業務には以下が含まれます。

  • 労働条件通知書・雇用契約書の管理
  • 勤怠管理(労働時間・休憩・休日)
  • 給与計算・賞与計算
  • 社会保険・雇用保険の手続き
  • 年末調整
  • 就業規則の整備・36協定などの労使協定
  • 安全衛生管理
  • 休職・復職・退職手続き

労務管理は、法令に沿った運用が求められる領域です。厚生労働省の「確かめよう 労働条件」では、労働基準法などの基礎知識や相談窓口がまとめられています。

中小企業では人事と労務を兼任するケースが多い

実務上は、人事管理と労務管理を明確に分けられない会社も多くあります。特に中小企業では、採用から入退社手続き、勤怠確認、給与計算、社会保険手続き、従業員対応まで、1人の担当者が幅広く対応していることがあります。

ただし、人事と労務を同じ担当者が行う場合でも、業務の性質は分けて整理することが大切です。

  • 人事管理 =「人材をどう採用し、活躍してもらうか」を考える業務
  • 労務管理 =「従業員が法令に沿った環境で働けるようにする」業務

この違いを理解しておくと、社内で対応すべき業務と、システム化・外部化しやすい業務を整理しやすくなります。

人事労務管理に含まれる主な業務

ここでは人事労務管理の全体像を把握するために、主な業務を簡単に整理します。各業務の詳細や発生頻度については、関連記事「人事労務の業務一覧」で詳しく解説しています。

発生タイミング

主な業務

入社時

雇用契約書・労働条件通知書の作成、社会保険・雇用保険加入手続き、勤怠・給与システムへの登録

毎月

勤怠管理・集計、給与計算、社会保険料控除の確認、住民税更新対応

随時

扶養変更・住所変更・手当変更の反映、休職・復職対応、従業員からの問い合わせ対応

年次

年末調整、算定基礎届、労働保険の年度更新、有給休暇付与・管理

退職時

退職届の受理、社会保険・雇用保険喪失手続き、住民税異動、最終給与計算

法改正時

就業規則の改定、36協定の見直し、給与計算ルールの更新

採用・入退社手続き

採用時には、労働条件通知書や雇用契約書の作成、必要書類の回収、社会保険・雇用保険の加入手続き、勤怠・給与システムへの登録などが発生します。

退職時には、社会保険・雇用保険の喪失手続き、住民税の異動、最終給与計算、貸与物の回収などが必要です。入退社情報は給与計算や社会保険手続きにも影響するため、正確に管理することが重要です。

勤怠管理・給与計算

勤怠管理は、労働時間・残業・休日出勤・有給休暇・遅刻欠勤などを管理する業務です。給与計算では、勤怠データをもとに基本給・手当・各種控除を計算します。勤怠情報の確認漏れや変更情報の反映漏れは、給与計算ミスに直結します。

社会保険・就業規則・その他

入退社・扶養変更・産休育休・賞与支給などに応じて社会保険や雇用保険の手続きが発生します。また、時間外労働を行う場合には36協定の締結・届出が必要です。従業員数が増えると、就業規則の作成・届出や安全衛生管理体制の整備も必要になります。

人事労務管理が不十分な会社で起こりやすい課題

人事労務管理が整っていない会社では、日々の業務が回っているように見えても、多くのリスクが潜んでいます。

課題1:勤怠・給与・入退社情報が分散する

勤怠はシステム、給与はソフト、入退社情報はスプレッドシート、社会保険手続きは担当者のメールで管理——このように情報が分散していると、どの情報が最新なのかわかりにくくなります。入社日、退職日、扶養情報、手当変更、休職情報などが正しく共有されないと、給与計算や社会保険手続きのミスにつながります。

課題2:給与計算や社会保険手続きのミスが起こる

給与計算は毎月必ず発生する業務です。情報の回収や確認フローが曖昧なままだと計算ミスが起こりやすくなります。社会保険や雇用保険の手続き漏れや遅れは、従業員本人の生活にも影響し、会社への不信感につながることもあります。

課題3:担当者に業務が属人化する

「この人の給与は毎月この手当を調整する」「この手続きは前任者がこのフォルダで管理していた」——このような情報がマニュアル化されていないと、担当者が休職・退職したときに業務が止まるリスクがあります。特に中小企業では人事労務担当者が1人しかいないことも多く、属人化は大きなリスクです。

課題4:法改正への対応が遅れる

労働時間、有給休暇、割増賃金、社会保険、育児介護休業など、さまざまな制度改正への対応が必要です。日常業務に追われていると、法改正情報の確認や社内ルールへの反映が後回しになりがちです。

その結果、就業規則や運用ルールが古いままになってしまうことがあります。

関連記事:【2025年施行】育児・介護休業法の改正ポイントを徹底解説!

人事労務管理の整備方法・進め方ステップ

人事労務管理を整備するには、いきなりシステムを導入したり外部委託を検討したりする前に、まず現状の業務を整理することが重要です。

ステップ1:業務一覧を作成する

最初に行うべきことは、人事労務業務の棚卸しです。月次・入退社時・年次・法改正時などタイミング別に業務を整理します。

業務一覧を作ることで、どの業務が誰に依存しているのか、どこにミスが起きやすいのか、どの業務をシステム化・外部化できるのかが見えやすくなります。

ステップ2:法的義務のある業務を優先する

すべての業務を一度に整備しようとすると負担が大きくなります。まずは法的義務がある業務や、従業員への影響が大きい業務から優先して整備することが大切です。

優先度

業務

🔴 最優先

労働条件の明示、給与計算、社会保険・雇用保険手続き

🟡 早めに対応

勤怠管理、36協定、有給休暇管理、就業規則

🟢 体制が整い次第

安全衛生管理、人事評価制度、研修体制

ステップ3:勤怠・給与・入退社の情報連携を見直す

人事労務管理のミスは、個別の計算ミスだけでなく、情報連携の不備から起こることが多くあります。特に給与計算では、勤怠データだけでなく、入退社・休職復職・手当変更・住民税・社会保険料変更など、複数の情報が毎月正しく連携されているかを確認する必要があります。

毎月必ず確認すべき情報:

  • 入社者・退職者の反映状況
  • 休職者・復職者の確認
  • 昇給・降給・手当変更の反映
  • 扶養変更・住所変更・住民税変更
  • 勤怠締め状況・有給休暇取得状況

ステップ4:担当者任せにせずチェック体制を作る

人事労務管理は、担当者が正確に処理するだけでは不十分です。ミスを防ぐには、計算担当者とは別の視点でのチェックが必要です。

給与計算チェックリスト(例)

  • 入退社情報が正しく反映されているか
  • 勤怠データの集計が締まっているか
  • 残業代・深夜手当が正しく計算されているか
  • 社会保険料が正しく反映されているか
  • 住民税の変更(6月)が反映されているか
  • 前月との差異に不自然な点がないか

チェックリストや業務フローを整備しておくことで、担当者が変わっても同じ水準で確認しやすくなります。

人事労務管理を効率化する方法

方法1:人事労務システムを導入する

人事労務システムを導入すると、従業員情報、入退社手続き、社会保険手続き、年末調整、雇用契約書などを一元管理しやすくなります。

ただし、システムを入れるだけで課題が解決するわけではありません。誰がどの情報をいつ登録・確認するかのルールと、チェック体制をあわせて整備することが重要です。

方法2:給与計算・勤怠管理をクラウド化する

勤怠管理や給与計算はクラウド化しやすい業務の1つです。勤怠システムと給与ソフトを連携できれば、データ集計や給与計算への反映を効率化できます。ただし、クラウド化しても打刻漏れ・承認漏れ・変動情報の反映漏れがあれば給与計算ミスは起こります。クラウド化とあわせて、勤怠締めのルールや差異チェックの方法も整備しましょう。

関連記事:労務管理におけるクラウド活用のメリットと導入のポイント

方法3:労務アウトソーシングを活用する

勤怠確認・給与計算・社会保険手続きの準備・入退社手続き・年末調整補助などは外部化しやすい業務です。労務アウトソーシングを活用することで、担当者の業務負担を減らし、属人化を防ぎやすくなります。

ただし、すべてを丸投げするのではなく、社内に残す業務と外部化する業務を分けることが重要です。

関連記事:【プロがおすすめする給与計算アウトソーシング5選】後悔しない選び方とは

人事労務管理を外部化する場合の考え方

社内に残すべき業務

経営判断や従業員との関係性に深く関わる業務は、社内で判断すべき領域です。

  • 採用方針の決定、人事評価
  • 配置・異動・昇給・賞与の判断
  • 組織体制の設計・従業員との重要な面談
  • 懲戒・解雇などの重要判断

外部化しやすい業務

定型化しやすく、ルールに沿って処理できる業務は外部化しやすい領域です。

  • 勤怠データの確認・集計
  • 給与計算・入退社手続きの準備
  • 社会保険・雇用保険手続きの準備
  • 年末調整の回収・確認・従業員情報の更新

社労士顧問と労務アウトソーシングの違い

社労士顧問

労務アウトソーシング

主な役割

専門的な助言・手続き代行

日常的な実務運用の支援

得意領域

労務相談・法令対応・就業規則作成

勤怠確認・給与計算・入退社処理

向いている場面

法的な相談や手続きの専門性が必要なとき

日々の業務負担を減らしたいとき

どちらがよいというより、自社の課題に応じて使い分けることが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. 人事管理と労務管理の違いは何ですか?

A. 人事管理は採用・評価・配置・育成など「人材をどう活用するか」を扱う業務です。労務管理は勤怠・給与・社会保険・就業規則など「従業員が法令に沿った環境で働けるようにする」業務です。どちらも従業員に関わりますが、目的と扱う範囲が異なります。

Q. 従業員が少ない会社でも人事労務管理は必要ですか?

A. 従業員が1人でも、労働条件の明示・勤怠管理・給与計算・社会保険手続きなどは法的に必要な対応です。規模が小さい段階から仕組みを整えておくことで、人員が増えたときのトラブルや混乱を防ぎやすくなります。

Q. 人事労務管理のどの業務をアウトソーシングできますか?

A. 勤怠確認・給与計算・社会保険手続きの準備・入退社手続き・年末調整補助など、定型化しやすい業務はアウトソーシングに向いています。一方、採用方針の決定・人事評価・昇給判断など、経営判断に関わる業務は社内に残すことが基本です。

Q. 人事労務管理のシステムを導入するだけで課題は解決しますか?

A. システム導入は効率化に有効ですが、それだけで課題が解決するわけではありません。誰がどの情報をいつ登録・確認するかのルールと、チェック体制をあわせて整備することが重要です。

Q. 36協定とは何ですか?

A. 36協定(さぶろくきょうてい)とは、時間外労働や休日労働を行わせる場合に、会社と労働者の代表が締結し、労働基準監督署に届け出る労使協定です。この協定なしに法定労働時間を超えて働かせると、労働基準法違反となります。

まとめ|人事労務管理は会社を安定して成長させるための基盤

人事労務管理は、採用、入退社、勤怠、給与、社会保険、就業規則、安全衛生など、従業員に関わる幅広い業務を管理する仕組みです。

  • 人事管理:採用・評価・配置・育成など、人材を活用するための業務
  • 労務管理:勤怠・給与・社会保険・労働環境など、従業員が安心して働ける環境を整える業務

中小企業では人事と労務を同じ担当者が兼任していることも多くありますが、業務範囲が広く法令対応も必要なため、担当者の経験だけに頼る運用には限界があります。

まずは人事労務業務の一覧を作成し、法的義務のある業務・ミスが起きやすい業務・属人化している業務を整理することが大切です。そのうえでシステム化やアウトソーシングを組み合わせることで、安定した運用体制を作りやすくなります。

人事労務管理は、単なるバックオフィス業務ではありません。従業員が安心して働き、会社が継続的に成長するための基盤です。早い段階から仕組みを整えることで、トラブルを防ぎ、組織の成長に対応しやすい体制を作ることができます。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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