1. 労務管理におけるクラウド活用のメリットと導入のポイント
労務管理におけるクラウド活用のメリットと導入のポイント

労務管理におけるクラウド活用のメリットと導入のポイント

労務更新日:2025-02-19

労務担者の率直な気持ちとしてミスをしたくない、効率的に業務を行いたいという点は誰もが持ち合わせているでしょう。現在は様々なITツールが発達し、その中でクラウドのメリットが段々と知れ渡ってきました。今回は労務担当者として知っておきたいクラウドのメリットについて解説してまいります。

クラウドとは?

クラウドとは、クラウドコンピューティングを指します。PC本体のハードディスクではなく、クラウド上にデータを保存することで、PC等の端末を経由し、必要なときに必要なサービスの利用が可能となります。クラウドサービスには、勤怠管理システム、経費精算システム、会計ソフトなどがありますが、今回は勤怠管理にフォーカスをあてて参ります。

クラウド導入に踏み切れない背景

クラウドは生産性の向上、簡素化合理化におるコスト削減に貢献することから、近年多くの
企業で導入されています。しかし、導入に踏み切れない理由として多いのがネットワークやセキュリティ面の不安から、導入に踏み切れないとの声が多いのが特徴です。

クラウドの3分類とは?

クラウドには大きく分けて3つの分類があります。

SaaS(Software as a Service)

代表例がGmailなどであり、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスとなります。ソフトウェアを必要なときのみ使えることが特徴であり、インターネット環境があれば時間と場所問わず利用可能です。

PaaS(Platform as a Service)

ソフトウェアを動かすために必要なサーバーシステム等をクラウド上で提供するサービスです。開発環境を提供するクラウドサービスのため、一般的には馴染みはないと考えます。Webサービスを提供する企業が独自でWebサービスを開発する場合に利用されます。

IaaS (Infrastructure as a Service)

サーバーストレージ等を提供するクラウドサービスとなります。

クラウドサービスのメリット

まずは、自社で構築する設備ではないためにメンテナンスや更新作業が不要ということです。また、初期導入費用も安価な場合が多く、費用対効果(後述)の面からも非常に合理的と考えます。また、無料で使用できるサービスもあり、まずは、試験的に無料版から始めてその後有料版へ移行することも可能であることから同じ職場内で一定層の反対があったとしもまずは、「お試し」として始めやすいということです。
そして最大のメリットは場所や使用する端末に関係なく同じサービスの利用(例えば必要なデータを取り出して保存)が可能という点です。
これらのサービスを自社で構築しようとすると多くの費用が発生するでしょう。また、テレワーク推進の働き方が定着してきている中、場所や端末を問わず必要なデータを取り出して保存できるという働き方は時代の流れとも非常に合致したものと言えます。
そして、以下に労務担当者が享受できる具体的なメリットを記載します。

給与計算の効率化

労務担当者の業務に給与計算業務があります。給与計算業務は100%正解が普通との見方をされますが、ベテランであっても非常に難度の高い業務です。それは度重なる法改正や従業員の打刻忘れを指摘し実態に即した時刻に修正後に計算が必要となることなど、進めていかなければならないタスクが非常に多いのが特徴です。全て紙で行っているような企業は少ないと考えますが、クラウド化することで、複数の担当者が同時並行で業務を進めていくことができ、仮に一人の担当者が特定のタスクを忘れてしまっても(チェック体制が備わっていることおよび人間関係に亀裂が生じていないことが前提ですが)他の担当者が気付けるということです。
また、オプションとなる場合もありますが、昨今はWeb給与明細のニーズが急騰しています。そもそもコロナによりテレワーク推進の時代背景となり、いつでも周囲に部下がいるとは限らなくなりました。そこで、対面で当たり前のように手渡ししていた給与明細書も手渡しできないとなると郵送すべきか次の出勤日までに保管しておくかという議論になります。郵送の場合は、出社する人がいることが前提となり、また、一定の従業員数を抱える場合は費用負担も大きくなります。そして時代背景(感染防止の観点から今後も続くことが予想されるテレワーク推進)を鑑みても当分の間この流れは続くことでしょう。しかし、Web給与明細を導入するとペーパー代の節約や、実際の紙での給与明細を印字する手間(例えば機械のセット)を削減できることなど多くのメリットを享受することができます。
そして、労働者目線としても一早く給与明細をチェックできることで、残業時間の確認(給与明細とは別に周知している場合は除く)をすることができます。そのことにより特に長時間労働となっていた場合は早期の働き方是正の契機にもなり得ます。

有給休暇管理

特に2019年4月1日に企業規模問わず一斉に法改正された年次有給休暇の5日取得義務については頭を悩ませた労務担当者も多かったことでしょう。日本の年次有給休暇取得率については、50%は超えてきたもののあくまで平均であり、企業によっては低調な企業も多く存在します。年10日以上付与した従業員に対して1年を経過する前に5日取得させなければ30万円以下の罰金に処せられることから、取得が進まない企業の場合、駆け込みで取得させざるを得なくなりますが、そうなると現場の業務が回らなくなることから非常に難儀な問題へと発展します。
クラウドを導入することで、リアルタイムでの情報共有(特に不足者の把握)、警告の発動など、駆け込み取得となる前に先進的な管理が可能となります。
また、有給休暇は給与計算業務においても切り離して考えることはできず、欠勤か有給かでは計算結果も全く異なることから、労務担当者として改正労働基準法の年5日取得義務の履行以外にもメリットは享受することができます。

労働時間の適正な管理

特に外回りが多い営業マンについては適正な労働時間の把握が難儀な場合が多くあります。しかし、労務の提供を終えた段階で(連携していることが前提ですが)スマートフォンから終業の報告が出来れば給与計算上も法令順守の観点からもメリットを享受することが可能です。人間の特性上後からやろうと思っても忘れることが多く、また労働者目線に立つと損失回避バイアスが働き、実際よりも長い労働時間を報告してしまう可能性もあるため、実際の残業代よりも多くなってしまう可能性もあります。

属人化からの脱却

特に給与計算業務は機密情報も多く扱い、属人化しやすい業務に挙げられます。しかし、給与担当者が発熱等により(コロナ禍という社会的背景も鑑み)一定期間勤務できないとなった場合にクラウド管理できている企業の場合は業務の進捗情報を把握でき、かつ、法改正などのアップデートもあり、属人化からの脱却(他の従業員でカバーしあえる)に寄与してくれるでしょう。
また、給与計算業務は日の当たらない業務でありながら(どんな仕事でも言えることですが)特にミスの許されない業務です。それは端数処理や特殊な計算を複数個所潜り抜けてようやく完成となりますが、このような業務を属人化させるには危機管理の面からも非常に杜撰な管理と言わざるを得ません。基本的には複数で業務を進めていくべきですが、クラウド化することで、場所的に離れていてもリアルタイムで情報の共有が可能となり、かつ、本質的なコミュニケーションが可能となります。

紙との違い

紙管理の場合、第一に場所的なコストが発生することです。特に労働基準法上書類の保存義務は3年ですが、労働基準法から分離独立した労働安全衛生法で規定する健康診断の結果は5年保存となります。よって、従業員数が増えてくるといずれは紙管理では限界が到達します。データベース上で保存することで場所の更なる有効活用にも繋がるでしょう。

クラウドなどのデータ上での書類保存は法律上可能か?

労働基準法第109条では、労働者名簿、賃金台帳、雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならないと定めています。これらの書類をパソコン上で作成して保存するには以下の要件を満たしていることにより可能となります。

  • 法令で定められた要件を具備し、かつそれを画面上に表示し印字することができること。
  • 労働基準監督官の臨検時等、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっ ていること。
  • 誤って消去されないこと。
  • 長期にわたって保存できること

クラウドなどのデータ上での書類保存の留意点

データの効率的な保存のためにクラウドを始めとしてデータ上での保存を活用することとなります。まずは、クラウドの最大のメリットはPCが故障したとしてもクラウドに保存できていればデータを取り出すことが可能ということです。しかし、労働基準監督官の臨検は事前予告なく行われます。その時に必要なデータを画面に表示し、かつ、印字できる環境も整えておく必要があるということです。

どのような書類を保存の対象にすべきか?

保存期限が明確に定められている書類(例えば出勤簿)は対象に含めるべきでしょう。逆に保存期限が定められていない書類(例えば事業所独自で作成した書類)は含めなくてもよいと考えます。これは、追加料金を支払えば容量を増やすことはできるのでしょうが、コストの面からも画一的に保存するとなると早期に容量オーバーとなることが予見できるために、ある程度の選抜は必須と考えます。

書類の保存期限

  • 2年:雇用保険法(4年に該当する書類を除く)、健康保険法(カルテは5年)、厚生年金保険法に関する書類
  • 3年:労働基準法、労働安全衛生法(5年に該当する書類を除く)、労災保険法、労働保険徴収法(4年に該当する書類を除く)、労働者派遣法
  • 4年:雇用保険法(被保険者に関する書類)、労働保険徴収法(雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿)
  • 5年:労働安全衛生法(健康診断個人票、面接指導結果記録、ストレスチェック結果      記録)

尚、会社の憲法と言われる就業規則については今後も予定される頻繁な法改正の度に変更が必要となるでしょう。そうなると「変更前の就業規則」についてはいつまで保存しておくべきか、という問題が発生します。法令では特段、保存義務等に関する明確な規定はありません。よって、故意または過失により破棄したとしても法令上の問題は起こりませんが、重要な労働条件の変更を行った場合を考えてみましょう。その時に労使間のトラブルが発生すれば変更部分について詰問される可能性も否定できません。破棄したとなると証拠隠滅(適正な労務管理を行っている企業では就業規則は常時従業員が見られる状態になっていますが)したのではないかと勘繰られる可能性があります。よって、明確に旧就業規則と峻別するために、一定期間は保存しておくことが望ましいと考えます。

時効


労働基準法上で規定する時効は3年と5年しかありません。3年は賃金(退職金を除く)等ですが、これは当分の間3年という意味でいずれかのタイミングで5年となります。現行の5年は退職金となりますが、退職後の残業代遡り請求などがあると、企業として適正な書類保存ができていないとなるとそれだけで(裁判まで発展した場合は)裁判官の印象は非常に悪くなります。また、最悪なケースは企業には書類が残っていないものの退職した従業員がタイムカードなどの残業代の根拠となり得る資料を保存できていた場合、元従業員の主張する内容に信憑性があり、かつ、他に(元従業員の主張を覆す)証拠がない場合は、企業に残業代の支払い命令が下れる可能性が高くなるということです。

クラウド利用時の留意点


特に無料提供されているクラウドサービスは提供されているサービス自体が終了することがあり得ます。その場合には然るべき日までにデータ移行の準備が必須となります。また、冒頭申し上げた通り、データの漏洩が気がかりとなる企業があるようにセキュリティチェックには時間をかけるべきです。ウイルスチェックなどもその一つと言えます。また、無料サービスの場合は制限があり、制限を解除するには有料サービスへの移行が必要となります。そして、言うまでもなく通信環境が必要であるため、オフラインでは難しいということです。

Remoba労務

Remoba労務

Remoba労務は、労務クラウドサービスの導入・運用をオンラインワーカーが担うアウトソーシングサービスです。

サービス概要  

人事・労務の実務経験者を中心とした、オンラインワーカーのチーム制で、労務を丸ごと代行します。入退社の手続きや勤怠管理、給与計算、年末調整、健康診断の案内など、幅広くカバー。業務は独自マニュアルや管理ツールで可視化されるため、属人化やミスを防止して品質を確保しながら、業務効率化が可能です。

複数のクラウドサービスを活用してWeb上で資料回収・提出を行うため、データのやり取りもスムーズ。リモートワークをはじめとした、柔軟な働き方ができる職場環境の構築も支援します。

Remoba労務を活用するメリット

  • 労務コストの削減Remoba労務では労務担当を雇用した場合に比べ安価なコストで労務業務を任せることができます。また、担当者が変わったときの教育する必要、毎年改正される可能性がある社会保険の内容を詳しく理解する必要がなくなるなど、教育コストの削減にもつながります。
  • 退職・属人化など業務上のリスクをなくすRemoba労務では決まった範囲の業務を丸っと外だしし、業務は独自のマニュアルで管理いたします。そのため社員を雇った場合起きうる、担当者が辞めてしまった、特定の社員しかわからないといった事態を避けることができます。
  • 業務効率化・リモートワークの推進従来、従業員も紙資料の提出配布を行うことが一般的ですが、Remoba労務ではクラウドサービスを活用しわかりやすい説明付きのwebでの資料回収・提出を行います。結果、従業員側の負担を軽減することができます、会社全体の業務効率化につながります。さらに、紙ではなくクラウド上にデータをもつことでリモートワークそして更なる働き方改革の実現につながります。
  • プロセスの可視化Remoba労務では業務プロセスの可視化タスク管理ツールを使い業務の可視化とタスク管理を行います。どういったときに何をすべきかを明確化し、ミスや抜け漏れの防止につながると同時に、管理が容易になります。
項目内容

サービス名

Remoba労務

会社名

(株)Enigol

対応メニュー

  • 人事・労務:入社手続き/入社前の案内・情報収集/退職手続き/人事マスタの管理・変更/社会保険事務の社労士とのやり取り/回収連絡など
  • 給与計算:月次給与計算/賞与計算/明細の発行・配布/年末調整の補助/住民税額の管理
  • 勤怠・その他:勤怠データの集計/勤怠申請のリマインド/有給休暇のリマインド/残業アラート/パワハラ外部窓口/社員向けストレスチェック/健康診断の案内/各種労務システム導入

上記以外の業務を承ることも可能です。お気軽にご相談ください。

詳細

  • 労務をまるっと引き受け:勤怠管理から給与計算、入社手続き、退社手続きといった煩雑な業務を引き受けます。
  • 労務とクラウドツールのプロが御社の担当に:退職リスクのないオンライワーカがチームで業務対応します。
  • 労務管理クラウドサービスを活用し効率化:クラウドサービスの活用により、社員のあらゆる情報収集の効率化・整理がすすみ結果、会社全体として効率化につながります。
  • 社労士との連携:顧問社労士がいてもカバーできない従業員への勤怠アラート、資料回収・コミュニケーションなどまで幅広く対応可能。

公式サイト

https://remoba.biz/hr

最後に


労務分野でのクラウド化はまだ進んでいない企業も多く、そのメリットが知れ渡っていない場合も多くあります。人間の修正として新しいものに対しては警戒心が働いてしまいますが、コロナ禍以降は明らかに働き方の根本が変わってきたことから再考する機会にしてもよいでしょう。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士

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