ひとり労務・ひとり人事がきつい理由|限界のサインと会社が取るべき解決策

ひとり労務・ひとり人事がきつい理由|限界のサインと会社が取るべき解決策

労務更新日:2026-07-10

労務や人事を1人で担う「ひとり労務・ひとり人事」は、業務過多だけでなく、キャリアの描きにくさや孤立、属人化といった構造的な問題を抱えます。本記事では、ひとり労務がきつくなる理由と限界のサイン、そして担当者が辞める前に会社が取るべき解決策を解説します。

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「労務を担当しているのは自分1人。何かあっても相談できる人がいない」

「給与計算も社会保険手続きも全部抱えていて、休むと業務が止まる」

スタートアップや中小企業では、労務・人事を1人で担う「ひとり労務」「ひとり人事」が珍しくありません。会社が小さいうちは1人で回せてしまうため、体制の見直しは後回しになりがちです。しかし、ひとり労務には業務量以上に特有の課題があります。

そしてその問題は、担当者の突然の退職という形で会社に跳ね返ってきます。

この記事では、ひとり労務・ひとり人事がなぜきついのか、その限界のサインはどこに現れるのか、そして担当者が辞めてしまう前に会社が取るべき解決策を解説します。ひとり労務を担っている本人にも、その担当者を抱える経営者・管理部門の責任者にも読んでいただきたい内容です。

ひとり労務・ひとり人事とは

ひとり労務・ひとり人事とは、給与計算・勤怠管理・社会保険手続き・入退社対応・採用など、労務や人事の業務を実質的に1人で担っている状態を指します。専任で1人という場合もあれば、経営者や他部門との兼務で結果的に1人が背負っているケースもあります。

従業員数がおおむね数十人規模までのスタートアップ・中小企業で多く見られます。また100名規模程度の会社でも労務を一人でおこなうひとり労務はよくある体制です。事業の成長とともに従業員は増えるのに、管理部門の増員(とくに労務)は後回しにされやすく、「人は増えたのに労務は1人のまま」という状態が生まれます。

労務業務の全体像や人事との違いを整理したい場合は、あわせてご覧ください。

関連記事:人事労務の業務一覧|仕事内容・頻度・法的義務を社労士が整理

関連記事:労務とは?労務管理の意味と人事・総務・経理との違い、担当業務一覧を解説

ひとり労務・ひとり人事がきつい5つの理由

ひとり労務のつらさは「業務量が多い」だけではありません。1人であることに由来する、5つの根本的な理由があります。

1. 業務量と責任が1人に集中する

労務は、毎月の給与計算や勤怠締め、社会保険手続きに加え、年に一度の年末調整・労働保険の年度更新・算定基礎届など、時期によって業務が波状的に押し寄せ、また月の上旬など繁忙が月内でも集中します。これらすべてを1人で回すため、繁忙期は残業が常態化しがちです。しかも給与計算のように締め切りが動かせない業務が多く、「間に合わない」というプレッシャーが常につきまといます。加えて、給与を間違えてはいけないというプレッシャーや個人情報という機微な情報を扱う責任も、1人に集中します。

2. 専任者としてのキャリアパスが描きにくい

ひとり労務は、月次のルーティン業務が中心になりがちです。決まった手続きを正確にこなすことが求められる一方で、チームを率いる、制度を設計するといった、次のステップにつながる経験を積みにくい環境です。「このまま同じ業務を続けて、自分のキャリアはどうなるのか」という不安は、ひとり労務の担当者が抱えやすい悩みです。評価する側も労務の専門性を理解していないことが多く、正当に評価されにくいという問題も重なります。

3. 採用と労務の兼任は、求められる資質が真逆

「ひとり人事」の場合、1人が採用と労務の両方を担うケースが多くあります。しかしこの2つは、求められる資質が正反対の仕事です。採用は、候補者や現場と積極的にコミュニケーションを取り、会社の魅力を伝えていく「対人・攻め」の業務です。一方、労務は、給与計算や社会保険手続きをミスなく正確に、黙々と処理していく「緻密さ・守り」の業務です。

人には向き不向きがあり、この両極端な仕事を1人で高いレベルでこなせる人は多くありません。対人が得意な人にとって細かな計算業務は苦痛になりがちで、逆に正確な事務処理が得意な人にとって採用の対人折衝は大きなストレスになります。どちらかが得意でも、もう一方は不得意という状態で兼任させられれば、不得意な業務が慢性的な負担となり、ミスや疲弊につながります。「人事」とひとくくりにされがちですが、採用と労務は本来、異なる適性を持つ人が担うべき業務なのです。

4. 孤立しやすく、相談相手がいない

労務は専門知識を要する仕事ですが、社内に同じ業務を分かる人がいないため、判断に迷ったときに相談できる相手がいません。法改正への対応や、イレギュラーなケースの処理を、1人で調べて1人で決めなければならない。この孤立感は、精神的な負担として蓄積します。ミスが許されない業務であるほど、「聞ける人がいない」ことのストレスは大きくなります。

5. 休めない・属人化する

1人で回している以上、担当者が休むと業務が止まります。有給を取りづらく、体調を崩しても代わりがいない。この状況が続くと、業務は自然と属人化していきます。「あの人しか分からない」状態は、担当者にとっては休めない足かせであり、会社にとっては担当者が抜けたときに業務が止まるリスクそのものです。

ひとり労務の「きつさ」と、会社の「属人化リスク」は、同じコインの裏表なのです。

関連記事:労務の属人化を解消する方法|給与計算・社会保険手続きが「担当者しか分からない」を防ぐ実務ステップ

ひとり労務が限界に近づいているサイン

次のような兆候が見られたら、ひとり労務が限界に近づいているサインです。担当者本人だけでなく、経営者・管理部門長も注意して見てください。

  • 給与計算や手続きのミスが増えてきた(余裕がなくチェックが甘くなっている)
  • 残業や休日出勤が常態化している
  • 有給休暇をほとんど取得できていない
  • 「自分が休んだら業務が止まる」と本人が口にする
  • 法改正や新しい制度への対応が後手に回っている
  • マニュアルや業務記録を作る時間が取れていない

特に「ミスの増加」と「有給の未消化」は、外から見えやすいサインです。

これらが見え始めたら、担当者の努力や気合いで解決する段階を過ぎていると考えるべきです。放置すれば、担当者の離職につながります。

とくに従業員数が50人に近づく局面では、労務の負担が質・量ともに一段増えるため、1人体制の限界が顕在化しやすくなります。この「壁」の詳細は別記事で解説しています。

関連記事:労務と総務の違いとは? 1人総務の限界「50人の壁」を突破するアウトソーシング活用法

「採用して増員」だけでは解決しない理由

ひとり労務の限界が見えたとき、多くの会社がまず「もう1人採用しよう」と考えます。しかし、採用による増員だけでは問題が解決しないケースが少なくありません。

第一に、労務経験者の採用は難易度が高く、時間がかかります。求人を出してもすぐには決まらず、その間も現任の担当者は限界の中で回し続けることになります。

第二に、仮に採用できても、業務の構造を変えなければ属人化は解消しません。新しく入った人に前任者が教える形になれば、依存先が「前の1人」から「次の1人」に移るだけです。過大な業務量のままだと、「人に教えるより自分でやったほうが早い」となり、かえって属人化が進むことすらあります。

第三に、増員はそのまま固定費の増加になります。業務量が季節および月内で変動する労務において、繁忙期や月の忙しい週に合わせて人を増やすと、閑散期には余剰になります。方や、閑散期に他の業務を任せるにおいても労務という専門性の高さや、前述の採用とは業務の性質が異なってくることから、兼務ができるマルチな人材を採用するハードルも高いです。

つまり、ひとり労務の本質的な問題は「人手が足りない」ことよりも、「業務が1人に依存する構造」にあります。

解決策も、この根本的問題にアプローチするものでなければなりません。

会社が取るべき解決策

業務の棚卸しと標準化

まず、担当者が抱えている業務を可視化します。月次・年次の業務をカレンダーに書き出し、どの業務にどれだけの時間がかかっているかを把握します。そのうえで、手順を文書化し、担当者以外でもチェックできる状態を目指します。これは担当者の負担軽減と、属人化の解消を同時に進める第一歩です。

システムの活用

勤怠管理や給与計算、入退社手続きをクラウドシステムで効率化すれば、手作業の負担を減らせます。ただし、システムを入れても「設定・運用する人」が1人のままでは、属人化はシステムの中に残ります。ツール導入は、業務の標準化とセットで進めることが重要です。

関連記事:労務管理システムとは?選び方とおすすめ比較

アウトソーシング(BPO)の活用

労務業務を作業ごと外部に委託すれば、担当者1人への依存を構造的に解消できます。アウトソーシングが有効な理由は、単に作業を肩代わりするからではありません。委託にあたって業務フローが文書化され、委託先はチーム体制で運用するため、「特定の1人がいないと回らない」状態そのものがなくなるからです。担当者は、ルーティン業務から解放され、制度設計や採用戦略といった、より付加価値の高い仕事に集中できるようになります。特に採用と労務を兼任してきた「ひとり人事」の場合、正確性が求められる労務を外部に委ねることで、対人業務である採用や組織づくりという本来の強みを発揮しやすくなります。

月内・年内の繁忙期・閑散期の業務量の変動にも、必要な範囲で委託することで対応しやすくなり、増員による固定費の増加も避けられます。

なお、社労士顧問とアウトソーシングは役割が異なり、どちらか一方では負担が残る場合があります。違いと使い分けは別記事で詳しく解説しています。

関連記事:労務アウトソーシングとは?業務範囲・費用・メリット・注意点を解説

関連記事:労務アウトソーシングと社労士顧問の違いとは?役割・費用・向いている会社をわかりやすく解説します

担当者が辞める前に動くことが重要

ひとり労務の問題で最も避けたいのは、担当者が限界を迎えて退職し、そこで初めて対応に動くことです。担当者が辞めてから引き継ぎ先を探しても、業務の全体像が分からないまま給与計算や手続きを引き受けることになり、給与遅配やミスのリスクが高まります。

限界のサインが見えている段階で、業務の棚卸しや外部リソースの検討を始めておけば、担当者の負担を軽減しながら、スムーズに体制を移行できます。

「まだ回っているから」と先送りにせず、回っているうちに手を打つことが、結果的に会社と担当者の双方を守ります。

関連記事:労務業務の引き継ぎ|担当者の退職・異動でも業務を止めないチェックリスト

導入事例:担当者の負荷を分散し、属人化を防いだ体制づくり

複数拠点・複数法人を展開する企業では、労務業務が特定の担当者に集中し、その担当者の休職・育休をきっかけに業務が止まるリスクが顕在化していました。Remoba労務の導入により、業務フローを整理・文書化したうえでチーム体制で運用することで、担当者1人への依存を解消し、担当者不在でも業務を止めない体制を構築しています。

関連記事:育休による担当者不在。グループ複数法人の給与締めを止めない体制をRemoba労務でどう作ったか

よくある質問(FAQ)

Q. ひとり労務は何人規模まで耐えられますか?

一概には言えませんが、従業員数が数十人を超えて給与計算や手続きの負荷が兼務では回らなくなってきたら、体制を見直す時期です。ただし人数だけでなく、兼務の状況、その人のキャリア志向を考慮し、ミスの増加や有給の未消化といったサインが出ているかどうかで判断してください。

Q. まず何から始めればよいですか?

業務の棚卸し(可視化)から始めるのが確実です。担当者が何をどれだけ抱えているかが分からなければ、増員・システム・外注のどれが適切かも判断できません。カレンダーへの業務の書き出しは、担当者がいるうちに行うことが重要です。

Q. 社労士に顧問を依頼すれば、ひとり労務の負担は減りますか?

社労士は手続き代行や専門相談の専門家ですが、日々の給与計算のオペレーションや社内の情報収集までを担うわけではありません。そのため、社労士に渡す資料を作る業務が担当者1人に残れば、負担や属人化は解消しきれません。日常業務そのものを軽くしたい場合は、アウトソーシングの活用が選択肢になります。

まとめ

ひとり労務・ひとり人事のつらさは、業務量の多さだけでなく、キャリアの描きにくさ、孤立、休めない属人化といった構造的な問題にあります。そしてこの「担当者のきつさ」は、会社にとっての「属人化リスク」と表裏一体です。

限界のサインが見えたら、採用による増員だけに頼るのではなく、業務の棚卸し・標準化と、システムやアウトソーシングの活用によって、1人に依存する構造そのものを見直すことが解決につながります。

何より大切なのは、担当者が辞めてしまう前に動くことです。

Remoba労務は、給与計算・勤怠管理・入退社手続きなどの労務業務を、業務フローの整理・文書化とあわせてチーム体制で運用するオンライン労務アウトソーシングです。ひとり労務の負担や属人化にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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