労務担当者が引き継ぎをせず退職した場合のリスク
労務担当者に限定されたことではありませんが、引き継ぎなしで後任の担当者が業務を担うことで次の3点のリスクが顕在化します。
- 定例的に行うべき業務の漏れ
- 業務の存在は認識しているものの考慮すべき論点の漏れ
- 1以外で現在進行形の業務の漏れ
1.については、毎月(代表的なものは給与計算)あるいは年間の特定の月に定例的に行う業務(例えば7月の算定基礎届の提出)が想定されますが、特に給与計算については奥が深く、階層的にも次の3つのルールが存在します。
- 法令上のルール
- 就業規則上のルール
- 個別の労働契約上のルール
効力の関係としては次の通りです。
法令≧労働協約≧就業規則≧労働契約
効力としては法令が最も効力を有することとなります(次の労働協約とは端的には労働組合との約束)。法令とは労働基準法第13条が根拠規定となり、仮に就業規則で法令を下回る規定を設けても法令が優先されるということです。また、労働契約にて就業規則を下回る契約を締結しても就業規則の「最低基準効」が働き、当該就業規則の内容が優先されます(個別の労働契約で就業規則を上回る内容で締結している場合は当該契約を優先する)。
引用 労働基準法
(この法律違反の契約)
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
この部分について、法令上のルールは事業所毎に変わるものではありませんので、大きな問題とは言えません。他方、就業規則(賃金規程が派生している場合は当該規定も)とは異なる取り扱いをしている場合、引き継ぎなしでは正確に業務を行うことが難しくなります。一例として労働条件の変更を行い、不利益緩和のため、経過措置を設けている場合は少なくとも就業規則と給与計算端末の画面を照らし合わせたとしても、理解できない可能性があります。
また、あくまで就業規則はその企業の最低限の労働条件をルール化しているに過ぎず、当該就業規則を上回る内容で運用することができないということではありません。よって、就業規則よりも上回った取り扱いを長期間反復継続している場合は、既に労使慣行が成立している(例えば割増賃金は指揮命令した時間のみを支給すると規定しているものの打刻時間通りに支給している)こともあります。
特に給与計算の結果が異なると実賃金制を採用する雇用保険料(社会保険料と異なり給与が変動すれば即時に保険料額も変動する)も変動することとなります。
ここまでは「1.定例的に行うべき業務の漏れ」と「2.業務の存在は認識しているものの考慮すべき論点」の漏れによって生ずるリスクの一例を挙げましたが、「3.1以外で現在進行形の業務の漏れ」については、一例として給与計算において、その月の給与での支給(または控除)が間に合わず翌月以降に調整するといった個別対応が想定されます。例えば給与過払いが起きたための清算において確認しましょう。事後の「調整的相殺」についての過去の労働判例では「過払いのあった時期」と「賃金清算の実を失わない程度に合理的に接着した時期」であることが求められ、かつ、「労働者に予告」し、「その額が多岐にわたらない」など、労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのないように必要な配慮が求められたという判決内容です。
これらの要素を満たしている場合には、労働基準法第24条で定める賃金全額払い原則違反とはなりません。もし、このような個別的な取り扱いが従前の労務担当者と「現在進行形」で行われていた場合、引継ぎなしでこれらの事情を斟酌した運用は極めて困難と言えます。
労務担当者が引き継ぎ用のリストを作成できずに退職となった原因
引き継ぎなしの退職はその後の影響度を勘案すると決して褒められることではありません。もはや影響を被るのは(多くの場合)従業員側であることが多く、労務部門への信用にも発展する看過できない問題です。他方、なぜこのような退職の仕方をしなければならなかったのかという点にも目を向ける必要があります。
考えられる背景として、業務過多によって相談する時間や精神的な余裕がなかったという点が考えられます。労務担当者の業務は決まった時期に決まった業務を行うので、相談する時間や精神的な余裕がなかったということはないのではという声があります。もちろん多くの業務は毎年または毎月決まった時期に発生しますので真っ当な意見ではありますが、担当する業務領域は、毎年多くの「法改正」が発生します。法改正が発生するとこれまでの取り扱いのまま進めることは自社に影響がない改正部分を除き、誤った取り扱いとなる(従業員数に比例して影響度も大きくなる)ので、法改正に則った対応が必須となります。
特に給与計算の場合、従業員目線では間違いないことが前提であるものの、実際に限られた時間の中で毎月正確に計算をしていくことは相当な労力を要し、労務担当者の精神的な負担は決して小さくありません。例えば前述の法改正に着目すると、2023年3月には健康保険料率(厚生年金保険料率は法律によって既に上限に達しているものの健康保険料率は都道府県ごとに異なるため設定変更等の対応が必須)の改正、翌月の4月には雇用保険料率の改正も控えており、それぞれの料率を勘案して計算することが前提となります。
労務担当者が引き継ぎ用のリストを作成する暇もなく辞めてしまった場合の対応
もちろんこのような事態が起きないように会社として予防していくべきことは明らかではありますが、仮に起きてしまった場合であっても業務を止めるわけにはいきませんので対応を考えておく必要があります。まずは定例業務の洗い出しです。一般的に想定される内容としては「給与計算」や、「各種手続き」です。
これは褒められる考え方ではありませんが、後者の手続きについては、現在、各行政機関(年金事務所、ハローワーク等)に問い合わせることで、ある程度、懇切丁寧なレクチャーを受けることができますので、その内容に則って進めれば対応は可能です。しかし、定例業務の洗い出しのみに注力するわけにもいかず、多くの労務業務には厳格な締め切り日(特に給与計算)が設けられていますので、複数の担当者をアサインできる場合は、定例業務の洗い出しだけでなく、ある程度目途が立った段階で進められる業務はスタートしておく必要があります。この部分での注意点として、闇雲に進めることで、余計に時間がかかることもあるので、方向性が見えている業務に限定し着手すべきです。
また、前任の労務担当者と連絡がつく場合は洗い出し後の業務とのすり合わせを行うことで業務の引き継ぎ漏れを回避できますが、近年増加傾向の精神疾患等に起因した離職の場合、積極的に連絡を取ることが難しくなります。
労務担当者が辞めようとしている時に引き継ぎ用のリストを作るのがよい
引き継ぎリストは担当者が在籍中に作成しておくことに越したことはありません。言葉を選ばずに申し上げると退職後あるいは退職の申し出をした後の場合(全ての人にあてはまるわけではありませんが)、他人事のように考えてしまい、後任の担当者にとって実質的に活用し難い内容になってしまっている可能性があるためです。
また、在職中であれば実際に当該リストを活用して業務を進めることができるか否かの検証も可能であること、もし難しい場合は必要に応じて軌道修正も可能となるため、より実効性のある引継ぎリストとなります。具体的に引き継リストについては次の3点に留意すべきです。
- チェックリスト形式
- 時期を「見える化」する
- イレギュラー専用のリストを作成
チェックリスト形式
引き継ぎリストを作成するにあたってのよくある事例として、作成担当者が「手を抜いた」と言われることを回避する意味で必要以上に冗長な文章となっているリストです。引き継ぎリストは「業務の漏れ」をなくすために作成することが目的となるはずですが、あまりにも冗長な文章となると後任の担当者が当該文章の内容を理解することにフォーカスしすぎるあまり、肝心なチェック機能が働かなくなっている場合が散見されます。
もちろんある程度の文量は必要ですが、その場合、文章の羅列ではなく、ビジュアル的な説明で代用できないか等の検討が望まれます。もはや文章ではなく、ビジュアル的な説明の方が理解度は担保されることは想像に難くありません。また、労務担当者は経験則に依存する部分が多いと考えます。
もちろん労務担当者に限定したことではありませんが、労務の領域特有の考え方やミスが生じた際のバックアップ手法等は一定の経験値に勝るものはありません。ただし、ないものねだりをするわけにもいきませんので、可能な限り、チェックリスト形式の引継ぎリストを使用し、その後、必要に応じて追加情報を補記していく形が望まれます。
また、単純にチェックリスト形式で作ればよいという問題ではなく、そもそもどのような原因があり、ミスが生じるのかを把握しておかなければ本質的な解決にはなりません。多くの場合、次の3点が考えられます。
- 人員不足によって生ずるミス
- スキル不足によって生ずるミス
- 共有不足によって生ずるミス
1. 人員不足によって生ずるミス
大企業であれば労務部門に対してある程度の人員を当て、入力担当者、チェック担当者、最終確認者等、複数担当者制で業務の運営が可能と言えます。他方、我が国の99.7%(経済産業省より引用)を占める中小企業においては労務担当者に多くの担当者を当てられているケースは極めて稀であると考えます。また雇用契約にて採用するとなると基本給だけでなく、必然的に社会保険料事業主負担等ものしかかるため、労務部門の外注を検討する企業も増えています。
引用 経済産業省
また、人員不足の状態で業務を進めることで担当者自身が(精神的にも肉体的にも)疲弊してしまい、離職の誘因となっているケースも少なくありません。また、既に人員不足がミスに(間接的または直接的に)繋がっている場合は早期に再考すべきと考えます。
2. スキル不足によって生ずるミス
この場合、後任の担当者への教育も必要と言えますが、①よりも更に引き継ぎリストは重要な意味を持ちます。スキル不足の場合、経験則が働かないだけでなく、1つの業務に割く時間が多くなり、確認の時間が確保できない問題もあります。それだけでなく、全体像のイメージがつかないために、どの部分にどの程度時間を投入していくべきかの判断も難しいため、場合によっては①よりも問題が大きいケースがあります。
3. 共有不足によって生ずるミス
「共有不足」と言っても偏に労務部門内に留まらず、従業員側からの申し出がなかったという労務担当者自身には直接的な落ち度がないケースもあります。しかし、給与計算については間違いないことが前提となることと、間違いが生じた場合には事後的な調整も必要となるために従業員目線では根本的な原因は労務担当者にあるという見方をします。
また、労務部門内での共有不足とはもちろん引継ぎリストに記載がなかったために生じたミスや、引継ぎリストには記載があったが別段の取り扱いまで記載がなく、ミスが生じたというケースも存在します。
また、法律上は問題ないものの、(過去から現在までの)会社としての取り扱い(あるいは労使慣行上)に照らすと「ミス」となってしまうものも存在します。この部分(特に労使慣行上の取り扱い)については、行政機関に問い合わせたところで答えが出るはずがなく、引き継ぎがなければ今後引き継がれていかないこととなります。引き継ぎ自体がない(あるいは引き継ぎが十分とは言えない)ことは前任者に責任があると言えますが、後任者となった以上は毎月、一定以上のパフォーマンスを求められるため、ミスが発覚した際には納得がいかないことでしょう。
時期を「見える化」する
最低でも月間の定例業務はどのあたりに集中するのか、あるいはどの時期に時間的に余裕が出てくるのかを「見える化」しておくべきです。労務担当者の業務には絶対的な正解がありません。これは一例として、給与計算においては答えが複数あってもよいというはずがなく、給与計算の答えは1つであるものの、そこに行きつく過程は複数あっても差し支えないという意味です。
ただし、このような「精査」をする時間は繁忙期(例えば給与締め日から逆算して3日間等)に設定すべきではありませんので、いつであれば設定可能なのかをスケジュールできるようにしておくべきです。また、給与計算のミスは概ね次の3つのミスから派生することが多いと考えます。
イレギュラー専用のリストを作成
この部分は1とは別に作成(あるいは1に補記)するということです。引き継ぎ段階で通常の従業員とは別段の取り扱いをしている案件(例えば対休職者の社会保険料徴収)があれば当該案件の正確な引き継ぎと今後類似の事例が生じた際には、参考にすることが考えられます。
また、法改正が生じた際にどこをチェックすればよいのかなどは、間違いなく毎月必要な情報ではありませんが、実際に起きた場合には、影響度が大きい案件です。
労務担当者の現状
労務担当者に限った話ではありませんが、担当者自身が退職を意識し始め、実際に退職日が決まると、有給休暇の消化問題が避けて通れません。会社には時季変更権と言い、申請された日に有給休暇を消化されると事業の正常な運営に支障をきたす場合に他の日に取得してもらうように取得日の変更を申し出る権利がありますが、理論上、退職日の翌日以降に変更することはできず、また、あくまで「時季変更権」であり、「時季消滅権」ではありません(取得させないということはできない)。
特にベテランの域に達した労務担当者であれば、勤続期間に応じて有給休暇の付与日数も増える(6年6か月以上の継続勤務で法律上の上限は20日付与)ため、(2019年4月1日以降は有給休暇の5日取得義務があるものの取得が進んでいないこともある)相当数の残日数が蓄積している場合も少なくありません。
また、労務担当者の場合、給与の締め作業等の関係で特定の時季の取得は事実上困難であり、取得率が著しく低いといったケースは(労務担当者の場合は特に)企業規模を問わず多くあります。
労務担当者の引き継ぎと有給消化問題
退職時期を後ろに延ばすことで有給消化と必要な引き継ぎ期間の確保が両立できますが、再就職先が決まっている場合は(再就職先に損害が発生する可能性が高く)選択肢として採用できません。
そこで、十分な引き継ぎをしない場合には就業規則上、懲戒処分を科す旨の規定をすることが考えられますが、あくまで、「抑止力」としての効果を期待するに留めておくのが無難です。理由として仮に懲戒処分をしたところで(その後は法的な争いにも発展し得る)、前任者のノウハウが適切に引き継がれることとは別問題であるためです。
そこで、退職の申し出時期を長めに設定するということが考えられます。そうすることで引き継ぎにある程度の時間(後任者のトライ&エラーも可能となる)をかけることができます。ただし、「期間の定めのない雇用契約」の場合、民法上は労務担当者自身が退職届を提出後、2週間が経過した時点で退職が認められることになります(民法第627条1項)。よって民法を勘案すると、あまりにも長期間の予告期間を設定すると法的な争いとなった際には就業規則の当該条文に対し、疑義が生じるリスクがあり、また、「多忙ゆえに申し出が遅くなった」と言われてしまうとほぼ解決策にはならないと言っても過言ではありません。
そのためにも日頃から、労務担当者にはある程度の余裕を感じられる程度の業務量にすること(もちろん人員的に難しい場合もあり得る)、日頃から属人化とならないようノウハウや対応方法の記録化を命じることが有用です。そのためにもある程度、雇用契約よりも人件費が安価となる業務委託等によって第三者の目を入れることで属人化の防止となり得ます。特に過大な業務量となれば人に教えるよりも自分で対応した方が早いと考えられることが多く、より属人化に拍車がかかってしまいます。
労務業務に蔓延る属人化問題
労務担当者の業務は言葉を選ばず申し上げると「ブラックボックス化」していることが少なくありません。言い換えると多くの業務が属人化しているために労務担当者が(退職ではなく)突発的な休暇時に代替者が対応しようにも業務内容が全く理解できないという由々しき問題があります。
原因として労務分野は多くの個人情報を扱うために可能な限り限られた人員の中のみで業務展開されているために必要な情報にアクセスできたとしてもそこから先に進めることができないため、このような問題が起こるということです。
具体的記載項目とは?
それでは、引き継ぎリストには具体的に何を書けばよいのかという部分を記していきます。もちろん企業によっては業務の範囲や特性が異なるため、画一的な記述は困難ではありますが、具体的記載項目として、概括的に記していきます。
給与計算がないという企業はほぼありませんので、給与計算を例にとると、「支給」、「控除」、「その他」の3つがあります。まず、支給であれば変動給の代表格として、残業代の反映が挙げられます(固定給と控除、その他も後述)。多くの場合、前月分の実績(例えば4月に給与を払う場合、3月実施分を反映させる)を支給することとなります。その場合、次の確認が求められます。詳細と3つの分類は以下の通りです(あくまで一般的なリスト)。
■支給
【変動給・残業代について】
- 漏れなくキャッチアップできているか(例えば特定の部署が漏れていないか)
- 単価設定は適切か(新たに付与された手当や昇給した場合に単価は変動しているか)
- 端数処理は適切か(原則として統一的な定めがされている)
- 雇用保険料は連動しているか(追加で時間外を入力した場合、再計算しているか)
- 所得税は連動しているか(雇用保険料と同趣旨)
上記に関して、引き継ぎリストを作成する際の留意点を「①人員不足によって生ずるミス、②スキル不足によって生ずるミス、③共有不足によって生ずるミス」に置き換えると、②が問題となります。例えば社会保険料は残業代の支給が変動しても直接的には変動しませんが、雇用保険料(所得税も同様)については「実賃金制」を採用しているため、すぐさま変動しますので、必ず再計算しなければなりません。
【固定給・各種手当および基本給】
- 手当の付与漏れはないか(住宅購入や転居、扶養、通勤経路変更等)
- 退職者に支給されていないか(「当月払い」の場合は残業代のみ退職後に支払うことはあり得るが固定給は想定し難い)
- 配置異動は反映されいるか(部署によって支給額が変わる場合は要注意)
- 日割り計算はないか(月途中の入退職)
- 昇給、降給はないか
- 欠勤控除はないか(有給休暇発生前の私傷病による欠勤が想定される)
上記に関して、引き継ぎリストを作成する際の留意点を「①人員不足によって生ずるミス、②スキル不足によって生ずるミス、③共有不足によって生ずるミス」に置き換えると、③が問題となります。昇給、降給は人事情報の共有がなければ反映できないこと、欠勤控除も勤怠情報の提供がなければ反映ができません。ここでは多くの企業で人事部門と労務部門の連携に齟齬が生じた結果、ミスが発生するケースが多く見受けられます。
■控除
- 社会保険料等の料率変更はないか
- 社会保険料の等級変動はないか
- 新たに社会保険等に加入した者はいないか
- 新たに社会保険等の資格喪失をした者はいないか
上記に関して、引き継ぎリストを作成する際の留意点を「①人員不足によって生ずるミス、②スキル不足によって生ずるミス、③共有不足によって生ずるミス」に置き換えると、③が問題となります。これは「【固定給・各種手当および基本給】」と同趣旨で入退社や雇用形態の変更(例えば扶養を外れて新たに社会保険に加入)に係る情報共有がなければ反映ができず、ミスに繋がる傾向です。
■その他
- 銀行口座の変更はないか
- 給与締め切り後に現金でやりとりした者はいないか(源泉徴収票へ反映漏れが起こり得る)
- 前月からの引継ぎはないか(例えば前月の過払いや不足支給の調整)
- 前月との差異は説明できる程度の差異か(明らかに残業代が少ない場合、反映できていない部署がないか疑うべき)
上記に関して、引き継ぎリストを作成する際の留意点を「①人員不足によって生ずるミス、②スキル不足によって生ずるミス、③共有不足によって生ずるミス」に置き換えると、①が問題になることが多いです。これは支給や控除と比べて時系列上も後に確認する項目(もちろん先に確認することが不適切というわけではない)となりますが、ここに到達する頃には労務担当者が疲弊してしまい、十分な確認ができず、(締切日もあることから)給与振込を実行することで、ミスに繋がる傾向です。
また、上記はあくまで一般的な内容であり、それぞれの企業の特性に合わせて毎月、カスタマイズしてベストな引き継ぎ書を作成していくというスタンスが適切です。よって、月を追うごとに引継ぎリストの項目数は増えていくのが一般的ですが、その過程で不要と判断したもの(例えば自動化できたため確認の密度を減らす(未確認だとさすがに危険ということであれば一定の確認はすべき)等)を削除または程度を減らす等の微調整も適切です。