50人未満のストレスチェック義務化とは?中小企業の労務・人事対応を解説

50人未満のストレスチェック義務化とは?中小企業の労務・人事対応を解説

労務更新日:2026-03-15

50人未満の事業場に対するストレスチェック義務化の概要と、中小企業の労務・人事担当者が今後進めるべき対応について解説します。制度改正のポイント、実施手順、面接指導、リスク対策まで網羅的にまとめています。

多様な人材が安全かつ安心して働き続けられる職場環境の整備、メンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止対策等を目的として、労働安全衛生法の改正が行われました。

その中でも、実務上大きな改正点として挙げられるのが、50人未満の事業場に対するストレスチェックの義務化です。

もっとも、2026年3月時点では、50人未満の事業場に対するストレスチェック義務化は改正法に盛り込まれているものの、施行前です。そのため、現時点では「すでに義務が生じている」というよりも、今後の施行を見据えて準備を進めるべき段階にあるといえます。

本記事では、50人未満の事業場に対するストレスチェック義務化の概要と、中小企業の労務・人事担当者が今後進めるべき対応について解説します。

1. 50人未満でも義務化?中小企業への影響は

我が社は対象になるのか?

2015年12月1日からストレスチェックの実施が企業に義務付けられましたが、あくまで「労働者数50人未満の事業場」は当分の間「努力義務」であり、「50人以上の事業場」は業種のいかんに関わりなくすべての事業場で実施しなければなりませんでした。しかし、当分の間努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場についても実施義務化となるものの、50人未満の事業場の負担等に配慮し、「施行までの十分な準備期間を確保する」とされています。

罰則はあるのか?

同じタイミングでの労働安全衛生法の改正において化学物質の譲渡等実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反に対しては罰則を設けられることとなりますが、現時点では「施行までの十分な準備期間を確保する」と明記されていることからも、50人未満へのストレスチェック義務化に対する直接的な罰則規定は明記されていません

2. 制度改正のポイント整理

これまでの制度

ストレスチェックは年1回以上の実施が義務付けられており、医師等による実施体制の確保と並んで本人への結果通知、高ストレス者から申出があった場合の医師面接指導、集団分析(集団分析はあくまで努力義務)等が実施手順となります。

何が変わるのか

本制度の目的はメンタルヘルス不調等を未然に防ぐことであり、その目的は人数規模に関係がないはずです。しかし、我が国の99%を占める中小企業においては事務負担等を考慮し、「50人」を境に実施義務と努力義務で分けられていました。なお、「50人」のカウントの仕方は、例えば週に1回しか出勤しないようなアルバイトやパートであっても継続雇用し、常態として使用しているのであれば、常時使用している労働者として50人のカウントに含める解釈(契約形態ではなく、常態として使用しているか否かがポイント)です。

何のためにおこなうのか?

労働者自身が自分のストレス状態を知ることで、ストレスをためすぎることのないよう事前に対処し、既にストレスが高い状態の場合は医師の面接を通じて緩和措置が取れるようにすることです。医学的な助言をもらうことで、会社として業務上の措置を実施することや、職場環境の改善につなげることで、うつ病などのメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。

3. 企業が負う義務とは

何から進めていけばよいのか?

まずは導入準備期間として、社内ルールの策定と並行し実施者の選任です。実施者は労働安全衛生法上具体的に明記されており、医師、保健師または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは精神保健福祉士等です。医療機関を除き、自社でこれらの資格を有する社員を雇用していることは稀であるため、外部委託が一般的です。

次に質問票の配布です。ITシステムを用いることも可能ですが、物理的に視界に入ってこないため、通常業務の中で忘れ去られるのが懸念点です。その後、ストレス状況の評価、医師の面接指導の要否判断となります。

本人へ結果を通知し、本人から面接指導の申出があれば医師による面接指導が実施され、就業上の措置の要否・内容について医師から意見聴取を経て、就業上の措置の実施へと移行します。

努力義務の措置として、個人の結果を一定規模のまとまりの集団ごとに集計・分析(いわゆる集団分析)し、職場環境の改善へと移行します。集団分析の重要なポイントとして「個人が特定されないこと」が挙げられます。職場環境の改善であっても、労働者のプライバシー保護が最優先です。よって、小規模零細企業であっても個人が特定されない方法で実施すること、個人が特定されてしまう恐れがあれば、あえて集団分析は実施しないという選択が妥当です。すなわち、人数が少ない企業ほど慎重な対応が求められるということです。

留意すべき点は?

多くの個人情報を扱うため、担当者を文書で指定し、守秘義務を明確化することが重要です。そうしなければストレスチェック時の質問に対し、真意の回答をせず、実質的にストレスチェックが機能しなくなる恐れがあるためです。

現在は10代から70代までの幅広い世代の労働者が同じ企業で働くことも珍しくありません。世代が異なれば「心の病」の毛色も異なるでしょうし、実効性のある制度とすべく、守秘義務に懸念を抱かれることのないよう事前にリスクヘッジしておくべきです。

実施対象者とストレスチェックは義務なのか?

退職予定者であっても実施時点で在籍しているのであれば当然対象となります。しかし、労働者は必ずストレスチェックを受けなければならないというわけではありません

例えば既にうつ病等に罹患している労働者や休職中の労働者を想定します。この場合、既に心理的負荷が高い状態になっているため、ストレスチェックを受けることでさらにショックを受けてしまい、症状が悪化するといった事態も想定されます。よって、会社としては実施の案内をするものの、労働者がストレスチェックを受けなかったからといって受けるよう強要することはありません。

また、役員の場合、労働法上で定義する「労働者」ではなく「使用者側」にあたります。よって、実施しなくても問題はありませんが、経営を舵取りする役員が自身のストレス状態を把握できていることは決して無駄にはならないでしょう。

ここでのポイントは、会社としてストレスチェックの周知は行うが、受診はあくまで任意であることです。ただし、単に忙しいから受けないということは適切ではなく、会社としてもある程度の予告期間を設け、あくまで「職場環境の改善」を目的にしていることを周知し、実施計画を立てておくことが有用です。

労働者目線として、ストレスチェックやストレスチェック後の面接指導を受けたくないという背景には、不利益取り扱いをされるのではないかと懸念することが考えられます。しかし、厚生労働省からは不利益取り扱いの禁止が明確に示されており、決してそのような取り扱いはしない旨のアナウンスをしておくことでより実効性のある制度となります。

衛生委員会

労働安全衛生法上、50人未満の事業場では衛生委員会の設置義務はありません。しかし、今般の法改正を見据えて衛生委員会を設置し、義務化に対する会社の姿勢を示すだけでなく、同制度の実施に向けた具体的なフローの検討・構築を進めていくことが有用です。

面接指導

当然、守秘義務が守られることを公約し、希望者が安心して面接指導を受けられるための風土の醸成がポイントです。特に、面接指導を受けるか否かを検討するフェーズの社員は既に一定程度、心理的な負荷がかかっており、職務上期待される通常のパフォーマンスを十分に発揮できていない可能性もあります。当然、申出があった場合の放置は不可となることはもとより、解雇等のいわゆる不利益取り扱いは禁止されています。

面接指導後の就業上の措置

医師の意見を踏まえ、会社としては何らかの検討をしますが、一般的には次の選択肢が挙げられます。

  • 労働時間の短縮
  • 配置転換
  • 業務軽減
  • 在宅勤務の活用

そもそも慢性的な長時間労働状態になっている場合は、自身で時間管理ができていないといった事情もあるため、労働時間を短縮することが現実的です。また、職務上のプレッシャーが大きい場合は、現在の職務よりも軽易な部門があれば当該部門へ配置転換し、配置転換が難渋する場合は業務軽減が有効です。なお、在宅勤務についてはエッセンシャルワーカーの場合は選択肢になり得ないことがあるため、一部の職種に限定されてしまうのが通常です。

結果の保存

ストレスチェック事業者は、検査の結果を把握した場合には、労働者の同意を得て、当該結果の記録を作成し、5年間保存しなければなりません

報告義務

現状、50人以上の事業場ではストレスチェックの結果を事業場所轄労働基準監督署へ報告する義務があります。すなわち、50人未満の事業場においては、報告義務の対象とはなっていません

4. 中小企業が直面する現実的課題

産業医がいない

多くの中小企業ではそもそも産業医はおろか医師との繋がりがないといった事情が多く挙げられます。そこで様々な媒体を通じて産業医の紹介がありますが、コストが不安という声もあるため、費用面を十分に比較検討できる期間を設けておくことが重要です。

担当者がいない

いざストレスチェックを実施するとなっても、専任の担当者がいないといった声が多く挙げられます。多くの中小企業の場合、主たる業務がストレスチェックのみということは現実的ではなく、何らかの業務と並行してストレスチェックの担当者にもアサインされるケースが一般的です。しかし、多くの個人情報を扱うという性質上、一定の研修期間はマストといえます。また、担当者がストレスに苛まれてしまっては本末転倒とも言えるため、まずは当該担当者の業務量の見直しも並行して協議していくことが有用です。

5. 現実的な対応策

外部機関の活用

一から全て内製化する企業もある一方、外部機関を活用することが現実的といえます。外部機関の場合、既に様々な事例や実績を持っているため、自社で五里霧中状態となり社員から不安視されるよりも、長い目で見れば得策といえます。

6. 実施しない場合のリスク

是正勧告

当然、法律上義務となれば法令違反となるだけでなく、自社の社員のモチベーション低下につながると考えられます。

安全配慮義務

労働契約法第5条には安全配慮義務が明記されており、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。当然、ストレスチェック未実施では安全配慮義務を果たしたとはいえません。

メンタル不調の長期化の歯止め策

ストレスチェックが義務化されることで、未実施の状態では発見されることのなかったメンタル不調者の早期発見と、当該状態の長期化を防ぐことができます。ストレスチェックは医師等からの客観的な指導によりメンタル的な不安要素を発見することができます。

休職・離職の防止

ストレスが一定のラインを超えてしまうと、本旨に従った労務提供が困難となるだけでなく、ミスが増えてしまえば本人の自信も崩壊し、やがて休職や離職につながってしまうリスクがあります。しかし、ストレスチェックがそれらの防止策となれば、離職者が出たことによる新たな採用活動に時間を投下する必要がなくなります

7. ストレスチェックを経営改善に活かす方法

ハラスメント対策との並行的な取組

ストレスチェックと並行して対応が求められるのがハラスメント対応です。昨今、パワハラ・セクハラだけでなく様々なハラスメントが定義付けされていますが、両者を切り離して考えることは適切ではなく、それぞれ企業経営にとって重要な意味を持っています

8. 義務化は負担か、それとも機会か?

労働関係の法改正は労働安全衛生法だけに留まらず、様々な関係法令において改正が行われています。今回のストレスチェック義務化については、単なる義務化として捉えるのではなく、企業がより早期に不安要素を発見できる契機と捉えることが有用です。

特に人材不足に直面する中小企業においては、働きやすい職場環境づくりや人材の定着支援等の施策は企業価値の向上にも寄与し、その効果は決して小さくありません。

近年は外見からでは容易に判別し難い内面的な心の病のため、本来持ち合わせているパフォーマンスを十分に発揮できていないケースもあります。人材を採用しづらい今だからこそ、ストレスチェック導入が単なる負担どころか、企業を救済する措置となれば、その実益は決して小さくありません

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この記事の監修者

蓑田真吾のプロフィール画像

株式会社Enigol

蓑田真吾

千葉経済大学経済学部経済学科卒業。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。 都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名を超え、約800名の新規採用者、約600名の退職者にも対応してきた。社労士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は様々な労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしている。また、年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。

資格
社会保険労務士

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