公共工事の積算や見積を担当していると、必ず目にするのが「公共工事設計労務単価」です。令和8年(2026年)3月の改定では14年連続の引き上げとなり、全国平均が初めて25,000円を超えました。ただ、「単価がどう決まるのかよくわからない」「単価と実際の人件費負担の関係が曖昧」と感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、公共工事設計労務単価の仕組み・最新の数値・実務での注意点を順に解説します。

公共工事の積算や見積を担当していると、必ず目にするのが「公共工事設計労務単価」です。令和8年(2026年)3月の改定では14年連続の引き上げとなり、全国平均が初めて25,000円を超えました。ただ、「単価がどう決まるのかよくわからない」「単価と実際の人件費負担の関係が曖昧」と感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、公共工事設計労務単価の仕組み・最新の数値・実務での注意点を順に解説します。
公共工事設計労務単価とは、国や地方自治体が公共工事の工事費を計算するときに使う、建設作業員1人あたりの日額賃金の基準値です。
農林水産省と国土交通省が毎年実施する「公共事業労務費調査」の結果をもとに決定・公表します。47都道府県別・51職種別に設定されており、大工・とび工・鉄筋工・左官・交通誘導警備員など、幅広い職種が対象です。単価は1人・8時間あたりの日額で示されます。
この単価は「積算のための基準値」であり、作業員の手取り賃金や、会社が実際に支払う人件費の合計とは異なります。詳しくはこの後解説します。
公共工事設計労務単価は、以下の4つの賃金項目を合算して算出されます。
関連記事:賃金支払い5原則とは?平均賃金や最低賃金・賃金台帳も解説

構成要素 | 内容 |
|---|---|
基本給相当額 | 所定労働時間8時間あたりの基本給(個人負担分の法定福利費を含む) |
基準内手当 | 通常の作業条件・内容に対する手当(家族手当・通勤手当など) |
臨時の給与 | 所定労働日数1日あたりに換算した賞与等 |
実物給与 | 食事の現物支給など |
一方、以下の費用は単価に含まれていません。
これらは積算上、「現場管理費」や「一般管理費」として別途計上します。
単価は毎年、以下のスケジュールで改定されます。

農林水産省・国土交通省が、10月に施工中の1件1,000万円以上の公共工事を対象に、元請・下請を問わず全51職種の建設労働者の賃金台帳を調査します。有効標本数は例年8万人以上に達します。
調査結果をもとに都道府県別・職種別の単価が決定し、国土交通省が公表します。
公共工事への適用が始まります。発注者の運用により、3月から先行適用されるケースもあります。
単価の改定は毎年3月が基本ですが、工事が年度をまたぐ場合の適用タイミングは契約条件によって異なります。詳しくは後述の実務ポイントをご確認ください。
令和8年2月17日、国土交通省は令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価を公表しました。

指標 | 令和7年(前年) | 令和8年(最新) |
|---|---|---|
全国全職種 単純平均の伸率 | 前年比+6.0% | 前年比+4.5% |
全国全職種 加重平均値 | 24,852円 | 25,834円 |
連続引き上げ年数 | 13年連続 | 14年連続 |
加重平均値が25,000円を超えたのは、公表が始まった1997年度以来初めてです。
なお、労務単価が最も低かった平成24年度と比べると、令和8年時点の上昇率は約90%に達しており、当時のほぼ2倍近い水準です。
最新の都道府県別・職種別の単価一覧は、国土交通省不動産・建設経済局のウェブサイトで閲覧・確認できます。
実務上、最も誤解されやすいポイントです。
公共工事設計労務単価には、法定福利費(社会保険料等)の事業主負担分が含まれていません。そのため、単価の数字がそのまま会社の支払いコストになるわけではありません。
関連記事:給与計算の手順をわかりやすく解説。計算の注意点やよくあるミスとは?
国土交通省の参考値によると、単価に必要経費(法定福利費・安全管理費・労務管理費・宿舎費等)を加えると、事業主の実質的な負担は単価の約141%になります。
令和7年度の平均単価(24,852円)を例にすると、実際の事業主負担は約35,041円になる計算です。この差額分は積算上、「現場管理費」として別途計上されます。
下請代金でこの必要経費分を計上しない、または値引きを求めることは不当行為です。令和7年12月12日に完全施行された改正建設業法では、著しく低い労務費による見積りの提出・依頼が禁止されています。

公共工事設計労務単価が上がり続けている背景には、いくつかの要因が重なっています。
少子高齢化により熟練技能者の引退が進む一方、若年層の建設業離れが続いています。人材確保のために賃金を引き上げざるを得ない状況が、単価の上昇につながっています。
令和6年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。長時間労働を前提とせずに賃金を確保する必要が生じたことが、単価を引き上げる要因になっています。
建設資材の多くは海外からの輸入に依存しており、円安の継続が工事コスト全体を押し上げています。こうした環境下で人材を確保するための賃金水準が上がり、調査結果に反映されています。
国土交通省は、単価の引き上げが技能者の賃上げにつながり、それが市場の実勢価格を押し上げ、翌年の単価がさらに上昇するという好循環の実現を政策目標に掲げています。令和7年には国交大臣と主要建設業4団体が「おおむね6%の賃上げ」を目標に合意しており、民間工事への波及も求められています。
公共工事設計労務単価は、あくまで公共工事の積算に用いる指標です。しかし実態として、民間工事の賃金水準や見積の相場感にも影響を与えています。
公共工事と民間工事で同じ職種の作業員が働いている以上、賃金相場は連動します。設計労務単価が上がり続ける中、民間工事でも見積・交渉の参考基準としての重要性が高まっており、発注者・施主も「以前と同じ金額では依頼できない」という局面に差し掛かっています。単価の動向は、建設業の経理・管理部門が工事原価の見通しを立てるうえでも欠かせない情報です。

公共工事の積算では、設計労務単価をそのまま使うわけではありません。「労務単価 × 歩掛(標準的な作業量の係数)」で各工程の労務費を計算します。歩掛の基準は「土木工事標準歩掛」等に記載されており、職種ごとの係数を単価にかけて算出します。
単価は毎年3月に改定されます。工事期間が年度をまたぐ場合、どの時点の単価を適用するかは契約条件によって異なります。契約締結時に適用単価の年度を明確にしておくことが重要です。
複数年度にわたる工事では、物価スライド条項(インフレスライド条項)の有無を契約時に確認しておくことで、単価改定に伴うコスト変動リスクに備えられます。長期工事ほど単価上昇の影響が大きくなるため、特に注意が必要です。
元請として下請業者に発注する場合、下請代金から法定福利費等の必要経費を削ることは不当行為です。法的なトラブルを防ぐためにも、支払い管理の体制は整えておきましょう。
いいえ。公共工事設計労務単価は、公共工事の予定価格積算のための指標です。民間工事に直接の義務的適用はありませんが、建設業界の賃金相場の実態を反映しているため、民間工事の見積でも参考値として活用されることがあります。
原則として契約時点の単価が適用されます。ただし、工事が年度をまたぐ場合は物価スライド条項の有無と内容によって対応が変わります。契約書の条件を事前に確認しておくことが重要です。
法定福利費(社会保険料等の事業主負担分)や安全管理費などの必要経費は、積算上「現場管理費」として別途計上されます。これらを下請代金から値引かせることは不当行為にあたります。
全国全職種の加重平均値は25,834円です(令和8年3月適用)。前年の令和7年度(24,852円)から4.5%の引き上げとなり、14年連続の上昇です。
国土交通省不動産・建設経済局のウェブサイトで、都道府県別・職種別の単価一覧を閲覧できます。各地方整備局の技術管理担当課でも確認することができます。
法定福利費(事業主負担分)・研修訓練費・安全管理費等は、積算上「現場管理費」の中に含めて計上します。下請代金においてもこれらの経費を必ず反映させる必要があります。
この記事では、公共工事設計労務単価について解説しました。最後に要点を整理します。
公共工事の工事費を計算するときに使う、作業員1人あたりの日額賃金の基準です。毎年10月に調査が行われ、翌年3月から新しい単価が適用されます。
全国平均は25,834円で、14年連続の引き上げです。単価の水準は、12年前と比べてほぼ2倍近くになっています。
設計労務単価には、社会保険料などの事業主負担分が含まれていません。実際に事業主が負担するコストは、単価の約141%になります。この必要経費を下請代金から削ることは不当行為にあたります。
工事が年度をまたぐ場合は、どの年度の単価を使うかを契約時に確認しておく必要があります。長期工事では物価スライド条項の有無も必ずチェックしましょう。