1. 給与計算の手順をわかりやすく解説。計算の注意点やよくあるミスとは?
給与計算の手順をわかりやすく解説。計算の注意点やよくあるミスとは?

給与計算の手順をわかりやすく解説。計算の注意点やよくあるミスとは?

労務 更新日:
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会社が果たすべき義務として、従業員への労働の対価である賃金を計算すること、つまり「給与計算」があります。給与計算の特徴としては、単純に基本給に各種手当を足し、支給すれば良いというものではなく、各月に発生した残業代の集計や割増賃金の集計等もあります。また、税金の計算や保険料の計算なども重要な業務に含まれます。

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目次

ここでは給与計算の仕事内容や全体の仕事の流れから計算の手順や注意点に関して解説していきたいと思います。 

給与計算業務とは

給与計算業務とはその名の通り、従業員の給与を計算する作業です。計算と聞くと、事務的なイメージが強くなりますが、実際は労働に関連する法律から税金に対する知識まで幅広い知識が求められる仕事です。また、日本では年末調整という制度があり、確定申告をする文化が一般的にではありません。簡単にいうと、会社が国の税金徴収業務を代行しているのです。そのように考えれば、ミスの許されない大切な仕事であると感じて頂けると思います。

ミスの許されない業務

従業員は会社との間で労働契約を結んでいます。労働者を労働させる代わりに会社はその労働に対して賃金を支払う義務を負っています。給与計算を間違えるということはこの従業員に対する義務を履行していないということになります。会社は「人」で成り立っています。その従業員である「人」から信頼を失えば、会社そのものが成り立たなくなってしまいます。

正しい法律の知識が求められる業務

従業員に対する給与は労働基準法第24条により「毎月最低1回以上は支払いをしなければならない」など法律で細かく規定されています。企業と労働者は労働基準法に基づく労働契約で結ばれた関係であるため、支払いに関しては法律に従う必要があります。この法律を理解することは給与計算を行う上で必須の知識となります。まずは労働基準法などを正しく理解することに努めましょう。 

お金を渡す男性

給与計算の手順

ここでは具体的に給与計算の手順を解説していきます。細かな部分は各社毎に異なるかと思いますが、一般的な流れは以下のようになるかと思います。

事前準備

まずは事前準備として人事データの整備を行いましょう。正しく給与計算を行うには、個人的な人事データの整備が不可欠です。ここで指す人事データとは労働契約に基づく基本給、各種手当、勤続年数、年齢、住所、家族構成、職位、職種、役職などがあげられます。このような人事データが前月と比較して変更がないかをまず確認します。変更がある場合は、毎月変更を加えるようにしましょう。

例えば、住所に変更があれば通勤手当に変更が必要かもしれませんし、家族構成に変更があれば扶養手当等に変更が必要かもしれません。このように手当に変更が生じた場合は総支給額が変更となりますので、社会保険料等も変更になるため、後日修正となると手続きが面倒になります。

加えて「就業規則」や「給与規定」の整備も必要です。給与の計算方法や支払日に関しても「就業規則」や「給与規定」内にすべて記載しておく必要があります。特に注意が必要なのは、法律で規定されていない企業独自の給与(例えば販売奨励給等)です。これらの場合は企業が独自で決定している為、従業員との間でトラブルになることが多いです。「就業規則」や「給与規定」は常に従業員自身が確認できるように体制を整え、会社と従業員の関係を透明にしておくことが肝要です。

勤務時間集計

その従業員が労働契約の通り勤務したかどうかを確認します。仮に早退や遅刻等で労働契約の通り勤務していない場合は、欠勤扱いにする必要があるかもしれません。勤務時間を確認することは固定給を支払いするのが妥当かどうかを確認することを意味します。

また、近年では働き方改革により連続しての勤務が制限されています。休憩も取らず連続して勤務をしていないかも確認しましょう。そのような異常な事態を発見した場合は、速やかに上司に報告し、実態を調査することが肝要です。勤務時間の実態に関しては虚偽の申請をしている可能性も含め、可能な限り現場の実態を把握できるように全体を確認しましょう。

数字

残業時間集計

労働契約上の法定労働時間を超えて勤務を行った場合、企業はその超過分に対して割増賃金を支払う必要があります。ここでいう割増賃金には大きく3つの種類があります。 

✅ 時間外手当=通常の法定労働時間を超過して勤務した場合(2割5分増し)
✅ 休日勤務手当=法廷休日に勤務した場合(3割5分増し)
✅ 深夜勤務手当=午後10時~午前5時まで勤務した場合(2割5分増し) 

従業員が上記の3つのパターンに該当して勤務している場合は、きちんと割増賃金を支払う義務が生じます。

各種手当集計

手当は様々な種類があります。固定給とは別に従業員毎の特性に合わせて適正な給与を支払うことを目的に企業が独自に設定するものです。例えば以下のような手当があげられます。

役職手当、日直手当、宿直手当、職種手当、危険手当、家族手当、海外赴任手当、住宅手当、単身赴任手当、地域手当、皆勤手当、資格手当、通勤手当、時間外手当

賃金を支払いするから固定給と同じと考えている方もいらっしゃるでしょうが、給与計算する上では少し違ってきます。

例えば、先程述べた時間外賃金の計算などでは、時間当たりの賃金を算出する際に計算に含めない手当もあります。また、毎年定期昇給する場合などは固定給×〇〇%で計算するのが一般的です。このようにあくまで手当は固定給に上乗せされるものであり、該当する従業員の状況が変われば、適宜支払額が変動します。そのため冒頭で述べた事前の人事データの整備が不可欠になってくるのです。

カレンダー

総支給集計

固定給に各種手当を加えたものを「総支給」と言います。

まずは企業が従業員に対して支払いすべきものをすべて洗い出し、集計した金額になります。この金額は企業が従業員に対して支払いをするべき最大の金額になります。

ここから以下で述べる各種控除を加味して実際の支払額が決定します。月間の総支給を12か月足した金額が年収となり、サラリーマンにとって非常に重要な意味を持ちます。

社会保険料計算

社会保険料とは「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」から成ります。社会保険料の計算の基礎となるのが、標準報酬月額です。毎月の給与に近いイメージですが、通勤手当等を含まないのが特徴です。

この標準報酬月額に保険料率を掛けて計算します。この3つの社会保険料はいずれも従業員負担分と企業負担分があり、従業員分については総支給額から控除します。また、企業負担分は企業が給与とは別に法定福利費として国に対して支払いをしてくれています。

住民税計算

住民税とは住んでいる市町村に納税する税金です。住民税は累進課税ではなく、所得に対して一律に課税されます。

また、特徴として住民税は前年の所得に対して課税されます。つまり今年収めるべき金額は年度初めには確定していることになります。納税方法としては所得税と同じように企業が従業員の給与から天引きし、まとめて市町村に納税する方法が一般的ですが、従業員の希望があれば、一括して納付することも可能です。住民税を天引きして分割納付する方法は特別徴収と言って企業に勤務している人に特別に認められている制度です。仮に退職をした場合は本年度の住民税の未納分を一括して納付する必要があります。

このように常に1年ずれて納付義務が発生する特徴を頭に入れておきましょう。

確定申告書

源泉所得税計算

源泉所得税とは、給与に対して課税される所得税を企業が従業員の代わりに控除し、税務署に納付するものです

最終的には年間給与に対して掛目をかけて年間の支払額を計算します。その際毎月天引きしているものと差額が発生した場合は、「年末調整」という作業により税金を調整します。年末調整後にさらに所得税に変更が生じた場合は、従業員が自ら確定申告を実施する必要があります。

源泉所得税に係る年末調整は、個人ごとに扶養家族の人数等が異なるため、給与担当者にとって一番手間のかかる作業になります。年末調整を担当する担当者は計画的に作業を進め、わからないことがあればすぐに顧問の社労士などに相談しましょう。

その他控除計算

代表的な控除は上記で述べた「社会保険料控除」「住民税控除」「源泉所得税」控除になりますが、最後に私的な控除としてその他控除というものがあります。その他控除とは、法的に定められていない企業独自の控除になります。

例えば、企業が社内にてクラブ活動を認めていてその活動費を天引きにて徴収する場合や、自社製品を購入した場合に代金精算を支払ではなく天引きで行う場合などです。その他控除は従業員側も都度支払いする必要がないため、利便性の高い制度と言えます。その他控除は状況に応じて毎月変わる場合が多いため、注意が必要です。給与計算のミスを引き起こすのが最も多い箇所になります。

控除集計

上記で述べた控除をすべて集計します。控除は従業員への賃金支払額が直接減少させることになりますので、総支給額と同様に注意を払う必要があります

控除額が集計出来たら総支給額に対して控除率が高くなりすぎていないか念のため、確認することをおすすめいたします。全体の控除率を並べてみると異常値や間違いに気づきやすいからです。

差引支給額集計

差引支給額とは一般的に「手取り」と言われます。総支給額から控除集計額を引き算して算出します。

実際に従業員の銀行口座に振り込みする金額になります。給与担当者は最終支払額がきちんと従業員全体の総支給額から控除集計額の引き算と合致しているか確認しましょう 

カレンダー

給与計算において注意するべき項目

給与計算を行う際に注意点を述べます。各項目での注意点を頭に入れ、計算した後の最終確認の際にも利用しましょう。

基本給

基本給は固定給部分ですので、基本的には毎月変動はありません。注意すべきタイミングとしてはベースアップや昇進です

1年間の中でその時期が決まっている場合は、給与計算の前の全従業員の固定給をもう一度見直し、漏れがないようにしましょう。

各種手当

手当に関しては基本的には毎月大きく変動するものではありませんが、注意が必要なのは残業手当です

深夜残業や休日出勤をした場合は単価も変わり、毎回勤怠をきちんと締めた後に支払いする必要があるため、毎月支給額が異なります。残業代は勤怠データの正確性に関しても注意を払う必要があります。

控除額

控除額に関しては、私用控除をしている会社は必ず天引き後に天引きした金額とその目的となった支払い金額が一致しているのかを確認しましょう。天引きした金額と相違がある場合は、従業員に返金が生じますので、月末に給与を支払いした後に必ず確認しましょう。 

白黒のコイン

まとめ

給与計算は単なる事務仕事と思われがちですが、実は非常に重要な仕事です。お金にかかわることですので、ミスは許されませんし、支払期日も決まっているので計画的に仕事を進める必要があります。また、残業時間や労働条件に関しても法律が細かく規定されておりますので、関連する法律に関しての知識も必要になります。給与計算業務が一人で完結できるスキルがあれば、総務・経理のスタッフとして非常に重宝します。

中小企業で人員に限りのある場合は、アウトソーシング会社や社労士事務所に業務を外注しましょう。給与計算でミスを犯すリスクを最小限にとどめるためです。会社にとは1回の計算ミスでも従業員の会社に対する信頼を大きく失います。それほど給与計算業務は重要な業務であり、会社と従業員の信頼関係の基礎となるものなのです。

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この記事の監修者

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社会保険労務士

蓑田真吾

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしています

資格
社会保険労務士
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