原価管理とは?原価計算との違いと進め方4ステップをわかりやすく解説

原価管理とは?原価計算との違いと進め方4ステップをわかりやすく解説

経理更新日:2026-07-27

原価管理とは、製品や案件にかかった原価を把握し、目標との差を分析して利益改善につなげる活動です。原価計算や予算管理との違い、目標原価の設定から差異分析・改善までの進め方、Excel管理や配賦で起こりやすい課題を解説します。

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「原価計算はしているものの、製品や案件の利益改善につながっていない」という企業は少なくありません。原因の一つは、原価を計算することと、計算結果を管理に使うことが分けられていない点にあります。

原価計算は、製品や案件にかかった原価を算定する作業です。一方、原価管理では、目標原価と実際原価を比較し、差が生じた原因を調べて改善します。

この記事では、原価管理の意味と原価計算・予算管理との違い、具体的な進め方、実務で起こりやすい課題を解説します。

関連記事:原価計算とは?種類・目的・計算方法をわかりやすく解説

原価管理とは

原価管理とは、製品や案件にかかる原価を把握し、目標とする原価内に収まるようコントロールして、利益を確保する一連の管理活動です。英語では「コストマネジメント(Cost Management)」と呼ばれます。

原価管理で行うこと

原価管理では、あらかじめ標準原価や実行予算、案件予算などの目標を設定し、実際にかかった原価と比較して差異を分析します。そして差が出た原因を調べ、取り除いていきます。

単にコストを削るのではなく、「なぜ想定よりコストがかかったのか」を突き止め、同じ原因が繰り返されない状態をつくるところまでが原価管理の範囲です。たとえば材料の仕入単価が上がっていたのなら仕入先との交渉、材料のロスが多いのなら製造工程の見直しというように、原因ごとに対応先が変わります。

製造業以外の業種でも使われる原価管理

原価管理は製造業で特に体系化されていますが、考え方はほかの業種でも使われます。建設業では工事ごとの工事原価管理、IT・広告などの受託ビジネスでは案件別の採算管理、飲食・小売業では商品別の原価管理という形です。製造業だけでなく、工事別・案件別・商品別の採算を把握したい業種でも、同じ考え方が使われます

原価管理と原価計算・予算管理の違い

原価管理と原価計算の違い

最も混同されやすいのが「原価計算」です。両者の関係は、原価計算は原価管理の「手段」であり、原価管理に内包される業務と整理できます。

項目

原価計算

原価管理

主な役割

原価を集計・算定する

原価を分析し、改善につなげる

主な視点

実績の把握

目標と実績の比較

ゴール

原価を正確に把握する

利益や採算を改善する

関係

原価管理に必要な手段

原価計算を含む管理活動

言い換えると、原価計算は数字を「出す」業務、原価管理はその数字を「使う」業務です。原価計算ができていても、原価管理ができているとは限りません。計算した数値を分析し、行動につなげてはじめて原価管理といえます。「計算して終わり」になっていないかが、最初のチェックポイントです。

なお、原価計算にも標準原価計算や予定原価計算のように、将来の目標や見積りを扱う手法があります。「原価計算は過去、原価管理は未来」と単純に分けられるわけではなく、違いは数字を算定することが目的か、算定した数字で採算を改善することが目的かという点にあります。

原価管理と予算管理の違い

予算管理は、企業全体の予算を編成し、予算と実績を比較・分析する活動です。売上や販管費なども含む会社全体の計画が対象になります。

一方、原価管理は、製品・工事・案件などにかかった原価を対象に、目標と実績の差を分析し、採算を改善する活動です。予算管理が会社や部門全体を対象にするのに対し、原価管理は製品・案件など、より細かな単位で行われる点が異なります。予算を組むには原価の見通しが必要なため、原価管理は予算管理の土台にもなります。

関連記事:予算管理システムのおすすめ比較|選び方と主要ツールを解説

原価管理とコスト削減の違い

原価管理は「コスト削減」とも異なります。コスト削減は費用を減らすこと自体が目的ですが、原価管理は適正な原価水準を保って利益を確保することが目的です。品質を落として原価を下げれば、短期的にコストは減っても、顧客満足度や売上を損ないます。原価管理では「削る」だけでなく「適正化する」という視点をとります。

原価管理を行う目的

製品・案件ごとの採算を把握する

会社全体では黒字でも、製品や案件ごとに見ると赤字のものが混ざっていることがあります。原価管理によって単位ごとの原価が見えると、どの製品・案件が利益を生み、どれが採算を圧迫しているかを判別できます。

原価超過の原因を特定する

目標原価と実際原価の差を分解すると、原因の切り分けができます。たとえば、仕入単価の上昇が原因なら仕入先との交渉、材料の使用量が想定を超えているなら製造工程やロスの見直しというように、対応すべき箇所を絞れます。原価の総額だけを見ていても、どこに手を打つべきかは分かりません。

価格設定や受注判断に活用する

原価が正確に把握できていなければ、適切な売価は決められません。製品ごとの原価が見えれば、必要な利益を乗せた価格設定ができます。受注ビジネスでは、見積時点で原価を見通せることが、原価を下回る価格で受けてしまう「赤字受注」を避ける条件になります。

関連記事:原価率とは?計算方法・出し方と業種別の目安をわかりやすく解説

原材料価格などの変化に対応する

原材料価格の高騰や為替変動が起きたとき、原価構造を把握できていれば、影響額を試算して価格改定や仕入先の見直しを判断できます。また、目標原価を使えば請求書の到着や棚卸の完了を待たずに損益の概算をつかめるため、月次決算の早期化にも役立ちます。

原価管理の対象となる原価の分類

原価管理を進めるには、対象となる原価をどう切り分けるかを理解しておく必要があります。分類の切り口は主に3つあります。

形態別分類(材料費・労務費・経費)

原価は、その性質によって材料費・労務費・経費の3つに分かれます(原価の三要素)。原材料の仕入価格が上がっているのか、作業時間が増えているのか、光熱費が膨らんでいるのか——費目別に集計することで、コスト増の発生源を絞り込めます。

直接費と間接費

特定の製品にいくら使ったか特定できる費用が直接費特定できない費用が間接費です。原価管理で難所になるのは間接費です。工場長の給与や工場の減価償却費などは、一定の基準で各製品に割り振る(配賦する)必要があり、この基準の置き方が製品別原価の精度を左右します。

変動費と固定費

生産量に比例して増減するのが変動費(原材料費など)、生産量に関わらず一定額かかるのが固定費(家賃、正社員の給与、減価償却費など)です。この区分は、「何個売れば黒字になるか」を示す損益分岐点の把握に使われ、価格設定や増産の判断材料になります。

分類の詳細は、原価計算の解説記事で扱っています。

関連記事:原価計算とは?種類・目的・計算方法をわかりやすく解説

原価管理の進め方【4ステップ】

原価管理は、計画・実行・確認・改善のサイクルで回していきます。基本の流れは次の4ステップです。

1. 目標となる原価を設定する

まず、目標となる原価を設定します。製造業では標準原価、建設業では工事ごとの実行予算、受託ビジネスでは案件予算や予定工数といった形で、業種によって呼び方と単位が変わります。過去の実績データや工程の分析をもとに、「この製品・案件はいくらで仕上げるべきか」を数値化します。

標準原価を使う場合は、材料の標準単価×標準消費量、標準賃率×標準作業時間のように、要素ごとに積み上げて算定します。

このとき、単に低い数値を置けばよいわけではありません。実績とかけ離れた目標では差異が常に発生し、分析に使えなくなるため、過去実績や現在の工程をもとに設定します。

2. 実際にかかった原価を集計する

製造や工事が終わったら、実際にかかった原価を集計します。材料費・労務費・経費を費目別に集計し、部門別・製品別(工事別・案件別)に配賦していく——これが原価計算の工程です。ここでの集計が不正確だと、以降の差異分析も改善判断も成り立ちません。日々のデータ収集の精度が、原価管理全体の精度を決めます。

3. 目標と実績の差異を分析する

目標原価と実際原価を比較し、その差(原価差異)を分析します。差異は、コストが超過した「不利差異」と、目標より抑えられた「有利差異」に分かれます。総額の差だけでは打ち手が決まらないため、要因別に分解していきます。

補足:製造業における材料費差異の分解

製造業では、材料費の差異を「価格差異」と「数量差異」に分けて分析することがあります。以下は、有利差異をプラスで示す場合の計算例です(符号の表示方法は会社や教科書によって異なります)。

  • 価格差異 =(標準価格 − 実際価格)× 実際消費量 … 仕入単価の変動が要因
  • 数量差異 = 標準価格 ×(標準消費量 − 実際消費量) … 使用量のムダやロスが要因

詳しい計算例は原価計算の解説記事で扱っています。

このように分解すると、仕入交渉が必要なのか、現場のオペレーション改善が必要なのかを判別できます。

4. 改善策を実行し、結果を確認する

分析で判明した原因に対して、改善策を実行します。仕入先の見直し、作業手順の標準化、歩留まりの改善などが該当します。実行後は再び実際原価を集計して効果を確認し、必要なら目標原価そのものも見直します。この1〜4を繰り返すことが原価管理です。

原価管理がうまくいかない主な原因

原価の集計が遅い

月末に締めてから集計・配賦を行う運用では、数字が出るのが翌月中旬以降になります。集計結果が翌月中旬に出る運用では、問題を把握した時点ですでに翌月の製造や案件が進んでおり、改善が一月以上遅れます。原価管理では、精度と同じくらい「いつ数字が出るか」が効いてきます。

Excelが属人化している

多くの企業がExcelで原価管理を始めますが、製品数や工程が増えるとファイルが複雑化し、担当者以外が触れない状態になります。手入力によるミス、集計漏れ、バージョン違いのファイルの混在も起こりやすくなります。月次の集計に何日もかかる、担当者が不在だと数字が出ない、という状態は見直しのサインです。

間接費の配賦基準が実態と合っていない

間接費をどの基準で各製品に割り振るかによって、製品別原価は大きく変わります。数年前に決めた配賦基準を使い続けていると、実際には赤字の製品を黒字と誤認したり、その逆が起きたりします。製品構成や工程が変われば、基準も見直しの対象になります。

現場と経理で数字の認識が異なる

現場が把握している工数や材料使用量と、経理が集計する数値が一致しないケースもあります。この状態では、配賦後の原価を現場が信用せず、改善活動につながりません。原価管理は経理だけで完結せず、現場のデータ入力ルールまで含めて設計する必要があります。

業種によって異なる原価管理の単位

原価管理の考え方は共通ですが、「何を単位に管理し、どこを重点的に見るか」は業種によって変わります。

業種

管理単位

特に見る項目

製造業

製品・工程

材料使用量、作業時間、歩留まり

建設業

工事・現場

実行予算、外注費、工事進捗

IT・広告

案件・プロジェクト

工数、人件費、外注費

飲食・小売

商品・メニュー

仕入価格、廃棄(ロス)、原価率

工期や案件期間が長い業種では、完成後に赤字が判明しても手を打てません。そのため、進行中に予算と実績を対比し、途中で軌道修正できるかどうかが分かれ目になります。

原価管理を効率化する方法

データ収集と集計方法を見直す

システムを検討する前に、まず現在の集計フローを確認します。原価データの入力ルール、締め日、誰がどのタイミングで何を入力するかが決まっていないと、システムを入れても同じ問題が残ります。

工数や材料使用量の入力単位をそろえる、締め日を前倒しする、といった運用の整理だけでも、集計の遅れやズレは改善できることがあります。

Excelから原価管理システムへ移行する

原価管理システムを使えば、費目別・部門別・製品別の集計や間接費の配賦を自動化でき、原価を早い段階で把握できます。差異分析のレポートも自動で作成されるため、集計作業ではなく分析に時間を使えます。生産管理システムや会計システムと連携できるかも、選定時の確認項目です。

建設業向けの工事原価管理、プロジェクト単位の案件別採算管理など、業種特化型のシステムもあります。自社の管理単位に合った製品を比較検討しましょう。

原価計算の実務を外部へ委託する

原価計算・集計の実務負担が大きい場合は、経理業務のアウトソーシングも選択肢になります。集計や記帳の実務を外部に任せ、社内では分析と改善の判断に集中するという分担です。

関連記事:経理アウトソーシングの費用・相場は?自社雇用との比較と見積もりの注意点を解説

原価管理に関するよくある質問(FAQ)

Q.原価管理と原価計算はどちらから始めるべき?

まず、製品・工事・案件など、どの単位で採算を見たいかを決めます。そのうえで、必要な原価を集計できる計算方法を整えます。原価計算の精度だけを追求しても、改善判断に使えなければ原価管理にはつながりません。

Q.原価管理は製造業だけのもの?

製造業だけではありません。建設業の工事原価管理、IT・広告業の案件別採算管理、飲食業のメニュー別原価管理など、工事別・案件別・商品別の採算を把握したい業種で同じ考え方が使われます。管理の単位が「製品」か「工事」か「案件」かという違いがあるだけです。

Q.Excelやスプレッドシートでも原価管理はできる?

小規模で製品数が少なければ可能です。ただし製品数・工程数が増えると、集計の手間やミスのリスク、属人化の問題が大きくなります。月次の集計に何日もかかる、担当者以外が触れない、という状態になったら、システム導入の検討時期といえます。

Q.目標原価はどのくらいの頻度で見直す?

見直し頻度は業種や価格変動の大きさによって異なります。少なくとも年度予算の策定時には確認し、原材料価格、賃率、工程などが大きく変わった場合は期中でも見直します。実態と合わない目標のまま差異分析をしても、判断材料になりません。

まとめ

原価管理を始める際は、最初から詳細な標準原価や複雑な配賦基準を設計する必要はありません。まずは製品・工事・案件ごとに実際原価を集計し、採算の悪い対象とその原因を確認できる状態をつくります。

数字が毎月遅れる、Excelの更新が特定の担当者に依存している、配賦後の原価を現場が信用していないといった状態であれば、計算方法や収集フローの見直しが必要です。原価計算を行うこと自体ではなく、数字を改善判断に使える状態にすることが原価管理の目的です。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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