労務単価(公共工事設計労務単価)の意味と人件費・労務費との違い、令和8年3月適用の最新ポイント、都道府県別・職種別の単価一覧、歩掛を使った積算・見積の計算方法、民間工事・下請取引における注意点と2026年の最新制度まで網羅的に解説します。

労務単価(公共工事設計労務単価)の意味と人件費・労務費との違い、令和8年3月適用の最新ポイント、都道府県別・職種別の単価一覧、歩掛を使った積算・見積の計算方法、民間工事・下請取引における注意点と2026年の最新制度まで網羅的に解説します。
労務単価とは、公共工事の予定価格を積算するために国土交通省・農林水産省が毎年公表する、都道府県別・職種別の1人1日(所定労働時間内8時間)あたりの賃金基準です。
令和8年3月適用の最新ポイントは以下のとおりです。
指標 | 数値 |
|---|---|
全国全職種加重平均値 | 25,834円 |
全国全職種単純平均の伸び率 | 前年度比+4.5% |
連続引き上げ | 14年連続(平成25年度改定以来) |
特記事項 | 加重平均値が初めて25,000円を突破 |
有効工事件数 | 10,031件(令和7年10月調査) |
有効標本数 | 85,670人 |
ただし、この単価には事業主が負担すべき法定福利費・安全管理費等の必要経費は含まれていません。労務単価が25,834円の場合、事業主が1人を雇用するために必要な経費の合計は38,234円(148%)になります(国土交通省参考公表値)。
「労務単価」の正式名称は公共工事設計労務単価といい、国土交通省と農林水産省が毎年実施する「公共事業労務費調査」の結果をもとに公表しています。この調査は1970年(昭和45年)から継続して行われており、長い歴史に裏打ちされた信頼性の高い指標です。
重要な前提として、労務単価は公共工事の予定価格を積算するための基準値です。日給制の労働者が受け取る日当よりも広い概念であり(法定福利費の個人負担分も反映されます)、事業主が雇用に必要な全コストとは異なります。国土交通省の資料では「労働者本人が受け取るべき賃金を基に、日額換算値(所定内労働時間8時間)として設定したもの」と定義されています。
単価は都道府県別・職種別に51職種分設定されており、全国一律ではありません。毎年3月に更新されるため、常に最新の数値を参照することが積算精度の維持に直結します。
項目 | 人件費 | 労務費 | 労務単価 |
|---|---|---|---|
対象 | 全従業員 | 工事直接従事者 | 積算の基準値 |
範囲 | 管理部門含む全コスト | 工事原価に計上する労働コスト | 1人1日あたりの賃金ベース |
性質 | 固定費も含む | 工事量に応じた変動費 | 国公定の指標値 |
使用場面 | 財務・経営管理 | 工事原価計算 | 公共工事の積算・設計金額算出 |
建設業においては、外注費であっても「工種・工程別の工事完成を約する契約でその大部分が労務費であるもの」は、労務外注費として労務費に分類されます。一般的な製造業とは費用の分類が異なる点も覚えておく必要があります。
労務単価は、農林水産省と国土交通省が共同で実施する「公共事業労務費調査」の結果をもとに決定されます。
調査から適用までの流れは以下のとおりです。
令和8年3月適用分の算定に用いた令和7年10月調査では、有効工事件数10,031件・有効標本数85,670人という大規模サンプルをもとにした信頼性の高い数値となっています。建設労働者は地域間で移動しにくく賃金水準に差が生じやすいため、都道府県単位での細かい調査が必要とされています。
区分 | 内容 |
|---|---|
含まれる | 基本給相当額(個人負担の法定福利費を含む) |
含まれる | 基準内手当(通常の作業条件・内容に対する手当) |
含まれる | 臨時の給与(賞与等) |
含まれる | 実物給与(食事等) |
含まれない | 法定福利費(事業主負担分) |
含まれない | 時間外・休日・深夜労働の割増賃金 |
含まれない | 安全管理費・研修費等の現場管理費 |
含まれない | 一般管理費等の諸経費 |
事業主負担の法定福利費や安全管理費等は、積算上は「現場管理費」に別途計上されます。この構造を理解していないと、事業主が実際に負担するコストを大幅に下回る見積りを作ってしまうリスクがあります。
以下は、国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表)に基づく主要12職種の全国平均値です。
職種 | 全国平均値 | 令和7年3月比 |
|---|---|---|
特殊作業員 | 28,111円 | +4.3% |
普通作業員 | 23,605円 | +3.0% |
軽作業員 | 18,605円 | +2.9% |
とび工 | 30,780円 | +4.0% |
鉄筋工 | 31,267円 | +4.6% |
運転手(特殊) | 29,442円 | +4.8% |
運転手(一般) | 25,275円 | +2.9% |
型わく工 | 31,671円 | +5.0% |
大工 | 30,331円 | +3.1% |
左官 | 30,508円 | +4.1% |
交通誘導警備員A | 18,911円 | +5.8% |
交通誘導警備員B | 16,749円 | +6.7% |
主要12職種 加重平均 | 24,095円 | +4.2% |
全職種 加重平均 | 25,834円 | +4.5%(単純平均) |
※全職種加重平均の伸び率+4.5%は単純平均値より算出。各職種・各地域の上昇率はこの数値と異なります。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」(令和8年2月17日公表)。単位:円。
都道府県 | 特殊作業員 | 普通作業員 | とび工 | 電工 | 鉄筋工 |
|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 26,000 | 21,500 | 30,000 | 29,100 | 30,200 |
宮城県 | 30,300 | 23,600 | 34,000 | 29,900 | 39,200 |
東京都 | 30,700 | 27,000 | 33,100 | 34,300 | 33,800 |
神奈川県 | 30,900 | 26,800 | 33,100 | 31,500 | 31,600 |
愛知県 | 29,800 | 25,200 | 32,400 | 28,200 | 31,000 |
大阪府 | 27,800 | 23,800 | 29,600 | 28,100 | 29,000 |
兵庫県 | 25,100 | 24,100 | 28,300 | 26,600 | 27,200 |
福岡県 | 29,000 | 24,100 | 29,900 | 28,900 | 29,900 |
沖縄県 | 28,500 | 23,300 | 35,100 | 23,700 | 33,200 |
都道府県 | 型わく工 | 大工 | 左官 | 配管工 | 内装工 |
|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 28,200 | ※未設定 | 30,900 | 26,700 | 28,600 |
東京都 | 33,000 | 30,600 | 33,800 | 30,100 | 34,400 |
神奈川県 | 32,700 | 30,400 | 32,800 | 28,400 | 34,800 |
愛知県 | 34,400 | 34,000 | 31,100 | 27,700 | 36,300 |
大阪府 | 33,400 | 29,300 | 30,100 | 28,200 | 32,600 |
兵庫県 | 31,400 | 29,200 | 28,600 | 25,400 | 32,600 |
福岡県 | 28,200 | 29,200 | 29,000 | 26,500 | 30,900 |
沖縄県 | 32,300 | ※未設定 | 31,800 | 23,500 | 26,300 |
都道府県 | 交通誘導警備員A | 交通誘導警備員B |
|---|---|---|
北海道 | 18,700 | 15,500 |
東京都 | 20,500 | 18,700 |
愛知県 | 22,400 | 17,800 |
大阪府 | 18,200 | 15,900 |
福岡県 | 18,200 | 16,300 |
沖縄県 | 16,800 | 14,300 |
※未設定:有効標本数が確保できず、当該調査において単価設定に至らなかった職種を示します。全47都道府県・51職種の完全な単価一覧は国土交通省の公式資料(PDF)でご確認ください。
年度 | 全国加重平均 | 前年比(単純平均) |
|---|---|---|
平成24年 | 13,072円 | - |
令和5年 | 21,454円 | +5.2% |
令和6年 | 22,764円 | +6.1% |
令和7年 | 23,600円 | +5.9% |
令和8年(前年度) | 24,852円 | +6.0% |
令和8年3月適用 | 25,834円 | +4.5% |
※金額は加重平均値。令和8年3月適用(25,834円)は平成24年比で伸び率+94.1%となり、約1.98倍の水準に達しています。平成25年に法定福利費相当額の加算措置が行われて以降、14年間で連続して引き上げが続いています。
(1)建設業の人手不足
少子高齢化の進行により熟練技能者の引退が加速し、建設業では慢性的な人手不足が続いています。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用(「建設業の2024年問題」)されたことで、実質的な労働力の供給がさらに制約される構造になりました。人材確保のために賃金水準を上げざるを得ない状況が、単価上昇の根本にあります。
関連記事:残業時間のアラート機能におけるメリット・デメリットを多角的に検証
(2)政府の賃上げ方針と業界連携
毎年、「建設業4団体との賃上げ等に関する意見交換会」が開催され、建設技能者の処遇改善に向けた目標が設定されています。単なる市場メカニズムにとどまらず、政策として業界全体の賃金底上げが図られている点は、他業種との大きな違いです。
構造的な人手不足と賃上げ政策の方向性は変わっていないため、引き続き上昇傾向が見込まれます。ただし、改定率は毎年の調査結果・需給状況・政策判断によって変動します。次年度の正確な単価は、毎年2〜3月の国土交通省公表を確認することが不可欠です。
労務単価は1人1日あたりの賃金基準であり、実際の積算では「歩掛」と組み合わせて使います。
歩掛とは、特定の作業を行うのに必要な手間を数値化したもので、「単位作業量あたりに必要な人工数」として表されます。国土交通省が発行する「土木工事標準歩掛」で職種・作業内容ごとに定められています。
計算式は次のとおりです。
労務費 = 労務単価(円/人日) × 歩掛(人日/単位量) × 作業数量
具体例:コンクリート打設の場合
標準歩掛が存在しない作業については、過去の実績や専門家の判断をもとに設定することになります。
国土交通省は令和8年3月適用の公式資料において、必要経費を含む実際のコストを以下のとおり参考公表しています。
項目 | 金額・割合(加重平均25,834円を基準) |
|---|---|
労務単価 | 25,834円(100%) |
法定福利費(事業主負担分) | 約16%相当 |
労務管理費等 | 約29%相当 |
現場作業にかかる経費(安全管理費等) | 約19%相当 |
事業主が必要な実コスト合計(参考値) | 38,234円(148%) |
※この参考値は全国調査をもとに試算した値であり、工種・工事規模等の条件によって変動します。労務単価は事業主が雇用に必要な全コストを表しているものではないため、積算書全体を通じたコスト把握が重要です。
時間外・休日・深夜労働が発生する場合、公共工事設計労務単価とは別に、割増賃金を見込んで積算します。
公共工事設計労務単価は所定労働時間内8時間あたりの単価であり、時間外・休日・深夜労働の割増賃金は含まれていません。そのため、割増分は別途計算が必要です。
国土交通省の積算資料では、割増賃金は1時間当たり割増賃金係数 K を用いて整理されており、考え方は次のとおりです。
労務費(総額)= 労務単価 + 労務単価 × K × 割増すべき時間数K = 割増対象賃金比 × 1/8 × 割増係数
(注)ここの「労務費(総額)」は工事全体の総額ではなく、公共工事設計労務単価(8時間当たり)に時間外・深夜等の割増分を加えた1人・1日当たりの労務費を指します。
つまり、単純に「労務単価 × 割増率 × 時間数」で計算するのではなく、8時間単価を1時間換算する考え方を含めて処理する必要があります。
なお、割増対象賃金比は職種ごとに異なり、割増係数は時間外・深夜・休日などの区分に応じて設定されます。
国土交通省は、労務単価の運用に関して重要な注意事項を明示しています。
事業主が負担すべき必要経費分(法定福利費・安全管理費等)を下請代金に計上しない、または下請代金から値引くことは不当行為とされています。
元請企業が下請企業に対して必要経費分を含まない単価での契約を強いることは、建設業法上の問題となるだけでなく、行政指導の対象にもなりえます。標準見積書を活用し、法定福利費を内訳として明示した見積書を取り交わすことが業界全体で推進されています。
建設業法(昭和24年法律第100号)第34条第2項に基づき、中央建設業審議会から勧告された「労務費に関する基準」において、公共工事設計労務単価は重要な役割を担っています。この基準では、すべての建設工事の請負契約において確保されるべき「通常必要と認められる労務費(適正な労務費)」の計算の基礎となる水準として公共工事設計労務単価が位置づけられており、公共・民間工事を問わず、下請取引を含め、適正な労務費が確保されるべきとされています。
つまり、公共工事設計労務単価の役割は、2026年時点では「公共工事の積算ツール」にとどまらず、民間工事における労務費交渉・適正取引の基礎水準としても機能しています。
種類 | 主な適用場面 | 適用開始 |
|---|---|---|
公共工事設計労務単価 | 建設工事の積算(51職種) | 毎年3月 |
建築保全業務労務単価 | 国有施設の清掃・警備・設備管理等 | 毎年4月 |
設計業務委託等技術者単価 | 設計・調査・測量等の委託業務 | 毎年3月 |
電気通信関係技術者等単価 | 電気通信工事の技術者・作業員 | 毎年3月 |
鋼橋積算基準の直接労務単価 | 鋼橋の工場製作に従事する作業員 | 毎年3月 |
A. いいえ。公共工事積算用の基準値です。事業主負担の法定福利費や安全管理費等の必要経費は含まれておらず、令和8年度の単価25,834円の場合、事業主の実コストは38,234円(148%)が参考値とされています(国土交通省公表値)。
A. 公共工事設計労務単価は毎年3月から適用されます(建築保全業務労務単価は4月から)。毎年10月の調査結果をもとに翌年2〜3月に公表され、3月から新単価が適用されます。
A. 法的な義務ではありませんが、建設業法第34条第2項に基づく「労務費に関する基準」において、公共工事設計労務単価が適正労務費の計算の基礎となる水準として位置づけられています。民間工事・下請取引においても、この水準をもとに適正な労務費を確保することが求められています。
A. 労務単価は都道府県別・職種別に設定されているため、地域によって大きく異なります。たとえば令和8年3月適用の電工では、東京都34,300円、沖縄県23,700円で、10,600円の差があります。
なお、こうした地域差は、まず都道府県別単価そのものの違いによって生じます。そのうえで、個別工事では、時間的制約、特殊条件による作業、山間へき地・離島などの施工条件に応じて、別途補正や割増しが行われる場合があります。
A. 労務単価に「割増対象賃金比」(職種によって80〜96%程度)を掛けた割増対象労務単価に、労働基準法第37条に基づく割増率を掛けて算出します。この割増額を基本の労務単価に加算して総労務費を求めます。割増対象賃金比は国土交通省ホームページで確認できます。
A. 令和8年10月の調査結果をもとに、令和9年2〜3月に公表・3月適用の見込みです。国土交通省のウェブサイト(建設産業・不動産業ページ)で最新情報を確認できます。
A. 国土交通省が毎年公表する「公共工事設計労務単価」の資料(PDF)に全職種の単価一覧が記載されています。特殊作業員・普通作業員・軽作業員から始まり、電工・鉄筋工・型わく工・配管工・交通誘導警備員A・Bまで51職種が都道府県別に掲載されています(令和7年10月調査では建築ブロック工が単価設定に至らず)。
この記事では、公共工事設計労務単価(労務単価)の仕組みから最新データ、積算への活用方法、最新制度の動向まで解説しました。
要点をまとめると以下のとおりです。
労務単価の継続的な上昇は、建設工事における原価管理の難易度を高めています。積算業務や労務管理の業務量が増す中で、バックオフィス全体の効率化が経営課題になっている企業には、労務アウトソーシングの活用も一つの選択肢です。
関連記事:【2025最新版】人事労務アウトソーシングおすすめ11選比較
※参考資料:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表)、同「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」(単価表・参考公表)、中央建設業審議会「労務費の基準」