1. 請求書と領収書にまつわる疑問を説明!書き方や保存方法は?
請求書と領収書にまつわる疑問を説明!書き方や保存方法は?

請求書と領収書にまつわる疑問を説明!書き方や保存方法は?

経理更新日:2024-09-26

請求書や領収書は、税務調査での取引証明としてルールを正確に理解して、取り扱わなければなりません。また、ペーパーレス化の進展で、電子帳簿保存法などの請求書や領収書に関する法律が改正されており、経理担当者の事前準備が増える可能性もあります。今回は、請求書と領収書にまつわる様々な疑問について解説します。

請求書、領収書の基本

日常業務で何気なく経理処理している請求書領収書にも、納税証明としての効力を持たせる意味で必ず押さえておくべきポイントがあります。まずは請求書、領収書の基本的な役割を見ていきましょう。

請求書とは?

請求書とは、売り手/サービスの提供者が、買い手/サービスを受けた者に対して代金の支払いを請求する書類です。「この代金をいつまでに支払ってください」と依頼する書類です。当然ですが金銭授受の前に発行されるものです。

請求書には、税務監査時の取引証明としての役割に加えて、取引先とのトラブル防止としての役割もあります。口約束での言った言わないを避けてきちんと書面で残しておこうという目的です。

前者の税務監査の取引証明として国税庁が定めている記載内容は、作成者の氏名等、取引年月日、取引の内容、税率ごとの取引金額、受領者の氏名等の5点ですが、商慣習としてこれらの他に物品やサービスの単価・数量・合計価格や支払先、支払期日が記載されるのが一般的です。取引先から発行依頼があれば、必要事項を漏れなく記載し遅滞なく送付しましょう。

領収書とは?

領収書とは支払いを受けた側が支払った側に、代金を受け取ったことを証明する書類です。「確かにあなたからこの代金を受領しました」という証明です。領収書は金銭授受の後に発行されます。

中小企業の経理担当者はもちろんのこと、個人事業主やフリーランスの方も仕事の対価を受け取ったあとは領収書を発行しましょう。会計ソフトで簡単に作成できますし、100円ショップで複写式の領収書綴りを購入してもよいでしょう。

保存期限

請求書や領収書の保存期間は7年間と定められています。消費税の仕入税額控除を受ける場合を例に、国税庁の情報をもとに説明します。

・消費税の仕入税額控除を受けるためには課税仕入れなどに関する帳簿及び請求書等を保存しなければなりません。
・その保存期間については、その閉鎖又は受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地又はその事業に係る事業所等に保存しなければなりません。

参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁 (nta.go.jp) 

最初の5年間は会計帳簿と請求書等の確証の両方について保存義務がありますが、6年目と7年目はどちらか一方を保存しておけばよいと決められています。

記載すべき内容

請求書や領収書には以下5点を記載しなければいけません。

1. 書類作成者の氏名又は名称
2. 取引年月日
3. 取引内容
4. 税率ごとに区分して合計した税込対価の額
5. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁 (nta.go.jp) 

消費税率の変更に伴い、2019年10月から「税率ごとに合計した取引金額」の記載が義務付けられていますので注意が必要です。具体的には10%対象の合計金額と8%対象の合計金額を明示しておく必要があります。

ちなみに、この記載方式を「区分記載請求書等保存方式」と呼んでおり、2019年10月から2023年9月まで継続されることになっています。2023年10月からは「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)」に改正されることが決まっています。会社の経理担当者はあらゆる事前調査と準備が予想されるため、今のうちから情報収集することをおすすめします。

>>【2023年導入】インボイス制度とはどんな制度?基礎知識を解説

収入印紙

請求書には収入印紙は必要ありません。請求書発行時点ではまだ金銭授受が生じていないためです。一方、領収書は印紙税の課税対象です。領収書を作成した人が収入印紙を貼り付け、消印して納付します。消印は収入印紙と文書にまたがって押しましょう。必ずしも契約に使った印鑑である必要はなく、シャチハタやボールペンを使った署名でも構いません。

収入印紙の額は領収書の取引金額によって定められていて、たとえば100万円以下なら印紙税200円、1千万円から2千万円以下では印紙税4千円です。領収書金額が5万円未満であれば非課税となっているため、収入印紙を貼る必要はありません。

もし印紙税を誤って納付してしまったという場合は、「印紙税過誤納確認申請書」を該当文書と一緒に所轄の税務署に提出することで、印紙税の還付が受けられます。

参考:No.7130 誤って納付した印紙税の還付|国税庁 (nta.go.jp)

請求書兼領収書とは?

病院で診療を受けた後の支払い時に「請求書兼領収書」と記載された書類を受け取った覚えのある方は多いでしょう。上段に請求書、下段に領収書の記載です。医療機関から患者に対して、診療費用の請求と金銭の受領が同時に行なわれるために、このような書類が用いられています。

間違っても商品販売取引において、請求書と領収書を同時に送付することはしないでください。相手方から代金支払いがない場合、支払い交渉が難しくなってしまいます。

請求書、領収書にまつわる疑問を解説

領収書もレシートもない場合の取り扱い

会社の経費精算でよくあるケースが、慶弔関係の支出や交通機関の切符購入などで領収書がない場合です。会社によっては「支払証明書」に内容を記載し上司の承認とともに経理処理を行なうルールで運用している場合もあります。また、領収書の代わりとして「出金伝票」に記載して経理処理している会社もあるでしょう。

出金伝票には、作成者、支払日、支払内容、支払金額、支払先の記載が必要です。ただし、どれだけしっかり記載しても、支払証明書や出金伝票は所詮自己申告。税務監査の取引証明としては弱い確証です。あくまでも領収書がない場合の代替措置の位置づけとしましょう。どうしてもという場合は、なるべく取引にかかわる参考書類(慶弔関係における招待状など)を一緒に保管しておきましょう。

領収書の代わりにレシートでも大丈夫?

「レシートはもらったけど領収書ももらわないといけないの?」という疑問はよく聞かれます。ここでも国税庁の定義に沿って解説します。

【再掲】

請求書や領収書には以下5点を記載しなければいけません。

1. 書類作成者の氏名又は名称
2. 取引年月日
3. 取引内容
4.税率ごとに区分して合計した税込対価の額
5. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁 (nta.go.jp) 

一般的にレシートには①~④は記載されていますが、⑤の宛名についてはそもそも記載欄がありません。ではレシートは税務調査の取引証明となり得ないのでしょうか?ここで消費税法では、以下の事業については宛名の記載が不要であると定められています。

  • 小売業
  • バス、鉄道、航空会社などの旅客運送業
  • 旅行に関する事業
  • 飲食業
  • 駐車場業

つまり、宛名の記載のないレシートであってもこのような性質の費用であれば取引証明になり得るというわけです。そもそもレシートには取引の内容が品目別に数量、単価、合計と詳細に記載されていることから、内容的には領収書以上に取引証明の効力があるとも言えます。

>>レシートはどのように管理すればいいか?レシートを正しく管理して経費精算を行おう!

取引証明として請求書・領収書が絶対必要?

国税庁は「(省略)帳簿及び請求書等を保存しなければなりません」と公表しています。「等」とあるとおり、「請求書」そのものでなくとも、それに準じるもので決められた内容を含んでいれば取引証明になり得るという解釈が一般的です。たとえば業務完了報告書や支払通知書がこれに当たります。

何度も依頼しているのに先方から請求書が届かず、決算前に焦った経験のある経理担当者の方は多いことでしょう。そんな時、支払通知書であればこちら側から「この内容で支払います」という書面通知を行なうため、請求書や領収書を待たずとも経理処理を行なうことができるのです。

参考:No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた|国税庁 (nta.go.jp) 

個人事業主やフリーランスも発行必要?

結論から言うと、請求書や領収書の発行は法律で定められている義務ではないため、必ず発行しなければならないという訳ではありません。ただし請求書には取引先とのトラブル防止としての役割もあるため、言った言わないの未整合を避けるためにも発行しておいたほうが無難な場合も多くあります。また、取引先にとっては請求書や領収書は税務監査時の大事な取引証明書類となるため、個人事業主やフリーランスの方へ提出を求めることも少なくないでしょう。その場合には必要事項を漏れなく記載し、すみやかに送付するようにしましょう。

宛名の書き方(会社名?部署名?個人名?)

請求書や領収書は税務監査の取引証明になり得る公的な書類ですから、宛名は正確に記載するべきです。ここでも国税庁の公表内容を見てみましょう。

消費税法第30条第9項一のホ
・書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

参考:第6節 仕入税額の控除に係る帳簿及び請求書等の記載事項の特例|国税庁 (nta.go.jp)

「氏名又は名称」とあるとおり、税法上は個人名でも会社名でもどちらでも公的な証明書類に該当することになります。ただし商慣習の観点では、会社から業務を受注しているにもかかわらず個人名を記載した請求書を送るのは違和感があります。やはり会社名とともに担当部署名、担当者氏名の順に丁寧に宛名書きするのが一般的です。会社によっては敷地内にいくつも建物があったり、同姓同名の従業員がいる場合も考えられるため、部署名もきちんと記載し遅滞なく届けられるよう配慮することも重要です。

請求書、領収書に印鑑は必要?

請求書や領収書には、税務監査時の取引証明としての役割があります。その効力を持たせるには「作成者、日付、取引内容、金額、宛先」の5項目の記載が必要と定められています。ただし、ここでは印鑑の必要性はありません。

確かに印鑑には改ざんなどの不正を抑止する効果はありそうです。また古くから日本の印鑑文化の名残で、押印を見れば安心という印象もあります。このように印鑑は、あくまで商慣習からの観点と言えるでしょう。

ご参考まで、収入印紙には印鑑を押すのが一般的ですが、これは印紙の再使用を防止するのが目的であり税法上の義務ではありません。

クレジットカード、電子マネー支払いの領収書は必要?

クレジットカードや電子マネー、銀行振込などで支払ったときには領収書を受け取らないケースがほとんどです。そもそもインターネット購入では対面で領収書を受け取る環境にありません。このような場合、領収書は必要でしょうか?

結論を言うと、厳密には領収書が必要ということになります。クレジット会社等が発行した明細書はその取引当事者が発行した領収書ではないため、経費計上の確証にはなり得ないからです。

ただ、現金で支払った場合と違ってこれらの支払方法の際には「誰が、いつ、誰に、何を、いくら」支払ったのかの情報がデータとして残っています。もし領収書がなくともいざという時には取引証明の材料として提出することは可能です。

ペーパーレス化でどうなるの?

請求書や領収書を含む会社の帳簿や関係書類を電子化する流れは、1998年7月に施行された「電子帳簿保存法」にさかのぼります。当初はサーバーやDVD、CD等による保存が主流でした。その後、技術の進歩にともない電子保存の対象が拡大されてきたものの、税務署への事前申請が必要、領収書を撮影してタイムスタンプと呼ばれる改ざん防止用の仕組みが必須といった、少々手間のかかるルールでした。

withコロナ時代の業務プロセス整備にともないこの法律が2020年10月に改正され、会社や個人事業主にとって電子データ保存が進めやすいよう条件が緩和されました。ひと言でいうと、キャッシュレス決済した利用データを会計システムに取り込めばOKという、非常に簡便的なプロセスに変わりました。改ざん防止対策といったコンプライアンス遵守はもちろんですが、その上で電子データ保存による経理業務の負荷減少が望まれます。

注意点として、電子データ保存できる会計システムは国が認可したものに限られるということですので、その点ご留意ください。

>>帳票とは。書類の電子化を活用し、経理業務の属人化を排除しよう!

まとめ

以上、請求書と領収書にまつわる疑問点について解説してきました。請求書や領収書には、

  • 税務上の取引証明としての役割
  • 商慣習として取引相手と約束事を取り決めたもの

のふたつの役割があります。作成は法的義務ではないため他の書類でも代用できますが、商慣習としては一般的になっていると言えるでしょう。

また保存期間は7年と定められていますが、ペーパーレス化の条件緩和も進んでおり、今後はますます紙そのものから電子データへと移行していくと予測されます。高機能でコストパフォーマンスのよい会計ソフトもたくさん出てくることでしょう。経理担当者と共に早めに調査・準備されることをおすすめします。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士

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