請求書と領収書は、どちらも取引を証明する大切な書類ですが、発行するタイミングも役割も別物です。この記事では、両者の違いを一目でわかる比較表で整理したうえで、書き方・保存方法・収入印紙・インボイス制度・電子帳簿保存法まで、実務でよくある疑問をまとめてわかりやすく解説します。

請求書と領収書は、どちらも取引を証明する大切な書類ですが、発行するタイミングも役割も別物です。この記事では、両者の違いを一目でわかる比較表で整理したうえで、書き方・保存方法・収入印紙・インボイス制度・電子帳簿保存法まで、実務でよくある疑問をまとめてわかりやすく解説します。
「請求書と領収書は何が違うの?」「レシートでも代わりになる?」——経理や個人事業の現場では、この2つの書類の違いや扱い方でつまずく場面がよくあります。どちらも取引を証明する大切な書類ですが、発行するタイミングも役割も別物です。この記事では、まず請求書と領収書の違いを一目でわかる表で整理し、そのうえで書き方・保存方法・実務でよくある疑問までまとめてみていきます。
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細かい話に入る前に、両者の違いを整理しておきましょう。
項目 | 請求書 | 領収書 |
|---|---|---|
目的 | 代金の支払いを求める | 代金を受け取ったことを証明する |
発行するタイミング | お金のやり取りの前 | お金のやり取りの後 |
発行する人 | 売り手(サービス提供者) | 代金を受け取った側 |
主な役割 | 支払い依頼+取引の証拠+トラブル防止 | 支払い済みの証拠 |
収入印紙 | 不要 | 必要(5万円以上の場合) |
記載すべき基本事項 | 共通(後述の5項目) | 共通(後述の5項目) |
ざっくり言えば、請求書は「払ってください」とお願いする書類、領収書は「確かに受け取りました」と証明する書類です。お金のやり取りをはさんで、前が請求書・後が領収書という順番になります。

日常業務で何気なく処理している請求書ですが、あらためて役割を確認しておきましょう。請求書は、売り手(サービス提供者)が買い手に対して「この代金をいつまでに支払ってください」と依頼する書類です。当然ですが、お金のやり取りが発生する前に発行されます。
請求書には二つの役割があります。ひとつは税務調査での取引の証拠、もうひとつは取引先とのトラブルを防ぐ役割です。口約束での「言った・言わない」を避けて、きちんと書面に残しておこう、という目的ですね。
税務上の証拠として国税庁が求める記載事項は後述の5点ですが、実務では加えて、品目ごとの単価・数量・合計金額、振込先、支払期日などを記載するのが一般的です。取引先から発行を求められたら、必要事項を漏れなく書いて速やかに送りましょう。
領収書は、代金を受け取った側が支払った側に「確かにこの金額を受け取りました」と証明する書類です。請求書とは逆に、お金のやり取りが済んだ後に発行されます。
企業の経理担当者だけでなく、個人事業主やフリーランスも、報酬を受け取ったら領収書を発行できるようにしておくと安心です。会計ソフトで簡単に作れますし、複写式の領収書綴りは100円ショップでも手に入ります。

違いはあっても、証拠書類として押さえるべき基本は共通しています。
請求書・領収書には、最低限、次の5点を記載する必要があります。
消費税の複数税率化にともない、2019年10月からは「税率ごとに区分した合計額」の記載が必要です。具体的には、10%対象の合計と8%(軽減税率)対象の合計を分けて明示しておく必要があります。ちなみに、この方式は「区分記載請求書等保存方式」と呼ばれ、2023年9月まで続きました。そして2023年10月1日からは、みなさんご存じの「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」に移行しています。仕入税額控除を受けるための請求書には、上記に加えて登録番号や税率ごとの消費税額などの記載も求められます(詳細は後述)。
参考:国税庁「No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた」
関連記事:【2023年導入】インボイス制度とはどんな制度?基礎知識を解説

請求書や領収書の保存期間は、原則として7年間です。消費税の仕入税額控除を受ける場合、課税仕入れに関する帳簿および請求書等は、受領日などが属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日を起点に、7年間保存します。最初の5年間は帳簿と請求書等の両方、6年目・7年目はどちらか一方を残しておけば足ります。
請求書には収入印紙は不要です。発行時点ではまだお金のやり取りが生じていないためです。一方、領収書は印紙税の課税対象で、金額に応じた収入印紙を貼り、消印をして納付します。消印は印紙と書面にまたがるように押し、シャチハタや署名でも構いません。
印紙税額は領収書の金額で決まり、100万円以下なら200円、1,000万円超2,000万円以下なら4,000円などです。記載金額が5万円未満なら非課税で、収入印紙は不要です。誤って納めた場合は「印紙税過誤納確認申請書」を該当文書とあわせて所轄の税務署に提出すれば還付を受けられます。
参考:国税庁「No.7130 誤って納付した印紙税の還付」
病院で診療を受けたあとに「請求書兼領収書」と書かれた書類を受け取った経験がある方は多いでしょう。上段が請求書、下段が領収書という一体型の書類です。医療機関では診療費の請求と受領が同じタイミングで行われるため、こうした形式が使われます。
つまり請求書兼領収書は、「支払いのお願い」と「受領の証明」を1枚にまとめたものです。請求と支払いが同時に完結する取引に向いています。
一方で、商品販売の取引では、間違っても請求書と領収書を同時に送付することはしないでください。相手から代金の支払いがない段階で領収書まで渡してしまうと、支払いを求める交渉が難しくなってしまいます。請求と入金にタイムラグがある取引では、請求書と領収書は分けて発行するのが原則と覚えておきましょう。

ここからは、実務で迷いやすいケースを具体的に見ていきます。
慶弔費や電車の切符代など、領収書が出ない支出は経費精算でよく発生します。社内ルールとして「支払証明書」に内容を書いて上司の承認を得る会社もあれば、「出金伝票」で代用する会社もあります。
出金伝票には、作成者・支払日・支払内容・支払金額・支払先を記載します。ただしこれらは自己申告であり、税務調査での証拠としては弱いものです。あくまで領収書がないときの代替手段と位置づけ、招待状など取引に関連する参考資料もあわせて保管しておくと安心です。
「レシートはあるけれど、あらためて領収書ももらうべき?」という疑問はよく聞かれます。
前述の5項目のうち、一般的なレシートには①〜④は印字されていますが、⑤の宛名についてはそもそも記載欄がありません。では、レシートは税務調査の取引証明になり得ないのでしょうか?ここで消費税法では、次の業種について宛名の記載がなくても差し支えないと定められています。
つまり、宛名のないレシートであっても、こうした性質の支出であれば取引の証拠として通用するというわけです。そもそもレシートは品目ごとに数量・単価・合計が細かく印字されているため、内容の面では領収書以上に証拠力が高いとも言えます。なお、インボイス制度ではこれらの業種は「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の交付が認められ、宛名がなくても登録番号などがあれば仕入税額控除の要件を満たします。
関連記事:レシートの正しい管理方法や領収書との違い、経費精算時の扱い方

国税庁は「帳簿および請求書等を保存しなければならない」と定めています。「等」とあるように、請求書そのものでなくても、決められた事項を満たした書類であれば証拠になり得ます。たとえば業務完了報告書や支払通知書がこれに当たります。
何度も依頼しているのに先方から請求書が届かず、決算前に焦った経験のある経理担当者の方は多いことでしょう。そんなとき、支払通知書であれば「この内容で支払います」と自社側から書面で通知するため、相手の請求書や領収書を待たずに経理処理を進められるのです。
請求書や領収書の発行は法律上の義務ではないため、必ず出さなければならないわけではありません。ただし、請求書には取引先とのトラブルを防ぐ役割があるため、発行しておいたほうが無難なケースは多くあります。
また、取引先にとってはこれらの書類が税務調査での重要な証拠になるため、発行を求められることも少なくありません。特にインボイス制度の開始後は、取引先が仕入税額控除を受けるために適格請求書(登録番号入り)を求めてくる場面が増えています。求められたら必要事項を漏れなく記載し、速やかに送付しましょう。

消費税法では宛名を「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」と定めており、税法上は個人名でも会社名でも証拠書類として認められます。
ただし商慣習の観点では、会社から仕事を受けているのに個人名宛の請求書を送るのは違和感があります。実務では会社名・担当部署名・担当者名の順に丁寧に書くのが一般的です。大きな会社では同姓同名の社員がいることもあるため、部署名まで正確に書いて確実に届くよう配慮しましょう。
参考:第6節 仕入税額の控除に係る帳簿及び請求書等の記載事項の特例|国税庁 (nta.go.jp)
税務上の証拠として必要なのは前述の5項目の記載であって、印鑑そのものは必須ではありません。
確かに印鑑には、改ざんなどの不正を抑止する効果はありそうです。また、古くからの日本の印鑑文化の名残で、押印を見れば安心という印象もあります。とはいえこれらはあくまで商慣習からの観点であって、法的な要件ではありません。ご参考まで、収入印紙に印鑑を押すのは印紙の再使用を防ぐためのもので、これも税法上の義務ではありません。
カード・電子マネー・銀行振込などで支払った場合、領収書を受け取らないことがほとんどです。厳密には領収書はあったほうがよく、カード会社の利用明細は取引当事者が発行したものではないため、それだけでは証拠として弱いとされます。
ただしこれらの支払方法では「誰が・いつ・誰に・何を・いくら」払ったかがデータとして残ります。領収書がなくても、いざというときは利用明細やクレジット売上票を取引の裏付けとして提示できます。

請求書・領収書を含む帳簿・書類の電子化は、1998年施行の電子帳簿保存法にさかのぼります。当初は税務署への事前承認やタイムスタンプが必要で手間の多い制度でしたが、2022年1月施行の改正でスキャナ保存の要件が簡素化され、事前承認も不要になりました。
実務でもっとも重要なのが、2024年1月1日からの電子取引データ保存の完全義務化です。メールやクラウド、EDIなどで受け取った請求書・領収書などは、紙に印刷するだけでは要件を満たさず、原則として電子データのまま保存しなければなりません。
もともとは、withコロナ時代の業務プロセス整備にあわせて電子データ保存を進めやすくする流れがあり、そこから要件緩和と義務化が進んできました。法人・個人事業主を問わず、電子取引を行うほぼすべての事業者が対象です。保存にあたっては、改ざんがないことを担保する「真実性の確保」と、必要なときにすぐ確認できる「可視性の確保」が求められます。
関連記事:帳票とは。書類の電子化を活用し、経理業務の属人化を排除しよう!
2023年10月1日に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存を必要とする仕組みです。適格請求書を発行できるのは、登録した「適格請求書発行事業者」に限られます。
これまで消費税と縁のなかった免税事業者にも影響が大きく、免税事業者のままだと取引先が仕入税額控除を受けられないため、取引条件の見直しを求められることもあります。急激な負担増を和らげる経過措置として、免税事業者などからの仕入れには一定割合の控除が認められてきました。
この控除割合は、令和8年度税制改正(2026年3月成立)により見直され、適用期限も2年延長されました。現在のスケジュールは次のとおりです。
控除割合は緩やかになりましたが、最終的にインボイス発行事業者以外との取引で控除が受けられなくなる点は変わりません。取引先の登録状況の確認は、引き続き重要です。
請求書と領収書の違いは、「支払いを求める書類(前)」か「受領を証明する書類(後)」かという一点に集約されます。どちらも税務上の取引の証拠であり、取引先との約束を残す商慣習上の役割も担います。
発行そのものは法的義務ではなく、他の書類で代用できる場面もありますが、商慣習としてはすっかり一般的になっていると言えるでしょう。保存期間は原則7年ですが、電子帳簿保存法により電子取引データの電子保存はすでに義務化され、インボイス制度も定着してきました。今後はますます、紙そのものから電子データへと移行していくと予測されます。高機能でコストパフォーマンスのよい会計ソフトもたくさん出てきていますので、経理担当者を中心に、早めに調査・準備されることをおすすめします。