1. FASSとは?簿記の次に勉強するべき資格におすすめ
FASSとは?簿記の次に勉強するべき資格におすすめ

FASSとは?簿記の次に勉強するべき資格におすすめ

経理更新日:2024-09-22

簿記検定試験をを一通り勉強して合格をしたは良いものの、次のスキルアップのために何を勉強したらよいか悩まれていませんか?そんな方におススメなのがFASSです。FASSはどんな試験で、どんなメリットがあるのでしょう。ここでは試験の概要、そしてメリット、勉強法や注意点などをお伝えしたいと思います。

FASSとは

日本CFO協会が経産省の委託を受けて開発した試験システムで2005年からスタートした新しい試験制度です。これまで、経理・財務系の資格と言えば日商簿記がその代表格でしたが、ここに新しくFASSも加わる形となりました。FASSとは、「FinanceAccounting Skill Standard」を略したものになります。

どんな試験?

日商簿記が帳簿会計を主眼とした試験制度であるのに対して、FASSは実務寄りの知識を問う試験となっています。問題は4択で出され、計算よりも経理・財務・税務の論点に関わる実務寄りの知識が問われます。出題範囲としては以下の4大分野から出題されます。

①資産分野

内容:売掛債権管理、買掛債務管理、固定資産管理、ソフトウェア管理、在庫管理

②決算分野

内容:月次業務管理、単体決算業務、連結決算業務、外部開示業務

③税務分野

内容:税効果計算業務、消費税申告業務、法人税申告業務、連結納税申告業務等

④資金分野

現金出納帳管理、手形管理、有価証券管理、債務保証管理、貸付金管理等

試験時間は90分で、合否が判定される試験ではなく800点満点中何点取れたかを判定する試験となります。英語のTOEICみたいな仕組みと思えばよいでしょう。試験を受けた得点によって自分の経理スキルが判定されます。「業務に補助が必要」というE判定から、「業務全体をくまなく把握している」というA判定まであります。

参考:検定の概要:FASS検定|FASS 経理・財務人材育成事業 公式サイト

FASSを勉強するメリット

このような試験制度となっているFASSですが、勉強して受験するメリットはあるのでしょうか?もちろん、メリットはあります。受験するメリットは大きく分けて3つあると言えるでしょう。

簿記と実務のギャップを埋めてくれる

従来の簿記試験だけでは問われるスキルと実際の会社で行われる作業に大きなギャップがありました。例えば、固定資産について簿記では固定資産の購入、減価償却、そして売却や買い替えや修繕などの仕訳スキルを問う内容がメインでした。対して実際の実務ではこれらの作業はもちろん必須ですが、固定資産の取得原価の算定や固定資産台帳の管理、修繕の取り扱いの判定や固定資産税の納付など簿記検定では取り扱われない作業もあります。ここの部分は簿記検定で問題文として示されてしまっている論点でもあるでしょう。

FASSでは簿記では取り扱われないような論点も出題され、経理における固定資産業務の一連のフローが学べるようになっています。簿記と実務のギャップを埋めてくれる試験として活用することが出来るのです。

知名度は低いものの人事評価制度に活用する企業が増加中

新しい試験であるため、簿記検定に比べて知名度が低い試験です。しかしながら、近年は人事評価制度にFASSを導入する企業が増加している傾向にあります。徐々に、その実務寄りの試験であることの評価が得られてきているのです。

転職市場では簿記二級がマストという求人が多い印象ですが、あと一歩なにか欲しいのでしたらならFASSがおススメです。A判定、もしくはB判定が取れれば、社内外に自分のスキルをアピールする武器となることでしょう。

自分のやっている業務を頭の中で整理できる

日々自分が行っている業務がどういったフローにあるのか意識できているでしょうか?

中には経理組織が大きすぎて自分がどの立ち位置にいるのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。そのような方は自分のやっている業務の大局が掴めなく、目先の作業にとらわれがちになります。FASSでは現在従事中の業務の知識やフローを改めてインプットすることで自分のやっている業務の立ち位置が分かるようになります。

また、業務ローテーションがある会社では別の業務に従事する際の予習としても使えるはずです。既に経理として働いている方にも、頭の中を整理するメリットもあるのです。

勉強はどのように進めたら良い?

経理初心者であることを前提にお話ししますと、初心者はまだまだインプットすべき事項も多いかと思います。ですので、知識をインプットしてアウトプットするという基本的な学習方法が大事になってきます。インプットというと、簡単に聞こえますが要は理解して暗記することです。その点は他の勉強と違わず泥臭いので根気よく取り組んでいきましょう。

勉強姿勢について

勉強姿勢として点数が高得点であれば問題演習だけで勉強時間は10時間もいらないという意見もあるようです。もちろんそのような考え方もあるでしょうが、せっかく年単位で経理の仕事に就くのでしたらじっくりと記憶をしながら勉強したいものです。というのも、個人的な意見となりますがFASSの試験で、すぐに関連知識を思い出すことが出来なくては、たくさんの業務で忙殺されてしまう実際の職場では業務知識をスムースに引き出すことはできないものです。

ここは、何度もインプットやアウトプットを繰り返して知識がすぐに思い出せるまで習熟していきましょう。逆に、もう経理についてはベテランで頭の中でもある程度、知識も整理しきれいているという方は問題演習だけでも大丈夫でしょう。

独学?それとも専門学校?

大手の簿記の専門学校ではFASSの講座も取り扱うようになってきました。一例として公認会計士や税理士の講座を設けていることで定評のあるTACがFASSの講座を開講しています。授業としては11回、価格は6万円ほどとなります。まず、経理に配属されたばかりでじっくり右も左も分からないという方は独学は難しく感じられるか。そのような方は専門学校の講座を頼るのも一つの手です。

対して、経理や簿記の勉強は十分進んでいるという方は勉強するための下地はもうできているでしょうから、十分独学でも戦えるはずです。

参考:TAC ビジネスプロ養成スクール│通信講座案内

教材について

独学をするのでしたら、自分で教材を選ばなけれなりません。FASSは比較的新しい試験制度のためか、教材についてはまだまだ選択肢は少ないというのが実情です。まずは、日本CFO協会から出版されている公式教材を使った勉強が基本となるでしょう。それ以外にも、いくつもの教材が出版されていますので自分のスキルや公式問題集を解いてみて感触も鑑みて参考書を選んでみましょう。

参考:FASS検定公式学習ガイド:教材・学習講座|FASS 経済産業省 経理・財務人材育成事業 公式サイト

注意点

実務寄りの試験ではありますが、経理業務を形作る会計基準や法令等をダイレクトに勉強するわけではありません。もっと自分の業務の専門性を高めるのでしたら、法令や会計基準をしっかりと目を通したり動向を追うのがベストです。FASSで学習できる知識が最終ゴールというわけではないので、あくまで一通過点として高得点を目指しましょう。

また、監査や税法を中心に勉強するわけではなく、もっぱら事業会社側の経理業務・財務業務の勉強が中心となります。もしも、現在、事業会社の経理だけれども将来士業に進みたいという方は直接、公認会計士や税理士の勉強をすることをおススメします。

まとめ

会社で求められている経理は自分の業務だけでなく、業務全体のことが把握しきれて大局的に動くことができる人材ではないでしょうか?もちろん、実務経験だけでその境地に至るためには人によっては長い時間かけなければならないかもしれません。FASSはそのような実務的な知識を付けるとっかかりとしては打ってつけの試験です。ぜひ、自分のキャリア形成の手段として活用していきましょう。


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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士

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