1. 労働者派遣の注意点は?同一労働同一賃金や業務請負との違いも解説
労働者派遣の注意点は?同一労働同一賃金や業務請負との違いも解説

労働者派遣の注意点は?同一労働同一賃金や業務請負との違いも解説

労務 更新日:
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慢性的な人手不足問題は今後も続いていくことが予想されます。人手不足問題への対応策の一選択肢として派遣労働者の活用が挙げられます。しかし、派遣労働者を活用するには法的にも留意しておかなければならない問題が複数存在します。今回は派遣労働者と法的留意点について多角的に検証していきましょう。

目次

労働者派遣について

労働者派遣法とは

頻繁に法改正が行われる法律の一つである労働者派遣法は職業安定法と相まって労働力の需給の適正な調整を図ることを目的とし、派遣労働者の保護を図る法律です。主な法改正は平成27年9月に労働者派遣事業は全て許可制となり、同年10月からは労働契約申し込みみなし制度も導入されました。他には日雇派遣者の労働者派遣禁止、マージン率公開義務付け、事業所単位・個人単位の期間制限なども導入されています。

労働者派遣とは

労働者派遣とは、自己の雇用する労働者の雇用関係を保ったまま他社の指揮命令を受けて他社の為の労働に従事させることです。また、労働者派遣事業とは労働者派遣を業として行うことを指します。 

当然、解雇に対して厳しい規制の敷かれる日本では正社員よりも派遣労働者の方が「雇用の調整弁」になりやすい性質があります。

派遣労働者を活用することのメリットは以下のような場合です。例えば、職務上、英語が堪能な従業員が必要となった場合を想定しましょう。育成するにしても短期間では難しい場合が多いでしょう。また、採用するにしても求人にかかる時間的コスト、採用にかかる人的コストなどを総合的に考慮すると万が一ミスマッチが生じた場合のリスクも一定程度存在します。

そこで、労働者派遣事業を営む企業を通じてニーズを満たした派遣労働者を受け入れるとより早期に問題を解決することができます。デメリットとしては受け入れ先の企業で支払う給与には派遣元企業のマージン(もうけ)を上乗せしなければならず、コストがかさむことです。 

労働者派遣と業務請負の相違点

労働者派遣は派遣会社と労働者の間で労働契約を締結します。そして、派遣先に派遣し指揮命令権は派遣先が有します。

業務請負は委託元の企業が委託先企業と業務請負契約を締結します。しかし、最も重要な部分は以下のとおりです。委託先企業が労働者と労働契約、指揮命令権も有し、委託元企業は労働者に対して指揮命令権を有しません

業務請負は労働者派遣のように許可も必要ありません。しかし、委託先の企業では当然労働者を雇用する為に、労働法の規制が課せられます。しかし、委託元企業は(働いてくれている方に対して)指揮命令権がないために、労働法の規制が課せられません。

偽装請負とは

端的には労働者派遣と業務請負の差は指揮命令権を有しているか否かです。就労先で指揮命令があれば労働者派遣ですが、業務請負と称していても実態として指揮命令があれば業務請負ではなく労働者派遣となります。形式的には業務請負であったとしても実態が労働者派遣と言わざるを得ない状態を偽装請負と定義します。偽装請負の問題は本来指揮命令権を有しない就労先で指揮命令をしているだけでなく、本来、労働者派遣の規制に服するべきところを違法に逃れているという状態ということです。

特に労働者派遣は以下の業種は労働者派遣法上禁止されている点に留意が必要です。

・港湾運送業務
・建設業務
・警備業務その他労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務

よって、建設業務で労働者派遣と称している場合はその時点で労働者派遣が禁止されている業種ということです。

労働者派遣と労働者供給の相違点

業務請負とは異なり、労働者派遣と混同されてしまう形態の一つとして労働者供給があります。これは、供給元の企業が労働者と支配関係となり、供給先企業で雇用契約又は指揮命令関係になるという構図です。端的にはある企業が労働者に対して他企業と雇用契約と指揮命令関係を締結するように支配するということです。

労働者供給事業は職業安定法第44条等により、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けた場合に無料の労働者供給事業を行う場合を除いて禁止されています。

労働者派遣の現状

派遣労働者の同一労働同一賃金

65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会を超高齢社会と呼び、言うまでもなく日本は超高齢社会です。働き方改革により女性、高齢者、障害者、外国人にも雇用の窓口を広げようとしているものの、それだけでは十分な人員が確保できるとは断言できません。そこで、派遣労働者の活用が叫ばれています。しかし、いわゆる「派遣切り」や「雇用の調整弁」などの負のイメージが先行し、積極的に労務を提供するという構図が成り立っているとは言えない状況です。

そこで、派遣労働者にとって不合理な待遇差を解消するための法整備、待遇に関する説明義務、行政機関による履行確保措置及びADRの整備などが導入されました。その中で最も注目度が高いのは不合理な待遇差を解消するための「同一労働同一賃金」です。

まず、同一労働同一賃金は絶対的な正解はなく、余程極端な例を除き、決断した答えが「YesでもありNoでもある」ということが多く起こっています。その中でも情報提供の義務化については、やるべきことが明確であり、義務としておさえておかなければなりません。内容としては、派遣先が、派遣労働者が従事する業務ごとに比較対象労働者の賃金、その他の待遇に関する情報を派遣元に提供しなければなりません。よって、派遣元だけでなく、派遣先も同一同労同一賃金への対応が求められるということです。尚、情報提供義務違反は厚生労働大臣の指導、助言の対象となり、それに従わない場合は勧告、企業名公表となります。

次に不合理な待遇を禁止するために次の2つのうちいずれかの方式を選択して賃金の決定をすることが求められます。

・派遣先均等均衡方式
・労使協定方式

実務上は後者の労使協定方式が多く採用されていますがメリットとデメリットを検証しましょう。 

まず、派遣先均等均衡方式は派遣労働者が実際に就業する派遣先労働者と待遇を比較することから実態に合致しやすい方式と言えます。反対に派遣先からは労使協定方式以上に取得しなければならない情報が多く、情報漏洩リスクの観点からも派遣先の納得感が得にくいというデメリットがあります。次に労使協定方式は派遣先均等均衡方式と比べて派遣元から取得する情報量が少ないために、派遣先の納得感が得やすいことが挙げられます。デメリットは法定の要件を満たした労使協定の締結が必要である点が挙げられます。

派遣労働者と労働基準法

派遣労働者に対する労働基準法の規制はどのような内容が及ぶのかを確認しましょう。労働者派遣の特徴として労働契約関係は派遣元事業主と労働者が締結しているものの、労務の提供場所および指揮命令は派遣先事業主が有しています。よって、労働時間、休憩、休日、公民権行使、育児時間については、派遣先が責任を負い、労働契約、賃金(割増賃金含む)、年次有給休暇、産前産後休業、就業規則については派遣元が責任を負うこととなっています。

労働契約申し込みみなし制度とは

派遣先企業が次のいずれかに該当する行為を行った場合は派遣労働者に対して、その時点における労働条件と同一の労働条件で労働契約の申し込みをしたものとみなす制度です。しかし、派遣先企業が次のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らなかったことに対して過失がなかった場合は対象となりません。 

・派遣労働者を禁止業務(例えば建設業務)に従事させた
・無許可事業者から労働者派遣を受けた
・事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けた
・個人単位の期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けた
・偽装請負等

上記規定により労働契約みなし制度が適用された派遣先は、労働契約申し込みみなし制度が適用されるに至った上記の行為が終了した日から1年を経過するまでは申し込みを撤回することはできません。

派遣時の注意点

日雇派遣者の労働者派遣禁止

安定した雇用状態とは言い難い日雇労働者は原則として労働者派遣が禁止されています。しかし、原則禁止であり、以下の業種は例外的に禁止とはされていません。

・ソフトウェア開発
・通訳、翻訳、速記
・秘書

などです。

また、以下に該当する場合も禁止ではありません。

・日雇労働者が60歳以上である場合
・日雇労働者が学校教育法で定める学校の学生または生徒である場合
・日雇労働者の収入の額が500万円以上である場合
・日雇労働者が生計を一にする配偶者等の収入により生計を維持する者であって、世帯収入の額が500万円以上である場合

マージン率公開義務付け

派遣元事業主は、毎事業年度終了後、派遣先から受け取る派遣料金に占める派遣料金と派遣労働者に支払う賃金の差の割合(マージン率)を公開することが義務付けられました。派遣元事業主に対してより透明性を求めた法改正と言えます。

事業所単位・個人単位の期間制限

派遣先事業主は派遣就業の場所ごとの業務に対して派遣元事業主から3年を超える期間継続して労働者派遣を受けてはなりません。しかし、派遣期間に制限がない場合は以下のとおりです。

・無期雇用派遣労働者
・60歳以上の派遣労働者
・周期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
・日数限定業務に派遣労働者を派遣する場合
・産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

派遣労働者から役務の提供を受けるには3年のしばりがあります。例えばA氏を人事課という部署が受け入れた場合、3年経過するとA氏の受け入れはできませんが、B氏であれば受け入れ可能という理解です。尚、3年経過するタイミングでは、派遣労働者の受け入れ自体を延長する為に労働者の過半数を代表する者等に意見を聴かなければなりません。結果的に事業所単位としても3年間の期間制限が課せられますが、意見聴取をすることで延長が可能ということです。また、事業所単位だけでなく、個人単位での期間制限にも留意しなければなりません。先の例でA氏は人事課という部署に3年を超えて働くことはできませんので、別の人であるB氏であれば同じ人事課に就労させることは可能です。尚、事業所単位の期間制限でも触れたように労働者の過半数を代表する者等への意見聴取をすることが必要です。

派遣労働者へ労務の提供を拒否する場合の休業手当支払い問題

コロナ禍により、派遣労働者に留まらず、直接雇用の正規職員に対しても休業要請や退職勧奨など、会社の存続のために労務提供を減らす動きが多く見られました。まず、混同しがちな休日、休暇、休業の意味を整理しましょう。

休日とは就労義務がそもそもない日であり、休暇とは就労義務はあるものの労働者の権利行使によって就労義務が免除されたことを指します。代表例は年次有給休暇です。そして、休業とは休暇同様に就労義務はあるものの、会社が就労させない日です。

使用者の責に帰すべき事由により休業を命じる場合には、労働基準法上、平均賃金の6割以上を休業手当として労働者に支払わなければなりません。しかし、不可抗力による場合は休業手当の支払いは不要となります。尚、休業は労働者がその事業所において所定労働日に働く意志と能力を有しているにも関わらず労働することができない状態です。では不可抗力とはどのような場合を定義するのでしょうか。

次の2点を満たす場合でなければ不可抗力とはなりません。

・その原因が事業の外部により発生した事故であること
・事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

派遣労働者を休業させる場合は、まず使用者の責に帰すべき事由か否かは派遣元企業の判断になります。それは他の事業所への派遣の可能性を探るためです。よって、天災事変などの不可抗力により派遣先で就業させることができなくなった場合でも、他の就労先への派遣の可能性も含めての判断となります。

そして休業手当の支払いについては労働者派遣法第26条に、契約の途中解除や休業手当の支払いについての取り決めがされていますので、労働者派遣契約の内容を確認することが求められます。

まとめ

今回は労働者派遣についてまとめました。

労働者を派遣する際に責任が派遣元にあるのか、派遣先にあるのかなどややこしい部分も多いですが、適切な労務管理を行うにあたっては重要な観点です。また、派遣法は最近改正があったため、注意が必要です。意識して労務管理を行っていきましょう。

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この記事の監修者

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社会保険労務士

蓑田真吾

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしています

資格
社会保険労務士
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