1. 決算月が企業に与える意外な影響。戦略的な決算月の決め方とは
決算月が企業に与える意外な影響。戦略的な決算月の決め方とは

決算月が企業に与える意外な影響。戦略的な決算月の決め方とは

経理 更新日:
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決算月に関しては、普段特に意識することは少ないかと思います。実は決算月を変更することで様々なメリットを得られる場合もあります。起業を検討されていて今から決算月を決定する方や現状の決算月の変更を検討されている方はぜひ一読頂き、自社にとって最良の決算月を検討しましょう。

目次

決算月とは

会社は事業年度を確定させるにあたり、1年以内の期間であれば自由に決算月を設定できることになっております。決算月に関しては、納税に関わってくるため定款に記載される非常に重要な事項です。この決算月に関してですが、日本では古くから3月決算が多いとされてきました。特に大企業で古くに設立されている会社は、多くの場合3月決算のイメージが強いと思います。

次に決算月に関して、具体的な統計資料を確認してみます。国税庁HP内に「決算期月別法人数」という統計資料が発表されておりますので、その数値から引用したいと思います。まず、事業年度1回の事業法人数は日本に2,641,307件存在しています。対して3月決算法人は543,709件と全体の約20%を占めます。

参考:(3)決算期月別法人数|国税庁

3月決算法人がイメージよりやや少ない印象を持たれた方も多いと思います。これは上場している大企業の決算は3月が多く、3月は決算期末という印象を日本のビジネスパーソンが持っている為です。次の章からは決算月を決める際の考え方をいくつか示します。皆様の会社でも決算月を変更することでどのようなメリットを受けられるか一度検討してみることをお勧め致します

最後に補足ですが、決算月を1年間に2回設定することも可能です。冒頭に記載した通り、会社法では1年以内の期間であれば自由に決算月を設定できます。極端な場合、毎月決算でも可能です。但し、決算を確定し税金の申告を行うことは相応の事務負担が生じますので、多くの法人は年1回の決算月となっています。 

3月決算の理由

先ほども申しました通り、日本の法人は3月決算が多いような印象を受けます。これはなぜなのでしょうか。

主には以下の理由が考えられます。3月決算である会社の方は自社が3月決算でなければならない理由を考えてみてください。

官公庁や大企業が3月決算の為

これは古くからの商慣習で官公庁や大企業は3月決算が多い為、中小企業や関連会社がそちらに合わせる形で3月決算とした為です。日本では官公庁や大企業から仕事を受注している会社の割合が高く、取引先の影響を強く受ける傾向があります。

税制改正に対応しやすい為

こちらも先ほどの理由と関連がありますが、日本の税制改正は通常4月1日より開始になります。3月を決算月にしておけば、新たな年度は新たな税制で取り扱うことが可能です。3月以外の決算月の会社は期中で取り扱う税法が変更になる為、事務が煩雑になります。この期中変更の可能性を低くする為、大企業等は3月を決算月としております。

教育機関の単位が4月~3月の単位の為

この理由は日本特有になりますが、日本の教育機関は通常4~3月を年間の単位として運営されております。当然学生が卒業をするのも3月が一般的です。新たな年度で予算を確定する際、学生が卒業し入社するタイミングと事業年度を揃えておいた方が、都合が良いと考えられている為です。人件費は年間経費の中でも占める割合が高く、慎重に扱われています。

決算月変更時or決定時のポイント

3月決算にする理由を述べてまいりましたが、全法人の中で約80%の法人は3月以外の決算月を選択しています。ここではその理由を検証してまいりたいと思います。

決算対応費用を考慮して3月を避ける

決算を確定させる際、税理士や会計士に依頼するのが一般的です(上場企業は公認会計士による監査が必須)。この決算作業は通常の月次決算と違い非常に労力を使う為、一人の税理士や一つの税理士法人に依頼するのも人的な限界があります。そのような制約があれば、当然税理士も報酬の良い案件を優先して対応します。したがって決算作業を依頼する際の決算報酬は高くなる傾向があります。このような状況を避けるためにも決算期をあえてずらし、税理士や会計士の閑散期に比較的安価を料金で決算作業を依頼できるようにします

繁忙月の前月or少し前

続いて自社の中で繁忙月の少し前に決算月を設定する方法です。この方法の一番のメリットは年間の売上の大半が決算期の前半で予測を立てることができることです。売上予測が立てることができれば、黒字にする為に使用できる経費もわかりやすくなります。

また、節税対策を考える際も検討する時間が長くなり、より計画的に会社の税金と向き合うことが可能です。ひとつ例をあげると、仮にかき氷屋さんを営業している場合、決算月を4月や5月に設定すれば、夏場の売上で年間の売上が確定する為、決算の後半は経費に目を配ればよいので、より予算管理がしやすくなります。

但し、この方法の大きなデメリットは決算作業と繁忙期がぶつかる可能性があることです。先ほどの例で申しますと、5月決算とした場合、7月末までに納税する必要がある為、6~7月が決算作業のピークとなります。夏に向けての広告宣伝等の配分や計画に時間を回さなければならない時に決算作業に時間を取られてしまいます。

閑散月の前月or少し前

先ほどの繁忙期の前月or少し前に決算月を設定するのと逆の発想になりますが、閑散期の前月or少し前に決算月を設定するというものです。こちらは決算作業に重きを置いた発想です。閑散期の少し前に決算月を設定すれば、経理に丸投げすることなく、全社一丸となって決算作業の協力をすることができます

資金繰りのタイミング

最後はこのポイントです。季節変動の大きな業種や資金回収までに時間を要する会社は法人税の納税のタイミングによる決算月設定を検討すべきです。法人税は決算月の2か月後の末日までに納税する必要があります。仮に3月31日に大口の取引が確定し、売上計上した場合、5月末までに法人税を納税する必要があります。売掛金の回収サイトが2カ月以上の会社は銀行から借入を実施するなどの資金繰りの手当てをしなければ、納税することができなくなります。毎期期初に銀行から納税資金を借入している会社は、決算月を変更すれば、不要な借入をしなくて済む可能性があります。

【創業時】法人税納税までの期間を最大にする

次の2つは創業時に限った場合となります。創業時は自由に定款上で決算月を決めることが可能です。その場合、設立月の前月を決算月とするのが、法人税納税までの期間を最大でき、資金繰り上一番メリットが大きいと言えます。仮に10月1日に設立した場合、9月を決算月とします。この方法であれば、10月に売上計上した売上は翌年の11月末まで納税を先延ばしできます。創業間もない内は実績も乏しく短期の納税資金を借入することも困難な場合が多いので、可能な限り納税するタイミングを先延ばし、事業に専念できるように設定しましょう。

【創業時】消費税免税期間を最大にする

法人税とは違いますが、消費税も資金繰りを考える際は、重要な要素になってきます。年間の課税売上が1,000万円を超える事業者の場合、消費税は法人を設立して2期間の間は免除される免税事業者となります。この免税事業者であれば、お客様からお預かりした消費税分を納税しなくても良い為、資金繰りを考える上で非常に有利です。ここで注意すべきは免税事業者として登録される期間が設立をしてから2年間ではなく、「2期間」という点です。仮に10月1日に設立し、決算月を10月末とした場合(その月に課税売上1,000万円を計上した場合)、翌年の11月1日からは3期目となりますので、消費税の納税義務が生じてしまいます。このような場合は非常に不利にですので、創業時に年間売上が1,000万円を超える可能性がある場合は設立年の前月を決算月とすることで免税事業者として最大の期間メリットを享受できるように決算月設定に注意しましょう 

12月決算にするメリット

3月決算の次のよく耳にするのが、9月決算12月決算の会社です。ここでは12月決算を選択した場合のメリットを解説していきます。

【メリット①】国際会計基準に合わせる

最大のメリットは国際会計基準に合った通年での会計期間となることです。国際会計基準とは、国際会計基準委員会(IASB)が認定している会計基準を指し、主にヨーロッパを中心として世界各国で採用されています。日本ではこの会計基準を採用せず独自の会計基準を用いている為、ヨーロッパの株式市場に上場する際などは、国際会計基準に決算書を修正する必要があります。海外取引の多い会社などは、取引先も国際会計基準を使用し、決算月も12月に統一している会社が多いと思いますので、12月決算に変更することで海外取引先や海外投資家の理解を得られやすくなります。海外進出を検討されている会社は、海外進出をするタイミングが決算月を変更できるいい機会になりますので、必ず検討して社内の体制を見直しましょう。

【メリット②】銀行からの資金繰りに対応しやすい

12月末で決算が確定すれば、2月中には決算が確定します。銀行は通常3月決算ですので、決算期末である3月末に支店の目標を達成する為に貸出量を増加させます。3月に借入を実行する場合、直近の決算が12月末であれば、決算から時間が経っていません。そのため、銀行は決算書の数値を用いて与信判断をすることでき、スピード感を持って融資に対応できます。前期末決算から時間が経っていれば、通常別途試算表を提出したり、今期の着地目標を確認する作業が入りますので、貸出までに時間を要します。3月中に借入を実行できていれば、官公庁相手の仕事を受注している会社は4月から新たな案件が出て参りますので、その際に資金繰りの不安なく案件を受注することができます。

12月決算にするデメリット

次に12月決算を選択した場合のデメリットを解説していきます。

【デメリット①】決算前後が年末年始と重ねり業務が多忙になる

12月末を決算とした場合、決算作業が年末年始と被ってしまい、稼働日が少ない中で対応してければならないという制約があります。通常連結会計を導入している大企業等では、1日単位で決算作業のスケジュールが組まれており、投資家に向けて決算を開示する日程も決まっております。そのようなスケジュールの中で期末期初の稼働日が少ないことは、後ろの作業にも影響を及ぼし、重大な問題になる場合があります。決算作業に膨大な時間を要する会社はまず自社の決算作業を見直し、省力化できる部分や効率化できる部分を見直し、その後12月末決算への移行を検討するのが無難と思われます。

【デメリット②】決算の締め作業が繁忙期と重なる(償却資産税等)

こちらも先ほどのデメリットと似ておりますが、決算月が12月末の場合決算の締め作業が1月となるので償却資産税の申告等とバッティングしてしまう為、経理や関係部署の負担が想像以上に大きくなります。その結果、決算や償却資産税の申告を誤ってしまえば、会社は追徴などで大きな影響を受けます。12月決算導入を検討する場合は経理や関連する部署に業務が集中しないよう期初である1月~2月に別途事務スタッフを雇用したり、他部署から応援を入れるなどして作業が集中してミスをしてしまうリスクを少なくできるような体制を検討しましょう。 

決算月変更の手続き

それでは実際に決算月を変更する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。

株主総会で3分の2以上の同意を得る

事業年度は定款の記載事項として定められています。すなわち決算期を変更するということは定款を変更する必要があります。定款を変更する為には、株主総会の特別決議による変更が必要です。具体的な要件としては以下の通りです。

・発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が株主総会に出席
・出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成により成立。

決算月の変更は事業に大きな影響を与える事項ですので、普通決議ではなく特別決議が必要になります。 

税務署への届け出

定款上で決算月の変更を行った場合、所轄税務署に届出を行う必要があります。税務署への提出の際は、特別決議を行ったことのわかる株主総会議事録を添付します。問題がなければ、後日連絡があり手続きが完了します。 

【番外編】中間決算(仮決算)の必要性

仮決算という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。これは年間の法人税の支払いを6ヶ月経過時点で一度決算を行い、中間での金額を確定して納付するという制度です。それでは仮決算を行わないとどうなるのでしょうか。この場合は予定納税といって前年に納付した法人税の半分を納税することになります。前年より所得が大幅に落ち込んでいる場合、前年の法人税の半分を納税するのは資金繰り上負担が大きい場合が多いです。このような場合は仮決算の制度を使用することで、予定納税の金額を大幅に減らすことができ、資金繰りに大きなメリットをもたらします。

一方で、前年よりも所得が大幅に増加している場合、予定納税を選択する方が予定納税額を少なく出来る為、資金繰りに良い影響を与えます。但し、中間納税を行うということは決算作業を2度行う必要性がある為、決算作業に関わる経理部にとっては事務手間の負担が大きくなります。このように仮決算は企業の状態によって実施すべきかどうかが決まりますので、自社の状態を考慮して導入を検討してください。

まとめ

決算月の変更は、普段あまり意識することも少ないかと思いますが、売上の季節変動の大きい会社や節税対策等を検討されている会社は大きなインパクトを与えます。また、海外進出を本格検討している会社にとっては、取引先との関係によっては12月決算に変更することが必須の場合もあります。一方で検討にあたり決算月を変更するメリットに目が行きがちですが、変更を検討する際は、繁忙期が決算対応と重なるデメリットも十分に検討した上で、実行に移しましょう。

例えば決算月に向けて社内で営業キャンペーンを行って士気を高めている会社もあるでしょう。そのような会社は決算月を変更することで目には見えない社内文化を壊すことに繋がりますので、慎重に変更を実施する必要があります。但し、昔から3月決算だからなんとなく3月決算を選択し続けるのは、会社にとって不利益を及ぼしている可能性もあります。

皆様の会社も決算月をいつにすべきか、いつにすれば最大のメリットをとれるのか、仮決算を選択すべきか予定納税を選択すべきかなどを一度しっかりと時間をとって検討してみましょう

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この記事の監修者

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株式会社Enigol

辻田 和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士
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