庶務と総務はいずれも社内を支える事務系の業務ですが、それぞれ担う役割には明確な違いがあります。
庶務は日常的に発生する細かな作業を担当する「実務担当者」のポジションです。どの部署にも関わる汎用的な業務が中心で、現場に近いところで幅広くサポートを行います。
一方、総務は就業規則の整備・社内制度の運用・契約管理・社内イベントの企画など、会社全体の仕組みや環境づくりを担う「管理部門」の役割を果たします。業務範囲は広く、法務や労務に関する知識が求められることもあります。
簡単に言えば、庶務は「毎日の事務作業を支える人」、総務は「会社の仕組みや制度を整える人」といえます。企業によっては、総務部門の1つとして庶務担当者を設置しているケースも少なくありません。庶務が日々の細かな業務をこなすことで、総務は会社運営の根幹を支える幅広い管理を担当でき、役割分担も進みました。
庶務業務は比較的定型化しやすいためアウトソーシングにも適しており、総務業務の一部と切り分けて効率化を図る企業も増えています。
庶務が担当する主な業務
ここでは、庶務が担当する主な業務を解説します。業種や企業規模を問わず定型的に発生する業務が多いので、自社の場合を想定しながらチェックしてみましょう。
電話・来客対応
庶務が担う基本的な業務の1つが、代表電話の対応や来客時の受付対応です。顧客や取引先との最初の接点となることも多く、企業イメージに関わる大切な役割として注目されています。電話を受けた内容を正確に伝達したり取引先担当者を丁寧に案内したりすることは、日々の信頼構築につながります。
一見するとシンプルな作業に見えますが、社内外の情報を的確に整理し、状況に応じた対応力が求められます。気配り・マナー・基本的なビジネスコミュニケーションのスキルも必須であり、高い事務処理能力も必要です。一定の対応パターンがあればマニュアル化しやすく、外部に委託する企業も増えています。
備品管理・発注
庶務は、社内で使用される文房具・コピー用紙・消耗品などの備品を管理し、必要に応じて発注することも多いです。特に人数の多い企業では、在庫の把握・納期の調整・コスト意識を持った購入先の選定など、地味ながらも継続的な工夫が必要です。
備品が不足すれば業務全体に影響が出ることもあり、日頃から状況をよく観察し、先回りして手配するスキルが求められます。業務フローを整理すれば外注による定期補充や自動発注システムの導入も可能であり、バックオフィスの効率化ポイントとして注目される領域です。
郵便物・宅配便の受け取り・仕分け
郵便物や宅配便の受け取りも、庶務が日常的に行う重要な業務です。特に契約書類・請求書・機密性の高い文書が含まれる場合は、誤配送や紛失が業務上のリスクにつながるため、丁寧で正確な対応が求められます。
また、部署ごとに異なる配布ルールや時間帯を把握しながら、効率よく仕分ける工夫も必要です。郵送業務は日々発生するルーチン作業であり、テレワーク時代でもオフィスに届く郵便物の仕分け作業はなくなりません。配送管理システムとの連携など、IT化によって効率を高めることも視野に入ります。
書類整理・ファイリング
庶務は、社内の各種書類の整理やファイリング、保管管理も担当します。契約書・稟議書・勤怠関連資料などさまざまな種類の書類が対象であり、時には部署をまたいで関わることも多いです。
正確な分類・保管だけでなく、必要なときにすぐ取り出せる状態を維持する気遣いも求められます。また、保管期限や廃棄ルールに従った管理が求められるため、法令や社内規定への理解も必要です。
近年は電子化された文書のフォルダ整理やクラウド保管にも対応することが増えており、デジタル文書管理のスキルも今後ますます重視されます。
会議準備・資料作成サポート
庶務は、会議に必要な備品の準備・会場のセッティング・資料の印刷や配布など、運営に関わるサポート業務も多く担います。スムーズな会議進行の裏には、庶務による事前準備が欠かせません。
例えば、出席者の人数に応じた資料部数の用意・プロジェクターなどの機材チェック・リモート接続の設定なども含まれます。時には議事録のたたき台を作成するケースもあり、一定の文書作成力やPCスキルが求められることも。多忙な管理職や担当者に代わって会議前の実務を丁寧に支えることが、庶務の大きな価値として注目されています。
庶務に向いている人の特徴
庶務には、細かな作業を丁寧にこなし、臨機応変に対応できる柔軟性と高いコミュニケーション力が求められます。
ここでは、庶務に向いている人の特徴を解説します。自社に最適な人材がいるかイメージしながら確認してみましょう。
細かい作業を丁寧にこなせる人
庶務の仕事は、電話応対・備品管理・書類整理など細かな作業の積み重ねです。どれも正確さが求められ、小さなミスが業務全体に影響を与えることもあるので注意しましょう。細部に気を配りながらコツコツと作業を進められる人であれば、毎日断続的に発生する庶務業務を確実かつ正確にこなせます。
また、単調な仕事でも根気強く集中力を持続できることも重要です。ルーティンワークの中に改善点を見つけ、効率化を図ろうとする意欲があるとより働きぶりもよくなります。
臨機応変に対応できる柔軟性のある人
庶務業務は基本的にマニュアル通りに進めることが大切ですが、時には急な来客・クレーム電話・突発的なトラブルなどにも対応しなければなりません。状況に応じて優先順位を見極め、柔軟に行動できる人であれば、突発的な業務にも対応できます。
また、周囲の状況を把握し、必要なサポートを的確に行えることも重要です。柔軟な思考と対応力は、組織のスムーズな運営に欠かせません。新しい業務やツールへの適応力がある人であれば、変化の多い環境でも活躍できます。
高いコミュニケーション能力を持つ人
庶務は社内外の様々な人と接点が多いため、高いコミュニケーション能力が必要です。電話や来客対応では相手の意図を正確に把握し、適切に伝えるスキルが求められます。部署間の連携や上司からの指示を誤解なく理解し、伝達することも欠かせません。
さらに、礼儀正しい言葉遣いや態度を身につけ、信頼関係を築くことができる人は会社の「顔」としての役割を果たせます。日々のコミュニケーションを大切にできる人が庶務に向いています。
複数の業務を同時にこなせるマルチタスク能力がある人
庶務は、電話対応をしながら資料の準備や備品の管理を行うなど、多くの仕事を同時にこなすことが多いです。限られた時間の中で効率的に優先順位をつけて作業を進める能力があると安心できます。焦らず冷静に対処し、ミスなく期限を守って業務を遂行できる人であれば、チーム全体の潤滑油となってくれるでしょう。
また、状況に応じて柔軟に作業を切り替えられる人は、忙しい現場でも重宝されます。マルチタスク力は、庶務の仕事を安定的に進めるうえで欠かせないスキルです。
強い責任感を持って仕事に取り組める人
庶務の仕事は、派手さはないものの会社の基盤を支える重要な役割を担っています。自分の業務に責任を持ち、最後まで丁寧にやり抜ける人を配属させるのがおすすめです。
また、ミスがあれば積極的に修正し、改善策を考えて実行できる姿勢も大切です。仕事の意味や目的を理解し、会社全体の円滑な運営につながっていることを意識できる人は信頼されやすくなるでしょう。責任感の強さは、組織の安定と成長に貢献する大きな資質として評価されます。
庶務に必要な業務スキル
庶務業務を円滑に進めるためには、単に指示された作業をこなすだけでないスキルが求められます。正確な事務処理能力やビジネスマナーはもちろん、PC操作や備品管理の知識や業務改善に向けた意識も必要です。
ここでは、庶務担当者が持つべき代表的なスキルを具体的に解説します。
正確で迅速な事務処理能力
庶務の仕事は、細かな書類管理・備品発注・電話応対など多岐にわたります。正確さが求められる一方で、スピードも欠かせません。特に書類のミスや遅延は他部署の業務に支障を与えるため、避けなければなりません。正確さとスピードの両立は、庶務担当者が常に意識すべき基本スキルです。
また、業務効率化のために作業の優先順位をつけ、計画的に処理を進める力も不可欠です。社内全体の業務円滑化に貢献するための必須スキルとして、身につけておきましょう。
ビジネスマナーとコミュニケーション力
庶務は、来客対応や電話応対などの場で社内外の多様な関係者と接します。「会社の顔」として接する以上、正しいビジネスマナーと丁寧な言葉遣いが欠かせません。第一印象を良くする対応が会社の信頼につながると考えれば、高いコミュニケーション能力があることが求められます。
また、相手の要望を正確に聞き取り、必要な情報を分かりやすく伝える傾聴力も重要です。部署間の調整や上司への報告・連絡・相談をスムーズに行うために、日頃から円滑な人間関係を築く力が求められます。
PCスキル(Word・Excel・メール等)
庶務業務には、WordやExcelを使った資料作成・データ管理・メールのやり取りが欠かせません。Wordでは会議資料や案内文書の作成、Excelでは備品管理リストや集計表の作成、など多様な活用が求められます。基本的な操作に加え、関数やテンプレートの利用、ショートカットキーの活用など業務効率を上げるスキルがあるとよいでしょう。
近年はクラウドサービスを使う企業も増えており、新しいツールやソリューションを抵抗感なく使いこなす柔軟性も求められます。高いITリテラシーと理解力があれば、時代に沿う庶務担当者として活躍してもらえます。
業務改善・効率化への意識
庶務は、単に指示された仕事をこなすだけでなく、業務フローの見直しや改善を提案することも求められます。日々の業務の中で無駄な作業を見つけて改善できる人は、組織にとって非常に価値があります。結果的に、ITツールの導入・マニュアル整備・外部委託の活用など、多角的に効率化を推進することにつながります。
庶務としての積極的な姿勢が、業務の質向上と全社的な業務効率化につながります。
庶務業務をアウトソーシングするメリット
近年、庶務業務のアウトソーシングが進んでいます。どの業種でも確実に存在する業務だからこそ、アウトソーシングによって本業に集中できる割合も高まります。
庶務業務のアウトソーシングを依頼できる企業は多く、「Remobaアシスタント」など実績のあるサービスを検討してみましょう。以下に課題があると感じる方や総務・経理などを含めてバックオフィスのトータルBPOをお探しの方は、アウトソーシングサービスの活用がおすすめです。