1. よくある労務トラブルを解説!有給休暇・残業・退職・パワハラ
よくある労務トラブルを解説!有給休暇・残業・退職・パワハラ

よくある労務トラブルを解説!有給休暇・残業・退職・パワハラ

労務更新日:2024-09-23

労働者が労務を提供する前には企業と労働者との間で労働契約を締結します。法律上は、労使対等の立場が原則となりますが、実態としてはそうではない場合が多いでしょう。労働者と企業間では様々なトラブルが発生します。今回は、労務問題(分野別)におけるトラブルにフォーカスを当て、解説してまいります。

有給休暇

労務問題のトラブルにおいてほぼ上位に入る分野として有給休暇があります。有給休暇のトラブルの多いタイミングとしては発生時よりも退職時に多い傾向です。

退職時の有給休暇

退職することが決まっており、未消化分の有給休暇が残っている場合を想定しましょう。

当然労働者としては未消化分の有給休暇を使用したい半面、企業側は引継ぎのための時間もあることから、双方の利害が一致していません。言うまでもなく有給休暇は労働者の権利ではありますが、繁忙期に全員が同じ時季に取得されてしまっては、会社の運営に支障をきたしてしまいます。

そこで、労働者の時期指定権(○月○日に有給休暇を請求すること)に対して企業側の時季変更権があります。時季変更権とは、前述の繁忙期に全員が同じ時期に取得されたような場合に違う日に取得してもらうように変更を打診することができる権利です。

時季変更権

しかし、実務上は無鉄砲に時季変更権が認められてしまうのも問題であり、以下のような場合に限っては認められると考えられています。

・会社の規模

・労働者の職務及び職責

・代替要員の確保状況

・繁忙の度合い

・休暇期間の長さ

などが挙げられます。

例えば年度末に繁忙期を迎える部署で退職を予定している労働者の場合を想定しましょう。後任の担当者への引継ぎがずさんであった場合、企業としても不利益を被る可能性が否定できない為に、また、代替要員も確保できないような場合に企業側が時季変更権を行使するというケースです。当然、時季「変更権」であることから、有給休暇の取得を抹消させる権利までは有していません。この点はミスリードが起こっている部分でもあります。

残業

働き方改革の影響

働き方改革施行により事業規模を問わず、残業の上限規制が始まっています。原則、企業側は労働者に残業を命じる場合には、雇い入れる労働者の数が10人以上の事業場の場合、就業規則の整備が義務となります。そして、当該就業規則に合理的な内容の規定(例えばやむを得ない場合は労働者に残業を命じる場合がある)があり、かつ、36協定を締結し、所轄労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

36協定を締結しても原則の残業時間として1ヶ月45時間以内、1年間で360時間との限度があります。しかし「特別条項」を締結することで、原則の時間を年6回までであれば超えても違法ではなくなります。しかし、特別条項を締結したとしても、複数月(2~6ヶ月)平均80時間以下(休日労働含む)、1ヶ月100時間未満(休日労働含む)の規制が課されています。

2019年3月31日以前であれば、時間外労働は事実上の青天井であり、36協定を締結したとしても、長時間労働を止めることは困難でした。しかし、これが2019年4月1日以降は大企業を皮切りに罰則を設け(違反した場合には30万円以下の罰金)義務の履行を図っています。

そこで、繁忙部署では残業時間が上限に近づいてきた時など、実態として労働時間であるにも関わらず残業申請を認めないような不適切な運用が行われている場合があり、労務問題のトラブルに発展してしまう場合も散見されます。これは、そもそもトラブル以前に明らかに違法な労務管理と評価される可能性があり、極めて危険な状態です。

前残業問題

前残業問題も労務問題のトラブルとして挙げられます。前残業とは、所定労働時間開始前に労働を命令することです。命令するとなると、企業側としては命令しなければ問題ないのではないか?という発想となりますが、以下のような場合には今一度注意が必要です。

・そもそも所定労働時間開始前から労働に従事しなければ終わらないような業務量

・所定労働時間開始前に情報収集しなければ通常の業務に支障をきたす場合

・所定労働時間開始前に朝礼などを行い、出欠を取り、評価に反映される

上記のような場合は、形式的に労働時間としては取り扱わないという規定を明記していたとしても実態的に労働時間であると評価される可能性が高いです。

特に長い間そのような運用をしてきた事業所の場合は万が一遡って是正する場合、残業代が発生することとなり、経営問題に発展するリスクも否定できません。

パワハラ

2020年6月1日に大企業を皮切りに「パワハラ防止法」が施行されました。パワハラと評価されるのは以下のケースです。

・身体的な攻撃

・精神的な攻撃

・過大な要求

・過小な要求

・人間関係からの切り離し

・個の侵害

以上はパワハラ6類型とされますが、あくまで形式的な分類に過ぎません。労務問題としてトラブルに発展するケースとしては、以下のケースが多くを占めます。

・そもそも相談窓口が機能していない(担当者の不在が多いことや、近しい上司が担当)

・相談のスタート時点から疑いの目で見られている

・調査を依頼しても表面的な調査で信頼に値しない

以上のようなケースです。一つずつ確認していきましょう。

相談窓口が機能していない

そもそも窓口が機能していないケースとして、特に中小企業では本来の業務に付随して担当を任されていることが多いでしょう。これは、企業が悪いという意味ではなく、そもそも自社の人員構成上、業務が手一杯のケースも往々にして起こり得ます。当然、従業員数が多くなければパワハラ被害者が相談した場合に当該窓口担当者が元上司であること、加害者と近しい存在である可能性も高くなってしまいます。

そうなると相談窓口近くまでいくものの、担当者の顔を見て引き返してしまうことも想像に難くありません。

相談のスタート時点から疑いの目で見られている

2点目の相談のスタート時点から疑いの目で見られている点です。パワハラ防止法では労働者から相談があった場合に対応することが求められています。それは、まずは話を聴くことなどが挙げられますが、対応するにあたっての知見を有していない場合、支離滅裂な対応となってしまい、火に油を注ぐ結果となってしまうリスクがあります。また、それだけであれば必ずしもトラブルになるとは断言できませんが、早く幕引きを図りたいとして、話を聴くどころか早々に切り上げたいという雰囲気を醸し出す場合、逆に労働者の方が見切ってしまい、外部機関へ駆け込まれるリスクが高くなります。

調査を依頼しても表面的な調査で信頼に値しない

3点目の調査を依頼しても表面的な調査で信頼に値しない点です。この点については、いかがお考えでしょうか。労働者からの申し出に基づき、単なる実績作りとして調査を行ったという「証拠作り」と言わざるを得ない対応をした場合も、労働者としては逆に感情的になってしまい、外部機関へ駆け込まれるリスクが高くなります。

パワハラ相談窓口をアウトソーシング

パワハラが大きなトラブルへと肥大化する場合の多くは初動対応が適切でないケースが多くを占めます。初動対応が適正に機能していれば、労働者の納得性に留まらず、企業としてもレピュテーションリスクの低下、ひいては、離職率の低い職場環境の形成に繋げることができます。

そこで、近年ではパワハラ相談窓口を外部機関へアウトソーシングすることが増えてきました。そのメリットとして、アウトソーシング先の場合、依頼元企業の労働者とアウトソーシング先で既に人間関係が形成されていることが少なく、いずれか一方に肩入れした調査をする可能性が著しく低いためです。また、相談者目線でも社内の相談窓口へ相談を持ち掛けるよりもむしろハードルが下がり、外部機関へ駆け込まれるリスクも少なくなるというメリットがあります。

給与計算

労務問題がトラブル化する一例として給与計算での誤りが挙げられます。

・不足支給が発覚した

・過払いが発覚した

不足支払い

不足支給が発覚した場合、法的には労働基準法第24条、賃金の全額払いに違反することとなります。賃金は支給する時点で他の法律で控除することが認められている所得税や社会保険料を除いて全額を支給しなければなりません。しかし、残業代や有給休暇申請の計算間違いなどにより本来支給されるべき額より少ない状態で支給されることがあります。給与計算は100%正しいことが前提とされるために、不足支給は労使間のトラブルに発展する一例です。多くの企業の場合、給与計算のみが主たる業務というケースは少ないでしょう。給与計算と同時並行で他の業務を行うことが多く、かつ企業が存続する限り給与計算は続く業務であるために、企業としても悩ましい問題です。

過払い

次に過払いが発覚した場合です。参考判例として以下をご覧ください。

福岡教祖事件

本事件は公立学校の教員に対して、5月の給与支給日において、欠勤が1日あったにもかかわらず、給与を減額せずに1日分の過払いが生じました。それを翌月の給与で調整せずに3ヶ月後となる8月の給与において、過払い分を減額して支給しました。この処理に対して、労働者は疑問を呈し、過払い分の減額は労働基準法で定めている「賃金の全額支払いの原則」に違反すると主張し、減額した給与の支払いを求めて提訴しました。

判決

賃金の相殺は過払いのあった時期と「合理的に接着した時期」に行われ、その金額や方法等が労働者の「経済生活の安定を脅かす恐れのない場合に限り」労働基準法第24条第1項による制限の例外として許されます。企業側は5月末頃には勤怠の実態を把握していたことから、6月の給与で減額調整できたにも関わらず8月の給与で減額調整を行いました。あえて遅らせた理由として法律上の可否や根拠を調査するためとしていたが、例外的に許容される場合に該当しないとして企業側が敗訴する判決となりました

本判例は、既に翌月給与のタイミングで減額調整が現実的に可能であったにも関わらず見送った点が非常に悔やまれます。そして8月の給与まで待たず、6月の給与で減額調整をしていればまた違う判決となっていた可能性も否定できません。現実問題として法的解釈や実務上のイレギュラー対応は他の業務と同時並行で進めていくことは難儀な場合も多いということです

退職時

退職時は労務問題がトラブル化しやすい時期と言えます。例えば退職日のすり合わせです。有給休暇の章でも述べましたが、労働基準法上では退職届の提出期限の明記はありません。一般法である民法の「14日前」が法的根拠として認められる最低日数と考えられています。しかし、実務上、14日前となるとさすがに引き継ぎ期間としては十分とは言えませんので、就業規則で(引継ぎ期間の確保として)1ヶ月前までには届け出ることとして規定している場合もあります。

有給休暇の買取

有給休暇の残日数があり、買い取りを申し出る労働者も散見されます。法的には有給休暇の買い取りは違法となります。それは、有給休暇の性質上、買い取りを認めてしまうと金銭目当てに本来の目的(例えば心身のリフレッシュ)が達成されないことが予想されるためです

しかし、退職日までの所定労働日の日数上、消滅することが明らかな残日数分や時効消滅することが明らかな残日数については、必ずしも労働者の不利に働くとは言えないために直ちに違法とは言えません。ここで引継ぎ期間の確保と労働者の納得性を確保するための選択肢が提示できるのも適正な労務管理ができていて初めてなし得ることです。

社会保険料の負担

月末に在籍している場合には社会保険料の負担は労使折半となります。その月に退職することが予め明確であったとしても企業には退職者に係る退職月の社会保険料負担が課せられます。そこで、退職日を月末前にずらすなどを企業側から打診する場合がありますが、労働者の同意がなければ違法な行為として判断されるリスクがあります。退職は本人の意思表示が前提となり、労働者の合意を不要とする企業側からの一方的な通告は解雇と解されます。形式的には自己都合退職であったとしても実態としては解雇と判断されると残された労働者への士気にも影響するでしょう。

退職金の支給

退職金の支給にあたっても、在籍何年以上でなければそもそも支給されないなどの最低在籍期間や、支給率(例えば自己都合退職の場合と、会社都合の場合で支給率が異なる)、早期退職優遇制度の場合には加算要件があるなど、退職金は法律で支給が義務付けられているわけではありませんので、会社独自の運用がなされています

上記に挙げた社会保険料退職金の計算は給与計算と親和性が高く、企業内の同じ担当者が行うことも多いでしょう。そして、有給休暇の管理社会保険料の計算はそれぞれの法律で明確に規定されている部分であり、適正な管理が求められます。

この点からもアウトソーシング機能を選択するメリットは非常に大きいと考えます。

アウトソーシング活用のメリット

労務問題がトラブルに発展する場合、多くの事例では自社の当たり前に固執してしまい、初動対応を誤ってしまうことです。労務分野をアウトソーシングする場合、自社の担当者と比べてバイアスに苛まれていない客観的な目で判断をすることが可能であり、トラブルが肥大化する前に解決することも可能となります。

Remoba労務

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項目内容

サービス名

Remoba労務

会社名

(株)Enigol

公式サイト

https://remoba.biz/hr

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この記事の監修者

柳沢智紀のプロフィール画像

株式会社Enigol

柳沢智紀

株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。

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