社労士は年末調整をどこまで対応できる?依頼できる範囲と違法になるケースを解説

社労士は年末調整をどこまで対応できる?依頼できる範囲と違法になるケースを解説

労務更新日:2026-07-31

社労士に年末調整を依頼できる範囲を解説します。給与計算や書類収集など対応可能な業務と、税額計算・源泉徴収票作成など対応できない業務、税理士法違反となるケース、税理士との分業方法や依頼時の注意点まで紹介します。

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年末調整は社労士に依頼できるのか

年末調整における税額計算や税務書類の作成、税務相談など、税理士業務に該当する業務については、社労士資格のみでは対応できません。一方で、給与計算や扶養控除等申告書の回収・とりまとめなど、税務判断を伴わない周辺業務については社労士が対応できる場合があります。

顧問社労士に給与計算や社会保険の手続きを任せている企業であっても、年末調整の代行までは依頼できません。ここでいう「年末調整」とは、源泉徴収税額の年間精算や源泉徴収票の作成などを指します。これらの税理士業務に該当する部分を、税理士資格を持たない者が他人の求めに応じて業として代行した場合には、税理士法第52条に抵触するおそれがあります。

社労士に依頼できない理由は税理士法にある

年末調整のうち、税額計算や税務書類の作成、税務相談に該当する業務は、税理士業務にあたります。

年末調整には、扶養控除や保険料控除を反映したうえで所得税額を確定させる工程が含まれます。この税額確定の部分は、税理士法第2条第1項に規定する税理士業務にあたります。税理士資格を持たない社労士が業として代行すると、税理士法第52条に違反するおそれがあります。

給与計算や社会保険関連の業務は依頼可能

年末調整に付随する給与計算や社会保険関連の事務は、社労士に依頼しても問題ありません。

給与計算そのものは税理士・社労士どちらの独占業務でもないため、どちらに依頼しても違法にはなりません。年末調整の準備段階にあたる書類収集や税理士へ引き継ぐためのデータ整理についても、社労士が担当できる範囲です。次の章で、具体的にどこまで任せられるのかを整理します。

社労士が対応できる業務とできない業務の早見表

年末調整に関わる業務は、税理士業務に該当するかどうかで、社労士への依頼可否が分かれます。

個別の業務ごとに対応可否をまとめると、以下のとおりです。

業務内容

社労士

税理士

給与計算・給与ソフトへの反映

対応可能

対応可能

社会保険料情報の確認・整理

対応可能

対応可能

算定基礎届・月額変更届の作成

対応可能

原則対応不可

扶養控除等申告書の収集・とりまとめ

対応可能

対応可能

年末調整の税額計算

原則対応不可(税理士業務)

対応可能

源泉徴収票の作成

原則対応不可(税理士業務)

対応可能

法定調書の作成・提出

原則対応不可(税理士業務)

対応可能

表のとおり、給与計算や社会保険関連の事務、申告書類の回収・とりまとめなど、税務判断を伴わない事務については社労士が関与できる範囲と考えられています。

社労士が対応できる業務

社労士が対応できるのは、年末調整の前段階にあたる給与計算・社会保険関連の実務です。

給与計算と社会保険料控除の確認

毎月の給与計算や、給与から控除した社会保険料に関する情報の整理・確認は、社労士に依頼できます。

給与計算業務は税理士・社労士のどちらの独占業務にも該当しません。社会保険料率の適用や標準報酬月額に基づく保険料の算定は、社会保険手続きに精通した社労士の得意分野です。給与計算を月次で社労士へ依頼している企業であれば、年末調整に必要な社会保険料データをスムーズに整理・引き継ぐことができます。

算定基礎届・月額変更届など社会保険関連書類の作成・手続き

算定基礎届や月額変更届といった社会保険関連書類の作成・確認は、社労士の専門領域です。

これらの書類は年末調整と直接関係するものではありません。ただし、社労士が給与計算や社会保険手続きを継続して担当していれば、給与から控除した社会保険料の情報を整理しやすくなります。

扶養控除等申告書など必要書類の収集・とりまとめ

従業員から扶養控除等申告書や保険料控除申告書を回収し、内容を取りまとめる作業は社労士に依頼できます。

書類の回収や提出状況の確認など、形式的なとりまとめは社労士に依頼できます。

書類の回収・とりまとめを社労士が担当し、税額計算や税務書類の作成を税理士へ引き継ぐ方法もあります。

社労士が対応できない業務

源泉徴収票の作成や法定調書の提出、税額計算などの税理士業務に該当する部分は、社労士が代行することはできません。

源泉徴収票の作成・税務署への提出

源泉徴収票の作成と法定調書の作成・提出を、税理士資格を持たない者が業として代行すると、税理士法上の問題となる可能性があります。

源泉徴収票には年間の給与総額や源泉徴収税額など、税務上の確定情報が記載されます。給与計算ソフト上で源泉徴収票の様式を出力する作業自体は可能ですが、その内容を確定し、税務書類として作成・提出する行為は税理士法第52条に抵触するおそれがあるため、社労士が代行することはできません。

関連記事:源泉徴収とは?仕組み・対象・税率・手続きをわかりやすく解説

法定調書の作成・提出

法定調書合計表など税務署提出用の書類作成・提出は、税理士の独占業務に該当します。

法定調書合計表などは、法令に基づいて税務署へ提出する税務書類です。その作成・提出は税理士業務にあたるため、社労士が対応できる範囲には含まれません。

税額計算などの税務判断

扶養控除や各種控除を踏まえた最終的な税額計算は、税理士の税務判断にあたります。

控除額を積み上げて所得税額を確定させる作業には、税法の解釈や適用判断が伴います。税理士資格を持たない者が、この税額計算業務を業として行った場合には、税理士法上の問題が生じる可能性があります。

社労士と税理士の業務範囲を分ける税理士法との関係

社労士と税理士の業務範囲は、税理士法第52条による税理士業務の制限を根拠に線引きされています。

税理士法第2条・52条が定める税理士の独占業務

税理士法第2条第1項では、税務代理税務書類の作成税務相談を税理士の業務と定めています。

年末調整には、所得税額の計算や源泉徴収票などの税務書類の作成が含まれるため、税理士資格を持たない者が業として代行した場合には、税理士法第52条に抵触する可能性があります。社労士の資格だけでは、この独占業務を担うことができません。

2002年の確認書で示された業務範囲

日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会は、2002年に業務範囲に関する確認書を取り交わしています。この確認書では、年末調整に関する事務は税理士業務に該当し、社労士が行うことは税理士法第52条に違反すると示されています。

業務範囲があいまいになりやすいグレーゾーンの具体例

年末調整に関わる業務は、どこまでが事前準備でどこからが税額確定なのか、実務では判断に迷う場面が少なくありません。

契約時に業務範囲を明確にしていないと、社労士・依頼企業の双方が意図せず税理士法違反のリスクを抱えることになります。ここでは判断に迷いやすい3つの場面を取り上げます。

年末調整の「事前準備」と「税額確定」の境目

扶養控除等申告書の記載内容を確認する作業までは事前準備、控除額を積み上げて所得税額を計算する作業からは税額確定にあたります。

確認と計算は連続した作業に見えますが、法律上の扱いは異なります。社労士が記載漏れや添付書類の不足を確認すること自体は問題ありません。一方で、控除の適用可否を判断したり、所得税額を計算したりする業務を業として行った場合には、税理士法第52条に抵触する可能性があります。

給与計算ソフトの年末調整機能を使う場合の注意点

給与計算ソフトに年末調整機能が搭載されていても、社労士が税額の確定や税務書類の作成・提出を業として代行することはできません。

ソフト上でシミュレーションとして数値を確認する行為自体は問題になりにくいものの、その計算結果を最終的な税額として確定し、源泉徴収票に反映して交付・提出する行為は税理士の業務です。社労士が操作を代行する場合は、どこまでを事務補助として行い、どこからを税理士へ引き継ぐのかを、契約内容や運用フローの中で明確にしておくことが重要です。

契約の線引きがあいまいな顧問社労士事務所を見分けるポイント

「年末調整も対応可能」とうたう社労士事務所を見かけた場合は、対応範囲を具体的に確認する必要があります。

給与計算や必要書類の収集・とりまとめまでを指しているのか、税額計算まで含んでいるのかによって、業務範囲の整理が必要になります。曖昧な説明のまま契約すると、後から認識の違いや業務範囲を巡るトラブルにつながる可能性があります。

関連記事:労務アウトソーシングと社労士顧問の違いとは?

税理士法違反となった場合のリスク

社労士が税理士法に違反して年末調整を代行すると、社労士自身が懲戒処分の対象になるおそれがあります。

社労士側が問われる可能性のある処分

税理士法第52条に違反した場合、刑事罰や社会保険労務士法に基づく懲戒処分の対象となる可能性があります。

処分の内容は違反態様や継続性など個別の事情によって異なります。社労士事務所にとっても、業務範囲を守ることは経営上のリスク管理といえます。

依頼した企業側への影響

依頼した企業側が直ちに税理士法上の罰則の対象となるケースは一般的には想定されていません。しかし、年末調整のやり直しや追加費用が発生する可能性があります。

誤って社労士が代行した年末調整の内容に不備があった場合、改めて税理士に依頼して再計算する手間が生じます。結果的に、当初から適切な依頼先を選んでいた場合よりもコストと時間がかかることになります。

よくある質問

Q. 顧問社労士に年末調整を丸ごと依頼しても大丈夫ですか。

A. 年末調整の税額計算や源泉徴収票の作成部分については社労士に依頼することはできません。給与計算や書類収集までを依頼し、税額確定は税理士へ引き継ぐ体制を整えることが望ましいでしょう。

Q. 社労士が誤って年末調整の一部を代行してしまった場合、依頼した企業側にも問題が生じますか。

A. 企業側が直接罰則を受ける可能性は低いものの、年末調整をやり直す手間や追加費用が発生する場合があります。業務範囲を確認し、必要に応じて税理士へ相談することが望ましいでしょう。

Q. 社労士に依頼している給与計算ソフトで源泉徴収票を出力してもよいですか。

A. 様式を出力する操作自体は問題ありません。ただし社労士が記載内容を確定し、従業員への交付や税務署に提出する行為は税理士の業務にあたり税理士法上問題となる可能性があります。

Q. 税理士法違反が発覚した場合、どのような是正が必要になりますか。

A. 該当する業務を速やかに税理士に引き継ぎ、必要であれば年末調整の再計算や書類の修正を行うことがあります。あわせて、契約書の業務範囲を明確化し、同様の問題が生じないよう運用体制を見直すことが重要です。

まとめ

年末調整そのものの代行は税理士の独占業務のため、社労士資格のみでは対応できません。一方で、給与計算や社会保険関連書類の確認、扶養控除等申告書のとりまとめなどは、社労士が対応出来る範囲です。契約書で業務範囲を明確にし、税理士との分業体制を整えれば、それぞれの専門性を生かした効率的な年末調整体制を築けます。令和8年分は控除額の引き上げで確認作業の負担増が予想されるため、早めに依頼先との役割分担を確認しておくことをおすすめします。社労士と税理士どちらに依頼すべきかの費用相場やケース別の選び方は、別記事「年末調整は社労士と税理士どっちに依頼すべき?違い・費用相場・失敗しない選び方を解説」で詳しく解説しています。

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この記事の監修者

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株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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