女性活躍推進法は労働基準法等と比べて耳にする機会が少ないかも知れませんが、働く人の数が減ってきている現代において、潜在労働力として挙げられる女性の能力を存分に発揮できる社会の実現を目指し、つくられた法律です。今回は2022年4月1日にその一部が改正がされたので、その改正内容を解説していきます。
女性活躍推進法は労働基準法等と比べて耳にする機会が少ないかも知れませんが、働く人の数が減ってきている現代において、潜在労働力として挙げられる女性の能力を存分に発揮できる社会の実現を目指し、つくられた法律です。今回は2022年4月1日にその一部が改正がされたので、その改正内容を解説していきます。
働くことを希望していながら働いていない女性は約230万人以上にもなると推計されています。また、第1子を出産後、約5割の女性が離職するなど、育児を理由とした離職も、依然として多いのが日本の特徴です。また、離職せず働く女性を見ると、管理職的な立場で働く女性割合は20%(2018年統計)に満たず、これは国際的に見ても低い状況です。
そのような状況の中で、後述する出生数減少に歯止めがかかっていない我が国の状況を勘案するとともに、現代において働き方改革を筆頭に「多様な働き方」の重要性がクローズアップされています。女性の能力を十分に発揮しつつ、継続して働くことのできる就業環境性整備が必要となり、今日の法改正に至ったということです。
2022年4⽉1日以降、⼥性活躍推進法の改正が全面施行され、 これまで、常時雇用する労働者数 が301人以上の事業主が義務であった「一般事業主⾏動計画」の策定や情報公表が101人以上の事業主まで対応が義務化されました。
「一般事業主行動計画」の策定や情報公開の義務化
従来:300人以上の事業主
→改正後100人以上の事業主
具体的にどのような取り組みが必要かを確認していきましょう。
まずは、自社の女性労働者の活動状況を把握することが求められます。そして、把握することが求められる項目は次の4点です。
・採用者に占める女性比率
・男女の平均金勤続年数の差異
・月ごとの平均残業時間数
・管理職に占める女性労働者割合
具体的な算出方法は次の表をご覧ください。
出典:厚生労働省
これらの数値を把握し、課題はどこにあるのかを明確化する必要があります。そして、具体的な改善策を検討するフェーズに移行することとなります。
課題解決の為に、行動計画を作成します。ゼロから作成するとなると、相当な労力を要することから、厚生労働省より、以下のガイドブックが出されていますので参考にしましょう。
行動計画の期間については2年から5年の間が望ましいとされています。そして、「数値目標」を決定しますが、ここでは、男女雇用機会均等法をはじめとした労働関係法令に違反となる目標を定めることはできません。
例えば、採用の分野で、女性比率が〇割を上回っている場合、男性を採用しないなどの表現は法違反となりますが、管理職に占める女性労働者割合が乏しい企業の場合、管理職候補となり得る女性労働者の育成研修を行うという目標であれば問題ありません。
また、本件に限った話ではありませんが、いつまでに目標を達成するかを決めておく必要があります。尚、取り組みの数は限定されていませんが、行動計画自体が形骸化しないよう、取り組み可能な現実的な数を記載するようにしましょう。
出典:東京労働局
行動計画は社内で周知することが求められます。ここでの周知は就業規則の周知と同様に社内でいつでも見れるような状態にしておくことです。もちろん、掲示や、配布も選択肢にはなり得ますが、時代の流れを鑑みると、社内のネットワーク内への備え付けが現実的かつ実効性のある「周知」になると考えます。
そして、社内での周知ができた後は外部へ公表することとなります。これは、社内ホームページや厚生労働省が設置する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載でも問題ありません。
会社所轄の労働局へ「一般事業主行動計画策定・変更届」を届け出ます。専用の用紙が厚生労働省ホームページからダウンロード可能です。また、電子申請も対応しています。
また、届出後も定期的に掲げた数値目標の達成状況、取組の実施状況を確認していくことが重要です。
自社における女性の活躍に関する情報の公開が求められます。これは、「女性の活躍推進企業データベース」に登録し、少なくとも年1回を目安に更新していきましょう。
自社での⼥性活躍推進に向け、自社における個別の実情に応じて状況把握をし、効果的な取り組みをすることで数値にも変化が表れます。
そこで、選択項目として、以下の項目があります(一例)。
・男⼥別の採用における競争倍率
・男⼥別の配置の状況
・男⼥の⼈事評価の結果における差異
・セクハラ等に関する各種相談窓⼝への相談状況
・男⼥別の職種もしくは雇用形態の転換者、再雇用者または中途採用者を管理職へ登用した実績
・男⼥の賃⾦の差異
・有給休暇取得率
事業所所轄の労働局へ届出した企業のうち、女性の活躍推進にかかる取り組みが優良な企業に対して、申請することにより、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けることができます。
えるぼし認定を受けることのメリットとして、社員の帰属意識を高められることや、公共調達において優遇を受けられることなどが挙げられます。また、名刺や自社商品にえるぼしマークを使用することができ、社外へ広くアピールすることができます。
2019年に出生数が90万人を割り、当分の間、少子高齢化社会が続くことが浮き彫りとなっています。高齢者と女性については働ける機会があれば働きたいという潜在的な労働力が眠っており、その1つとして、「女性」の活躍の場を広げることが、国難ともいえる、少子高齢化社会へ対策の1つとして考えられています。
えるぼしマークには、4つの段階があり、最も格式のあるマークは「プラチナえるぼし」となり、通常の「えるぼしマーク」は3段階構成になっています。
時を同じく全面施行された、中小企業におけるパワハラ防止法でも同じことが言えますが、企業のトップからのメッセージを発信することで、実務上は人事労務部門が対応することが多いのでしょうが、より広い範囲の部門で当事者意識を持ち、取り組みができると考えます。
また、取り組みを行うにあたっては男女雇用機会均等法をはじめとした労働関係法令への理解も必要となり、継続的な取り組みが必要であることは言うまでもありません。
次に、社内の課題を特定するにあたっても、各部門から、協力体制を得られるように繁忙期を考慮し、スケジュールを逆算して管理する必要があります。必要に応じて、担当者を配置し、タイムリーに課題を吸い上げることが重要です。
そして、行動計画は出すことが目的ではなく、女性活躍の場を設けて、継続的に運用していくことが求められます。それは、定期的に、目標と取り組み内容が乖離していないかを精査し、必要に応じて軌道修正していく機会を予め設けておくことが適切です。
女性活躍推進法は有能な女性労働者がより活躍の場を広げるために国を挙げて取り組みを行っている施策です。行動計画の策定等で、社内だけで対応が難しい場合は社会保険労務士などの専門家や各行政機関へ相談することも選択肢です。また、行動計画はつくること、出すことが最終的な目的ではありません。継続的に見直しをし、目標と実際の取り組みが釣り合っているかの見直し機会の設定を設けておくことが重要です。