1. 監査とは?法的観点からの分類や経理実務上の監査業務の注意点を解説
監査とは?法的観点からの分類や経理実務上の監査業務の注意点を解説

監査の目的は、財務諸表が正確であることやそれに至る内部統制システムが適正に機能しているかどうかを第三者が確認し公表することにあります。監査の内容は会社法328条の規定および金融商品取引法193条の規定で定められており、法的拘束力を持つものです。

目次

この記事では、法的観点からの監査の分類、会社実務上の監査の種類、経理の役割としての監査業務の注意点を解説していきます。

法的観点からの監査の分類

監査には法的義務のある外部監査と法的義務ではなく任意で行われる内部監査とがあります。さらに外部監査は、会社法で定められている会社法監査と金融証券取引法に定めのある金融証券取引法監査とに分類されます。会社法監査は主に「計算書類及びその附随明細書」に対する監査、金融証券取引法監査は「財務諸表監査」と「内部統制監査」の2点が求められます。それでは詳しく見ていきましょう。

1.外部監査

①会社法監査

 会社法監査は「計算書類及びその附随明細書」が適正に作成されているかどうかを会計監査人たる公認会計士または監査法人が行う監査業務のことで、会社法第436条2項1号に規定されています。「計算書類」とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算表、個別注記表の4点を指します。(会社法435条2項・4項、会社計算規則59条1項)

また、会社法監査の法的義務が生じるのはいわゆる大会社、すなわち資本金5億円以上もしくは、負債200億円以上の株式会社に対してであることが会社法328条に定められています。さらに有価証券報告書を提出する大会社においては、連結計算書類(連結貸借対照表・連結損益計算書)の作成義務があるため、これについても監査の対象となります。(会社法444条第3項)

②金融商品取引法監査

金融商品取引法監査は、金融商品取引法第193条の2のとおり、同条第1項で財務諸表監査が、同条第2項で内部統制監査が定められています。財務諸表監査では貸借対照表、損益計算書、その他の財務計算に関する書類が正確であることを、会社と利害関係のない公認会計士又は監査法人から監査証明を受ける義務があります。また内部統制監査では、会社の内部統制が適切に機能していることを、公認会計士又は監査法人から監査証明を受けるよう義務付けられています。

2.内部監査

法的義務はないものの、会社内で任意で行われる監査を内部監査と呼びます。大企業では会社内の事業ラインや子会社とは独立した機能として監査部門を設置している場合があります。この監査部門が各事業ラインや子会社の監査を行うのが内部監査です。通常は財務諸表監査と内部統制監査の両方が対象であり、期間は会社の規模によって毎年~数年に一度の頻度で、各事業ラインおよび子会社の監査を行うケースが一般的です。

会社実務上の監査の種類

会社実務上の監査には、会計監査内部監査監査役監査があります。会計監査は会社の決算後、その財務諸表が適正に作成されているかを公認会計士又は監査法人が行う監査業務です。内部監査とは先述のとおり、会社内の監査部門が各事業ラインや子会社の監査を行うもので、財務諸表監査と内部統制監査の両方が含まれるのが一般的です。監査役監査は取締役の業務遂行が法令に照らして適切に行われていることを監査するものです。それぞれ詳しく解説します。

1.会計監査

会計監査のタイミング

株式会社は株主総会で会社の経営成績を公表しなければなりません。その経営成績は取締役会で承認されたものであり、取締役会で承認を得るためには公認会計士又は監査法人の監査証明が必要になります

上場企業については事業年度終了後3か月以内に有価証券報告書を提出することが義務付けられているため、期限までに公認会計士又は監査法人の監査証明が必要となります。

会計監査の方法

財務諸表の正確性を確認することが会計監査の目的ですから、本来ならすべての取引について仕訳の確からしさをチェックすべきですが、膨大な数の取引をくまなく確認することは非現実的です。そこで、一般的にサンプリングと呼ばれる手法が取られます。大まかな流れは、経理から監査法人へ実績明細データを提供し、その中から監査法人が選び出した取引について会社と監査法人とで確認作業を進め、取引の正しさを証明していくというものです。サンプリングデータの抽出には様々な方法がありますが、主には取引金額の大きなものや、通常とは異なる例外的な取引数量や取引コードが用いられている案件、前年度実績と比較して大きな乖離がある取引などが多く用いられます。監査法人からの質問に対して経理担当者が自ら回答できる場合もあれば、事業ラインへ確認して回答を求める場合も出てくるでしょう。

また、取引の仕訳について、その元となる請求書などの原始帳票とを突き合わせて合致していることを確認する手法も取られます。そのためにも、経理担当者は原始帳票をしっかり保存しておき、必要に応じてすぐに取り出せるように採番しておくなどの工夫が必要です。

さらには、監査法人が監査対象会社の販売先に確認状を送付し、売掛金残高が正しいことを整合したり、親会社と連結子会社との間の売掛金および買掛金を同時に確認し、債権・債務の関係性が整合できているかをチェックするケースなども多く見られます。

棚卸を保有している会社の場合には、監査法人とともに実際に倉庫や工場に出向いて在庫数量を数えて帳簿との整合性を確認する実地棚卸と呼ばれる業務もあります。

監査証明

公認会計士又は監査法人は、上記の方法で該当会社の財務諸表が適正であるかどうかについて監査を行い、「監査報告書」としてまとめ企業に提出します。これを監査証明と呼びます。企業は監査証明をもって取締役会で財務諸表の承認を得た上で、株主総会で決算発表を行う流れとなります。

2.内部監査

内部監査の内容

大企業には社内に独立した機能として監査部門を設置している場合があり、自社の各事業ラインや子会社を順番に監査して回ります。事業ラインの数が多い会社では数年に一度の頻度で監査を受けることになるでしょう。

内部監査では、会計監査同様に財務諸表の正確性がチェックされるだけでなく、社内の内部統制が適切に機能していることを確かめる内部統制監査も同時に行われます

内部監査は、一般的に全体で3ヶ月から半年程度の時間をかけて精密に行われることが多く見られます。

取引の実績明細データからサンプリングを行い確認していく手法は会計監査と同様ですが、それに加えて約1週間程度かけて監査部門の担当者が実際の職場に出向き、実務担当者へヒアリングを行うことも内部監査の重要なプロセスのひとつです。不明点のある取引についてヒアリングの場で担当者へ直接確認していく流れです。また、業務フローをチェックすることにより内部統制が適正に機能しているかどうかを確認していくことも行われます。例えば、営業部門、購買部門、開発部門、人事総務、経理、ITなどのように役割分担ごとに時間を取って順番にヒアリングが行われます。

内部監査報告書

内部監査終了後、監査部門は社内の社長および該当事業ラインおよび子会社に充てた内部監査報告書を提出します。内部監査では社内の財務諸表および内部統制状況を厳しくチェックすることが目的ですから、その監査報告書には詳細な改善提案が記されます。該当事業ラインおよび子会社は、その提案に従って改善施策を検討し実行に移す必要があります。こうしたプロセスを回すことで会社全体の財務諸表の精度向上や強固な内部統制システムが作り上げられていくのです。

内部監査報告書での指摘事項の具体例

 ここでは内部監査での指摘事項の具体例を挙げていきます。

・受注前審査の手順が備わっているかどうか
・売上計上時、製品機器の売上高とそれに付随するサービス売上高が分かれているか
・工事進行基準売上高の基準が適正かどうか
・交際費の使途は社内規定に照らして適切かどうか
・旅費交通費の実績が社内規定の範囲内かどうか
・接待費は社内規定に沿ってきちんと事前申請がなされているかどうか
・ITシステムのバックアップが適正に取れるプロセスが構築できているかどうか

例えば「接待費は事前申請とする」という社内規定に対して、ある案件で事後の申請書が発覚した場合、その理由を明確にし今後の内部統制を強固にするために改善を図っていく必要があります。

また、ITシステムのバックアップの有無や頻度のように、会社の重要データ消失リスクといった視点も監査内容に含まれます。

3.監査役監査

監査役監査の目的

上場企業には監査役の設置が義務付けられています。監査役は株主総会で選任され、取締役の業務遂行が法令に照らして適切に行われているかどうかにつき監査を行います。

監査役監査の内容

一般的に監査役は取締役との面談を通して、会計監査と内部統制監査の両方を実施します。監査役から取締役に対して、事前にヒアリングしたい内容を依頼することもあれば、その場で現状の資料を提示しながら面談していく場合もあります。

残念ながら、経営陣が社内プロセス違反を知っていながら黙認していたような事例は実際に存在します。たとえどんなに緻密な内部統制システムを構築したとしても、経営陣が遵守する意識が低ければ意味がありません。監査役はこうした視点で厳しい目でチェックする義務を負っているのです。

監査業務の注意点

事業ラインの事業概要を把握

経理担当者にとって最も基本的な業務は日々の取引を適切に帳簿付けすることであり、疑う余地はありません。ただし、監査業務に対応するためにはそれだけでは不足です。担当する事業ラインの事業概要、具体的には製品ラインナップや商流、仕入原価や販売価格、業績の過去から推移、費用の内容や社内規定との整合性などを日々の経理業務を通して興味を持って情報収集しておくことが大切です。こうした知識を持っていることにより、公認会計士および監査法人の質問に対してスムーズに準備を進めたり、事業ラインの担当者に正確に質問内容を伝えることができるのです。

社内の内部統制システムを理解

自社の内部統制システムを理解しておくことも、監査業務にとって非常に有益です。監査対応では会計監査だけではなく内部統制監査も含まれるためです。内部統制システムは多岐に渡りますが、一例を挙げると、購買から支払までの一連のプロセスにおいて、社内の各部門がどういった役割を担い、それぞれのタイミングでどのシステムにデータが蓄積され、最終的に購入元へ支払がなされるのかといった流れをフロー図で示したものです。こうした業務フローは前工程での行為が引き金となって次の工程でのアクションに繋がります。きちんと業務フローに従って業務遂行するからこそ、さまざまなリスクを軽減できるわけです。万一業務フローが遵守できていない場合は、どの箇所に問題があるのかを洗い出し改善提案していくべきですし、もしこうした業務フローがない場合はぜひ策定することを検討すべきです。

社内の人脈やコミュニケーション

監査業務で公認会計士又は監査法人から質問を受けた場合、事業ラインの各担当者へその質問をつながなければならないケースが多々あります。そうした局面で日ごろの人脈が大いに役立ちます。日頃から、社内の誰がどのような業務を担当しているのかを理解していれば、監査での質問対応で慌てることはありません。また、事業ラインの社員との日頃のコミュニケーションも大切です。監査では短時間で回答を求められるケースもあるため、社内の事業ラインへ無理な依頼をするケースも多々あります。日頃のコミュニケーションで信頼を構築しておけば気持ちよく対応してくれることでしょう。

まとめ

監査とは、株主や債権者あるいは投資家を保護する目的で、財務諸表の正確性をチェックしたり内部統制の適正な機能を確認するもので、一部には法的義務の生じるものです。経理担当者は日頃の業務を通じて事業概要を把握や社内の内部統制システムの理解に努め、人脈を構築しておくことで、よりスムーズに監査業務を進めることができるでしょう。

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この記事の監修者

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株式会社Enigol

辻田 和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士
Remoba経理トップ

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