法人の確定申告は自分でできる?外注・代行に頼むべき理由と体制の作り方を税理士が解説

法人の確定申告は自分でできる?外注・代行に頼むべき理由と体制の作り方を税理士が解説

経理更新日:2026-06-10

法人の確定申告は、提出書類の多さや別表作成・消費税対応など自力では難易度が高い作業が多くあります。クラウド会計ソフトの活用事情から、税理士への依頼が現実的な理由、費用相場(スポット10万円〜・顧問30万円〜)、体制の作り方まで税理士が実務目線で解説します。

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法人の確定申告は、個人の確定申告と比べて提出書類が多く、税目も複数にわたります。「自社でできるのか」「どこに頼めばいいのか」と悩む経営者や経理担当者は少なくありません。外注するには申告書作成は税理士の独占業務のため税理士への委託のみが選択肢となります

近年はfreeeやマネーフォワードクラウドといったクラウド会計ソフトの進化によって、経理業務の負担は以前より軽減されています。しかし法人の確定申告には、決算書の作成から複数の申告書の提出まで専門知識を要する工程が多く、自力での対応には依然として高いハードルがあります。以下で難しさから順を追って説明します。


法人の確定申告はなぜ難しいのか

提出・作成が必要な書類が多い

法人の確定申告では、複数の税目にまたがった書類を同時に作成・提出する必要があります。以下に主な提出書類を整理します。

区分

書類名

対象

決算書類

貸借対照表

全法人

損益計算書

全法人

株主資本等変動計算書

全法人

販売費及び一般管理費の内訳書

全法人

個別注記表

全法人

法人税申告書

別表一(法人税額の計算)

全法人

別表二(同族会社等の判定)

全法人

別表四(所得の金額の計算)

全法人

別表五(一)(利益積立金額の計算)

全法人

別表五(二)(租税公課の納付状況)

全法人

その他の別表・適用額明細書

内容により異なる

内訳・概況書類

勘定科目内訳明細書

全法人

法人事業概況説明書

全法人

消費税申告書

消費税及び地方消費税の確定申告書+付表

課税事業者のみ

地方税申告書

法人都道府県民税・事業税申告書

全法人

法人市町村民税申告書

全法人※

※東京23区内の法人は都税事務所への一本化申告

法人税の申告書は「別表」と呼ばれる複数の書類で構成されており、付表を含めると100種類以上に上ります。すべてを提出する必要はなく、会社の状況によって使用する別表は異なりますが、それぞれの関係性を理解したうえで正確に作成しなければなりません。

個人の確定申告と何が違うのか

税目の数が多い:個人は所得税・消費税(課税事業者のみ)が中心ですが、法人は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税と、申告先も税務署と地方自治体に分かれます。

別表の作成が必要:法人税の申告書は、決算書上の「利益」を税法上の「所得」に組み替える計算(税務調整)を別表で行います。交際費の損金不算入、役員報酬の扱い、繰越欠損金の計算など、会社ごとに異なる税務論点への対応が必要です。

申告期限が決算日基準:個人の確定申告は毎年3月15日が期限ですが、法人は事業年度終了日の翌日から原則2ヶ月以内と、会社ごとに期限が異なります。


会計ソフトで自分でできるのか

ソフトの進化でできることは増えた

freee・マネーフォワードクラウド・弥生会計などのクラウド会計ソフトは年々機能が強化されており、記帳の自動化や決算書の自動生成、法人税申告書の作成まで対応できるものも出てきています。freeeには法人税申告に対応した「freee申告」もあり、自力申告を前提とした機能が整いつつあるのは事実です。

それでも難易度が高い理由

しかし「ソフトで申告書が出力できる」ことと「正しく申告できる」は別の話です。

どの別表・付表が必要かの判断が難しい:法人税の申告書はどの別表を使用するかが会社の状況によって異なります。また消費税の申告書も、一般課税か簡易課税か、軽減税率の取引があるかどうかによって使用する付表が変わります。インボイス制度への対応も加わり、自社に必要な書類を正確に判断するには相応の税務知識が必要です。

消費税まわりのリスクが特に大きい:消費税の申告は以下のような論点が重なり、自力対応の難易度が高い領域です。

  • 消費税区分の分類ミス:日々の仕訳における課税・非課税・不課税の区分を誤ると、そのまま消費税の計算結果に影響します。会計ソフトが自動で区分を提案しますが、その正誤を判断するのは利用者です。
  • 計算方法の選択ミス:原則課税・簡易課税・全額控除・個別対応方式など、自社に適用すべき計算方法の判断を誤ると、納税額の計算結果が大きく変わります。
  • 中間納付の取り込み漏れ:消費税の中間納付額は会計データから自動連携されないケースがあり、申告書上で反映が漏れると過大納付や申告誤りにつながります。

マスタ設定のミスが申告結果に直結する:会計ソフトの勘定科目や税区分のマスタ設定が誤っていると、そのまま誤った数字で申告書が生成されます。ソフトは入力された数字をもとに計算するだけで、設定の正しさは利用者が担保しなければなりません。

最終成果物が正しいかどうか確認できない:申告書が出力されても、その内容が税務上正しいかどうかを自社で検証するのは困難です。別表間の数字の整合性、税務調整の適切な処理など、専門知識なしに見落としなく確認することはほぼできません。


「決算が終わってから税理士に頼む」では間に合わない

スポット依頼には現実的な問題がある

「確定申告の時期になったら税理士に頼めばいい」と考える経営者も多いですが、スポット依頼には以下のような問題があります。

期限までの時間が足りない:法人税の申告期限は決算日から2ヶ月以内です。この期間中に決算書の作成・申告書の作成・税務署への提出までを完了させる必要があり、直前に税理士を探していては間に合わないケースがあります。特に3月決算法人が集中する5月末は税理士の繁忙期にあたり、受付を絞っている事務所も多いのが現実です。

資料準備と税理士とのQAに予想以上の労力がかかる:スポット依頼では、1年分の取引データ・領収書・各種書類をまとめて引き渡すことになります。税理士側から不明点の確認が入るたびに対応が必要で、本業を抱えながらのやり取りは想像以上の負担になります。

1年分の記帳ミスがまとめて発覚する:日々の記帳が不正確なまま放置されていると、決算・申告の段階でまとめて修正が必要になります。消費税区分の分類ミスや勘定科目の誤りが1年分積み重なっていると、修正コストも大きくなります。

日常的な記帳・決算整備が前提になる

こうした問題を避けるには、申告期限の直前に慌てるのではなく、日常的に記帳・決算書を整えておく体制を作ることが前提になります。

月次で帳簿を締めておけば、決算月の作業は最終確認と申告書の作成に集中できます。税理士とのやり取りもスポットではなく継続的になるため、質問・確認のコストも分散され、結果として申告の精度も上がります。

関連記事:月次決算が遅い原因とは?


法人の確定申告は税理士への依頼が現実的な理由

法人の確定申告において、申告書の作成・税務代理は税理士法により税理士のみが行える独占業務です。経理代行サービスやクラウドソーシングのフリーランスに申告書の作成を依頼することは、法律上できません。

つまり確定申告を外注する前提として、申告書作成は税理士に依頼する一択です。

加えて、税理士に依頼するメリットは申告書の作成だけにとどまりません。

  • 税務調整の適切な処理による申告漏れ・計算ミスの防止
  • 節税につながる特例・控除の適用漏れを防げる
  • 税務調査が入った際の対応を任せられる
  • 経営状況に応じた税務・財務アドバイスが受けられる

体制の作り方:2つの選択肢

日常的な記帳・決算整備を前提としたとき、外注の体制として主に2つの選択肢があります。

選択肢① 税理士と顧問契約(記帳〜申告まで一括)

記帳代行から決算書・申告書の作成まで、すべてを税理士(または税理士法人)に委託する形です。月次で税理士が帳簿を確認するため、記帳ミスの早期発見や節税アドバイスも受けやすくなります。

経理担当者がおらず、経理業務を丸ごと任せたい法人に向いています。費用は高くなりやすいですが、対応できる範囲が最も広く、トータルの安心感があります。

選択肢② 経理代行(記帳〜決算書)+税理士(申告書作成)

記帳〜決算書の作成を経理代行サービスが担い、申告書の作成は税理士に依頼するという役割分担の形です。freeeやマネーフォワードのデータを活用しながら月次で経理を整え、決算書が完成した状態で税理士に引き渡すことで、税理士への依頼コストを抑えながら申告の品質を確保できます。

税理士の顧問料を抑えたい・会計ソフトはすでに使っている・申告書の作成だけ専門家に任せたいという法人に向いています。

選択肢① 顧問契約

選択肢② 経理代行+税理士

記帳代行

税理士が担当

経理代行サービスが担当

決算書作成

税理士が担当

経理代行サービスが担当

申告書作成

税理士が担当

税理士が担当

費用感

高くなりやすい

抑えやすい

向いている法人

経理リソースがない

会計ソフトを活用している

関連記事:経理を丸投げするには?


税理士に依頼する費用相場【2026年版】

確定申告スポット依頼(申告書作成のみ)

記帳・決算書は自社または経理代行で完成させ、申告書の作成のみを依頼する場合の費用相場です。

売上規模

費用の目安

〜1,000万円未満

10万〜15万円程度

1,000万〜3,000万円未満

15万〜25万円程度

3,000万円以上

25万円以上

消費税申告が必要な場合や決算内容が複雑な場合は追加費用が発生するケースがあります。

顧問契約(記帳〜申告一括)の年間費用目安

売上規模

年間費用の目安

〜1,000万円未満

30万〜50万円程度

1,000万〜3,000万円未満

50万〜80万円程度

3,000万円以上

80万円以上

顧問料(月額)+決算料(年1回)という料金体系が一般的で、売上規模・取引量・訪問頻度などによって変動します。


法人の確定申告を依頼する税理士の選び方

自社が使っている会計ソフトに対応しているか

freeeやマネーフォワードクラウドなどのクラウド会計ソフトをすでに使用している場合、税理士がそのソフトに対応しているかどうかは実務上の大きな論点です。対応していない場合、データの変換や二重入力の手間が発生し、かえってコストが増えることがあります。

消費税申告に対応しているか

課税売上高が1,000万円を超える課税事業者は、法人税申告と合わせて消費税の申告も必要です。一般課税・簡易課税どちらにも対応しているか、インボイス制度への対応状況も含めて確認しておきましょう。

業種・事業規模への対応実績があるか

製造業・IT・不動産・飲食など、業種によって経理処理の特性は異なります。自社の業種に対応実績がある税理士を選ぶことで、業種特有の論点に適切に対応してもらいやすくなります。初回相談時に「同業種の顧問先があるか」を確認するのが一つの目安です。

オンライン対応が可能か

クラウド会計ソフトの普及により、税理士とのやり取りをオンラインで完結できるケースが増えています。オンライン対応可能な税理士であれば、地域に縛られずに選択肢が広がり、データ共有もスムーズです。


依頼の流れと準備しておくもの

渡すべきデータ・書類一覧

  • 会計ソフトのデータ(閲覧権限の付与、またはエクスポートデータ)
  • 通帳のコピーまたは取引明細データ
  • 領収書・レシートの一覧
  • 売上・外注費等の請求書・契約書
  • 固定資産台帳
  • 前期の決算書・申告書一式

依頼から申告完了までの標準スケジュール

時期

作業内容

決算月の1〜2ヶ月前

税理士への依頼・データ共有開始

決算月中

記帳の最終確認・棚卸・固定資産確認

決算月翌月

決算書の作成・確認

申告期限1〜2週間前

申告書・内訳概況書の確認・署名

申告期限まで

申告書の提出・納税

遅くとも決算月の1〜2ヶ月前には税理士への相談を始めることを推奨します。繁忙期は税理士の対応枠が埋まりやすいため、早めの動きが重要です。


まとめ

法人の確定申告は、決算書の作成から複数の申告書提出まで専門知識を要する工程が多く、クラウド会計ソフトを活用しても自力での正確な申告には高いハードルがあります。また「決算が終わってから税理士に頼む」というスポット依頼では、期限・資料準備・税理士とのQAの面で現実的な問題が生じやすいのも事実です。

法人の確定申告を適切に進めるための基本的な考え方は、日常的に記帳・決算を整えておき、申告書の作成は税理士に任せる体制を作ることです。その体制として、税理士との顧問契約(記帳〜申告一括)か、経理代行で記帳・決算を整えたうえで申告書作成を税理士に依頼するかの2つの選択肢があります。

自社の経理リソースと事業規模に合わせて、早めに体制を整えることが、結果として申告の精度とコストのバランスを取る近道です。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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