【チェックリスト付き】従業員が退職する際に会社側がすべき手続き一覧|時系列順で解説

【チェックリスト付き】従業員が退職する際に会社側がすべき手続き一覧|時系列順で解説

労務更新日:2026-05-19

従業員が退職する際に会社側(労務担当者)がやるべき手続きを、退職日決定から離職票・源泉徴収票発行まで時系列で解説。給与計算・社会保険・住民税の注意点もまとめています。

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会社側が行う退職手続きの要点

従業員が退職する際、会社側は主に以下の対応を行います。

  • 退職日を確定し、退職届・退職願を受領する
  • 有給休暇の残日数と引継ぎ状況を確認する
  • 最終給与の社会保険料・雇用保険料の控除を確認する
  • 社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを行う
  • 住民税の処理方法(一括徴収・普通徴収・転職先引継ぎ)を確認する
  • 離職票・源泉徴収票・退職金の源泉徴収票などを期限内に発行する

退職手続き 全体スケジュール早見表

タイミング

主な対応事項

退職申出〜退職1か月前

退職届の受領・退職日の確定・秘密保持書面の確認

退職日まで

有給休暇の消化日数確認・業務引継ぎの確認・給与計算の準備

退職月の給与計算

社会保険料の控除確認・賞与の支給可否・雇用保険料の控除

退職日から5日以内

社会保険被保険者資格喪失届の提出

退職日の翌日から10日以内

雇用保険被保険者資格喪失届の提出

退職月〜翌月

住民税の切り替え手続き

退職後1か月以内

離職票の発行・源泉徴収票の交付・退職金の源泉徴収票発行

12月末退職者のみ

在職中に年末調整を実施

STEP1|退職申出〜退職日の確定(退職1か月前〜)

退職の意思確認と退職届の受領

従業員から退職の申し出を受けたら、まず退職の意思が明確かどうかを確認します。退職の方法には大きく「辞職(労働者からの一方的な告知)」と「合意解約(双方の合意による終了)」があります。実務上どちらに当たるか曖昧なケースも多いため、所属長を通じて面談を行い、意思を確認します。その後、退職届または退職願を提出してもらいます。

就業規則の確認ポイント:
退職届の提出期限は労働基準法では定められていません。多くの企業では民法627条1項の規定を準用し「2週間前まで」としていますが、有給休暇の消化や後任への引継ぎを考えると1か月前を基準に就業規則で定めておくことを推奨します

退職日の確定

退職日が決まらないと、その後の給与計算・社会保険・住民税の手続きがすべて進められません。退職届や合意書などの文書で退職日を明確に残しておくことが重要です。

実務上のポイント
退職手続きでは、退職日がすべての起点になります。退職日が曖昧なまま進めると、有給消化・最終給与・社会保険料・住民税の処理にずれが生じます。口頭確認だけでなく、退職届や合意書などで日付を明確に残しておきましょう。

STEP2|退職日までに行う対応

有給休暇の残日数確認

退職日が確定したら、有給休暇の残日数と消化スケジュールを確認します。退職日が確定している場合、退職日以降に有給休暇の取得時季を変更することはできません。そのため、退職日までに残有給を消化したいという申請があった場合、会社側は原則として取得を認める必要があります(労働基準法第39条)。

消化できない日数について「買い取り」を行うかどうかは、就業規則に基づいて確認してください。

秘密保持書面の確認

在職中に知り得た情報は、退職後も社外へ漏えいしてはなりません。実務上は、退職時に秘密保持誓約書への署名を求めることが一般的です。何が「秘密情報」にあたるかを就業規則や誓約書で明示しておくことで、退職後のトラブルを防ぎます。

競業避止義務についても、就業規則に定めがある場合は退職時に確認します。ただし、過度に広範な競業避止義務は憲法22条(職業選択の自由)との関係で無効とされるケースもあるため、職位・代償措置(手当等)の有無を考慮した運用が求められます。

業務引継ぎの確認

労務担当者は、業務引継ぎが適切に行われているかを確認します。労務担当者自身が退職するケースや、引継ぎの具体的な進め方については以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事: 【社労士が解説】労務担当者が突然退職した時の引継ぎ方法とは


STEP3|退職月の給与計算

社会保険料の控除月を確認する

社会保険料は、退職日の翌日(資格喪失日)が属する月の前月分まで発生します。

たとえば月末退職(例:3月31日退職)の場合、資格喪失日は翌月1日(4月1日)となるため、退職月(3月)分まで保険料が発生します。末締め当月払いの給与体系では、退職月の給与から前月分と退職月分の2か月分をまとめて控除するケースがあります。

一方、月の途中で退職した場合(例:3月20日退職)は、資格喪失日が3月21日となるため、退職月(3月)分の保険料は発生しません。前月(2月)分のみの控除となります。

退職日によって処理が異なるため、退職日が確定したタイミングで控除月数を必ず確認してください(健康保険法第167条・厚生年金保険法第84条)。

雇用保険料の注意点
退職月の翌月以降に残業代等の給与が発生した場合、社会保険料(健康保険・厚生年金)はすでに資格喪失済みのため控除不要です。一方、雇用保険料は翌月以降に給与が発生した場合も控除が必要です。この2つを混同しないよう注意してください。

賞与の支給可否確認

賞与は法律で支給が義務付けられているものではなく、就業規則や賞与規程の定めに従って判断します。「賞与支給日の前○か月以内に退職した場合は不支給」などの規定がある場合は、退職日との関係を必ず確認することが大事です。まずは社内規程で支給対象・支給日在籍要件・不支給要件を確認するのが基本です。

関連記事:給与計算の手順をわかりやすく解説。計算の注意点やよくあるミスとは?

STEP4|社会保険・雇用保険・住民税の手続き

社会保険の資格喪失手続き

事業主は、退職等の事実発生から5日以内に、健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を日本年金機構へ提出します(健康保険法第48条)。

喪失後の健康保険については、退職者自身が以下のいずれかを選択します。

  • 任意継続被保険者制度への加入(退職日翌日から20日以内に申請)
  • 国民健康保険への加入
  • 家族の被扶養者になる

また、資格確認書は原則退職日までに回収します。ただし、退職日の受診を考慮して退職日以降の郵送の場合などもあります。

雇用保険の資格喪失手続き

雇用保険の被保険者が退職した場合、会社は雇用保険被保険者資格喪失届を、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内にハローワークへ提出します(雇用保険法第7条)。

離職票の交付を希望する退職者や、退職日時点で59歳以上の退職者がいる場合は、離職証明書もあわせて作成します。離職証明書が離職票の発行に必要な書類となります。

住民税の切り替え

退職月によって対応が異なります。以下の早見表を参考にしてください。

退職月

会社側の対応

1月〜5月

残額を一括徴収し市区町村へ納付(一括徴収が原則)

6月〜12月(パターン①)

残額を一括徴収して納付

6月〜12月(パターン②)

特別徴収(給与天引き)から普通徴収(本人納付)へ切り替え

6月〜12月(パターン③)

次の勤務先へ引き継ぐ(何月分まで徴収済みかを明示して通知)

パターン③を選択する場合は、「○月分まで徴収済み・○月分から引継ぎをお願いしたい」と次の勤務先に明確に伝えることが必要です。

実務上のポイント
退職手続きでミスが起きやすいのは、給与計算・社会保険・雇用保険・住民税を別々に管理しているケースです。退職日・最終給与支給日・有給消化日数・離職票の要否を一覧で管理しておくと、手続き漏れを防ぎやすくなります。

STEP5|退職後に発行・回収する書類

退職時の発行・手続き・回収書類 一覧

区分

書類・対応

期限・タイミング

手続き

社会保険被保険者資格喪失届

事実発生から5日以内(日本年金機構)

手続き

雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書

被保険者でなくなった日の翌日から10日以内(ハローワーク)

発行

離職票

希望がある場合・59歳以上は必須

発行

給与の源泉徴収票

退職後1か月以内(所得税法第226条)

発行

退職証明書

退職者から請求があった場合(労働基準法第22条)

発行

退職金の源泉徴収票

退職後1か月以内(支給がある場合)

回収

資格確認書

原則退職日まで(受信状況によっては郵送で後日)

回収

貸与PC・社員証・入館証等

退職日まで

離職票

離職票は、退職者が雇用保険の基本手当(失業給付)を受給する際に必要な書類です。前述のとおり、資格喪失届・離職証明書をハローワークへ提出した後に交付されます。

対象者

発行の要否

退職者が59歳以上

希望の有無にかかわらず発行義務あり

退職者が59歳未満

退職者から請求があった場合に発行義務あり

給与の源泉徴収票

退職後1か月以内に退職者へ交付する義務があります(所得税法第226条)。年途中で退職した場合、退職者は転職先の年末調整または自身の確定申告で所得税を精算します。源泉徴収票はその際に必須の書類です。

関連記事:【労務担当者向け】退職後の動向を解説!雇用保険・社会保険はどうする?

退職証明書

退職者から請求があった場合、会社は遅滞なく退職証明書を交付する義務があります(労働基準法第22条)。記載事項は退職者が請求した事項のみとし、解雇の場合はその理由も記載します。

年末調整(12月末退職者のみ)

12月31日時点で在籍している見込みの従業員については、在職中に年末調整を実施します。年途中退職者は翌年に自身で確定申告を行うため、会社側の年末調整は不要です。

STEP6|退職金の処理(支給がある場合)

支給可否と計算

退職金は法律で支給が義務付けられているものではなく、就業規則や退職金規程の定めに従います。まず就業規則を確認し、支給対象・計算方法・支給時期を確認してください。

退職金(税務上は「退職所得」)には所得税・住民税が課されますが、社会保険料・雇用保険料は課されません

「退職所得の受給に関する申告書」の確認

退職金の源泉徴収額は、この申告書を提出しているかどうかで大きく変わります。

申告書の提出

所得税の扱い

提出あり

勤続年数に応じた退職所得控除を適用して計算。税負担が少ない

提出なし

支給額に一律20.42%の所得税を源泉徴収。退職者が確定申告で精算

退職者への負担を避けるため、申告書の提出を退職前に案内するか含めルールを定めておくことが良いです。

住民税の特別徴収と納入申告書・納付手続き(市区町村)

退職金を支給した場合、特別徴収対象者については退職金から住民税を控除し退職所得に関する納入申告を行い、特別徴収した住民税を支給翌月の10日までに市区町村へ納付します。住民税は原則として前年所得に対して課税(賦課期日である翌年の1月1日の住所がある市区町村で課税)されますが、退職所得に関しては退職所得が発生した年に課税される(退職した年の1月1日に住んでいた住所地の区市町村で課税される)点に注意してください。退職金の源泉徴収票も退職後1か月以内に交付する義務があります(給与の源泉徴収票とは別に発行が必要)。

源泉徴収した所得税の納付(税務署)

退職金から源泉徴収した所得税は、支給した翌月10日までに税務署へ納付する必要があります。納期の特例の承認を受けている会社は、退職金の源泉徴収税も特例の納期が適用されます。つまり、半年に1回(7月10日と1月20日)が納期となります。

法定調書の提出(税務署)

退職金の源泉徴収票は、退職者本人への交付だけでなく、翌年1月31日までに税務署へ法定調書として提出する義務があります。給与の源泉徴収票の法定調書とは別に提出が必要な点に注意してください。

コメント:社会保険労務士 蓑田真吾

社会保険労務士 蓑田真吾

退職者対応は「今後、当該退職者とは連絡がつきづらくなる」という前提の元、出勤している間にどれだけ手続きの認識齟齬を防げるかがポイントです。尚、退職手続きの内容は「人によって変動する部分が少ない」ため、特に、人数が増えてきた際にはチェックリストを用いて進行することも一案です。

退職手続き チェックリスト

以下の一覧を印刷して、退職者が出た際の対応確認にご活用ください。

▼ 退職申出〜退職日確定

▢退職の意思を確認し、退職届(または退職願)を受領した
▢退職日を文書(退職届・合意書等)で確認した
▢秘密保持誓約書への署名を取得した
▢競業避止義務の確認が必要な場合、書面を取得した

▼ 退職日まで

▢有給休暇の残日数・消化スケジュールを確認した
▢業務引継ぎの実施を確認した
▢退職者から離職票の要否を確認した(59歳以上は必須)
▢貸与物(PC・社員証・入館証等)の返却スケジュールを確認した

▼ 退職月の給与計算

▢退職日が月末か月中かを確認し、社会保険料の控除月数を決定した
▢賞与の支給可否を就業規則・賞与規程で確認した
▢雇用保険料の控除漏れがないか確認した(翌月に給与が発生する場合も控除必要)

▼ 社会保険・雇用保険・住民税(期限付き)

▢社会保険被保険者資格喪失届を事実発生から5日以内に提出した
▢雇用保険被保険者資格喪失届(・離職証明書)を10日以内にハローワークへ提出した
▢健康保険証(または資格確認書)を退職日までに回収した
▢退職月に応じた住民税の切り替え処理を行った
▢次の勤務先へ住民税を引き継ぐ場合、徴収済み月数を通知した

▼ 退職後の書類発行(退職後1か月以内)

▢離職票を発行・送付した(請求があった場合または59歳以上)
▢給与の源泉徴収票を交付した
▢退職金を支給した場合、退職金の源泉徴収票を交付した
▢退職証明書の交付請求があった場合、対応した
▢12月末退職者の場合、在職中に年末調整を完了した

▼ 退職金を支給した場合(該当者のみ)

▢「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無を確認した
▢退職金から所得税・住民税(特別徴収対象者)を源泉徴収・控除した
▢住民税の納入申告書を作成し、支給翌月10日までに市区町村へ納付した
▢源泉徴収した所得税を納付した(翌月10日まで。納期の特例適用会社は特例納期に従う)
▢退職金の源泉徴収票を退職後1か月以内に退職者へ交付した(給与の源泉徴収票とは別)
▢退職金の源泉徴収票を翌年1月31日までに税務署へ法定調書として提出した(給与の法定調書とは別)

よくある質問

Q. 退職時に「離職票は不要」と言っていた退職者から、後になって請求されました。発行しなければなりませんか?

A. はい、発行義務は消滅しません。退職時に希望しないと言われた場合でも、後日請求があれば対応が必要です。退職時に希望の有無を記録しておき、「後日請求があった場合の対応フロー」をあらかじめ決めておくと安心です。


Q. 退職者が「有給をすべて消化してから辞める」と言っています。業務に支障が出る場合はどうすればいいですか?

A. 退職日が確定している場合、退職日以降に有給の取得時期を変更することはできません。そのため、退職前の有給消化申請に対して会社側は原則として取得を認める必要があります。引継ぎを考慮した退職予告期間を就業規則で明確に定めておくことが、根本的な対策となります。


Q. 住民税の「一括徴収」と「普通徴収への切り替え」、どちらを勧めるべきですか?

A. 会社側の事務処理の観点では、一括徴収のほうが確実です。1〜5月退職の場合は一括徴収が原則です。6〜12月退職の場合は退職者の希望を確認した上で対応してください。次の職場が決まっている場合は、引継ぎを選択してもらうとスムーズです。


まとめ

従業員の退職手続きは対応範囲が広く、退職日が近づいてから動き始めると漏れが生じやすくなります。退職申出の時点でスケジュールを確認し、本記事のチェックリストを活用しながら計画的に進めることが重要です。

特に期限が設けられている社会保険の資格喪失届(5日以内)・雇用保険の資格喪失届(10日以内)・各種源泉徴収票の交付(退職後1か月以内)は、後回しにすると法令違反となりますので注意してください。

なお、労務担当者自身が退職するケースや、引継ぎが不十分なまま退職者が出た場合の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事: 【社労士が解説】労務担当者が突然退職した時の引継ぎ方法とは

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この記事の監修者

蓑田真吾のプロフィール画像

株式会社Enigol

蓑田真吾

千葉経済大学経済学部経済学科卒業。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。 都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名を超え、約800名の新規採用者、約600名の退職者にも対応してきた。社労士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は様々な労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしている。また、年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。

資格
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