医療事務が取り扱う重要な書類がレセプトです。レセプトは診療報酬を請求するために作成され、医療機関の経営に大きな影響を与えます。レセプトに関して課題を抱えている医療機関は多いです。本記事ではレセプト業務のやり方や必要なスキル、注意点まで解説します。
医療事務が取り扱う重要な書類がレセプトです。レセプトは診療報酬を請求するために作成され、医療機関の経営に大きな影響を与えます。レセプトに関して課題を抱えている医療機関は多いです。本記事ではレセプト業務のやり方や必要なスキル、注意点まで解説します。
レセプトとは診療報酬明細書のことであり、診療報酬を請求する際に作成しなければいけません。医療機関が収入を確保するために欠かせない存在がレセプトです。レセプトとは何なのか、基本的な点について解説します。
レセプトは診療報酬明細書のことであり、患者にどのような診断や検査、治療をしたのか、薬剤をどの程度処方したのか記載されています。
医療機関は保険者に対して診療報酬を請求するためにレセプトを作成しなければいけません。レセプトに記載された情報に基づいて医療費が算出され、保険者が医療機関に医療費の支払いをします。
日本の国民皆保険制度はレセプトをやり取りすることで成立しているのが特徴です。保険診療を行っている医療機関は必ずレセプトの作成や提出などを行うことになります。正確なレセプトを作成して、保険者による審査に通過しなければ、医療費を受け取れません。
診療報酬とは医療機関が保健医療サービスを提供した際に対価として受け取る報酬のことです。提供した医療行為ごとに対応した点数が加えられ、最終的な報酬が決定します。
日本の国民皆保険制度では、患者が医療費の3割を負担し、保険者が残りの7割を負担するのが特徴です。そのため、医療機関は患者から一部の医療費を受け取った後に、保険者に対して残りの医療費を請求します。医療機関が保険者に診療報酬を請求する際に提出するのがレセプトです。
レセプトに記載された情報から診療報酬が算出され、保険者は医療機関に対して患者の自己負担以外の部分を支払います。不正を防止するためにレセプトは厳正な審査が実施されるため、却下されるケースも珍しくありません。
レセプト業務は医療機関の収入に大きく影響するため重要性が高いです。正確なレセプトを作成して提出しなければ、審査で却下される可能性があります。そのため、レセプト業務を扱う医療事務の責任は大きいです。
レセプトに不備や誤りがあると、診療報酬の減額や返戻されるケースがあります。返戻とはレセプトが医療機関に戻されることで、内容を精査して修正した上で再提出しなければいけません。
レセプトの質が低いと医療機関としての信頼を損ないます。レセプト業務の質を高めることは医療機関にとって大きな課題です。
レセプト業務の主な流れは以下の通りです。
レセプト業務のやり方について詳しく紹介します。
患者の診療をした後でレセプトコンピューターへ診療情報の入力を行います。カルテの内容を確認して正確な内容を入力しなければいけません。入力した内容に基づいて診療報酬の点数が計算され、医療費が算出されます。
電子カルテと連携しているレセプトコンピューターが導入されている場合は、医師がカルテに入力した時点で自動で反映されるため、入力作業は不要です。
また、チェック機能のあるレセプトコンピューターを使っている場合は、入力データのチェック作業を自動で行えます。
カルテ入力の段階でミスが生じている場合は、医師に確認をして修正しなければいけません。
入力された診療情報に基づいて診療報酬を計算してレセプトの作成を行います。レセプトを作成するのは1ヶ月ごとです。レセプトコンピューターが自動的に診療報酬の計算を行ってくれるため、レセプトの作成そのものに大きな手間はかかりません。
ただし、入力された診療情報に誤りや不備があると確認作業が発生するため、スムーズにレセプトの作成を進められないケースがあります。
提出する前にレセプトの点検や確認作業が発生します。医療事務の担当するレセプト業務の中では、レセプトの確認が最も重要なプロセスです。
入力された診療情報に誤りがないか、レセプトの内容に整合性があるか確認します。たとえば、病名漏れや保険適応外の病名が付いているといったケースです。
また、患者の保険証の記号や番号、有効期限などの入力に誤りがある場合もあります。患者が期限切れの保険証を使っている場合は、レセプトの返戻につながるため注意が必要です。
患者ごとにレセプトを用意しなければいけないため、作成するレセプトはかなりの数になります。業務量が膨大になりやすいため、レセプトの確認は大変な作業です。
レセプトに問題がないことを確認した後は、※レセプトを審査支払機関に提出します。審査支払機関がレセプトの審査を行い、問題がなければ保険者に請求が行われ、最終的に医療機関は診療報酬を受け取れるという仕組みです。
※レセプトの請求方法は、紙(レセプト用紙)で請求する方法と、オンラインでの請求方法があります。紙での請求をする場合は、紙(レセプト用紙)を印刷して支払基金・国保連へ郵送または持参し、オンラインでの請求の場合は、専用端末からデータを電子送信します。
2024年4月1日以降にはオンライン請求が基本となり、紙レセプトによる新規の請求は原則として終了しております。ただし、既に紙レセプトで請求を行っている医療機関や薬局で、特定の条件(例えば、レセコン未使用や医師等が65歳以上など)に該当する場合は、引き続き紙レセプトによる請求が認められる場合があります。これらの医療機関や薬局は、2024年4月以降も紙レセプトによる請求を続けるために、改めて必要な届出を行う必要があります。
参考:紙レセプトによる請求-2024年度以降の取扱いと 必要な届出について
レセプトの審査の結果によって、※査定や返戻が行われます。査定とはレセプトの内容に問題があるために診療報酬点数が減点されることです。返戻とはレセプトが医療機関に差し戻されることで、内容の確認や修正を行い、再提出しなければいけません。
※オンライン請求を行っている医療機関等への返戻レセプトや各種帳票の紙媒体での送付は、2024年9月末をもって廃止され、同年10月からはオンライン配信のみとなっております。 これにより、オンライン請求を行う医療機関等は、オンライン請求システムの「返戻レセプト」または「各種帳票等」のページから必要なデータをダウンロードする形となります。
参考:オンラインによる返戻再請求のご案内
レセプト業務を行う上で必要になるスキルや知識を以下にまとめました。
レセプト業務に要求されるスキルや知識について紹介します。
レセプト業務を進める上で医療に関する知識は欠かせません。レセプトにはそれぞれの患者について診療や治療の内容、病名、処方薬などを記載する必要があります。病気や処置などにより診療報酬点数は異なるため、医療に関する知識は必須です。
レセプトに記載漏れや誤りが含まれるケースは珍しくありません。医療に関する正確な知識を持っていないと、レセプトのミスを見つけることは難しいです。
医師や看護師などが常に正確な書類作成をできるとは限りません。カルテや会計伝票などに誤りがあれば、レセプトの内容も不正確になります。医療に関して正確な知識を持つスタッフがレセプト業務を担当することで、レセプトの誤りに気づいて指摘することが可能です。
レセプトの業務に携わるには、一定以上の医療知識が要求されます。
レセプト業務を進める上で医療保険制度についての知識が必要になります。医療保険制度により規定されたルールに基づいてレセプトの作成を進めなければいけません。レセプト業務のベースとなるため、医療保険制度について正確な知識が求められます。
たとえば、レセプトを作成する際には公費負担医療制度についての知識も必要です。公費医療負担の対象となる患者に保険給付が行われると給付が重複します。制度を正確に理解して、保険者に請求できる範囲を知ることが大事です。
医療保険制度に関連する制度はたくさんあるため、それぞれの制度の概要を理解することがレセプト業務を進める際に重要になります。
レセプト業務を進めるのにPCスキルが必要になります。レセプトコンピューターを操作できるスキルに加えて、WordやExcelなど基本的なソフトを扱うスキルも必要です。
文字や数字を入力する場面が多いため、スムーズに入力作業を行えるスキルがあると業務を効率的に進められます。
また、医療事務はレセプト業務だけではなく、その他の作業を担当するケースも少なくありません。たとえば、資料やポスター、議事録などの作成を求められる場合があるため、PCについての幅広いスキルがあることが望ましいです。
レセプトの作成業務を進める上でコミュニケーションスキルは大事です。レセプトの内容について、医師や看護師など医療スタッフに確認を取る場面がたくさんあります。レセプトの作成は他の医療スタッフと協力してチームで進めることになるため、協調性なども重要になります。
また、医療事務は医療機関の受付も兼務するケースが多いため、患者とスムーズにコミュニケーションが取れるスキルも必要です。年齢や性別を問わず幅広い層の人達と問題なく意思の疎通ができるスキルが要求されます。
レセプト業務に対応できるスキルや知識があることを証明するのに医療事務の資格を取得するのは効果的です。レセプト業務を担当するのに資格を取得することは必須ではありません。しかし、ある程度の専門的な知識やスキルが要求されるため、採用の際に医療事務の資格の有無が注目されやすいです。
医療事務の資格は民間資格であり、さまざまな団体が実施しています。代表的な資格はメディカルクラーク(R)や医科医療事務管理士、診療報酬請求事務能力認定試験などです。試験では医療事務に関連する法規や保険請求事務、医学一般の知識などが出題されます。
レセプト業務に関して注意すべき点を3つ紹介します。
レセプトの業務にミスがあると診療報酬の受け取りが遅れるため、経済的な損失につながります。レセプトが審査に通らずに差し戻された場合は、再提出しても診療報酬が支払われるのは1ヶ月先です。また、審査の結果として支払われる金額が請求金額より少なくなるケースもあります。
レセプトのミスによって医療機関の収入が減ると経営悪化の原因となるため注意が必要です。医療機関の収入を安定させるためには、レセプトのミスを削減することが大きな課題になります。
レセプトにミスがあると患者や保険者からの信頼を損ねることになります。レセプト業務を正確に行えない医療機関は、他の業務の質についても疑問視されるからです。信頼できない医療機関とみなされれば、今後の経営に悪影響を及ぼします。
提出したレセプトが却下されることが多ければ、不正が行われていると疑われるケースもあるため注意が必要です。患者や保険者との信頼関係を維持するために、質の高いレセプト業務の実現が求められます。
レセプト業務を担当する医療事務の人手不足が続いている点は、多くの医療機関にとって課題となっています。レセプト業務は毎月発生するものであり、業務量は膨大で複雑であり、医療事務は欠かせない存在です。しかし、医療業界全体で医療事務の不足が問題視されています。
レセプト業務は高度なスキルや知識が求められ、業務量も大きいため、離職率が高いです。また、待遇に不満を抱えて離職するケースもあり、定着率の低さが問題視されています。
今後は少子高齢化により労働人口が減少し、一方で医療ニーズは増加していくため、医療事務の人手不足の問題は深刻化するでしょう。医療機関はレセプト業務の課題を解決するために早急に対策を取る必要があります。
レセプト業務の課題を解決する方法としてアウトソーシングがあります。医療事務の業務を専門に請け負っているサービスはたくさんあり、幅広い業務の依頼が可能です。医療事務のプロフェッショナルチームにレセプト業務を任せることで、さまざまなメリットを得られます。
レセプト業務をアウトソーシングすることで、業務効率化や人件費の削減、業務の質の向上などのメリットを期待できます。ただし、アウトソーシング先によって料金や依頼できる業務範囲、サービスの質などの違いが大きいです。さまざまなアウトソーシング先を比較して、信頼できるサービスを利用することが重要になります。
レセプトは医療機関が診療報酬を請求するのに必要な書類です。レセプト作成のやり方はさまざまなプロセスが含まれており、幅広いスキルや知識が要求されます。
医療機関にとって正確なレセプトを作成することの重要性は高いです。レセプトのミスが発生すれば医療機関の収入が減ってしまい、信頼を損なうことにもつながります。
医療機関を経営していく上でレセプトに関する課題を解決することは重要です。必要なスキルや知識を持った人材を採用して、レセプト作成に備えましょう。プロにレセプトをアウトソーシングすることもできます。本記事の内容を参考にして、レセプト業務に対処しましょう。
株式会社Enigol
株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。