経費精算をキャッシュレス化する3つのステップ|小口現金を廃止して現金出納帳を減らす方法

経費精算をキャッシュレス化する3つのステップ|小口現金を廃止して現金出納帳を減らす方法

経理更新日:2026-07-12

クラウド会計の普及で自動化が進む一方、いまだに手作業が残るのが現金取引です。本記事では、小口現金の廃止・法人カードの導入・経費精算システムの導入という3つのステップで、経費精算をキャッシュレス化し、現金出納帳の作成工数を減らす方法を解説します。

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クラウド会計の普及により、インターネットバンキングやクレジットカードのようにオンライン上へ自動でデータが残る取引は、会計ソフトと連動させて処理を自動化できるようになりました。仕訳の自動化はもはや当たり前になりつつあります。しかし、いまだに自動化が進みにくい領域が残っています。それが現金取引です。

現金取引は、領収書を一枚ずつ確認して会計ソフトへ手入力する必要があり、どうしても人手と時間がかかります(関連記事:経費精算のどこを自動化できて、どこが難しいのかは別記事で整理しています)。そこで鍵になるのが、経費精算のキャッシュレス化です。この記事では、現金精算を段階的に廃止し、社内の経費精算フローをキャッシュレス化していく進め方を、3つのステップに沿って紹介します。まずは小口現金の廃止から始めて現金出納帳の作成工数を削り、空いたリソースをコア業務へ振り向けましょう。

関連記事:経理の仕事内容をまるっと解説!日次・月次・年次の業務内容とは

STEP1 小口現金の廃止

経理処理を効率化するうえで、最も理想的なのは、そもそも現金を極力使わないことです。現金取引が減れば、その分だけ現金出納帳への記帳や残高の突合にかかる手間も軽くなります。現金を扱うと、どうしても無駄な管理コストが発生します。領収書を一つずつ小口現金出納帳や会計ソフトに入力する作業は、効率が良いとは言えません

関連記事:経費精算を効率化する手順もあわせてご覧ください

そこで最初に取り組みたいのが、小口現金の廃止です。社内に現金や金庫を置くと、現物管理が必要になり、盗難や紛失といったセキュリティ上の不安が常につきまといます。小口現金をなくせば、この不安から解放されます。あわせて、毎日の帳簿残高と現金残高の突合作業も不要になり、釣銭用の金種を用意する手間もなくなるため、経理担当者の負担を大きく減らせます。

まずは過去の現金入出金の記録から、社内でどのような現金取引が発生しているのかを洗い出しましょう。多いのは、切手や収入印紙といった郵便関係の経費国や地方自治体に対する証明書などの交付手数料、そして従業員の立替経費ではないでしょうか。ここからは、頻出する現金支払いを一つずつ「現金レス」に置き換える方法を見ていきます。

料金後納サービスを利用する(切手・郵便代)

切手の購入には、郵便局の料金後納サービスを活用しましょう。料金後納は、郵送にかかった料金を1か月分まとめて翌月に一括で支払えるサービスです。都度、小口現金で切手を買う対応が不要になり、経理業務の手間を省けます。手続きは最寄りの郵便局で簡単に行えます。

参考:料金後納について(日本郵便)

クラウド電子契約システムを利用する(収入印紙)

収入印紙を使う場面は、契約書・見積書・領収書への貼付がメインではないでしょうか。印紙税は、紙で作成・交付した課税文書に対してかかる税金です。裏を返せば、電子契約システムを導入して文書を電子データでやり取りすれば、収入印紙そのものが不要になり、経費削減につながります。近年はIT化と法整備が進み、電子契約サービスの利用は一般的になりました。代表例は、弁護士ドットコムが運営する「クラウドサイン」で、累計登録者数の多い定番サービスの一つです。

参考:クラウドサイン

e-Tax・eLTAXを利用する(税金関係の証明書)

経理部門では、納税証明書などの税金関係の書類が必要になり、納付時に現金対応を求められることがあります。この場合も、国税庁や地方自治体が運営する無料のオンラインサービスe-Tax・eLTAXを使えば、ネットバンキングと連携して交付手数料を納付できます。税務署や役所へ足を運ぶ手間も省けます。また手数料はかかりますがクレジットカードでの納付も可能です。

参考:e-Tax 国税クレジットカード納付の案内/ eLTAX

登記ねっとを利用する(登記簿謄本・印鑑証明書)

登記簿謄本や印鑑証明書が必要になったとき、法務局の窓口で発行してもらうと現金で手数料を支払うことになります。この場合も、無料の「登記ねっと(登記・供託オンライン申請システム)」を使えば現金対応が不要です。オンラインで登記関連の手続きができ、法務局へ行く手間も省けます。

参考:登記・供託オンライン申請システム

以上が、社内で頻出する現金支払いを廃止する方法です。ここまで読んで、「小口現金をなくすと、従業員が立て替える場面が増えてしまうのでは」と感じた方もいるかもしれません。小口現金の廃止によって、そのしわ寄せが従業員へ向かってしまっては本末転倒です。業務効率化は、社内全体がその恩恵を受けられるよう設計する必要があります。そこで次のステップが、従業員の立替負担を減らす仕組みづくりです。

STEP2 法人カードの導入

小口現金を廃止したら、次は従業員の立替経費の精算方法を見直しましょう。仮払いをやめ、立替経費を月1回まとめて給与振込で精算している会社もありますが、これでは従業員側の立替負担が増えてしまいます。そこでおすすめなのが法人カードの導入です。

関連記事:経費精算の流れと注意点、クラウド経費精算システムについて解説!

法人カードを導入するメリットは、従業員にとっては立替負担を減らせること、そして経理担当者にとっては「誰が・いつ・どこで・何に」支払ったのかをカード明細で即座に把握できることです。明細に不適切な経費が含まれていれば、その分を給与天引きなどで取り下げることもできます。さらに、カードと会計システムを連携させれば、経理データの自動取り込みが可能になります。

導入にあたっては、まず仮払いの対象者や立替経費の多い従業員を洗い出します。人数が多いほど発行枚数が必要になるため、追加カードの発行上限を確認しておきましょう。あわせて、立替経費がどんな用途で発生しているかを把握することも重要です。交通費精算が中心なのか、日常的に有料道路を使うのか、会議費や接待費などの飲食代が多いのか——自社の支出傾向に合ったカードを選ぶ必要があります。

関連記事:接待交際費とは?損金算入の上限や会議費との違い、書き方を解説

法人カードは種類が非常に多く、自社に合う一枚を選ぶのは骨が折れます。そこで、タイプの異なる代表的な3枚を紹介します。

コストパフォーマンスに優れた「JCB一般法人カード」

JCB一般法人カードは追加カードの発行枚数に上限がなく、多くの従業員に配りたい場合に最適な一枚です。ただし一般ランクのため、利用限度額をよく確認して使う必要があります。各従業員に利用上限を設けるなど社内ルールの整備は必要になりますが、それが従業員のコスト意識を高めることにもつながります。

参考:JCB一般法人カード

交通費精算が多いなら「ビュー法人カード」

ビュー法人カードは、クレジット決済でSuicaへチャージできる数少ない法人カードです。出張や電車移動が多く交通費精算が煩雑になりがちな会社では、カードから直接Suicaにチャージできることが精算業務の効率化に大きく役立ちます。Suicaの利用明細をクラウド会計と連動させれば、経理処理の自動取り込みも可能です(別途システム導入が必要)。

参考:ビュー法人カード(JR東日本)

電子マネー利用なら「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」

政府の後押しでキャッシュレス化が進むなか、電子マネー機能を付帯した法人カードも(数は少ないものの)登場しています。電子マネーを使えば決済をよりスピーディに済ませられ、ポイント還元など現金にはない経済的メリットも得られます。なかでもセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、法人カードでは珍しく「iD」「QUICPay」「Apple Pay」の3種類の電子マネーに対応した貴重な一枚です。カード紐づけ型のため、電子マネーの利用分も法人カードの請求としてまとめられ、法人口座から引き落とされます。個別精算の手間がなく、利用明細を見れば「どこで使ったか」がわかるので経費処理も簡単です。クラウド会計ソフトと紐づければ帳簿へ自動反映され、少額の精算・経費処理の手間を抑えられます。

参考:セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード

以上、タイプの異なる3枚を紹介しました。自社の用途に合った最適な法人カードを選びたいところです。ただし法人カードには、運用ルールを決めておかないと不正利用につながりやすいというデメリットもあります。とくに電子マネーは手軽に決済できる反面、悪意がなくてもプライベートな支出と混同してしまうことが起こりがちです。

手軽に決済できる仕組みを取り入れるときほど、運用ルールを明確に決めることが重要です。とはいえルールが複雑になるほどチェックする側の負担も増えるため、あわせて経費精算システムを導入することをおすすめします。法人カードと経費精算システムを組み合わせて使うことで、業務効率化とコスト削減の両方を実現できます。

ガバナンスを効かせたいなら「支出管理型の法人カード」も選択肢

ここまでの3枚は「決済手段」としての法人カードですが、近年は決済と支出管理(ガバナンス)を一体化したクラウド型の法人カードが広がっています。代表例が「UPSIDER」です。

このタイプの強みは、カードを従業員に広く配りながら、使いすぎや不正利用を仕組みで防げることです。UPSIDERの場合、リアルカード・バーチャルカードともに発行枚数は無制限(年会費・発行手数料は無料)で、カードごと・従業員ごとに利用上限額・利用できる決済先・利用期間を個別に設定できます。あらかじめ許可した決済先以外では使えないよう制限できるため、「全員に配ったうえで、私的利用や想定外の高額決済はブロックする」といった運用が可能です。従来型カードのように運用ルールを人手で細かく管理しなくても、カード側の設定でガバナンスを効かせられるわけです。

さらに、決済前の稟議・利用申請フローの設定、決済後にリアルタイムで反映される明細、Slackやアプリからの証憑(領収書)アップロードとOCR読み取り、会計ソフト(freee・マネーフォワード・勘定奉行クラウドなど)へのAPI連携による自動仕訳まで、経理側の作業も一気通貫で軽くできます。電子帳簿保存法・インボイス制度への対応機能も備わっています。従業員や拠点が増えて小口現金・立替経費の負担が大きくなってきた成長企業や、上場に向けて支出のガバナンスを固めたい企業と特に相性の良い選択肢です(法人専用のため、個人事業主は申し込めません)。

関連記事:ベンチャー企業におすすめのクレジットカード比較

STEP3 経費精算システムの導入

立替経費を精算する際、申請書に金額を手入力し、領収書を一枚ずつ糊付けする作業は、従業員にとって大きな負担です。経費ルールが細かく設定されていれば、書類を目視でチェックする経理担当者の負担も増します。加えて社内の承認フローが多いと、申請者・経理担当者・承認者のいずれにとってもコミュニケーションコストがかさみます。

こうした負担を一気に軽くするのが経費精算システムです。導入によって、次のようなメリットが得られます。

従業員の業務効率化

経費精算システムには、交通系ICカードを読み込んで交通費を自動入力できる機能があります。移動の多い従業員にとって、一件ずつ入力する手間が省けます。スマートフォンからの入力にも対応しているため、移動中などのすき間時間に処理できます。領収書(レシート)をスマホのカメラで撮影するだけで金額などのデータを読み取り、申請フォームへの入力を簡略化することも可能です。電子帳簿保存法に対応したシステムであれば、撮影するだけで領収書を電子化でき、原本を糊付けして提出する作業も不要になります。

関連記事:レシートの正しい管理方法や領収書との違い、経費精算時の扱い方

経理担当者の業務効率化

従業員の定期区間をあらかじめ登録しておけば、申請された交通費に定期区間との重複があった場合に自動で控除してくれるため、チェックの手間が大幅に減ります。多くのシステムはWeb・スマホから申請・承認でき、社内規定との自動照合機能によって規定違反を素早く発見できます。たとえば、会社の定休日に発生した経費、上限額を超えた接待交際費、事前申告のない支出などを自動で抽出し、経理担当者のチェック時間を削減します。会計ソフトと連携したシステムなら自動で仕訳されるため、勘定科目を決めたり手入力したりする作業からも解放されます。振込データを自動作成し、インターネットバンキングへ取り込むことも可能です。

関連記事:経理業務を効率化する方法|無駄な作業を減らす進め方・ツール活用を解説

承認者の業務効率化

システム導入前は、申請漏れの従業員への督促、記載ミスによる差し戻しの連絡、上長印を再取得するためのやり取りなど、社内に無駄なコミュニケーションコストが発生していました。経費精算システムを使えば、Web上でワンクリックで差し戻せ、従業員のスマホに通知が届くため、すぐに修正してもらえます。出張中で忙しい上長もスマホから承認でき、コミュニケーションコストを大幅に削減できます。データが蓄積するほど、将来の経費支出額を予測できる分析機能に優れたシステムもあります。

このように経費精算システムの導入は、従業員・経理担当者・会社全体に大きなメリットをもたらします。

インボイス制度・電子帳簿保存法への対応

いまや経費精算システムは「効率化のための便利ツール」であると同時に、法対応のためのインフラでもあります。押さえておきたいのが、次の2つの制度です。

  • 電子帳簿保存法:2024年1月から、メールやクラウドで授受した請求書・領収書などの電子取引データは、原則として電子データのまま保存することが義務化されました(紙に印刷しての保存は原則不可)。保存には、タイムスタンプ付与や訂正・削除履歴の保持といった「真実性の確保」と、「日付・金額・取引先」で検索できる「可視性の確保」が求められます(請求書・領収書の保存方法もあわせて確認しておきましょう)。
  • インボイス制度:2023年10月に始まった仕入税額控除の方式です。買い手が控除を受けるには、登録番号などの記載要件を満たした適格請求書(インボイス)の保存が必要です。免税事業者からの仕入れにかかる経過措置は段階的に縮小され、2026年10月1日からは控除割合が80%から70%へ引き下げられます。会計ソフト・経費精算システム側でも税区分の設定変更が必要になるため、早めの確認が欠かせません。

この2制度は手作業だけで正確にさばくのは現実的ではありません。電子帳簿保存法・インボイス制度の両方に対応した経費精算システムを選び、受領データの保存から登録番号・税率のチェック、会計ソフトへの自動連携までを仕組みで担保することが、これからの実務では標準になります。

関連記事:インボイス制度で必要となる買手の業務負担とその対策を具体的に会計士・税理士が解説

もっとも、経費精算システムにもデメリットはあります。それは自社に合うシステムを選ぶことの難しさです。数多くの製品が生まれ続けるなかから最適な一つを選ぶには、既存の会計システムとの相性や他の業務ソフトとの連携まで含めた全体設計を考える必要があります。また、導入して終わりではなく、導入後もPDCAサイクルを回して改善を図っていくことが大切です。

関連記事:クラウド会計ソフト比較7選|料金・機能・AI活用・会社規模別の選び方を解説

導入には一定の労力がかかりますが、自社に合ったシステムを選び、効果的な業務フローを構築できれば、業務効率は間違いなく飛躍的に向上します。

Remoba経理

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項目内容

サービス名

Remoba経理

会社名

(株)Enigol

公式サイト

https://remoba.biz/accountant

まとめ

現金出納帳の作成にかかる手間を減らし、キャッシュレス化を進める方法として、次の3ステップを紹介しました。

  • STEP1:小口現金の廃止
  • STEP2:法人カードの導入
  • STEP3:経費精算システムの導入

政府のDX推進により、キャッシュレス化の流れはますます加速しています。かつては「将来の話」だった給与の受け取りも、いまや現実のものになりました。2023年に解禁された給与デジタル払いは、2026年時点でPayPay・楽天Edy(楽天ペイ給与受取)・auペイメント(au PAY 給与受取)・リクルートMUFGビジネス(COIN+)の指定資金移動業者を通じて実際に利用できます(労使協定の締結や希望者の同意取得など、導入には所定の手続きが必要です)。振込手数料の削減やポイント還元といったメリットもあり、今後さらに広がっていくと考えられます。

まずは第一歩として、現金出納帳のボリュームを抑えるという身近なところから、キャッシュレス化の仕組みづくりを進めていきましょう。

※本記事の制度に関する記載は2026年7月時点の情報です。電子帳簿保存法・インボイス制度・給与デジタル払いなどの要件や経過措置は改正される場合があります。具体的な判断は、国税庁・厚生労働省などの最新情報や顧問税理士にご確認ください。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
税理士

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