スタートアップの経理とは何かを解説。日次・月次・年次の業務内容、一般企業との違い、資金調達やIPOを見据えた体制づくり、よくある課題を紹介します。

スタートアップの経理とは何かを解説。日次・月次・年次の業務内容、一般企業との違い、資金調達やIPOを見据えた体制づくり、よくある課題を紹介します。
スタートアップの経理業務は、日次・月次・年次に分けると整理しやすくなります。
銀行口座・カード明細の確認、領収書・請求書の回収、経費精算の確認など、日々の入出金や証憑を管理する業務です。
必ず毎日処理する必要はありませんが、領収書や請求書を数ヶ月分まとめて整理すると、記帳漏れや確認漏れが起きやすくなります。最低でも月1回は確認する流れを作ることが重要です。
月次決算、請求書発行、入金確認、支払管理、給与計算との連携、資金繰り表の更新などが含まれます。
スタートアップでは、採用・広告・開発投資の判断を月次の数字をもとに行います。月次が遅れると、足元の経営状況を把握しにくくなり、資金調達時の説明資料づくりにも影響します。
決算書の作成、税務申告、年末調整などを税理士と連携して進めます。
日次・月次が整っていないと、決算時に大量の確認作業が発生し業務負担が大きくなります。年次決算をスムーズに進めるためにも、毎月の処理を整えておくことが重要です。
関連記事:経理の仕事内容をまるっと解説!日次・月次・年次の業務内容とは
取引件数が少ないうちは、代表者や役員の兼任でも回ることがあります。しかし、事業成長とともに経理業務は急増します。
限界がきて経理体制が崩壊するなどの前に、先回りして対策、そしてどのタイミングで採用・外注・体制整備に切り替えるのかを考えておくことが重要です。
スタートアップでは、半年から1年で取引量や従業員数が大きく変わることがあります。フェーズごとに、経理で重視することも変わります。
創業期のやり方をそのまま続けると、成長に経理が追いつかなくなります。
スタートアップでは、投資家や金融機関に数字を説明する場面があります。資金調達では、売上、粗利、費用、キャッシュ残高、資金繰りなどを整理しておく必要があります。
IPOを見据える場合は、月次決算の早期化、事業計画作成、予算実績管理、資金管理、会計方針の見直しなど、求められる経理水準がさらに上がります。上場直前にまとめて整えようとすると工数・コストが大きくなるため、早めに着手することが重要です。
freeeやマネーフォワードを使う会社は多いですが、ツールを入れるだけでは経理は整いません。
誰が、いつ、どのように使うのか。勘定科目、部門、タグ、承認フロー、証憑回収ルールをどうするのか。ツール導入とあわせて、運用ルールまで設計することが重要です。

創業初期は、証憑回収や記帳、入出金管理などの基本業務が中心です。一方で、従業員数や取引件数が増えると、請求管理、支払管理、給与計算、月次決算、資金繰り管理まで必要になります。
さらに資金調達やIPOを見据えるフェーズでは、投資家や監査法人に説明できる数字を整える必要があります。
フェーズ | 主な経理業務 | 重視すべきポイント |
|---|---|---|
創業〜シード | 証憑回収、記帳、入出金管理、経費精算 | 毎月数字を確認できる状態を作る |
シリーズA前後 | 請求管理、入金確認、支払管理、給与計算、月次決算・資金管理 | 代表者や少人数メンバーに依存しない運用を作る |
シリーズB以降 | 予算実績管理、資金管理、部門別管理、管理資料作成 | 経営判断や投資家説明に使える数字を整える |
IPO準備 | 月次決算の早期化、会計方針の見直し、内部管理体制、監査対応資料の整備 | 監査に耐える経理・管理体制を整える |
創業〜シード期は、完璧な経理体制を作るよりも、証憑や入出金を毎月確認できる状態を作ることが重要です。
シリーズA前後では、請求、支払、給与、月次決算の負担が増えるため、採用や外注も含めて経理を止めない体制を考える必要があります。
シリーズB以降やIPO準備フェーズでは、経理は単なる処理業務ではなく、経営判断、資金調達、監査対応に使える数字を整える役割が強くなります。
領収書・請求書が散らばったまま放置されると、記帳漏れや月次決算遅延につながります。提出期限、保存場所、確認担当者を決めることが第一歩です。
月次が遅れると、先行投資を続けるべきか、支出を抑えるべきかの判断も遅れます。月次決算と資金繰り確認をセットで回す仕組みが必要です。
関連記事:月次決算が遅れる原因と改善方法
税理士の主な役割は、税務申告・税務相談です。請求管理、入金確認、支払管理、資金繰り表などの日常経理は、別途体制を作る必要があります。
経理業務が一人に集中すると、退職や休職時に業務が止まるリスクがあります。業務フローを整理し、税理士・社労士・外注先と役割を分けることで属人化を防げます。
採用だけで解決しようとせず、必要に応じて外注も含めて検討することが重要です。
スタートアップでは、経理体制を大きく作り込む前に、まず基本ルールを整えることが重要です。
基本ルール | 目的 |
|---|---|
証憑・請求書を毎月回収する | 記帳漏れや月次遅れを防ぐ |
口座・カード・役員立替を整理する | 入出金確認や経費精算を簡単にする |
支払承認と権限管理を分ける | ミスや不正を防ぐ |
資金繰り表で予定と実績を比較する | 資金ショートを早期に把握する・不正の早期発見 |
システムを早めに導入し運用する | 規模拡大後の混乱を防ぐ・コスト削減 |
まずは、領収書や請求書の提出期限、保存場所、確認担当者を決めましょう。口座やカード、役員立替のルールも早めに整理しておくと、入出金確認や経費精算の負担を減らせます。
また、支払データを作る人と承認する人を分け、取引先マスタの追加権限を制限するなど、資金管理の基本的な牽制も必要です。資金繰り表を作り、入金予定と支払予定を月次で比較すれば、資金ショートの兆候にも気づきやすくなります。
クラウド会計やSaaSは、人数が少ないうちに導入し、運用ルールを定着させるほうが負担を抑えられます。取引件数や従業員数が増えてからルールを変えると、現場への説明や社員教育に時間がかかります。
スタートアップの経理は、取引件数や従業員数が増えるにつれて、求められる水準が変わります。
まずは、自社の経理がどこで止まっているかを確認しましょう。証憑回収が遅れているのか、月次決算が遅れているのか、支払承認や資金繰り管理が曖昧なのかによって、優先すべき対策は変わります。
代表者や一人の担当者だけで回すのが難しくなった場合は、採用だけでなく経理アウトソーシングも選択肢です。具体的な判断基準は「スタートアップの経理アウトソーシングとは?導入タイミング・費用・選び方を解説」で解説しています。
公認会計士・税理士 辻田和弘
「税理士に任せているから大丈夫」と考える代表者は少なくありません。ただ、税理士が主に担うのは税務申告や税務相談であり、日常の資金繰り、請求管理、支払管理、証憑回収は別の体制が必要です。この認識のズレが、後になって月次決算の遅れや資金管理が杜撰につながるケースも少なくないです。