銀行振込の種類・リスク・注意点を解説|ATM・窓口・ネットバンキングを比較

銀行振込の種類・リスク・注意点を解説|ATM・窓口・ネットバンキングを比較

経理更新日:2026-06-04

ATM・銀行窓口・ネットバンキングの特徴と手数料を一覧比較。詐欺・横領・振込ミスなど5つのリスクと具体的な対処法を公認会計士が解説。経理業務を安全・効率化したい経営者・経理責任者向け。

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この記事でわかること

  • ATM・銀行窓口・ネットバンキングの違いと選び方
  • 詐欺・横領・振込ミスなど5つのリスクと防ぎ方
  • リスク対策にかかるコストと、現実的な解決策

振込・送金・振替の違い

まず用語の整理から入ります。「振込」「送金」「振替」は混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。

振込:自分の口座から、他者(取引先・従業員など)の口座へ資金を移すこと。銀行が仲介し、受取人の口座に入金される。

送金:広義には「資金を送ること」全般を指す言葉。振込はその手段のひとつ。一般的には現金書留や外国送金なども含む概念として使われる。

振替:同一名義の口座間で資金を移すこと。たとえば自社のA銀行口座からB銀行口座へ資金を動かす場合が振替にあたる。

用語

相手先

代表的な場面

振込

他者の口座

取引先への支払い、給与振込

送金

他者(広義)

海外送金、現金書留など

振替

自分の口座

自社内の口座間資金移動

銀行振込の種類、メリットとデメリット

はじめに銀行振込の種類について説明します。それぞれメリットとデメリットがありますのでしっかりと理解しておくことをおすすめします。

ATM

銀行窓口

ネットバンキング

手数料

割安(窓口より低い)

最も高い

最も割安

振込限度額

上限あり(銀行・設定により異なる)

制限なし

設定次第で高額対応可

必要なもの

キャッシュカード

通帳・印鑑・本人確認書類

ID・パスワード・トークン

来店

必要

必要

不要

一括データ処理

×

×

○(複数件同時送信可)

主なリスク

限度額超過

窓口混雑・手間・書類漏れ

詐欺・横領・認証ミス

一般的に、会社の規模が大きくなるほどネットバンキングへ移行していく傾向にあります。その理由は単純で、振込件数が売上に比例して増えるからです。

たとえば、1回10万円の仕入れにマージンを乗せて販売するビジネスモデルの場合、月売上1,000万円なら支払回数は100回、月売上1億円になれば1,000回になります。月に1,000回もの振込を窓口やATMで1件ずつ処理するのは、現実的ではありません。

ただし、ネットバンキングへの移行には相応のリスク管理が伴います。後半のセクションで詳しく解説します。

ATM振込のメリット・デメリット

メリット

  • 用紙の記入が不要:窓口と異なり、画面の案内に従って操作するだけで完結する
  • 通帳がなくても手続き可能:キャッシュカードがあれば振込できる
  • 窓口より手数料が割安:同じ銀行の振込でも、窓口より数十〜数百円安いケースが多い
  • 稼働時間内であればいつでも使える:窓口の営業時間外でも対応可能なことが多い

デメリット

  • 利用限度額がある:1日あたりの振込限度額が設定されており、高額振込は窓口での手続きが別途必要になる場合がある。限度額は銀行・口座の種類により異なるため要確認
  • 来店が必要:結局は店舗またはATM設置場所へ足を運ぶ必要がある

ATMは「少額・単発」の振込には適していますが、大口や大量の振込が発生する事業規模ではネットバンキングへの移行を検討すべきタイミングと言えます。

銀行窓口振込のメリット・デメリット

メリット

  • 振込に限度額がない:大口振込でも1件ずつ対応可能
  • IT機器が不要:パソコンやスマートフォンに不慣れな担当者でも操作できる

デメリット

  • 必要書類が多い:通帳・印鑑・本人確認書類が原則必要(代理人の場合は委任状も)。なお、キャッシュカードを利用する場合は印鑑が不要になる銀行もある
  • 書類の記入と窓口での待ち時間が発生:特に月末など1件の振込に数十分かかることも珍しくない
  • 手数料が最も高い:ATM・ネットバンキングと比較して割高になるケースがほとんど

窓口振込が適しているのは、高額の一括支払いや、IT操作に不慣れな担当者が対応せざるを得ない場面、あるいは限度額を超えた振込が必要な場面です。通常業務のメイン手段とするには、コスト・時間の両面で非効率です。

インターネットバンキングのメリット・デメリット

メリット

  • 手数料が最も割安:多くの銀行でATM・窓口より安く設定されている
  • 来店不要:オフィスや自宅からPC・スマートフォンで完結できる
  • 振込先を登録すれば繰り返し使える:取引先や従業員口座を登録しておけば、次回以降の入力が大幅に省略できる
  • 一括データ処理が可能:給与振込など複数件を一度に処理できる。月に数百件の振込をこなす会社にとっては圧倒的な効率差が出る

デメリット

  • 詐欺・横領のリスク:後述する通り、インターネット経由であるがゆえに犯罪リスクにさらされやすい
  • 認証が複雑で、ミスによるロックのリスク:セキュリティ強化のため手順が多く、誤入力でロックされると振込期日に間に合わない事態にもなりかねない
  • パスワード・トークン管理の負担:管理ルールを徹底しなければ、情報漏洩や横領の温床になる

便利なネットバンキングですが、リスクへの備えがないまま移行するのは危険です。次のセクションで、具体的なリスクを1つずつ解説します。

銀行振込の5つの注意点とリスク

(1)詐欺:偽請求書・ビジネスチャットなりすましによる誤送金

詐欺の手口は年々巧妙化しています。従来の偽請求書に加え、2026年1月以降はChatworkを悪用したなりすまし詐欺が国内企業で急増しており、Chatwork運営会社も公式に注意喚起を出しています。

従来型:偽請求書による誤送金

  1. 攻撃者が取引先の情報(購入元情報・メールアカウントなど)を盗む
  2. 本物の取引先を装い、偽の請求書を経理担当者へ送りつける
  3. 担当者が気づかず、攻撃者の口座へ振込んでしまう

新型:Chatworkなりすまし詐欺

  1. 攻撃者が社長や役員の氏名・アイコン画像を使い、偽アカウントを作成する
  2. 社員にコンタクト申請を送り、承認させる
  3. 「急ぎで振込をお願いしたい」と業務指示を装い、送金させる

この手口が厄介なのは、普段使い慣れた社内ツールで、見た目上は上司からの指示として届く点です。メールの場合は怪しいドメインなどで気づけることがありますが、チャットツールのなりすましは見分けが難しく、確認なしに振込を実行してしまうリスクが高い。

振込詐欺にあうことは、個人情報を漏洩させてしまうことと同じくらい致命的です。金銭的な損失にとどまらず、「内部統制が機能していない会社」と見なされ、取引先・金融機関・株主からの信用を一度に失うリスクがあります。事業を一生懸命大きくしてきたのに、一度の詐欺被害で信頼を根こそぎ失う——そのような事態を避けるためにも、内部統制の整備は後回しにできません。

この事例には、3つの内部統制上の課題が潜んでいます。①取引先情報が盗まれた(情報管理の問題)、②請求書の真偽確認が行われなかった(承認フローの問題)、③振込時のチェックが不十分だった(実行時確認の問題)——この3点です。事業拡大に注力する経営者にとって、こうした内部統制まで目を向けるのは容易ではありませんが、放置すれば会社経営そのものを揺るがすリスクをはらんでいます。

関連記事:監査とは?法的観点からの分類や経理実務上の監査業務の注意点を解説

(2)横領:職務分離が機能していない組織の弱点

横領事件は、決して大企業だけの問題ではありません。

よく知られた事例として、「1人経理」の担当者が約1億5,600万円を横領し逮捕されたケースがあります。2014年から2019年の約5年間にわたり、インターネットバンキングで60回以上、会社の口座から自分の口座へ送金し続けていました。

明日は我が身です。あなたの会社で同様の横領が起こらないと言い切れるでしょうか。

この事例の問題の核心は、「送金情報の入力者と承認者が同一人物だった」ことです。内部統制の文脈では、これを職務分離の欠如と呼びます。

職務分離には2つのポイントがあります。

ポイント1:入力者と承認者を分ける 振込データを作成する担当者と、それを承認・実行する担当者を別の人間にする。最低限の分離です。

ポイント2:経理と財務を分離する これはIPO準備や内部統制強化の場面で監査法人から必ず指摘される項目です。「経理(取引の記録・請求書処理・振込データの作成)」と「財務(口座管理・振込の最終承認・資金判断)」を異なる担当者・部門が担う体制を指します。同一人物が両方を兼任していると、振込データを作った人間が帳簿管理まで完結できてしまい、不正・横領の温床になります。

スタートアップや中小企業では、1人の担当者が経理も財務も兼任しているケースがほとんどです。事業が小さいうちは現実的な選択ですが、規模が拡大するほどこの体制はリスクになります。また事後のアプローチも大切になります。スタートアップの時期でも出金通知を創業者にいくなど最低限の体制を構築することを弊社支援時にはおすすめしております。また予実管理・資金繰り管理を行うことで予算とのズレ、予定とのズレ、説明できないお金の動きを検知し、被害を最小限で食い止めるというアプローチも大切です。

関連記事:業務分担表を作って、業務と担当のマッチング強化を目指そう

関連記事:資金繰りってなに?資金繰り表の作り方がわかる!改善方法10選

(3)振込ミス:ヒューマンエラーは必ず起こる

詐欺や横領はレアケースですが、振込ミスは発生確率が高く、どの会社でも起こりえるリスクです。

よくある振込ミスの例:

  • 社名が似ている別の取引先へ誤送金した
  • 同じ請求書を二重に処理してしまった
  • 振込期日を見落とし、支払いが遅延した
  • 金額の桁を誤った

ヒューマンエラーの原因は一様ではなく、注意力・疲労・業務量・手順の複雑さなどが複合的に絡み合います。「気をつければ防げる」という性質のものではなく、仕組みとしてチェック体制を設けることが唯一の対策です。

関連記事:経理アウトソーシング・経理代行とは?メリットとデメリットを比較

(4)本人認証の複雑さ:ロックによる振込遅延リスク

セキュリティ強化のため、現在のネットバンキングでは複雑な認証手順が課されています。一例として、以下のような手順が必要なシステムもあります。

ログイン時

  1. 会社IDを入力
  2. 個人IDを入力
  3. 個人パスワードを入力
  4. トークンに表示されたパスワードを入力

送金承認時

  1. 事前に設定した4桁のパスワードを入力
  2. 個人パスワードを入力
  3. 送金画面の8桁の数字をトークンに入力
  4. トークンに表示された6桁の数字を入力

入力ミスが続くとIDがロックされ、解除には銀行への連絡と時間が必要です。給与振込や支払期日が迫った状況でロックが発生すると、取引先・従業員への信用問題に直結します。

(5)トークン・パスワード管理のリスク

「IDとパスワードはノートに書かない」「パスワードは3ヶ月ごとに変更する」「トークンは施錠できる場所に保管する」——こうした管理ルールを文書化している会社は多いと思います。

しかし、ルールを作ることと、ルールが守られることは別問題です。

特に在宅勤務が浸透した現在、トークンを自宅に持ち帰ることの是非、自宅のPC環境でのネットバンキング操作、といった新たなリスクが生まれています。管理ルールがオフィス勤務を前提に設計されたままでは、実態と乖離するのは避けられません。

リスク別・対処法まとめ

上記5つのリスクに対処しようとすると、次のような対策が考えられます。

対策

内容

難易度

コスト

請求書のダブルチェック

請求書の原紙と振込額を複数部門で照合

低〜中(工数増)

職務分離の導入

入力者と承認者を別の担当者に分ける

高(人員追加が必要)

経理担当者の定期異動

横領リスク回避のため定期的にローテーション

中(引き継ぎコスト)

ITセキュリティ強化

ネットワーク監視・EDR導入など

在宅勤務ルールの整備

トークン管理・アクセス制限の再設計

予実管理・資金繰り管理

予実管理・資金繰り管理により不正の検知

低〜中(簡単な資金繰り管理でも有効なケースもある)

これらをすべて自社で整備しようとすると、相当の人件費・設備投資・管理コストが発生します。そして経理業務はそれ自体が売上を生み出すものではない。

ここで改めて注目したいのが、アウトソーシングを「牽制の仕組み」として活用するという考え方です。経理業務を外部に委託すると、自然に「外注チーム(データ作成)× 社内担当者(承認)」という分離構造が生まれます。社内だけで完結していた業務フローに第三者が入ることで、不正が起きにくく、起きても発覚しやすい体制になります。人を増やすコストをかけずに、職務分離と牽制の両方を同時に実現できる点が、外注の本質的なメリットです。

関連記事:アウトソーシングと内部統制強化・コスト管理・資金繰りなどを絡めた解説

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まとめ

今回は、経理業務の中の銀行振込にひそむリスクとその対処法について解説しました。

  • 事業規模の拡大に応じてATM振込や窓口振込からインターネットバンキングへシフトしている
  • インターネットバンキングには、業務時間短縮や一括データ処理が可能などのメリットがある反面、詐欺・横領・複雑な認証などのデメリットがある
  • 正攻法で対処するとなると、多大な労力と費用がかかる

多忙な経営者の皆さまにとって経理領域のようなバックヤード業務を充実させていくことに時間を費やすことは、なかなか難しいことです。一方で事業規模が拡大すればするほど、内部統制を効かせてリスクに備えることは会社の信用力向上の意味でとても重要になってきます。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部卒業後、丸紅株式会社に入社。経理部にて事業投資案件の会計面での検討・支援を担当するほか、子会社の内部統制構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。公認会計士・税理士として長年にわたり会計・税務専門業務に携わった経験を持つ。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba(リモバ)経理・労務の総合監修を担当。スタートアップから中小企業・大企業まで、経理・労務を含むバックオフィス業務全般の支援を行っている。

資格
公認会計士
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