1. 業務分担表を作って、業務と担当のマッチング強化を目指そう
業務分担表を作って、業務と担当のマッチング強化を目指そう

業務分担表を作って、業務と担当のマッチング強化を目指そう

経理更新日:2024-09-22

社員一人一人の背景の多様化、そして新型コロナウイルスによる外部環境の変化により、組織のチーム管理のかじ取りが非常に難しくなっています。そこで有効になるのが、「業務分担表」です。業務分担表を作成、共有することで、全体の業務量が把握でき、個々人の役割はもちろん、チーム全体の役割も明確になります。

この記事では、複数人の社員を抱える経理チームのリーダーに向け、管理面で非常に有効な業務分担表について解説します。チーム員の業務管理、モチベーション管理をあげたい、と考えている経理チームリーダーの参考になれば幸いです。

業務分担表を作る2つの理由

業務分担表の作成をすべき理由を2つお伝えします。

チーム管理の難易度が増している

現代は、仕事だけにフルコミットできる人材が、非常にレアになりつつあります。夫婦共働きがデフォルトになり、そのうえ日本は前代未聞の超高齢化社会を迎えています。

育児を抱える社員は、子どもの送迎等により、時間を短縮して働いています。子どもの急な体調不良で決算など繁忙期に欠勤が続くことも考えられます。また、超高齢化社会の現代では、エース社員が突然介護を抱え、前線離脱するとも限りません。

誰にとっても、業務量を減らさないといけない時期が到来する可能性は非常に高く、それだけに人材が流動しやすくなっています。人が流動しやすくなっているので、そのことを加味した上で業務分担を考えていかなければならないのです。

また新型コロナウイルスにより突然のリモート環境下で、個々人が物理的に離れて業務を遂行することになりました。各人の仕事が今どういった状況なのか、職場で直接目視で確認することができないので、作業の進捗状況の管理が難しくなったと感じている方もいるでしょう。チーム員にとっても、業務負荷がかかりヘルプを出したくても、慣れないリモート環境下で伝えにくいと感じているかもしれません。そしてそれが大きなトラブルにつながるとも限りません。

人材と業務量のバランスを間違うと、属人化により業務がブラックボックスと化する危険性をはらみます。社会が、外部環境がダイナミックに変化している現代において、それにあわせた内部環境を構築する事が急務なのです

時間で意欲が図れなくなっている

例え育児や介護などにより仕事にフルコミットできないからといって、仕事への情熱そのものまで失っているとは限りません。提供できる時間量と、本人の仕事への意欲が比例するとは限らないのです。

長い仕事人生において、どうしてもフルコミットできないタイミングが一時的に発生しているだけなのです。そのような個々人の事情を鑑みず、安易に役職を外してマミートラック(※)に載せるなど、実質的な降格人事を行えば、優秀な人材が離れていってしまう可能性も否めません。

※マミートラックとは

「子どもを持つ女性の働き方のひとつで、仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコースのことです。職場の男女均等支援や仕事と育児の両立支援が十分でない場合、ワーキングマザーは往々にして補助的な職種や分野で、時短勤務を利用して働くようなキャリアを選ばざるをえなくなり、不本意ながら出世コースから外れたマミートラックに乗ってしまうことが少なくありません。

引用:マミー・トラック『日本の人事部』

もしも一時の間、前線から離脱することになったとしても、職場内でのキャリアパスが明確であれば、自分のキャリアビジョンへの戦略が立てやすいので、一時的に与えられたウェイトの軽い役割に対しても納得感を持てるでしょう。

そのためにも、業務分担表を作ることは有効です。自分だけでなくチーム全体の役割、組織内におけるチームの重要性が見えてくるからです。特に優秀な人材であればあるほど、そこを曖昧にしてはいけないのです。

既存の労働時間価値による役割分担から、労働時間以外の価値を把握し適材適所に配置する人事戦略が必要なのです。

業務分担表を作るメリット

業務分担表を作成することによるメリットは5つあります。

既存の問題点が洗い出せる

業務分担表の作成に向け、既存の業務分担のリサーチを行うことで、今まで見えなかった問題点を発見することができます。例えば、特定の誰かに業務が偏っていることがわかったり、業務の属人化、ブラックボックス化が起きていて作業効率が悪化していることがわかったりと、具体的な問題点が見えてきます。

責任の所在が明確になる

業務分担表をチーム全員が共有することによって、自分の担当業務と担当外の業務のつながりが見えます。自身の担当業務が、前工程、後工程にどのように影響を与えているかがわかり、結果、各担当者の責任感の向上が期待できます。責任の所在が明確になることで、自分の担当業務をきちんと行うようになるのはもちろんのこと、チーム全体の最適化を考えて業務に取り組めるようになることが期待できます。

チーム員の視座が上がる

業務分担表の共有により全体業務が見える化されれば、チーム全員で全体設計の見直し改善が図れます。チーム員に、担当業務だけでなく一歩上の視座で「もっとよい仕組みにできるのではないか?」と考える機会を与えることにもなり、スキルアップにもつながります。

進捗状況開示によるサポート体制の強化

業務分担表で進捗状況を管理すれば、誰が順調か、あるいは遅れているかがわかるので、社員同士でサポート体制を強化することができます。特に姿の見えないリモートワークにおいては、個々人の業務の進捗状況をチーム全体で共有しておくことはリスク管理の観点からも有効です。また、業務の取りこぼしがなくなります。進捗管理は、完了と同時に達成感が味わえるので、モチベーションの向上にもつながります。

個々人の長所が活かせる

業務分担表の作成には、チーム員全員と個別に業務に関するヒアリングを行うことが必要ですが、改めて個々人の適性やスキルを見極めるいい機会にもなります。

ヒアリングを通し、チーム員全員と個別にじっくり話すことで、それぞれが抱える仕事上の問題なども見えてくるでしょう。また、それぞれのキャリアビジョンを確認することで、業務分担も行いやすくなるでしょう。

業務を分担するにあたり、個々人の適材適所だけでなく、個々人の背景を考えて分担を行えば、さらに仕事に対する満足度が高まり、仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。

また、適材適所へ仕事を分担することで、結果が出やすく、質の高い仕事が期待できます。個々人の作業効率が各段にあがることで、チーム全体の効率化も図れます。

適材適所を把握しておくことは、仮に担当に急用やトラブルが生じた場合でも、別の適任者にスムーズに仕事のヘルプをだすことができるでしょう。

仕事と担当者とのマッチングを行うイメージで業務分担を進めることで、満足度の高いマッチングができれば、個々人の幸福度が上がりチーム全体の士気が上がる事が期待できるでしょう。

業務分担表作成のポイント

次に、業務分担表を作成するにあたり、重要なポイントを解説します。

心理的安全の確保

チーム員に業務分担表の作成を協力してもらうために最も重要なポイントは、作成の目的は、人事評価や他部署への配置転換、リストラなどのためではないと説明する事です。

経理部は間接部門であり、利益を生み出す部門ではありません。そのためチーム員は、コストカットや業務の効率化に敏感です。自身の人件費でさえもコストとして敏感に認識しているのです。ですので、業務の属人化がはびこっている会社ほど、業務分担表作成にかかる業務開示には非協力になる可能性があります。業務分担表の作成を推進したいチームリーダーは、作成の目的を丁寧に説明し、チーム員の心理的安全を確保する必要があります。

チーム全員で作り上げる

業務分担表作成の指揮を執るのはもちろんチームリーダーですが、チーム員全員の協力なくしては、継続実行可能な業務分担表は作成できません。チーム員全員とこまめなコミュニケーションを取り、作成目的を共有しながら、全員で作り上げ、分担表の運用を業務の一部に落とし込んでいきましょう。

余裕を持たせる

社員の雇用形態や、背景を考慮し、イレギュラー業務にも対応できるよう、それぞれの分担には余裕を持たせましょう。

ポイント💡 業務のウエイト < 人員のリソース

作成手順

①全体の業務を把握する。

経理は、汎用性の高い仕事です。どのような業種であっても基本的な流れは同じです。

経理は1か月ごとに数字を固めるルーティン業務がメインです。そのため、まずは1カ月の業務を把握しましょう。

画像引用:毎月の経理の仕事スケジュール| 決算・申告、業務の流れ(法人) サポート情報

②既存業務の状況把握

次に、チーム員に、既存通り1カ月業務を行ってもらい、記録として日報を提出してもらいます。

日報に記載してもらうことは、4つです。

・その日行った業務名

ざっくりとした業務名などではなく、細かく記録してもらいます。

例:給与に関する日報の記載例

NG

OK

給与処理           

給与計算 タイムカードの集計

 

給与計算 手当、欠勤控除の計算

 

給与計算 社会保険料に税金の計算

・業務ごとの作業時間

例:

業務名

時間

給与計算 タイムカードの集計

1時間

給与計算 手当、欠勤控除の計算

1時間30分    

給与計算 社会保険料に税金の計算

1時間

・業務の連携部署(データの発生源)

例:勤怠の取りまとめを総務部が行っている会社

業務名

時間

連携部署(データの発生源)

給与計算 タイムカードの集計

1時間  

各部署

給与計算 手当、欠勤控除の計算

1時間

総務部

給与計算 社会保険料に税金の計算

1時間

総務部

経理部はデータのハブ的な存在です。そのデータはどこから発生した情報なのかを知ることで、

・データ発生部署との連携における取りこぼしはないか?

・データ連携は適切か?そもそも連携は必要か?業務を移行できないか?

をチェックしていきます。

・イレギュラー業務の場合、発生理由

例:

業務名

時間

データの発生源

発生理由

給与計算 タイムカードの集計

1時間  

総務部

 

給与計算 手当、欠勤控除の計算

1時間

総務部

 

給与計算 社会保険料に税金の計算

1時間

総務部

 

給与計算 月額変更届の提出

30分

総務部

○○部署の残業が多く、月額変更に該当する社員が複数名発生したことにより

ポイントは、業務をかなり細分化して報告してもらうことです。業務を細かい単位まで落とし込み、タスク化することで、作業内容の引継も容易になり、属人化を排除することができます。また、業務を細分化して報告してもらう際は、細分化の切り分け方が有効かどうかもチェックしましょう。

③箇条書き一覧にする

日報により、経理チーム全員の業務を記録していきます。

箇条書きサンプル

④工数を割り出す

工数を数値化します。あわせて、その業務にかかる工数を減らすためにはどうすればいいのか?を検討していきます。

⑤人員配置を検討し割り当て運用を実施する

業務分担は、適材適所に人材を配置することと、全体の人員リソース最適化のためでもあります。分担にあたり、チーム員とヒアリングを行っていくと、PC操作に長けている人や、関係部署とのコミュニケーションが得意な人など、個々人の得意とするところが見えてきます。また、人員のバックグラウンドにも注意します。(時短勤務、パート、育児介護中など)それぞれのリソースや状況を把握したうえで、業務に人員を配置し、運用を実施しましょう。

⑥PDCAを回す

実際に業務分担を行った結果、工数の見積違いなどが発生する事もあるでしょう。PDCAを回すことで、見落としていた雑務の発見や、業務分担の再検討を行うこともでてくるかと思われます。最初から完璧を目指さないことが重要です。PDCAを回し改善を図っていきましょう。

補足:ツールを使う

リモートワークは見える化するチャンスでもあります。チャットツールを使うことでログが残るという利点があります。リモートワークへの移行をチャンスと捉え、便利なツールの導入を行うことで、業務分担作業をスムーズに行えることが期待できるでしょう。

Remoba経理

Remoba経理

会計ソフト導入から経理業務まで一任できる、オンライン型の経理アウトソーシングサービス。実務経験豊富なプロフェッショナルな経理チームがサポートし、業務効率化と経理体制の最適化を実現します。

サービス概要

Remoba経理は、クラウド会計ソフトを使ってプロワーカーに経理をアウトソーシングできるサービスです

売上・支払・経費管理、月次決算、確定申告補助まで、ルーティン業務をまるごと外注でき、クラウドソフト未導入のお客様には選定支援なども行います。

クラウド会計運用経験者など、実務経験豊富なアシスタントがチームとなり、日々オンラインで業務を進行。会計士や税理士が監督するため、導入済みのソフトはもちろん、部署をまたぐクラウドソフトとのSaaS連携も提案可能。運営会社は、IPaaSツール開発もしており、システム連携のノウハウが豊富です。経理を含むバックオフィスのデータを一元化し、業務効率化や経理体制の最適化を実現します。

主なポイント

  1. コンサルタント主導で、最適なクラウド会計ソフトの導入・運用をサポート

経理業務の外注に精通したコンサルタントが現状をヒアリングし、クラウド会計システムの選定・導入・運用までトータルでサポート。現行のクラウド会計システムを使う方法はもちろん、業務圧迫が課題なら「システム連携で効率化」を、帳簿管理の精度向上には「最適な会計ソフトを選び」など、業務内容や課題に合わせて解決策を提案します。

システム設計に必要な要件定義策定や、導入までのWBS作成準備も不要なため、クラウド会計ソフトに不慣れでも安心です。運用を見据えて、業務フローやルールのマニュアル化、従業員説明会で社員教育を実施して、顧客側の社内体制づくりも支援します。

専門家が監督のもと、一任した経理業務をチームで正確に遂行

様々な経理プロとアシスタント達が専門チームを構築。実際の作業は、経理部門立ち上げや会計ソフト導入などの実務経験を持つ、優秀なリモートアシスタントが担当。売上やキャッシュフローなどの財務状況は、クラウド会計ソフトからいつでもチェック可能です。安心して月末・年度末の帳簿管理や確定申告の補助を任せられるため、コア業務に注力できます。

 実務の実行を行う上、経費申請後、内容のチェックから振込データ作成や、売上確認の消込みまで管理体制としてもご依頼いただけます。退職による業務停滞や横領などの不正会計といった、属人化に伴うリスクを防止できます。

部署をまたぐクラウドソフト連携も支援し、経理を含めバックオフィス業務を効率化

IPaaSサービスの開発経験をもとに、複数のクラウドソフト連携にも対応。メーカーを問わず、労務、営業支援、人事、給与管理システム連携など、部署をまたぐデータの一元化が可能です。

経理を含むバックオフィス業務全体を可視化することで、業務効率化やビジネスにおける迅速な意思決定を支援します。

項目内容

サービス名

Remoba経理

会社名

(株)Enigol

公式サイト

https://remoba.biz/accountant

まとめ

いかがでしたでしょうか?

社会の変化、外部環境の変化に対応するべく、組織の在り方もアップデートしていくことがとても重要です。業務が属人化していることを認識していても、どのように業務分担させればよいか悩んでいる経理チームのリーダーのために、Remoba経理では、全体設計の見直しから、効果的な業務の割り振りまでご一緒にお手伝いすることが可能です。

効果的な業務分担表を作成することで、チーム全体を活性化し、組織全体に対しても好影響を与えて行きましょう。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士

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