1. 接待交際費とは?損金算入の上限や会議費との違い、書き方を解説
接待交際費とは?損金算入の上限や会議費との違い、書き方を解説

接待交際費とは?損金算入の上限や会議費との違い、書き方を解説

経理更新日:2024-09-22

事業活動にとって取引先との交流を深めるための飲食などは日常的に発生します。このような費用は、接待交際費に該当する場合としない場合のルールが定められており、経理担当者はそのルールを理解し正しい費目で経理処理する必要があります。また接待交際費を損金算入する際の上限については会社規模に応じた条件があります。

今回は、こうした接待交際費の複雑な内容について詳しく解説していきます。最後に個人事業主の方に向けた説明もありますので、ご活用ください。

接待交際費の条件とルール

国税庁のホームページでは、接待交際費について次のように定義されています。

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するものをいいます。

(参考)国税庁ホームページ:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁 (nta.go.jp)

例えば、以下の費用が接待交際費に該当します。

・取引先との飲食代

・取引先との旅行やゴルフなど、交流にかかる費用

・取引先に対する贈答品(お中元やお歳暮など)

・取引先を送迎する際のタクシー代

・事業活動で関わりある人の結婚祝金や香典

このように接待交際費として計上するためには事業活動に関係する取引であることが大前提です。取引先との飲食代は接待交際費として認められますが、個人的な付き合いの友人との飲食代は、当然ですが会社の接待交際費としては認められません。

接待交際費として認められない場合

下記に該当する場合は接待交際費から除かれるため注意が必要です。少々複雑な条件が設定されていますが、正しく実績計上するために理解しておくことをおすすめします。

① 従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用

これらの費用は一般的に福利厚生費にあたります。ただし取引先が参加している場合は接待交際費に計上できます。

② 飲食等のために要する費用で1人あたりの平均支出額が5,000円以下(注a)の場合で、かつ次の事項を記載した書類を保存している場合

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
  • 飲食等に参加した者の数
  • その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称及び所在地
  • その他飲食等に要した費用であることを明らかにするための必要な事項

(注a)飲食等の費用が当該会社の役員もしくは従業員又はその親族に対する接待等のための費用である場合は、5,000円以下であっても接待交際費となります。

③ その他、以下に該当する費用

  • カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するための費用(注1)
  • 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するための費用(注2)
  • 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集や、放送のための取材にかかる費用

(注1)これらの費用は一般的に広告宣伝費にあたります。

(注2)これらの費用は一般的に会議費にあたります。

損金算入できる接待交際費の上限額

ここでは、接待交際費で損金算入できる条件やその上限額を見ていきましょう。

接待交際費は財務会計上は経費として計上しますが、税法上は損金算入できないのが原則です。ただし、一定の要件を満たせば経費として認められ損金算入することが認められています。会社の規模に応じて適用されるルールが異なりますので、それぞれ見ていきましょう。

1.期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人の場合

この場合、以下のふたつの選択肢のどちらかを選ぶことができます。

①会計年度における接待交際費のうち、800万円を上限として損金算入

②会計年度における接待交際費の中の接待飲食費の50%を損金算入

例えば、接待交際費が2,000万円でその全額が接待飲食費であった場合の損金算入額は①の場合は800万円、②の場合は1,000万円(2,000万円×50%)となり、②を選択するほうが多く損金算入することができます。

もし接待交際費が600万円でその全額が接待飲食費であった場合、①では600万円、②では300万円(600万円×50%)の損金算入額となり、①のほうが損金算入できる金額が多くなります。

まとめると、会計年度における接待飲食費が1,600万円以下の場合なら①を選んで全額損金算入するほうが節税効果が大きくなり、一方、1,600万円を超える場合なら②を選ぶほうが損金算入できる金額が大きくなる、すなわち節税効果が大きくなるということになります。

2.期末の資本金の額または出資金の額が1億円を超え100億円以下である法人の場合

会計年度における接待交際費の中の接待飲食費の50%を損金算入できます。

3.期末の資本金の額または出資金の額が100億円を超える法人の場合

損金算入できません。

4.個人事業主の場合

接待交際費の全額を損金算入できます。

接待交際費と会議費との違い

経理担当者にとって、費用の内容が接待交際費にあたるのか会議費にあたるのかで判断に迷うケースは多いと思われます税務上、会議費が全額損金算入できるのに対して、接待交際費は先述のとおり損金算入には複雑な条件が定められており、誤って計上しないためにも正確な理解が必要です。具体例を挙げながら、接待交際費と会議費の違いについて説明していきます。

金額からの判断

飲食等の費用については、参加者1人あたりの費用から接待交際費か会議費を判断することが可能です。参加者1人あたりの費用が5,000円以下の場合は会議費として計上できます。会議費は全額損金算入できるため、節税の観点からもこの基準に該当する費用は会議費での計上が望ましいでしょう。

費用の内容からの判断

接待交際費の定義

接待交際費の定義は、業務上の取引先に対する接待や謝礼です。取引先を接待した旅行費用は接待交際費に該当しますが、社員のみの旅行の場合は福利厚生費にあたります。カレンダーや手帳などの物品を取引先へ贈与する場合の費用は、接待交際費ではなく広告宣伝費に計上します。

また、業務に関係のない相手への接待や謝礼は接待交際費にあたらないことは言うまでもありません。

会議費の定義

会議費の定義は、業務上の取引先との打合せや社内会議の目的に要した費用です。会議費は全額損金算入できることから、税務調査での説明の観点からも注意が必要です。例えば、取引先と飲食を伴う打合せを行った場合、打合せの議事録等が残っており会議の実態を説明できる場合は会議費として処理できますが、それ以外の場合は接待交際費に計上するべきでしょう。

また、会議費が高額になる場合は特に注意が必要です。例えば、取引先と旅行を兼ねた打合せを行った場合、その旅費会議に関連した範囲内での宿泊費や飲食費は会議費として計上できますが、会議費として通常要する費用の限度を超えている場合は、たとえ会議の議事録が残っていたとしても接待交際費と判断されることもあります。

接待交際費の書き方

ここまで接待交際費の定義や、会議費・福利厚生費・広告宣伝費など他の費目との違いなどについて述べてきました。このように接待交際費は他の費目とまぎらわしいからこそ、仕訳の際には摘要欄に必要情報をもれなく記載しておくことが重要です。

ある一定規模以上の従業員数の会社では、接待交際費申請書に必要情報を記載する欄をもうけておくと共に、申請プロセスをマニュアル化して周知徹底することが望ましいでしょう。税務調査であわてることのないよう、日ごろからしっかり準備をすすめておきましょう。それでは接待交際費の書き方を具体例で説明していきます。

日付

借方

貸方

摘要

2021/〇/〇 

接待交際費 10,000円 

現金 10,000円 

△△レストラン

A社〇〇さんと会食 

他2名

日付には取引が行われた日付を記載、借方に接待交際費と金額、貸方には現金支払の場合の費目は現金と金額を記載します。ここまでは他の仕訳と同様ですが、接待交際費では摘要欄にその内容が明確に分かるよう記載しておくことが重要です。

この例では、「△△レストランで、A社の〇〇さん他2名と会食をした」ことが明記されています。このように接待交際費の摘要欄には、「どこで」「どの会社の」「誰と(複数名の場合は他何名)」「何をした」という情報を記載しておきましょう。ここでは飲食費の例を挙げましたが、もし交流目的の接待交際費であれば「ゴルフ代」や「旅行代」、贈答品であれば「お中元」や「お歳暮」と記載を残しておくとよいでしょう。

接待交際費の目安

各々の会社は接待交際費として年間いくら程度計上しているのでしょうか。もちろん会社の業種によってその平均値は異なりますが、ここでは国税庁が発表している統計データから、全業種の接待交際費年間平均額を、資本金規模別に整理しています。

資本金

100万円以下

500万円

~1,000万円

2,000万円

~5,000万円

5,000万円

~1億円

1億円

~5億円

接待交際費の年間平均

90万円

131万円

268万円

479万円

1,077万円

出典:標本調査結果|国税庁 (nta.go.jp) から平均値を算出

例えば、資本金100万円以下の法人は年間平均90万円を接待交際費として支出しています。個人事業主の統計データはありませんが、この90万円がひとつの目安となると思われます。資本金の規模が増大するにつれて接待交際費の金額も大きくなっており、資本金1億円~5億円の会社では、年間1,077万円を計上しています。

国税庁の調査結果には、農林、鉱業、建設、繊維、食料、小売、サービス・・・のように業種別のデータが公表されています。興味のある方は上記出典リンクから算出してみて下さい。

個人事業主の接待交際費

法人と違って個人事業主の方は接待交際費の全額を損金算入することができます。とはいえ、接待交際費の定義に該当しない個人的な支出まで計上することはできません。ここでは、個人事業主の方が接待交際費として経理処理する際のポイントを解説していきます。

接待交際費として認められる費用の例

まずは、接待交際費として認められる費用の具体例を見ていきましょう。

・事業に関連する取引先との飲食代

・事業に関連する取引先との交流を目的としたゴルフ代

・事業に関連する取引先と懇親目的での旅行

・取引先へのお中元やお歳暮などの贈答品

・取引先の家族の結婚、出産、葬式などの慶弔金

このように接待交際費として認められるか否かの大きなポイントは、その費用が事業に関連するかどうかにあります。家族で外食した飲食費や、仕事とは関係のない個人的なお付き合いでのゴルフ代などは接待交際費として計上することはできません。一方、仕事で取引のある友人とばったり会って食事をしたという場合は、接待交際費での計上が認められる場合もあります。

税務調査に向けた準備

接待交際費に関して税務調査で質問を受けた際には、その費用が事業に関連していることをきちんと証明できることが重要です。誰といつ行った飲食なのかが不透明だったり、そもそも事業に関係のない内容を虚偽申告している場合、接待交際費として認められないだけではなく、財務諸表全体の信憑性が疑われてしまいます。そのためにも、接待交際費として計上した飲食代などの領収書には同席した取引先の会社名、肩書、名前、人数などを必ず記載するようにしましょう。

もし領収書を入手できなかった場合は、取引の内容をメモに残しておき、出金伝票に記載しておくことをおすすめします。出金伝票は市販されており簡単に購入することができます。

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まとめ

接待交際費とは、事業に関係のある取引先に対する接待や交流を目的とした費用のことを指します。財務会計上は経費として計上しますが、税務上は損金算入できないのが原則です。ただし、一定の要件を満たせば経費として損金算入することが認められているため、経理担当者はその要件を理解しておくことが必要です。

また、会議費や広告宣伝費、福利厚生費との違いがまぎらわしいケースもあるため、接待交際費として計上する際にはその定義を確認しながら帳簿付けすることが望ましいでしょう。税務調査では、接待交際費に計上した費用が、事業に関連する内容かどうかをチェックされることが多く見られます。そのため、接待交際費の仕訳の摘要欄には、「どこで」「どの会社の」「誰と(複数名の場合は他何名)」「何をした」という情報を記載しておき、内容の透明性を確保しておくことが重要です。

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この記事の監修者

辻田和弘のプロフィール画像

株式会社Enigol

辻田和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
公認会計士
税理士

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