1. 財務諸表を学ぶ。貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の役割
財務諸表を学ぶ。貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の役割

経理部に限らずビジネスマンとして基本知識である財務諸表。言葉は聞いたことがあっても全体の概要や言葉の意味を理解している方は少ないのではないでしょうか。一度、基本から振り返って復習しましょう。

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財務諸表とは

一言で財務諸表と言っても様々な種類の帳簿が存在します。まず財務諸表とは「企業の経営活動を記録、計算、集計した結果としての経営成績や財政状態などを企業外部の利害関係者に報告するための会計情報を総称したもの」を意味します。英訳するとfinancial statementsと書き、企業の財政状況を表す帳簿の集まりと理解できます。

財務諸表は主に財務三表(貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書)と言われる書類から構成されています。この財務三表を理解することで財務諸表の全体像をつかむことができます。それぞれの帳簿の作成目的や意義を理解し、しっかりと言葉を理解しましょう。

貸借対照表(balance sheet)

貸借対照表

まずは一番重要な貸借対照表です。一般的には英訳のbalance sheetを省略してBSと呼びます。経理部であれば、よく触れる資料ですが、営業の方などはなかなか見る機会は少ないかもしれません。

貸借対照表とは企業のある一定時点における財政状態を示す帳簿です。重要な部分は「ある一定時点」という部分です。ある一定時点とは決算期末を指します。決算期末に締めた段階で、各勘定科目の残高を示した帳簿が貸借対照表です。企業は継続的に商取引を行っておりますので、どこかの一定時点で区切らなければ、財政状態を判別できませんので、一般的には決算期末にて区切るとされています。

貸借対照表は主に以下の5つの区分から構成されています。それぞれの大項目の中に更に細かく勘定科目が設定されています。

1.  流動資産=1年以内に現金化される資産(現金、売掛金、在庫など)
2.  固定資産=1年以上保有・使用する資産(土地、減価償却資産など)
3.  流動負債=1年以内に支払義務が到来する債務(買掛金、短期借入金など)
4.  固定負債=1年を超えて支払義務が到来する債務(長期借入金など)
5.  純資産=資産総額-負債総額にて計算(資本金、繰越利益剰余金など)

以上の5つが大きな分類です。勘定科目は必ず上記の5つの分類に分けることができます。

また、貸借対照表の大きな特徴の一つとして、資産総額=負債総額+純資産額となります。この原則はどのような企業でも必ず成り立ちます。貸借対照表を書く際はよく左右に箱のような絵と書きます。左側の資産再サイドと右側の負債+純資産サイドは必ず同じ額になります。貸借対照表を見る際はこのイメージが非常に重要ですので、時間のある際にどのような配置になっているのかをご自身で調べてみてください。

ここで営業マンの方であれば、損益計算書の方が重要ではないかという意見の方もいらっしゃるでしょう。どちらが重要かという正解はありませんが、より資金の流れを追うことのできるBSの方が、長い目で企業の方向性を見る際は貴重な情報になります。事実上場企業の決算発表等を見て頂ければ、必ず例外なく貸借対照表が最初に記載されています。貸借対照表を理解できれば、企業の資金の使い方や、進んでいる方向性を見ることができます。

損益計算書(Profit and Loss Statement)

資料を指さしている画像

続いては損益計算書です。一般的には英訳のProfit and Loss Statementを省略してPLと呼びます。こちらは営業マンの方もよく目にする帳簿かと思います。売上や費用、利益が記載されており、直感的にも理解しやすい帳簿といえます。

損益計算書とはある一定期間における会社の経営成績を示す帳簿です。「ある一定期間」とは通常前期末の翌日~当期末時点の1年間を指します。損益計算書は主に以下の5つの利益により構成されております。利益の種類が様々ありますので、それぞれの違いをしっかり理解しましょう。

1.  売上総利益=売上-売上原価
2.  営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費
3.  経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
4.  税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失
5.  税引後当期純利益=税引前当期純利益-法人等

一般的には1番から5番に移るに従い、利益の金額は小さくなっていきます。利益からどのような費用を加減していくのかをしっかり理解しましょう。一過性の要因を除いた経常利益が企業の収益力であると見なされておりますので、まずは経常利益を意識しましょう。 

キャッシュフロー計算書

お金

キャッシュフロー計算書は現在最も注目されている帳簿です。一般的には英訳のCash flow statementを省略してCFと呼びます。貸借対照表と損益計算書だけでは把握するのが難しいお金の流れを用途別に分類し、何にお金を使用したのかを把握する為に作成します。

キャッシュフロー計算書は以下の3つの活動によるキャッシュフローに分類されます。

1.  営業活動によるキャッシュフロー=営業活動により生み出されたキャッシュフローです。いわゆる「本業で稼いだキャッシュ」を表します。
2.  投資活動によるキャッシュフロー=企業が会社の成長の為、どの程度投資をしているかを表します。
3.  財務活動によるキャッシュフロー=企業がどのように資金調達を実行したのかを表します。

キャッシュフロー計算書を理解できれば、3つの分類に基づいてキャッシュをどこから調達して、どのようなものに投資したのかを把握することが可能です。なぜここまでBS、PLと並んでキャッシュフロー計算書が重要視されているのかというと、いくら利益が上がってすばらしい資産を保有していても手元に現預金が無ければ、企業は倒産してしまうからです。現預金は企業の言わば血のようなものです。血液の流れが止まってしまえば、生命体を維持することはできません。常に血液であるキャッシュを循環させる必要があります。 

財務諸表作成の目的について

上記で示した財務三表を元にした財務諸表一式は投資家、債権者、国など企業の利害関係者に企業の財務状況を示す為に用いられます。財務諸表を読み解くことができれば、企業がどのくらい資産を保有しているのか、どのくらい借金があるのか、どのくらい収益力があるのか等を理解できます。仮に上場をしていれば投資家はこの財務諸表を元に投資判断を行い、株式の売り買いを行います。このように財務諸表一式は決算を終えた後、さまざまな利害関係者に必要書類として公開することを目的に作成されます

財務諸表の見方

スケジュール帳と花

財務諸表分析には様々な手法があり、その時々の社会情勢等も踏まえて重視される指標はその時々で変化します。ここではその中でどの時代でも普遍的に重要な指標をいくつか紹介いたします。また、各種分析を行う際に重要なのが、同業他社との比較です。BSとPLを様々な組み合わせで割り算をすると様々な数値が出てきます。その際その数値が良いのか悪いのかを判定するのは必ず同業他社との比較を行い実施してください。一般的な本に記載してある比率はあくまで一般的な数値として記載してありますので、自社の業界の特徴を考慮して分析を行いましょう。是非財務諸表分析の際は、参考にしてみてください。 

収益性分析

収益性を分析するには基本的にPLを使用します。事業が赤字であれば、企業はいずれ倒産してしまいますので、黒字化は最低限の目標になります。収益性分析においては、重要な指標は以下の3点です。

1.  売上高総利益率(売上総利益÷売上高×100)

こちらの指標は一般的に粗利率とも呼びます。粗利率は事業の収益モデルとも密接に関わる為、非常に重要な指標です。値引を行えば、粗利率は悪化しますので企業がどのような売り方をしているのかを見ることができます。売上高は右肩上がりである一方、粗利率は右肩下がりである企業は売上個数でカバーしている状態です。どの程度の粗利率が望ましいかは業界によって大きく異なりますので、必ず他社比較を行いましょう。粗利率の違いはビジネスモデルの違いに直結しますので、同業の中で粗利率の違う2社を比べてみれば、2社の微妙な戦略の違いを見て取ることができますので、一度確認してみてください。

2.  売上高経常利益率(経常利益÷売上高×100)

こちらの指標は毎年経常的に計上される利益の為、大きな変動はありません。銀行等の金融機関が重視する指標です。この売上高経常利益率が改善しているということは、売上高が伸びている若しくは経費が圧縮されている、このどちらかを意味します。どちらも経営には重要なことですので、この指標が改善しているということは企業の稼ぐ力が改善しているということを意味しています。

3.  償却前営業利益(営業利益+減価償却費)

最後は償却前営業利益です。償却前とは減価償却前を指します。こちらの指標は別名EBITDAとも呼びます。こちらの指標は海外子会社等を保有している会社にとって有効です。減価償却は各国の税法により費用化に要する年数が異なりますので、そこで国ごとの違いを排除して一律の基準で比較した指標がEBITDAです。減価償却費はキャッシュアウトする費用では無いため、こちらの指標は簡易的な営業キャッシュフローとしても用いられます。銀行等が融資の審査を行う際も返済原資を確認する為にこの指標を算出して企業の収益力を測定する参考にします。

安全性分析

企業は倒産だけは回避しなければなりません。企業体が大きくなればなるほど多くの人に影響を及ぼします。従業員はもちろん、株主、取引先、債権者等関係する人を守るためにも企業経営は時には収益性を犠牲にしても安全第一で進まなければなりません

安全性分析に使われる代表的な指標は以下の2つがあります。また、安全性に関しては財務諸表には表れない経営者の性格等も関わってきますので、直接会える若しくは話ができる方は財務諸表には表れない一面も参考にするとよいでしょう。

1.  当座比率(当座資産÷流動負債×100)

この指標は企業の短期間における支払能力を示します。流動負債とは1年以内に支払義務がある債務です。この債務を当座資産(=現預金+受取手形+売掛金)でどの程度カバーできているかを表します。この当座比率が100%を上回っていれば、短期の債務に関しては手元の資産で支払い可能であり、支払不能により会社が倒産に追い込まれることはありません。また、一般的には流動比率(=流動資産÷流動負債×100)が重要視されますが、この流動比率は在庫も含んでいる為、実務的にはあまり意味を持ちません。在庫は簿価でBSに記載されていますが、在庫が過剰となり現金化をしなければならない時には簿価を下回る価格で処分しなければならないのが実情です。企業経営にとって在庫は“罪庫”と言われる程、在庫は資金繰りを圧迫します。在庫はいつでも現金化できるので安全であるという考えは企業経営にとっては非常に危険なのでこの機会に改めましょう。

2.  自己資本比率(純資産÷総資産×100)

2つ目は自己資本比率です。こちらは新聞等でもよく目にするので比較的有名な指標です。この指標は会社が保有する全ての資産の内、どの程度自己の資金で負担しているかを示しています。自己資本の反対語は他人資本です。この他人資本とは負債部分に現れます。その名の通り他人資本部分は、買掛金等の信用調達若しくは借入金等の資金調達を行っております。自己比率が高い状態とは他人資本に頼らず自己の資本(=資本金や過去に計上した利益の蓄積)によって会社の資産を購入している状態です。つまり他人に対して債務の比率が低い状態ですので、比較的安全と言えます。この自己資本比率にも登場する純資産は財務分析において非常に重要な部分なので、常に意識しておきましょう。 

効率性分析

パソコンとiPad

売上高100億円、経常利益1億円の2社があります。この2社はこの情報だけだと同じような会社に見えます。但し、BSの情報も加わると全く別の2社になります。1社は総資本100億円、もう1社は総資本50億円だとします。その場合この2社はどちらが効率的な会社運営をできていると言えるでしょうか。答えは後者です。同じ利益1億円を計上するのにも資本を100億円準備する必要のある会社と同じ1億円を計上するのにも半分の50億円で足りる会社、この2社を見分けるのが総資本経常利益率(経常利益÷総資本×100)です。この指標は別名ROAとも呼ばれます。

ROAは会社の資産を使用していくら利益を計上できるかを表しています。この数値が極端に低い会社は非常に効率が悪いです。赤字の会社などは極端な話、資産を全て現金化し国債などの元本保証の金融商品に投資した方が良いという結論になってしまいます。こちらの数値を常に意識していれば、常に小さなBSを目指すことになり結果的に不要な固定資産投資等が控えられ資金を効率的に成長事業に集中投下できます。常に小さなBSを意識して効率的な組織を目指しましょう。

また、収益分析をする際に、ROIC(投下資本利益率)ROE(自己資本利益率)といった指標を使うことも大切になってきます。ROICとは、企業が事業を展開していくために投じた資本に対して、どれだけの利益を生み出したかを示します。このROICは数字が高ければ、より利益を生み出したという意味なので、高いことに越したことはありません。また、ROEとは自己資本がどれだけ利益を生み出したかを示します。ROAやROIC、ROEを使いながら、効率性を分析することは重要です 

まとめ

ここまで、財務諸表の構成及び見方に関して書いてきました。財務諸表を読めることはビジネスマンの基本です。営業マンの方でも基本の部分を理解し、取引先の判断目線として活用すると良いでしょう。

経理に関連する業務で日々財務諸表を見ている方は、分析の際に指標として既に様々な指標を使用されているかと思います。他の会社が取り入れているから等の理由で自社にも導入するのではなく、自社にあった指標とは何か、自社のビジネスモデルの中で肝となる部分はどこなのかをしっかりと社内で議論し、分析に使用する指標をある程度絞ることをオススメします。

今回説明した部分は財務諸表の一部分に過ぎません。興味を持たれた方は更に具体的に個別の部分に関しても学びを広げていきましょう。

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この記事の監修者

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株式会社Enigol

辻田 和弘

東京大学経済学部を卒業後、丸紅株式会社に入社し経理部にて事業投資案件の会計面での検討、支援を行う。また子会社の内部統制の構築、IFRS導入プロジェクト、全社連結会計システム導入プロジェクトに従事。現在は株式会社Enigolを創業し、Remoba経理全体の監修を行い、スタートアップから中小企業および大企業の経理業務の最適化オペレーションの構築を担う。

資格
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