1. 【法改正2022年1月】任意継続被保険者の改正内容のポイント
【法改正2022年1月】任意継続被保険者の改正内容のポイント

【法改正2022年1月】任意継続被保険者の改正内容のポイント

労務更新日:2024-09-22

退職後の健康保険の選択肢として「任意継続被保険者」が挙げられますが、2022年1月1日から法改正が行われています。今回は、法改正の内容や労働者の退職後の選択肢として人事労務担当者がおさえておくべき論点に焦点をあて解説していきます。

退職後の健康保険の選択肢

退職後の健康保険は後述する3つの選択肢があります。どの選択肢を採用するとどのようなメリットデメリットがあるのか、法改正内容を確認する前におさえておきましょう。

任意継続被保険者

在職中の健康保険に「継続して2か月以上」加入しており、退職日の翌日から20日以内の手続きで「2年間」を上限として加入できる制度です。在職中との違いは、保険料は全額自己負担となります。在職中の社会保険(健康保険・厚生年金)料は労使折半であることは労働者に認識されていない場合も少なくありません。そのために在職中よりも保険料が高いという声も出てきますが、それはそもそもの保険料支払いの仕組みが異なるためです。 

また、在職中に傷病手当金(性別不問)や出産手当金(女性のみ)の支給要件に該当しており、かつ、1年以上の加入者期間があれば、退職後の任意継続被保険者として加入している間も傷病手当金や出産手当金を継続して受給できる場合があります。

尚、なかなか決断が出来ずに資格喪失日から20日以内に届出ができなかった場合の取り扱いについては、正当な理由(天災地変など特殊な事情があった場合に限り)があれば20日を過ぎた後でも認められる場合がありますが、単に失念していたような場合には認められません。

国民健康保険

「国民皆保険」により私たちは生活保護を除き、いずれかの健康保険に入らなければなりません。国民健康保険の場合は、居住する各市町村等の窓口にて加入手続きをします。保険料は市町村ごとに異なり、前年の所得によって決定します。

尚、離職理由(解雇等)によって、保険料が低額となる場合がある反面、原則として傷病手当手金や、出産手当金は受給できないデメリットがあります。

扶養へ入る

配偶者の扶養に入ることを前提に話を進めます。生計維持要件として「年収130万円未満」との要件があります。退職前に既に130万円以上の年収が確定していても、退職後はライフスタイルが一変するのが通常で、退職後に将来的に年収要件を満たすことが見込まれれば被扶養者の対象となります

しかし、退職後に失業保険(正しくは基本手当、以下失業保険)を受給する際には、日額で3,612円以上受給する場合、被扶養者の年収要件を満たさないことから、一時的に扶養から外れなければなりませんが、受給が終わってから再度扶養に入ることはできます。

そして、配偶者の扶養に入っている間は、年金制度においては国民年金の第3号被保険者(20歳以上60歳未満)にあたることから厚生年金には加入していませんので、厚生年金から支給される老齢厚生年金は増額しないことなります。その補填としてiDeCoへの加入を検討するなどの選択肢もあります。

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任意継続被保険者法改正内容

3つの選択肢の中から任意継続被保険者を選択した場合や、今回の改正内容を考慮した上で任意継続被保険者を検討したいという場合もあり得ることから改正内容を確認していきましょう。 

法改正1.任意の資格喪失とは

新たに再就職先で資格取得した場合、保険料を納付期限までに納付しなかった場合、任意継続被保険者となり2年を経過した場合を除き、任意継続被保険者は任意継続被保険者の希望で任意に資格喪失をすることができませんでした。

しかし、法改正後は申し出を行い、受理された日の属する月の翌月1日に任意継続被保険者の資格を喪失することとなります

注意点としては、申し出が受理された月も被保険者である点です。例えば3月5日に任意の資格喪失の申し出が受理された場合、翌月の4月1日が資格喪失日となるため、3月分の保険料は納付しなければなりません(納付期日については後述)。

また、原則として申出後の取り消しはできません。例外的に本人の錯誤や手続き自体に瑕疵があり、保険者がやむを得ないと認める場合には取り消しが認められる場合もあります。

尚、任意継続被保険者の保険料納付期限は「その月の10日」となります。会社で社会保険に加入している際の保険料は会社宛てに請求書が送付され、その月の保険料は「翌月末日」が納付期限となります。すなわち、任意継続被保険者の保険料納付期日の方が早いということです。その月の保険料を納めなかった場合には、保険料納付期日の翌日から資格を喪失することになるので注意が必要です。よって、任意継続被保険者になったものの(転居や紛失)納付書が送付されない場合、早めに保険者に問い合わせすることが適切です。

併せて、加入手続きの時期によっては加入した月とその翌月分の2枚の納付書が同封されている場合もあります。そして、納付期限には最大限注意し、支払いを済ませるよう案内しておくことが親切です。

法改正2.保険料の算定基礎

任意継続被保険者の保険料は対象者の資格喪失時の標準報酬月額と保険者の全被保険者の平均標準報酬月額(以下、保険者平均)の2つを比較し、低い方の標準報酬月額に基づき決定されます。実務上、資格喪失時の標準報酬月額が高く、保険者平均の方が低ければ保険料は保険者平均の方が基準となり、保険料も低額になるという理屈です。

その部分が法改正によって、健康保険組合に限り、資格喪失時の標準報酬月額が保険者平均よりも高い場合、健保組合の規約により高い方を採用して、保険料を決定することが可能になります

例えば健保組合に加入する事業所を退職し、今後の健康保険を検討するにあたっては、国民健康保険については前年の所得に応じて保険料が決定される点は改正されていませんが、任意継続被保険者においては保険料決定となる基準が改正されていることから、改正前であれば国民健康保険の方が大幅に高かったにも関わらず改正後は健保組合の規約によっては、そこまで変わらないという場合もあり得るということです。

健保組合については、2019年時点で約1,388組合あったものの、2019年4月1日付で大規模組合を含む5組合が解散するなど、組合数の減少傾向が続き、厳しい時代となっています。そして、赤字組合については全組合の6割を超える約856組合となっていることから、保険料の見直しを進める組合もあるでしょう。

保険料を前納している場合の取り扱い

国民年金と同様に任意継続被保険者も保険料の前納が可能です。その場合に、「任意の資格喪失」を申し出た場合の取り扱いについて確認しましょう。結論としては前納を行った任意継続被保険者についても任意の資格喪失は可能であり、未経過期間にかかるものは還付されます。 

改正の経緯

任意継続被保険者は、退職後も2年間を上限として退職前に加入していた健康保険の被保険者として加入できる制度です。しかし、原則として2年間保険料が変わらないことと特定の事情がなければ資格喪失ができない点が使いづらいとの声があり、今回の改正に至りました。

最後に

労務と社会保険制度は密接に関わっており、また、双方ともに近年、法改正が多く行われています。労務の提供と社会保険によるサービスは相互に密接に関わっており、人事労務担当者として双方の習熟度を高めておくことが安心して働ける職場環境への進展と新たな求人効果にも繋がると考えます。

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この記事の監修者

柳沢智紀のプロフィール画像

株式会社Enigol

柳沢智紀

株式会社リクルートホールディングスでWEBマーケティング業務および事業開発を経験し、アメリカの決済会社であるPayPalにて新規事業領域のStrategic Growth Managerを担当の後、株式会社Enigolを創業。対話型マーケティングによる顧客育成から売上げアップを実現するsikiapiを開発。

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