1. 退職後の動向を確認!雇用保険と社会保険にフォーカスして解説。
退職後の動向を確認!雇用保険と社会保険にフォーカスして解説。

退職後の動向を確認!雇用保険と社会保険にフォーカスして解説。

労務 更新日:
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サラリーマンであれば誰もが一度は訪れるのが退職です。労務担当者としては、今までの勤続の功に報いるためにも退職後の動向のいかんによって、適切な助言をしたいものです。今回は退職後の動向を確認し、その中でも雇用保険と社会保険にフォーカスして解説してまいります。

目次

退職後の雇用保険

雇用保険の被保険者

多くの場合、退職後の雇用保険の手続きは失業手当(正式には基本手当、以下失業手当)が真っ先に思い浮かぶことでしょう。失業手当は、企業を退職し、働くことについて意思および能力を有しているにも関わらず職業に就くことが出来ない間を補填する給付です

失業手当を受給する場合、言うまでもなく雇用保険の被保険者でなければなりません。これは、雇用保険が適用される企業で週20時間以上かつ31日以上雇用見込みの場合は、被保険者となります。特にアルバイトの方の場合は正社員と比べて適正に雇用保険の資格取得がなされていないこともあり、その場合は一定の証明をすることで、遡って加入することもできます。

ではいつまで遡れるのかという議論にもなります。原則は2年まで遡りが可能ですが、雇用保険料が給与から天引きされていることが明らかな場合は2年を超えて遡って加入することも可能です。その場合は賃金台帳などで雇用保険料の天引きを証明することとなります。

失業手当受給要件

失業手当を受給するための次の要件として、離職の日以前2年間で被保険者期間が通算して12か月以上との要件があります。被保険者期間とは在籍していた期間のうち、賃金の支払い基礎日数が11日以上ある月を指します。また、「賃金」とは現実に労働したか否かを必要とせず、有給休暇を取得した日や休業手当を支払った日も対象となります。 

また、法改正により、被保険者期間は離職日から1か⽉ごとに区切っていた期間に賃⾦⽀払の基礎となる日数が11日以上ある月、または、賃⾦⽀払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月として計算することとなりました。(令和2年8月1日以後の退職者

また、離職後2年間とはいわゆる自己都合退職を想定しており、解雇や事業所閉鎖などの会社都合退職の場合は離職の日以前1年間で被保険者期間が通算して6か月以上となります。

労務管理上おさえておくべき雇用保険手続き

雇用保険被保険者資格喪失届離職票の手続きがあります。退職日の翌日から10日以内に手続きをする必要があるために、退職予定者の在職中に必要事項の記載をしておかなければなりません。(電子申請ではなく紙ベースでの手続きの場合は退職者自身の記載および押印が必要な部分があり)

最も重要な部分として離職前6か月間に支給された賃金を記載します。この賃金額に対して180で除した額を「賃金日額」と呼びます。

退職時の年齢

失業手当は65歳未満の方が対象となる給付で65歳以後に退職する場合は高年齢求職者給付金という給付となります。給付額は失業手当の方が高く、もし失業手当を受給したいと考える場合は65歳の誕生日の前々日までに退職することで、失業手当の受給対象となり得ます。

給付額

賃金日額に一定率を乗じて算出されるものを基本手当の日額と呼びます。離職前6か月間の賃金を記載するため、例えば退職前に残業代などが多かった場合は失業手当の給付額は多くなるということです。尚、一定率については、65歳未満の退職者の場合は80%から50%を乗じます。 

出典元 厚生労働省 Microsoft Word - LL020212保01_雇用保険法改正リーフ .docx (mhlw.go.jp)

そして基本手当の日額をもとに給付額の概算を算出することができますが、労務担当者としては(法定の)離職した日の翌日から10日以内に手続きを行うこと、会社都合退職であったとしても失業手当はすぐには受給できないこと(通算して7日間の待期期間があること、自己都合退職であれば原則として2か月間の給付制限期間があります)を説明しておくべきです。

尚、給付制限期間とは失業手当を全く受給できない期間である反面、何らかの収入があったとしても失業手当との調整がされない期間です。

病気に罹患し退職の場合

失業手当は労働の意思および能力があることが前提であり、そもそも働けない状態の場合は受給できません。よって、そのような場合は最大で4年間まで延長することが可能です。また、よくある質問で傷病手当金を受給しながら失業手当を受給できますか。という質問については、傷病手当金の受給要件は「労務に服することができない」ことが要件であり、失業手当は受給することはできませんので、延長の手続きをするように進言すべきでしょう。

再就職手当

失業手当の残日数が1/3以上残っている場合は再就職手当の受給可能性があります。安定した職業で、かつ、1年を超えて雇用される見込みがあれば再就職手当の受給対象となり得ます。こちらは、退職者に情報提供しておくと大変感謝されると同時に新たに従業員を採用した場合に再就職手当受給のための申請用紙に事業主の証明を求められることがありますので、併せておさえておきたい部分です。

年金との調整

失業手当を受給する場合、65歳前から年金を受けることが出来る退職者の場合、両方受給できるということはなく、年金の方が止まる仕組みが導入されています。尚、調整の対象となるのは老齢厚生年金であり、障害年金や遺族年金、老齢基礎年金は対象外となる点はおさえておきたい部分です。

退職後の社会保険

退職後の社会保険については原則として以下の3パターンの選択肢となります。

任意継続被保険者

端的には在職中の健康保険組合等に退職後も加入するということであり、要件は以下のとおりです。在職中の健康保険組合等に継続して2か月以上加入しており、かつ、退職日の翌日から起算して20日以内の手続きで、2年間を上限として加入できます。在職中との相違点でありデメリットは、保険料は全額自己負担となる点です。(在職中については労使折半)また「任意継続」できるのは健康保険だけであり、年金については対象となっていません。

また、メリットは以下のとおりです。健康保険組合によっては特定の病院へ受診する際に窓口負担割合が3割を下回る場合があります。画一的にあてはまることはありませんが、おさえておいて損はない部分です。

また、退職日の翌日から20日以内に手続きができなかった場合はどうなるのでしょうか。正当な理由があれば受け付けられることもありますが、正当な理由とはどのような場合を指すのでしょうか。以下の通達が参考になります。

正当な理由(昭和24年保文発1400号)
正当な理由とは、天災地変、交通、通信関係のスト等により法定期間内に届出ができなかった場合をいう。任意継続被保険者制度があることを、資格喪失日から20日を経過した後に知ったという場合は、正当な理由とはならない。

よって、単に忘れていた場合や、任意継続被保険者の提出期限を過ぎた場合は難しいと言えます。

国民健康保険

国民皆年金の観点からも国民は何らかの健康保険に加入しなければなりません。しかし、生活保護になるような場合は加入する必要はありません。国民健康保険は、メリットとは言えませんが、任意継続被保険者のように継続した加入期間の要件はありません。自宅最寄りの地町村窓口で手続きを行います。加入手続きにあたって実務上の注意点は資格喪失した証明を求められることがあるため、在職中に資格喪失したことの証明書を準備するという点はおさえておきましょう。実際には在職中はまだ資格喪失していないために退職日の翌日以後に手続きするよう指導がある健康保険組合もありますが、迅速性の観点からも早めの確認が必要です。

また、保険料は市町村ごとに異なり、前年の収入によりますが、離職理由(解雇等)によって、保険料が低額となる場合がある点はメリットと言えます。しかし、多くの場合は傷病手当金や、出産手当金を受給できない点はデメリットと言えます。

扶養

退職後は家族の扶養に入るという選択肢で、いわゆる130万円の壁が課せられます。社会保険の扶養の範囲は生計維持要件として年収130万円未満であることが要件です。よくある質問で6月の賞与を受給し退職するとなった場合に既に年収130万円以上の場合は扶養に入れないのですか。との質問があります。結論としては入れます。それは、将来的に給与がなくなってしまうことから、向こう1年間で年収130万円未満となることが予想できるからです。言うまでもなく、途中で再就職したような場合は扶養から外れる手続きが必要です。実務的には退職を事由とする扶養申請の場合は離職票の提出が必要となります。

扶養の最大のメリットは健康保険だけでなく、年金(第3号被保険者)についても恩恵を受けることができます。退職後の妻(又は夫)が社会保険(健康保険・年金)の保険料を支払わなくても良くなる点は大きいと言えるでしょう。また、原則65歳から受給開始の老齢基礎年金についても扶養に入った期間(第3号被保険者)については、保険料は払ったものとしてカウントしてもらえるために、世帯単位で見ると家計に優しい選択肢とも言えます。 

しかし、デメリットとして被扶養者である間の年金については、「老齢厚生年金」は増額しない点です。年金の1階部分である老齢基礎年金は増額する反面、2階部分である老齢厚生年金は増額しません。そのための緩和策として個人型確定拠出年金(iDeCo)で減少分をカバーするという選択肢も覚えておいて損はないでしょう。iDeCoは一定の年齢要件はあるものの誰もが加入できるように改正されました。尚、実務上の注意点として第3号被保険者は、父母や兄弟姉妹の扶養に入る場合は注意が必要です。国民年金の第3号被保険者への加入要件はあくまで配偶者と生計維持関係にある場合が対象になるという理解です。

傷病手当金

退職日までに継続して1年以上の被保険者期間 があること待期期間として労務に服することができない期間が継続して3日の要件を満たしておくことで、退職後も傷病手当金を受給することが可能となります尚、有給休暇を取得した場合は、労務不能である要件を満たしていれば待期期間の1日としてカウントが可能です。また、全て有給休暇で全額給与が支払われており、その後退職した場合はその期間は所得保障の観点からも傷病手当金は支払われませんが、要件は満たしていることから最大1年6ヶ月間傷病手当金が支給されます。(途中で労務不能が解除した場合は支給打ち切りの場合もあり)

出産手当金

退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること資格喪失時に出産手当金の要件を満たしていることで退職後も出産手当金が支給されます。尚、出産手当金の要件は下記のとおりです。出産の日(実際の出産が予定日後となった場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産日の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間が対象となります。

出産育児一時金

退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること,かつ、退職後6か月以内に出産をした場合は、支給されます。しかし、例えば配偶者の扶養に入り、配偶者の加入する健康保険組合で出産育児一時金を受給する場合は、二重で受給するということはできません。いずれかの健康保険組合で受給することとなります。

退職後の情報管理

秘密保持契約を締結している場合は当該契約内容にもよりますが、原則として現代の情報化社会においては退職後であったとしても企業の機密情報を漏洩させることや、企業の社会的な信用を失墜させるような行為は行ってはなりません。昨今はSNSなどにより全世界に容易に情報を発信することができます。この点は退職時の説明において十分理解を得る説明をしておくべきです。そして、企業の立場としては特に社会保険の動向は確実に認識をあわえておくべきです。特に任意継続被保険者の手続きは退職日の翌日から20日以内です。これを過ぎてしまうと原則として手続きが出来ませんので、特に注意が必要な部分となります。

最後に

雇用保険や社会保険は複雑な仕組みであり、一度で全てを理解するのは困難です。よって、例外的な対応をした場合などは労務担当者として対応事例を共有しておくべきです。また、不明点は行政機関(雇用保険であればハローワーク、社会保険であれば年金事務所など)を活用すべきですが、コロナ禍以降は出勤者制限などが導入された背景もあり、電話が繋がりにくくなっている場合も多くあります。

また、雇用保険や社会保険は知らなかったことにより損をしたということが多くあります。そうならない為にも常日頃からアンテナを張り、情報をキャッチアップする努力も必要です。

 

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この記事の監修者

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社会保険労務士

蓑田真吾

社会保険労務士(社労士)独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしています

資格
社会保険労務士
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