1. 発生主義、現金主義、実現主義の違いとは?青色申告する人必見!
発生主義、現金主義、実現主義の違いとは?青色申告する人必見!

発生主義、現金主義、実現主義の違いとは?青色申告する人必見!

経理更新日:2024-09-22

発生主義、現金主義、実現主義は企業会計原則の概念です。事業活動における取引については、すべて会計処理を行い帳簿付けする必要があります。その際、発生主義、現金主義、実現主義の考え方に基づいて計上していきます。今回はそれらの特徴について分かりやすく解説します。

発生主義と現金主義の事例

イメージをつかむためにまず事例を見ていきましょう。発生主義と現金主義は異なる考え方です。一言でいうと、発生主義とは取引が発生したタイミングで実績計上する会計方法、一方、現金主義は現金授受の取引が行われたタイミングで実績計上する会計方法と言えます。

事例1)

4月:100万円の販売価格で受注獲得

5月:70万円で仕入れ

6月:100万円で販売

7月:仕入れ先へ70万円を支払い

8月:販売先から100万円を受領

【発生主義の帳簿】


4月    

5月    

6月    

7月    

8月    

売上    

 

 

100万円

 

仕入

 

 

70万円

 

利益

 

 

30万円

 

発生主義での考え方はこうです。まず4月の受注や5月の仕入れは損益計算書に関する取引ではないため、帳簿への記載はなし。そして6月の販売時に売上、仕入、利益をセットで実績計上します。つまり「取引が発生した6月の販売時点」が会計処理するタイミングというわけです。

一方、現金主義では受注時、仕入時、販売時にはまだ現金授受がないため会計処理は行いません。その後、7月の支払時に支出を計上、そして8月の売上代金受領時に収入を計上します。

両者の違いは明確です。発生主義では販売取引があった6月に、売上、仕入、利益をセットで実績計上しています。「費用と収益を発生した期間に計上」する考え方でありこれが発生主義の会計原則です。発生主義では売上額と仕入値と利益の関係が分かりやすいのが最大の特徴です。一方、仕入先にいつ支払ったのか、販売先からいつ代金を受領したのかがこの帳簿からは捉えられないことが課題です。

それでは現金主義はどうでしょうか?家計簿のように現金授受のタイミングで収入と支出を計上しています。お金の流れは非常に分かりやすいのですが、利益の視点では7月に70万円の赤字、8月の100万円の黒字と月によって損益が大きく変動してしまいます

事例2)

12月:従業員への賞与支払120万円(4月から9月までの役務に対する賞与支払)

【発生主義の帳簿】

 

4月    

5月    

6月    

7月    

8月    

収入    

 

 

 

 

100万円

支出

 

 

 

70万円

 

発生主義は取引が発生したタイミングで実績計上するという考え方ですから、従業員が会社に役務を提供した期間に均等に費用計上していきます。この事例では4月から9月まで均等に20万円ずつ費用計上します。

一方、現金主義では従業員が役務を提供した期間に関わらず、賞与を支払った12月に一括で120万円を費用支出として計上することになります。

企業会計原則とは

発生主義、現金主義、実現主義の特徴を説明するにあたり、企業会計原則に触れておきます。会計全体を理解するうえで基礎となる大切な考え方ですので、ぜひご理解しておくことをおすすめします。

会社法第431条「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うもの」

このように会社法で定められており、企業会計原則は「企業会計の慣行」のひとつとして位置づけられています。会社には多数の利害関係者が存在します。経営者や従業員はもとより、取引先パートナー、顧客、顧問税理士、会計監査法人、投資家、ともすれば会社の決算が社会全体へ影響を及ぼすことも考えられます。もし各会社が独自のルールで会計帳簿をつけ決算報告したら、これら利害関係者の混乱を招くことになるでしょう。こうした混乱を避けるために普遍的なルールを定めたのが企業会計原則です。

企業会計原則は、一般原則損益計算書原則貸借対照表原則の3つのパートで構成されています。中でも損益計算書原則では「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」と定めているように、発生主義の原則を会計処理の前提としています。また、「(前略)未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない」と定め、実現主義の原則を課しています。

企業会計原則のまとめ

・株式会社の会計は公正妥当な企業会計の慣行に従う(会社法より)

・「公正妥当な企業会計」の普遍的ルールとして企業会計原則が定められている

・企業会計原則では発生主義と実現主義の原則を前提としている。言いかえれば発生主義と相反する現金主義は想定していない。

発生主義、現金主義、実現主義の特徴

それでは発生主義、現金主義、実現主義についてそれぞれ詳しく説明していきます。

発生主義とは

発生主義は、取引が発生したタイミングで実績計上する会計処理方法です。企業会計原則の文言を借りると「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」に集約されます。

前述の事例1をもういちどご覧ください。発生主義ではたとえ5月に仕入れたとしてもそれを売上げるまでは費用計上されません。6月に売上計上すると同時に仕入額を費用計上し、同時に利益を計上します。また、賞与支払のようにある月に一括で支払が発生するような費用であっても、実際の業務が発生した月、つまり従業員が会社に対して役務を提供した月すべてに均等割りで費用計上します。

このように発生主義では取引が発生したタイミングで費用と収益を一致させて計上するため、会社の事業活動が月々の損益計算書に正しく反映されるという特徴があります。

一方、損益計算書だけでは資金の出入りが把握しづらいというデメリットがあります。これを補うためにはキャッシュフロー計算書や貸借対照表による管理が必要です。

また、発生主義では各取引を複式簿記で帳簿付けしていくため、会計知識が必要となる点もデメリットと言えるでしょう。とはいえ、日商簿記3級程度の基本スキルがあれば充分理解できますので、興味のある方はぜひトライしてみて下さい。

現金主義とは

現金主義は、現金の授受のタイミングで帳簿に実績計上していく会計処理の考え方です。個人の預金通帳に記帳されている入出金記録のようなイメージです。家庭の家計簿も現金主義に近いでしょう。

このように現金主義による帳簿付けは、簿記のスキルがなくとも簡単で分かりやすいことがメリットと言えるでしょう。反面、損益を正しいタイミングで把握できないという大きなデメリットがあります。帳簿上、費用発生と売上計上のタイミングが異なってしまうためです。たとえば前述の事例1では、7月に70万円の赤字で月次決算することになるため、利害関係者の混乱を招きかねません。

企業会計原則では現金主義による決算書を想定していません。会社法および企業会計原則に記載のとおり、すべての株式会社は発生主義による複式簿記で会計処理をする必要があります。

ただし個人事業主であれば現金主義で帳簿を作成し確定申告することが許されています。その場合は白色申告することになります。税制優遇のある青色申告を行うには発生主義による複式簿記で申告が必要ですので、ご注意ください。

実現主義とは

前述の通り、損益計算書原則では未実現収益を当期の損益計算に計上することを認めていません。たとえば、4月に100万円の受注を獲得し同時に受注金額の半分にあたる50万円を前金で受け取ったとします。その後6月に受注した品物すべての出荷・検収を行い、同時に残金50万円を受領したとしましょう。

この場合、実現主義の考え方では6月に売上100万円を計上するのが正しい会計処理になります。たとえ4月に前金で受領したとしてもこの時点ではまだ品物を販売していないため売上計上することはできません。

別の事例としてA社が子会社B社を連結決算しているケースを見ていきましょう。A社が開発・製造した製品を販売子会社であるB社経由で顧客へ販売するという商流です。9月にA社はB社に製品を販売し、売上100万円、原価80万円、利益20万円を実績計上しました。9月時点でその製品はB社の棚卸在庫の状態、その後10月にB社から顧客へ110万円で販売完了したケースです。

9月実績はA社の利益は20万円、B社の利益は0ですから連結では合わせて20万円、と計上するのは実現主義の原則では誤りです。連結グループとして顧客への販売が実現していないため、連結決算ではA社の利益20万円を未実現収益として控除しなければいけません。その後10月にB社から顧客へ販売した時点で、A社の利益20万円とB社の利益10万円を合わせた30万円を連結グループ全体の利益として計上するのです。

青色申告する方への補足~複式簿記での帳簿付け

ここでは青色申告をおこなう方へ複式簿記での帳簿付けについて解説します。複式簿記とは発生主義および実現主義に基づいた会計処理の方法であり、これが理解できれば会社法に定めのある「公正妥当な企業会計の慣行」の基準を満たす決算書が作成できるようになります。

【複式簿記の帳簿(前述の事例1のケースで損益計算書と貸借対照表を併記)】

 

4月

5月

6月

7月

8月

9月

費用  

20万円  

20万円  

20万円  

20万円  

20万円  

20万円  

【現金主義の帳簿】

 

~11月  

12月   

費用  

0

120万円

発生主義は取引が発生したタイミングで実績計上するという考え方ですから、従業員が会社に役務を提供した期間に均等に費用計上していきます。この事例では4月から9月まで均等に20万円ずつ費用計上します。

一方、現金主義では従業員が役務を提供した期間に関わらず、賞与を支払った12月に一括で120万円を費用支出として計上することになります。

企業会計原則とは

発生主義、現金主義、実現主義の特徴を説明するにあたり、企業会計原則に触れておきます。会計全体を理解するうえで基礎となる大切な考え方ですので、ぜひご理解しておくことをおすすめします。

会社法第431条「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うもの」

このように会社法で定められており、企業会計原則は「企業会計の慣行」のひとつとして位置づけられています。会社には多数の利害関係者が存在します。経営者や従業員はもとより、取引先パートナー、顧客、顧問税理士、会計監査法人、投資家、ともすれば会社の決算が社会全体へ影響を及ぼすことも考えられます。もし各会社が独自のルールで会計帳簿をつけ決算報告したら、これら利害関係者の混乱を招くことになるでしょう。こうした混乱を避けるために普遍的なルールを定めたのが企業会計原則です。

企業会計原則は、一般原則損益計算書原則貸借対照表原則の3つのパートで構成されています。中でも損益計算書原則では「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」と定めているように、発生主義の原則を会計処理の前提としています。また、「(前略)未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない」と定め、実現主義の原則を課しています。

企業会計原則のまとめ

・株式会社の会計は公正妥当な企業会計の慣行に従う(会社法より)

・「公正妥当な企業会計」の普遍的ルールとして企業会計原則が定められている

・企業会計原則では発生主義と実現主義の原則を前提としている。言いかえれば発生主義と相反する現金主義は想定していない。

発生主義、現金主義、実現主義の特徴

それでは発生主義、現金主義、実現主義についてそれぞれ詳しく説明していきます。

発生主義とは

発生主義は、取引が発生したタイミングで実績計上する会計処理方法です。企業会計原則の文言を借りると「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」に集約されます。

前述の事例1をもういちどご覧ください。発生主義ではたとえ5月に仕入れたとしてもそれを売上げるまでは費用計上されません。6月に売上計上すると同時に仕入額を費用計上し、同時に利益を計上します。また、賞与支払のようにある月に一括で支払が発生するような費用であっても、実際の業務が発生した月、つまり従業員が会社に対して役務を提供した月すべてに均等割りで費用計上します。

このように発生主義では取引が発生したタイミングで費用と収益を一致させて計上するため、会社の事業活動が月々の損益計算書に正しく反映されるという特徴があります。

一方、損益計算書だけでは資金の出入りが把握しづらいというデメリットがあります。これを補うためにはキャッシュフロー計算書や貸借対照表による管理が必要です。

また、発生主義では各取引を複式簿記で帳簿付けしていくため、会計知識が必要となる点もデメリットと言えるでしょう。とはいえ、日商簿記3級程度の基本スキルがあれば充分理解できますので、興味のある方はぜひトライしてみて下さい。

現金主義とは

現金主義は、現金の授受のタイミングで帳簿に実績計上していく会計処理の考え方です。個人の預金通帳に記帳されている入出金記録のようなイメージです。家庭の家計簿も現金主義に近いでしょう。

このように現金主義による帳簿付けは、簿記のスキルがなくとも簡単で分かりやすいことがメリットと言えるでしょう。反面、損益を正しいタイミングで把握できないという大きなデメリットがあります。帳簿上、費用発生と売上計上のタイミングが異なってしまうためです。たとえば前述の事例1では、7月に70万円の赤字で月次決算することになるため、利害関係者の混乱を招きかねません。

企業会計原則では現金主義による決算書を想定していません。会社法および企業会計原則に記載のとおり、すべての株式会社は発生主義による複式簿記で会計処理をする必要があります。

ただし個人事業主であれば現金主義で帳簿を作成し確定申告することが許されています。その場合は白色申告することになります。税制優遇のある青色申告を行うには発生主義による複式簿記で申告が必要ですので、ご注意ください。

実現主義とは

前述の通り、損益計算書原則では未実現収益を当期の損益計算に計上することを認めていません。たとえば、4月に100万円の受注を獲得し同時に受注金額の半分にあたる50万円を前金で受け取ったとします。その後6月に受注した品物すべての出荷・検収を行い、同時に残金50万円を受領したとしましょう。

この場合、実現主義の考え方では6月に売上100万円を計上するのが正しい会計処理になります。たとえ4月に前金で受領したとしてもこの時点ではまだ品物を販売していないため売上計上することはできません。

別の事例としてA社が子会社B社を連結決算しているケースを見ていきましょう。A社が開発・製造した製品を販売子会社であるB社経由で顧客へ販売するという商流です。9月にA社はB社に製品を販売し、売上100万円、原価80万円、利益20万円を実績計上しました。9月時点でその製品はB社の棚卸在庫の状態、その後10月にB社から顧客へ110万円で販売完了したケースです。

9月実績はA社の利益は20万円、B社の利益は0ですから連結では合わせて20万円、と計上するのは実現主義の原則では誤りです。連結グループとして顧客への販売が実現していないため、連結決算ではA社の利益20万円を未実現収益として控除しなければいけません。その後10月にB社から顧客へ販売した時点で、A社の利益20万円とB社の利益10万円を合わせた30万円を連結グループ全体の利益として計上するのです。

青色申告する方への補足~複式簿記での帳簿付け

ここでは青色申告をおこなう方へ複式簿記での帳簿付けについて解説します。複式簿記とは発生主義および実現主義に基づいた会計処理の方法であり、これが理解できれば会社法に定めのある「公正妥当な企業会計の慣行」の基準を満たす決算書が作成できるようになります。

【複式簿記の帳簿(前述の事例1のケースで損益計算書と貸借対照表を併記)】

 

4月    

5月    

6月    

7月    

8月    

売上

 

 

100万円

 

 

仕入

 

 

70万円

 

 

利益

 

 

30万円

 

 

 

 

 

 

 

 

現預金

 

 

 

 

100万円

売掛金

 

 

100万円

100万円

 

仕入

 

70万円

 

 

 

資産合計

 

70万円

100万円

100万円

100万円

 

 

 

 

 

 

買掛金

 

70万円

70万円

 

 

借入金

 

 

 

70万円

70万円

利益

 

 

30万円

30万円

30万円

負債・資本合計 

 

70万円

100万円

100万円

100万円

損益計算書の下に貸借対照表を併記しています。複式簿記で取引を仕訳していけば、最終的にこのような財務諸表が完成します。それぞれの取引と財務諸表の関係を解説していきます。

【4月:100万円の販売価格で受注獲得】

「受注」という行為は事業活動において非常に重要な活動の成果ですが、会計処理としての取引にはあたりません。そのため上記の財務諸表に計上することはありません。

【5月:70万円で仕入れ】

貸借対照表の「仕入」に70万円、「買掛金」に70万円と記帳します。買掛金は負債項目のひとつで将来支払うべき金額を表しています。

【6月:100万円で販売】

損益計算書へ売上、仕入、利益を計上すると同時に、貸借対照表の「売掛金」に100万円、「利益」に30万円を計上します。売掛金とは顧客から将来入金されるべき金額を表しています。

【7月:仕入れ先へ70万円を支払い】

ここで初めて現金の支出が発生しました。貸借対照表では買掛金が70万円減ってゼロとなり、借入金に70計上されることになります。無借金経営の会社が現金で支払う場合は、借入金増の代わりに現預金が70万円減となります。

【8月:販売先から100万円を受領】

6月に100万円で販売した代金を8月に回収しました。6月に計上していた「売掛金100万円」がゼロになり、代わりに「現預金」に100万円を計上します。

このように損益計算書だけではなく貸借対照表も見ていくことにより、会社の財務状況が分かるようになります。この事例の7月には仕入に対する支払いが発生しましたが、一方で売上代金はまだ入っていないため、一時的に資金繰りが悪くなっていることが分かります。

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まとめ

会社を取り巻く環境には多数の利害関係者が存在し、その決算書は様々な影響を与えることから、会社法や企業会計原則では会計処理の普遍的なルールを定めています。そのルールに基づくのが発生主義と実現主義、ルールには準拠していないが簡便的な方法で帳簿付けができるのが「現金主義」という位置づけです。

発生主義

「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」の企業会計原則に基づき、取引が発生したタイミングで実績計上する会計処理方法

現金主義

現金の授受のタイミングで帳簿に実績計上していく会計処理の考え方

実現主義

「未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない」との企業会計原則にしたがって、取引が実現した時点で損益計算書に計上する会計処理方法

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